「なかなか」漢字とひらがな使い分けはどうすべき?一般的ルール164例
「Web文章入門」では、ウェブサイトで求められる文章表現とコピーライティングのエッセンスを解説します。特別編として、多くの人が文章を書く際に悩みがちな「漢字とひらがなの使い分け方」をお送りします。
漢字の多い文章、適度にひらがなの多い文章
漢字の多い文章は、単に読みづらいだけでなく、堅苦しさや仰々(ぎょうぎょう)しさが感じられます。読みづらい漢字はひらがなで表記し(このことを「ひらく」といいます)、ストレスなく読める文章を目指しましょう。
ここで、漢字の多い文章と、適度にひらがなの多い文章を比較してみます。後者のほうが読むときのストレスが少なく、内容をすっきりと理解できる人が多いでしょう。
利用者は限られた時間の中で、有益な情報に素早く辿り着く事を目的に、検索サービスを利用して居ます。例えば「○○うどん」と言う店名だけでは無く、「○○うどん 住所」「○○うどん 地図」と言った、一層具体的な言葉の組み合わせで検索する傾向が有ります。
利用者は限られた時間のなかで、有益な情報に素早くたどり着くことを目的に、検索サービスを利用しています。たとえば「○○うどん」という店名だけではなく、「○○うどん 住所」「○○うどん 地図」といった、いっそう具体的な言葉の組み合わせで検索する傾向があります。
ある言葉を漢字で書くか、ひらがなで書くかを適切に判断するのは、簡単なようでむずかしいものです。たとえば「常用漢字表に載っていない漢字の使用を避ける」「読みづらい漢字はひらがなで書く」といったわかりにくいルール、あいまいなルールを設けても、なかなか実効性を期待できないのが実情です。
以下、日ごろよく使う言葉で、漢字ではなくひらがなで書く(または、一部をひらながにする)のが一般的なものをまとめますので、参考にしてみてください。
漢字とひらがなのルール一覧
× | ○ |
---|---|
敢えて | あえて |
当たって | あたって |
貴方/貴女 | あなた |
余り/余りに | あまり/あまりに |
予め | あらかじめ |
有る/有り | ある/あり |
或いは | あるいは |
改めて | あらためて |
併せて | あわせて |
言う/言わば | いう/いわば |
如何/如何に | いかん/いかに |
幾つ | いくつ |
何れ | いずれ |
致す/致します | いたす/いたします |
頂く/戴く | いただく |
至って | いたって |
何時 | いつ |
一層 | いっそう |
一旦 | いったん |
一杯 | いっぱい |
一遍に | いっぺんに |
今更 | 今さら/いまさら |
未だ | いまだ/まだ |
居る/居り | いる/おり |
色々 | いろいろ |
所謂 | いわゆる |
内 | うち |
得る | うる(「~ありうる」の場合) |
嬉しい | うれしい |
概ね | おおむね |
置く | おく(「~しておく」の場合) |
恐らく | おそらく |
凡そ | およそ |
及び | および |
且つ | かつ |
可也 | かなり |
下さい | ください |
組合せ/組み合せ/組合わせ | 組み合わせ |
位 | くらい/ぐらい |
此処 | ここ |
事 | こと |
毎 | ごと |
殊更 | ことさら |
頃 | ころ/ごろ |
先程 | 先ほど/さきほど |
流石 | さすが |
様々 | さまざま |
更に | さらに |
し難い | しがたい |
直に | じかに |
従って | したがって |
暫く | しばらく |
直ぐに | すぐに |
既に | すでに |
即ち | すなわち |
全て | すべて |
折角 | せっかく |
是非 | ぜひ |
側/傍 | そば |
大分 | だいぶ |
沢山 | たくさん |
只 | ただ |
但し | ただし |
例え(ば) | たとえ(ば) |
度/度々 | たび/たびたび |
為 | ため |
団欒 | 団らん |
丁度 | ちょうど |
一寸 | ちょっと |
遂に | ついに |
付き | つき(「~につき」の場合) |
繋げる/繋がり | つなげる/つながり |
出来る | できる |
問合せ/問い合せ/問合わせ | 問い合わせ |
通り | とおり/どおり |
時 | とき/どき |
何処 | どこ |
所/処 | ところ/どころ |
伴い | ともない |
共に | ともに |
捉える | とらえる |
取扱/取扱い | 取り扱い |
無い/無く | ない/なく |
尚 | なお |
尚更 | なおさら |
中々 | なかなか |
何故 | なぜ |
等 | など |
何卒 | 何とぞ/なにとぞ |
成る | なる(「~になる」の場合) |
何等/何ら | なんら |
甚だ(しい) | はなはだ(しい) |
一つ/1つ | ひとつ |
一つ一つ/1つ1つ | ひとつひとつ |
方 | ほう(「~のほう」の場合) |
他 | ほか |
程 | ほど |
程々に | ほどほどに |
殆ど | ほとんど |
先ず | まず |
益々 | ますます |
又(は) | また(は) |
全く | まったく |
迄 | まで |
滅多に | めったに |
滅法 | めっぽう |
若しくは | もしくは |
持つ | もつ (人が持つのではなく、事物が備える場合) |
以って | もって |
尤も | もっとも |
専ら | もっぱら |
下で | もとで |
元に/基に | もとに |
者/物 | もの |
最早 | もはや |
易い/易しい | やすい/やさしい |
故に | ゆえに |
行く行く | ゆくゆく |
良い/善い | よい |
様に/様な | ように/ような |
因って/依って/拠って | よって |
余程 | よほど |
訳 | わけ |
僅か | わずか |
私達 | 私たち |
割りと | わりと |
我/我々 | われ/われわれ |
なお、業界ごとの慣習、読者対象の違いによって、ルールを少し調整することがあります。
キャッチコピーやビジュアル制作などでは、文字の「おさまり感」やインパクトを優先し、あえて漢字で書く場合もあるでしょう。このあたりは柔軟に判断してかまいません。
運営上は、文章の「まとめ役」や「校正係」をきちんと置き、表記を整備するのがもっともよい方法です。それがむずかしい場合でも、複雑すぎないルールを設けて関係者に共有することが、文章の読みやすさ、ひいてはユーザー満足の向上に役立ちます。
さらに「マイルール」にもとづいて書くことも
一般的 | マイルール |
---|---|
後/後で | あと/あとで |
表す/現す | あらわす |
上で | うえで |
上手く | うまく |
面白い | おもしろい |
極めて | きわめて |
細かい/細かく | こまかい/こまかく |
様 | さま |
過ぎる | すぎる |
大変 | たいへん |
確かに | たしかに |
次いで | ついで |
使う/遣う | つかう |
作る/創る/造る | つくる |
付ける | つける |
続き/続く | つづき/つづく |
繋がる | つながる |
直す | なおす |
中 | なか |
何 | なに |
何となく | なんとなく |
温い | ぬるい |
後ほど | のちほど |
挟んで | はさんで |
初め/始め | はじめ |
久しぶり | ひさしぶり |
久々 | ひさびさ |
一人/独り | ひとり |
二つ | ふたつ |
紛らわしい | まぎらわしい |
真面目に | まじめに |
基づく/基づいて | もとづく/もとづいて |
難しい | むずかしい |
最も | もっとも |
柔らかい | やわらかい |
分かる/判る/解る | わかる |
私 | わたし |
個人的に、ブログ、フェイスブック、ツイッターなどでは、記事や書籍を書くときに比べて、もう少しひらがなを多く使います。上記は、それらを「マイルール」としてまとめたものです。
カジュアルなコミュニケーションでは、やわらかな表現とあわせて、ひらがながいっそう受け入れられやすいようです。字面(じづら)の好みなどもあるので、適宜、参考にしてみてください。
また、たとえば「まじめさ」や「頑固(がんこ)さ」をパーソナリティとして表現したい場合や、商品やサービスのテイストによっては、漢字を多めにしたほうが雰囲気が出ます。「コツ」「ブレ」「ミソ」といった強調したい言葉をカタカナにしたり、オノマトペ(擬音語や擬声語)にカタカナを使うと、よい意味での「軽さ」や「ポップさ」が演出できます。
読みづらい漢字をひらがなで書くことを基本としながら、別の次元として、パーソナリティやキャラクターにもとづいて表現や字面を選ぶことは、読み手の心を動かすための大切な工夫です。
参考:紙媒体の状況
新聞社や通信社では、日本新聞協会がまとめた「新聞常用漢字表」をもとに、各社で少し調整したルールを設けています。書籍や雑誌は、出版社でルールやガイドラインを設けている場合もありますが、編集者の裁量に任される部分も大きいようです。
おおむね、紙媒体では時代とともにひらがな表記が増えています。読みづらい漢字はなるべくひらがなで書いたり、ことわざ、四字熟語、専門用語などで難解な言葉には読みがなやルビを振る傾向があります。ウェブサイトもこのような方針に準じて、読み手の視点から漢字とひらがなを適切に使い分けるのが望ましいといえます。
以下、文章を書くうえで参考になる資料を紹介します。特に、共同通信社の『記者ハンドブック 第12版 新聞用字用語集』は、多くのプロが「よりどころ」にしている本であり、手元に一冊置いておくことをおすすめします。
- 常用漢字表(文化庁)
http://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/kokujikunrei_h221130.html - 共同通信社『記者ハンドブック 第12版 新聞用字用語集』
http://www.amazon.co.jp/dp/4764106191/ - 朝日新聞社『朝日新聞の用語の手引』
http://www.amazon.co.jp/dp/4022289155/ - NHK放送文化研究所『NHKことばのハンドブック』
http://www.amazon.co.jp/dp/4140112182/
なお、特に民放のテレビ番組のテロップでは、紙媒体の経験則があまり生かされておらず、「出来る」「時」「事」「全て」などの表現をよく見かけます。少し注意して観察すると、テレビ番組を別の視点でも楽しめるでしょう。
公文書については、内閣訓令第1号「公⽤⽂における漢字使⽤等について」(PDF)という要領がありますが、上記で示したルールや一般的な紙媒体のルールとは少し異なるようです。短い内容なので、ひととおり目を通しておいてもよいでしょう。
まとめ
漢字とひらがなを適切に使い分けるには、個人として、
- 日ごろから、適切な使い分けを意識して文章を書く
- 読みづらい漢字は、なるべくひらがなで書く
といった心がけはもちろん、ウェブサイトの運営上は、
- 複雑すぎないルールを関係者で共有する
- できれば、文章の「まとめ役」や「校正係」を置き、きちんと整備する
のがよいでしょう。
適度にひらがなの多い文章からは、なんとなく読み手への気づかいが感じられるものです。読みやすさ、堅苦しくない雰囲気などの具体的なメリットがあるだけでなく、文章の裏側にある「配慮」が読み手にじんわりと伝わり、文章の価値や信頼感をいっそう高めることにつながるでしょう。
このコーナーのコンテンツは、KDDI提供の情報サイト「はじめてWEB」掲載の「エキスパート(専門家)コラム」の情報を、許諾を得てWeb担の読者向けにお届けしているものです。
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