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LINE・CSMO舛田淳が明かす仕事術。「早すぎず、遅すぎない、タイミングの見極めが圧倒的成果の鍵」

生活を支えるインフラの1つになりつつあるLINE。最高戦略・マーケティング責任者の舛田淳さんは「流れに乗ることがポイント」と話す。

LINEの勢いが止まりません。クローズドなコミュニケーションアプリとしてスタートした「LINE」ですが、今では生活を支えるインフラのひとつとして、多くの人々に日々利用されています。今後はさらにAI、金融などの領域を充実させながら、GAFAに匹敵する存在へと成長することが予想されています。

そのLINEで最高戦略・マーケティング責任者(CSMO)を務めるのが、舛田淳さんです。猛烈なスピードで進化と拡大を続けるLINEにあって、舛田さんはどのように事業の舵取りという意思決定を行っているのでしょうか。

今回はLINE取締役 最高戦略・マーケティング責任者の舛田淳さんに話を聞きました。

(取材・文:Marketing Native編集部・早川 巧、撮影:稲垣 純也)

    

CSMOが行う3つの役割

――舛田さんは「取締役CSMO(Chief Strategy & Marketing Officer、最高戦略・マーケティング責任者)」という、ちょっと威圧感のある肩書ですが(笑)、どのようなお仕事なのか教えてください。

正しくは「最高戦略責任者(CSO)&最高マーケティング責任者(CMO)」といいまして、LINE全社の戦略とマーケティングの責任者という位置づけです。LINEの前身のNAVER Japanには戦略担当として参画しましたが、戦略は基本的にマーケットとの関係性で決まりますから、2つを分けるほうが不自然だと私は考えています。ですので、意識的に2つの役割を横断しています。

では、私が担当する戦略とは何かといいますと、事業戦略の立案から世界観の構築、事業開発、事業提携、サービス企画、ブランディングまで幅広く、業務の範囲がどこからどこまでと決まっているわけではありません。要するに、さらに多くのユーザーに「LINE」を便利にご利用いただき、売り上げを伸ばし、会社を成長させ、ビジョンを実現するためにやれることは全部やるのが私の仕事です。出社初日に前CEOの森川(亮、現C Channel株式会社代表取締役社長)さんと現CWOの慎(ジュンホさん)に「この会社が勝つために必要なことは全てあなたの仕事です。自分が必要だと思うことを自由にやってほしい」と言われたことを覚えています。その頃から変わりませんね。

一方、マーケティングが示す範囲についてもよく議論になりますが、マーケティングとは経営であり、商いであり、存在意義そのものであると考えています。故に、マーケティングの最高責任者としての役割は幅広く、単にコミュニケーションやプロモーションの担当ということに留まらず、当社のCxO職の中で一番柔軟なポジションといえるかもしれません。

――俯瞰もすれば、個々のケースに入っていくこともあるということですね。そのあたりのさじ加減や、明確にやらないと決めていることはありますか。

マーケターは、マクロとミクロ両方の視点を持って、使い分けつつ同時並行で業務を進めていくことが大切です。ただ、それぞれの分野に優秀なスペシャリストがいますから、スペシャリストがパフォーマンスを発揮できる環境がすでに整っていれば、私が必要以上に携わることはありません。私が関与すべきことは、

  • 最初の起点や流れをどう作るのか。
  • 盤面を変える一手をどう打つか。
  • うまくいかなくなったときや一定の役割を終えたときに、どう結論を出すか。

この3つが基本だと認識しています。

価値観共有への徹底したこだわり

――部下への権限移譲についてはどうでしょうか。つい「自分でやったほうが早いし、良いものができる」と考えて、タスクを抱え込んだ結果、スケジュールが間に合わずに自滅している上司も多いと思います。

そこは私も悩みながら、ですね。私自身のタイプは「やりたがり」なので(苦笑)、一番試行錯誤している部分です。原則、想定通りにどうしてもいかない状況やトラブルが発生したときなどは、いつでも自分が出ていこうと思っていますが、現場で起こっている細かなこと、まさに空気の揺らぎのようなことは現場のメンバーのほうが詳しいですしパフォーマンスも出せますから、私は壁打ち相手としてアドバイスをしたり、軌道修正をしたり、組織的なボトルネックを解消しに出ていったりするという立場です。

一方、LINEの価値観をどのように伝えていくかということは重視しています。組織が拡大していく中で、考え方や方向性の共有は非常に重要です。例えば、プレスリリースの大半はいまだに私が最終チェックしています。

――今もですか。

もちろん全部見ているわけではなく、ストーリーや見出しなど大事なところを確認しています。

また、年1回開催している「LINE CONFERENCE(カンファレンス)」という事業戦略発表会が私の大きな仕事です。「LINE CONFERENCE」は外部の皆さまに我々の考えをお伝えする場であると同時に、メンバーたちにビジョンの共有と整理を促す場でもあります。そのため、現場で起きていることを普段から吸い上げるようにして、「LINE CONFERENCE」に向けて、日々ストーリーを紡いでいる感じです。

――プレスリリースの言語感覚やメッセージ、カルチャーに、こだわりが強いんですね。

はい。そこが本質ですから大事にしています。その事業、サービスの存在意義や価値を定義し、ターゲットや市場を決め、名前を付け、そのストーリーを設計し、PRとしてメディアリレーションやソーシャルリレーションのコミュニケーションプランをつくり、まずはどこが通用するかを考えます。そのためには言語感覚や表現が対象に刺さっているかどうかは大事ですね。キャンペーンやプロモーション設計、アクションももちろん大事ですが、順番としては、そのように捉えています。そして、オーガニックに成長する構造をつくることがあるべき姿ですので、プロダクトにその仕組みをつくっていくことは中心にあるべきです。

複数の選択肢を用意できるのが、上位レイヤーのマーケター

――舛田さんはエンタメカンパニーCEO、AIカンパニーCEO、LINE Pay取締役、 LINE Financial取締役など多岐にわたるジャンルで要職に就いています。1つだけでも大変なのに、それだけ幅広く担当していると、情報のキャッチアップのために相当な勉強、インプットが必要になると思うのですが、その辺りどうしているのでしょうか。

「勉強」という感覚はあまりないですね。例えば、プロジェクトメンバーと一緒にストーリーを作ったり補正したり、価値定義をしたり、世界観を一緒に作ったりしていますが、そのプロセスの中でメンバーたちの壁打ち相手になることが私にとってはインプットなんです。よく言うのは、私を含めた上位職たちをある種、高性能なプロセッサーとして捉え、インプットすべき情報をどんどん与えてほしいということです。インプットをくれれば、それに応じていろいろな角度でアウトプットを出していけます。

もちろん、私自身も体験としてのインプットができる場所に足を運びます。デスクリサーチもしますが、もっと大事なのは社内外、オフライン・オンラインを問わず、いろんな人と話すことや実際に体験することです。ほかにも、SNSのタイムラインを見ていて引っかかることが出てきたら、専門書や論文を読み、競合しそうなサービスをユーザーとして触るようにしています。そういうインプットを繰り返すうちにある程度フレームが出来上がってくるので、今度は「私はこう思うんだよね」といろんな人に話したり、場合によってはあえて逆の意見を交えながらSNSのアカウントで観測気球のようにコメントしたりして、反応を見つつ学んでいる感じです。

メンバーによく言うのは、「できない」「わからない」「これはない」と言う前に、まず自分で体験するべきだということです。体験すると、手応えや空気感が生々しく伝わってきます。私が意識しているのは、そういう体験をいくつも積み重ねて、引き出しとしてストックしておくことです。そうすると、誰かが何かをしたいと言ったときに、短い時間で本質を正しく理解し、戦略やマーケティングの観点からアドバイスするのに役立ちます。

ただし、私の意見が「正解」ではないので、こういう考え方もあれば、こういう考え方もあるよと複数の選択肢を示せるようにしています。良いマーケターの条件があるとすれば、全体像を見渡した上で選択肢をどこまで多く考えられるかだと思います。特に上位レイヤーのマーケターに必要な条件ですね。

▲LINEキャラクターの「部長」

ユーザーニーズこそ全て

――とはいえ、それだけ担当領域の幅が広いと、人に会ったり論文を読んだりするのも大変ですよね。

長時間集中するのは得意ではないので、短い時間にガッと集中して行います。あとはマルチタスクですね。会議中、スマホを見ていることもよくあります。

――会議をしながらですか。

会議で話を聞き、意見を言いながら、同時並行でスマホをいじり、メールを処理し、LINEを処理しています。

――新卒なら確実に怒られますね(笑)

そうですね。「聞いとんのか!」って(笑)

――昔からですか。

昔からです。落ち着きないんです(笑)。話はちゃんと聞いていますし、意見を言ったり質問に答えたりしていますよ。でも、もう1つのチャンネルが開いている感じなんです。

――ご自身が現在担当していたり、過去に手掛けたりした事業で、「実はあまり得意じゃないんだよな」というジャンルはありますか。

それが、あまりないんですよ。

――ないって!理系から文系まですべてですか。

正確にいえば、得意不得意というよりも、「好き嫌いがない」というか、知れば大概のことは面白いですし、好きになります。世の中は興味深い。もちろん、本当に専門性の高い領域のことはわからないですよ。ただ共通言語で話すために必要なレベルくらいなら何とかなっています。

――共通言語というのは、戦略やマーケティングということですよね。

そうです。そもそも私に求められているのは、専門的な内容に関するアドバイスではなく、方向性、ターゲット、タイミング、アクションプランやクリエイティブプランなど、不足している要素の判断です。そのため、サービスを考えるときはメンバーに「これは何のためにやるんですか?」「どういう価値があるんですか?」と、よくフィードバックしています。

例えば、プロダクトアウトとマーケットインが時折比較されますが、我々のようなスピードが速いサービスの場合、最初のトリガーとしてプロダクトアウトになることはある種の正解で、そのためマーケットとの乖離が往々にして生じるんです。そうしたマーケットギャップをターゲットとの共通言語に翻訳して埋めるのがマーケターの大きな仕事のひとつです。さらにもう一方でマーケットイン型として、プロダクトコンセプトを作る前段階から入りつつ、プロダクトとマーケットのストーリーをつないで世界観を創り出し、価値を高めるためのファンクションになることが大切です。教科書としては後者が理想ですが、実際の現場でパフォーマンスを出すには前者も非常に大事な動き方。両方できなければいけないと考えています。

――ユーザーニーズを踏まえた上でプロダクトを作るのが大事だということですね。

日本のインターネット業界の常識と一時期なっていたのは、自分の欲しいものを作るという考え方だと思います。しかし、それでうまくいくことは多くありませんでしたし、1000万人規模のヒットは生まれませんでした。「自分が好きだから」ではなく、「ターゲットがどう感じるか」「自分以外の人のことを考えたとき、社会的課題や人々の課題、欲はどこにあるのか」「マーケットにどんな動きがあるのか」という文脈の中でプロダクトを考えていくべきで、ユーザーが使ってくれることが正解であり、マーケティングだけではなく、テクノロジーもデザインも、あらゆる点でユーザーニーズが全てだというのがLINEという会社の考え方です。

繰り返しになりますが、プロモーションやデジタルマーケティングでリードを獲得して、コンバージョンに結びつけるようなことも当然行うべきです。一方、マーケターの本質的な役割は、それぞれのサービスや事業がどのようなストーリーを持ち、どういう価値や存在意義があるのかを定義して、表現し、伝えていくことです。先ほどのプロダクトアウトのケースで見ると、プロダクト側が「A」と言っているサービスをどう「A´(ダッシュ)」や「B」にするか。競合との比較になったときも、プロダクト側は当然スペック勝負を挑みますが、我々の役割はスペック勝負ではない勝負にどう持っていくか、そこにストーリーを持たせて、ターゲットに刺さるような、ターゲットにとって光り輝くようなある種の魔法をかけることだといえます。

「どうずらせるか」がポイント

――舛田さんはそういう「A」を「A´(ダッシュ)」にしたり、ストーリーを作って付加価値を高めたりすることが以前から得意だったんでしょうか。キャリアを重ねる中で徹底的に磨きをかけてきた部分はありますか。

昔から人が考えていることより少し「視点をずらす」ことが得意でした。子供の頃、クラスで遊んでいるグループの輪には入らずに、ちょっと離れたところにいて、自分で違う遊びを始め、みんなを移動させていくタイプでした。「自分も輪に入れて」とはなかなか言えない子供でしたね(笑)。生活環境も少し変わっていましたし、そういうところは今でも役に立っていると思います。

――高校を中退したりとか、確かに人より少し変わった人生を歩んでいますよね。そういうところが思考パターンに影響していると思われますか。

していると思います。それに、慣習や過去決められたルールなどにあまり重きを置いていないところもあります。実際、それらは大した理由もなく、本質的には大した伝統でもないことが結構あると思っています。だから「これしかできないです」と言われても、「できない」から入るのではなく、「どうすればできるか」と枠を超えて考える癖が習慣として身に付いています。

確かにマーケティングや戦略は合理的に突き詰めていくべきものですが、それだけでは不十分です。なぜなら相手も合理的だから、合理性を追求しても、ただ競争しているだけになり、数字は改善できても、特別な存在にはなりにくいからです。その結果、スペック勝負、キャッシュ勝負から抜けられなくなってしまいます。さらにいうと、お客様も合理性で商品を選んでいるわけではないという大前提もあります。大量生産・大量消費の時代も終わり、消費者心理としてはますます合理性よりも違う部分に反応するようになっています。

ですから、いつも考え続けているのは、これは正面からいくのか、ずらすのかということですし、ずらす場合は、「どうずらせるか」ということです。「ゲームチェンジャー」「ルールメーカー」という存在はずらすことに成功した人であり、「ブルーオーシャン」はずらした結果、勝ち取ったマーケットだと思います。ずらして特別な存在にするためには、ストーリーが必要です。そうしたストーリー設計が私の役割ですし、それができたサービスは成功しますし、そうでないサービスは競争の中に埋もれていくでしょう。そこが本質的なところですね。考える際には市場の「流れ」や競合・消費者の「常識」「思い込み」「先入観」をどう捉えるか、順目がいいのか、逆ばりがいいのか、予定調和がいいのか、違和感が必要なのか、そうした点に気をつけています。

圧倒的成果の創出はタイミングの見極めから

――ずらしすぎたり、ずらす方向を間違えるおそれもありますよね。

そうですね。ブルーオーシャンといっても、ずらした方向に自分1人しかいないのでは市場として成立しないので、やはりフォロワーは出てきてほしいです。出てこなければ競争は楽なのですが、市場自体は大きくなりにくい。そのため、ずらす際にはそこが自分たちにとって戦いやすい市場環境か、タイミングは適切かなどを常に念頭に置きながら考えることが大切です。

――舛田さんは以前から、世の中を動かすほどの圧倒的成果を出すためにはタイミングが重要だということをおっしゃっていますね。

本当にとても重要です。自分たちのサービスで圧倒的な成果を出そうとすると、いろんな力を借りてレバレッジする必要があります。そのひとつがタイミングです。

例えば、今では信じられないかもしれませんが、スマホが発売されたときには賛否両論がありました。私も触ってみましたが、そのときは「今このタイミングじゃない」と感じたことを覚えています。流れが一変したのはiPhoneの登場です。触った瞬間、「否定的なことを言う人はまだいるだろうけど、これはもう不可逆だ。この流れは一気に加速する。それこそビッグウェーブに乗り遅れてはいけない」と直感しました。LINEはそういう流れや波に非常に敏感な会社です。

ただし、ここで大事なのはタイミングが早すぎるのも良くないということです。戦略やマーケティングを担当する私からすると、早すぎるのはチームに対して最も申し訳ないことのひとつです。早すぎることも、遅すぎることも、むしろ1番乗りである必要もないと考えています。

――1番乗りである必要はない?

よく「1番乗りだから市場で勝てる」と言われますが、実は違うと思っていて、ケース・バイ・ケースでしょう。歴史的に見ると、1.5番目くらいがちょうどいいと私は捉えています。1番乗りのサービスを見ながら、さらに良いもの、少し角度を変えたものを出していくのがLINEの特徴のひとつです。

――1.5番目ですか。

Googleだってロボット検索の1番乗りではないですし、Facebookもタイムラインの1番乗りではありません。では、そうしたサービスの何が良かったかというと、1番乗りのサービスから価値をずらして勝負をしたことです。だから「1番乗りでなければならない」という考えには違和感がありますし、むしろ早すぎないように注意しながら、1.5番目くらいで世に出すというタイミングの見極めがひとつの勝負ポイントになると思います。そんなふうに1番乗りのサービスを受けて、少しポイントをずらした競合がいろいろと世に出てくると、市場が活気づき、ターゲットはもちろん、その外側にいる人たちにもサービスが広がっていきます。社会的なムーブメントはこうして起こるわけです。

成長の鍵は、マクロな視点で考える癖をつけること

――最後に、若い世代のマーケターに対して、成長のためのアドバイスがあれば教えてください。

いろいろありますが、1つだけ挙げるとすれば、戦略的柔軟さを持つことです。タイミングの話もそうですが、1つの打ち手に対するユーザーの反応によっては、次の一手を大きく変えなければならないことはいくらでもあります。そんなとき一度決めた方法にこだわりすぎず、もっと幅広く、かつ視座を高くしてマーケティングを捉え、柔軟に次の一手を打てる人であってほしい。そのためには、上位レイヤーのマーケターの条件として挙げたように、複数の選択肢を持てるように準備しておくことが大切です。あとは環境や流れ、いろいろな考えや価値観を「肯定する力」「受け入れる力」と、慣習や文化、ルール、現状や、時には自身の考えや決定を「疑う力」も意識するといいですね。ベクトルとしては真逆なものですが、この真逆の中を考え抜いていくことも思考実験として面白いですよ。

マーケティングというと、どうしても手段の話になりがちです。もちろん、オペレーションの中では大切なことなので極めていくべきではありますが、もっと広い意味で上位レベルのマーケティングを理解する必要があります。

例えば、プロモーションの先には当然、商品やサービスがあり、ユーザーがいて、クライアントがいて、自分が所属する会社があります。そしてその先にはさらなるステークホルダーたちがいます。そこまで神経をつなげて考える努力を常にすべきだし、そうして視野を広げた経験は絶対にマイナスになりません。もし今、「自分の仕事は、ちっぽけだな」と感じている人がいたら、一度マクロに視点をグッと引いてみると、自分の仕事が何につながっているのか見えてくると思います。

――早く成果を出したいと焦っている人も多いと思います。

確かに「どうすれば成果を出せますか?」とよく聞かれます。そういうときも、「一度マクロに視点を引いて、どうすれば自分が見ている盤面を自分の一手で変えられるかを考えてみよう」とアドバイスしています。そのためには自分のタスク周りで何が行われているのか、どのように連携してプロジェクトが進んでいるのかをよく見回して、周囲の人たちを巻き込んでいく必要があります。よく「侵食」という言葉を使いますが、自分は営業だから、マーケティングだから、PRだから、開発だからこの仕事しかしないと考えるのではなく、自分の神経をどんどんつなげていって、他の業務にまで侵食していくことが大切です。

会社にいる以上、仕事はチームで行うのが基本ですから、どこかでつながっていますし、その接点を動かせば有機的に連動していくものです。その際、ちょっと引いた視点で考える癖をつけられると、プロジェクトの課題点が見えてきて、自分が関与できる隙間がわかります。そこでバリューを発揮できれば、自分発信でいろんなことを変えられる環境を自然と手に入れられるでしょう。ただし、その前にまず目の前の仕事で120%の成果を出し、周囲の信頼を勝ち取っておく必要があります。そこは頑張りどころです。

――侵食する際に注意すべきことはありますか。

コミュニケーションです。社内のいろんな部署の人と積極的にコミュニケーションを取らないと事態は変わらないので、周囲の環境を理解しつつ、自分のことも理解してもらう必要があります。中にはそうしたことを苦手にしている人もいますが、マーケティングでユーザーニーズを理解したり、外部の関係者とやりとりしたりするほうがずっと大変なんだから、社内コミュニケーションからまずは始めようと言っています。

もちろん、対人スキルですから、人によってはそんなに簡単な話ではないかもしれません。しかし、それについてもどうすれば改善できるのか、どのようなアクションを取れば人は動いてくれるのかをずっと考え続けるべきです。考えることをサボったり放棄してはダメです。思考停止した瞬間に進歩は止まりますし、相手に理解されないまま自分を変えることもできなくなってしまいます。「この先には必ず何かあるはず」と信じて考え抜けるかどうか。それがマーケターという職種にはとても大事なことだと思います。

Profile
舛田 淳
(ますだ・じゅん)
LINE株式会社取締役CSMO(最高戦略・マーケティング責任者) 。
1977年生まれ。2008年にネイバージャパン株式会社(現LINE)に入社、事業戦略室室⻑・チーフストラテジストに就任。2013年LINE執⾏役員CSMO。2015年LINE取締役CSMO に就任。CSMOとして、国内インターネット企業としては史上最大となる国内8000万利用者強、海外でも2億人強の利用者規模となるサービスへとLINEを成長させることに貢献した。現在、全社CSMOに加え、エンタメカンパニーCEO(LINE MUSIC・LINE LIVE・LINE チケット・LINEノベル・LINE RECORDS・コンテンツ投資等)、AIカンパニーCEO(Clova事業・LINE Brain・Gatebox・LINE Search・1to1事業等) 、LINE Pay取締役、 LINE Financial取締役、夢の街創造委員会社外取締役などを務める。

[記事執筆者] 早川巧
株式会社CINC社員編集者。新聞記者→雑誌編集者→Marketing Editor & Writerとして四半世紀以上のキャリアあり。Twitter:@hayakawaMN

 

 

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