「情報には影がある」だからこそ、相手に思いを巡らせ、さまざまな角度で考える力を養う
「情報には影がある」と突然言われても何のことだかわかりませんよね。
実はこれ、2018年2月に参加した、「World IA Day 2018 Tokyo」のセッションで一番自分に響いた言葉なんです。
インフォバーンで、『DIGIDAY』というメディアを中心に、メニュー開発や広告・イベントのプランニング・セールスを担当している私は、「伝える」ことを徹底的に考える日々を送っています。その一方で、情報の受け手の気持ちになり切れていないことにセッションを通じて痛感しました。
日頃から情報を届けることを徹底的に考えているマーケターの皆さんに少しでもお役に立てたらと思いつつ……今回は、カンファレンスを通じて感じたことを綴りたいと思います。
情報を受け取る側に思いやる
今年のカンファレンスのテーマは「IAの倫理と哲学」。IA(情報アーキテクチャ)を倫理と哲学という側面から考えるという、非常に興味深いテーマでした。
なぜこのカンファレンスに参加したかというと、当時、私は目の前の仕事をこなすことで精一杯になっていたからです。
データ、マーケティング、コンテンツ、デジタル……といったカタカナに囲まれ、接触する人・情報が固定し、思考が凝り固まってきている、脳の別の部分も使わなければ……! と危機感を抱いていました。
セッションで最も印象深かったのが、九州大学芸術工学院の古賀徹教授の「デザインの基礎を掴む」でおっしゃっていた、次のフレーズでした。
Information has a shadow(情報には影がある)
“Information has a shadow”というのは、「発信する側は良いと思ってやっていることは、必ずしも良いことだけではない」ということ。受け手の中にはその発信内容にとても傷ついたり、不快に思う人も必ずいる。そこに気づくために、感受性を持つことの必要性についても言及されていました。
読者のみなさんも含め、私たちは、職業柄、“伝える”ことを考える機会が非常に多いと思います。
私自身も、社会人になってから、ずっと、誰に何をどのように“伝える”か、をまるで呪文のように問われ続け、考え続けてきました。伝えたい相手に“伝える”ということを徹底する一方で、伝えたい相手以外の、“受け手”や影の部分まで、しっかりと目を向けられていなかったのではないか……、と考えさせられました。
情報には影があり、情報発信には責任がともなう。
私たちは、普段から、あらゆるモノゴトに対して先入観をもっているということをしっかりと認識した上で、想像力を高め、視野を広げて、意識的に、モノゴトをいろいろな角度から見つめ、さまざまな可能性を考えてみる、ということが大切だと、改めて、強く感じました。
想像力を高めるために私が意識すること
想像力を高めるために、普段から意識しているのは、自分のいる世界の一歩外に目を向け、視野を広げていくことです。
もう少し具体的に言うと、社内では、所属にこだわらず、漂ってみること。
社外でも同じで、交流するのは、マーケティング業界に限らず、その一歩外に意識を向けるようにしています。
もちろん、業界内のつながり、仕事に直結する知識の習得も非常に大切だと思いますが、さらに一歩外へ出て、いろいろな人と話すと、新しい気づきがあったり、影が見えたり、その考えの奥にはどんな経験が紐付いているのだろう……など、さらに思考を深めるきっかけが生まれます。
こうお話しすると、明るくて、社交的な人だと思われるかもしれませんが、実際はその逆。どちらかといえば無口で、家にいるのが大好きな引きこもり体質。マーケティング業界は業界内でのつながりが強く、私も普段から諸先輩方に非常にお世話になっているので、その関係性につい安住してしまいそうになります。
しかし、いつもの場所から出て、いろいろな人と接する経験は、普段以上の学びが得られます。単に新しい情報を収集するという意味ではなく、考え方に触れることが大切だと感じています。
それに、今までとはまったく違う出会いが、思わぬところで仕事につながったり、人が人をつないでくれることも。チャンスがあれば、自分を奮い立たせて出向くようにしています。
そして、最近は、周囲からの誘いや勧めも、興味があるものを受け入れるのではなく、“自分の世界だけではきっと選ぶことがないもの”をあえて選んでみるようにしています。
違いを否定するのではなく、楽しめるように
視野が固定されてしまうと、自分の想定外のことが起きたとき、もしくは想定していたことができなかったときに、柔軟に対応できず、できないことに対してストレスを感じ、非常につらい思いをするのではないか、とも思います。
前職では、海外の事業所、外国人のスタッフとの対応も多かったのですが、仕事の進め方、文化・慣習、商習慣など、ことごとく日本と違うことに驚くばかりでした。色の捉え方も違えば、ブランドに対する意識レベルも違う、日本では仕組み化されていることがまったく適用できなかったり、前提がまったく違っていたり。
しかし、あまりにも、何から何まで異なるので、違いを否定的に捉えるのではなく、そもそも違って当然、そういう考えもあるよね、と考える癖がつき、余裕を持って楽しめるようになりました。
現職では、リアルイベントを開催する機会が年々増えてきていますが、イベントにハプニングはつきものです。想定外の出来事が起こっても落ち着いて、前向きに対応できる柔軟性を身に付ける、という意味でも、常日頃から、多くの人・考え・体験に触れ、いろいろな立場に想像を巡らせ、さまざまな角度からモノゴトを考えることが大切だと感じる日々です。
“哲学”“倫理”と聞いて、自分にはあまり関係がないと感じた方もいらっしゃるかもしれませんが、情報の影の部分にも意識を向ける、目に見えない受け手まで思い遣るという、マーケティング、コミュニケーションに携わる人間として、非常に大切な心得を「World IA Day 2018 Tokyo」のへの参加を通じて、再認識することができました。
日頃から、メタ認知と想像力、ノイズや違和感に触れる環境、未知のモノゴトとの出会いを自らつくることが大切だと考えていたからこそ、この場への参加があり、再認識につながったのかもしれません。今後も、意識的に違う刺激を注入することを忘れずに日々行動し、いろいろな立場の人と対話をし、異なるさまざまな考え方感じ方に触れ、想像力を高めながら、“受け手”、多様な立場の人を思いやれる人間に成長していければと思います。
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