いちばんやさしいコンバージョン最適化の教本(全7回)

KPIツリーの作り方とは? KGIの設定からKPIへの分解までわかりやすく解説 #5

コンバージョン最適化に欠かせない「KPIツリー」をどのように作るかを説明する。(第5回)
いちばんやさしいコンバージョン最適化の教本

この記事は、書籍『いちばんやさしいコンバージョン最適化の教本』の一部をWeb担向けに特別にオンラインで公開しているものです。

このレッスンでは、コンバージョン最適化に欠かせない「KPIツリー」をどのように作るかを説明します。KPIツリーは「1つのKGI」と「複数のKPI」でできています。慣れればそれほど難しくないので、まずはぜひ実際に手を動かして作ってみてください。

Chapter 4 サイトのタイプ別にKPIツリーを考えてみよう
Lesson 17 [KPIツリー]
KPIツリーの作り方を理解しよう

○KPIツリーはKGIとKPIで成り立つ

KPIツリーはKGIとKPIで構成されており、KGIを頂点に置きます。KPIはKGIを分解して出てきます。

KPIツリーは、KPIのどれかを向上させれば最終的にKGIも向上することを図示したものです。上から順に1つずつ構成する要素に分解することでツリーを書き出せます。

ここでECサイトを例に考えてみましょう。KGIは「売り上げ」とします。売り上げを要素に分解すると、図表17-1のように「訪問者数」「購入率」「注文単価」となり、これらは掛け算で表せます。つまり売り上げを増やすにはこの3つのKPIのどれかを増やせばいいのです。また、「訪問者数」を分解してみると、「新規訪問者数」と「リピート訪問者数」になり、こちらは足し算で表せます。訪問者数を増やすにはこのいずれかを増やせばいいとわかります。

このように、KPIツリーは「いちばん上のKGIを向上させるには、何を増やせばいいのか」を見えやすくするものなのです。

KPIツリーはKGIを分解したもの [図表17-1]

○KPIツリーの基本的な作り方

ではこのKPIツリーをどうやって作るのか見ていきましょう。

まずKGIを1つ決めてください。ECサイトなら「売り上げ」、月額課金サイトなら「有料会員数」など、第3章を参考に「キメ」ましょう

そしてKGIを頂点に置き、どのような要素に分解できるかを考えてみてください。それがツリーの下に書き足していくKPIです。要素分解といっても難しく考える必要はありません。分解の方法は、「ユーザーをセグメントに分解するか」と「行動を分解するか」の2パターンです。

具体的には、前述のようにユーザーセグメントを「新規訪者」「リピート訪問者」に分解できます。この場合は「足し算」の分解です。新規訪問者の売り上げとリピート訪問者の売り上げを足せば全体の売り上げになりますね。

行動の場合、訪問者のうち買った人の割合(購入率)と、買った場合の注文単価とに分解できます。この場合は「掛け算」の分解です。訪問者数、購入率、注文単価をそれぞれ掛けることで全体の売り上げになります。

足し算と掛け算でできているので、分解の順序は結果に影響しません。考えやすいところから分解してみてください。

○単位が明確でなければ単位を設定する

KPIツリーを書くときは「単位」に気をつけましょう。数学的な話になりますが、KGIを分解してツリーを作っていくうえで、単位をそろえることはとても大切です。単位をそろえずに分解してしまうと、あとあと辻褄が合わなくなってしまいます。

売り上げなら「円」、有料登録者数なら「人」が単位になりますね。足し算への分解は以下のように同じ単位になります。

新規訪問者の売り上げ(円)+リピート訪問者の売り上げ(円)

一方、掛け算への分解は以下のように異なる単位になりますが、結果は分解元の単価と同じになります。

訪問者数(人)×購入率(パーセント:単位なし)×注文単価(円)

では例えば目的が「ロイヤリティを高める」のようなコミュニティサイトではどうしましょうか? この場合、「ロイヤリティ度」という架空の単位があるものとして分解を考えてみてください。何か特定の行動をとると「ロイヤリティ度」が3点増えた、などと考えていけば、ロイヤリティ度を数値化できます。

KPIツリーに分解するときの注意点 [図表17-2]

○ツリー構造への分解

KPIツリーを作るときは、単位に注意しながら、KGIを順番に足し算と掛け算の要素に分解していきます。コンバージョン最適化は「より多くのユーザーに、望ましい行動をよりたくさんとってもらうこと」なので、ユーザーの分解が足し算になり、行動の分解が掛け算になります

したがって、足し算はユーザーセグメントへの分解を考えることになります。典型的な分解例は、図表17-3のように、売り上げを「新規訪問者」「リピート訪問者」の2つのセグメントの合計(足し算)に分解することです。ほかにも購入した商品で分解したり、性別や年代で分解したりすることもあるでしょう。分解の切り口の見つけ方は第6章で詳しく見ていきます。分解後は、単位がそろっていること(人数で数えられるか)と分解後のセグメントに重なりがないか、漏れがないかをチェックしてください。

掛け算になる「行動の分解」は少しわかりにくいかもしれません。図表17-3のように「全体のうちどのくらいの割合の人が行動したか?」「1回の行動に対しての価値はどのくらいか?」を考えるのが掛け算分解の基本です。

購入者数=訪問者数×購入率
売り上げ=購入者数×客単価

このように、サービスやビジネスの構造に基づいて分解しましょう。掛け算に分解する場合、分解対象と掛け算の結果で単位が同じでなければいけません。複雑ですが数式で表現すると、売り上げ(円)であれば、「人数(単位は「人」)×単価(単位は「円÷人」)」のように、「円=人×円÷人」という関係が成立している必要があります。掛け算分解が正しくできているかは単位に注目するとチェックしやすくなります。

「足し算分解」と「掛け算分解」の例 [図表17-3]

実際に自分で分解してみるとよくわかりますよ!

○セグメント分解はデータ分析から行う

足し算分解(セグメント分解)における分解の切り口は、デバイス別、流入元別、訪問回数別、あるいは注文回数や特定の行動の実施有無など、さまざまに考えられます。

データ分析を行うことで、どのような切り口への分解が妥当かを探索/発見できるでしょう。

また、例えばブランド別にユーザーセグメントを分解したときに「特定のブランドだけ購入率が高い」など、あるKPIの値に大きな差がある場合は、良いセグメント分解ができている可能性が高いです。「なぜこのブランドは購入率が高いのか?」をさらに分析していくことで、そこから改善のためのヒントが得られるかもしれません。

サイトを運営していると「この切り口で分析してはどうか」という直感が働くこともあると思います。こうした直感を仮説として、データ分析から検証していきましょう。こちらも詳しくは第6章で説明します。

セグメント分解の妥当性を考える [図表17-4]

ワンポイント
マーケティングオートメーションツールでは架空の単位が使われている

マーケティングオートメーションツールには「スコアリング」という概念があります。これは実質的にユーザーの「エンゲージメント度」という架空の単位をサイト運営に導入していることと同じです。ユーザーが特定の行動をとると、その行動にひもづく「エンゲージメント度」が加算されるという考え方を取り入れることで、コンバージョン行動にまだ至っていないユーザーの状態を数値化しています。

必要に応じて自社サイトにとって考えやすい単位を設定し、取り入れていきましょう。

エンゲージメントというと曖昧でよくわからない印象を受けますが、サイト内の行動を点数化することで、抽象的な概念も数値として表現できます。

○厳密に数値化できなくてもOK

KPIツリーを作るには、どうしても数式がついてくるので、なんだか難しく感じてしまうかもしれません。でも実際はある程度ざっくりした分解の仕方からスタートしても大丈夫です。

例えば、購入率を高めることを考えるとしましょう。足し算分解、掛け算分解どちらが考えやすいでしょうか? 足し算なら「うまいユーザーセグメントの切り口」を探してみてください。掛け算なら「どうすれば購入率が上がるか」を考えてみましょう。ここでは後者を選択したとして、「サービスの理解度を高められれば購入率が上がるだろう」「サービス理解度を高めるにはサービスを説明するコンテンツをたくさん見てもらえばいいだろう」というように購入率向上の仮説を立てます。

続いてこの仮説をKPIツリーとして表現します。簡単に書き出すと図表17-5のようになります。

掛け算の分解をもう少し厳密に表現しようとすると、例えば次のような数式になります。

向上する購入率=サービスの理解度×サービス理解度あたりの向上購入率
サービス理解度=1人あたりの特定ページ閲覧PV数

しかし実際は、ここまで厳密に数式化する必要はありません。

①購入率を上げるにはサービス理解度を高める
②サービス理解度を高めるにはサービス説明ページをたくさん見てもらう

という2つの仮説がKPIツリーとして記述されていれば十分です。

購入率と2つの仮説例 [図表17-5]

数式として厳密に考えることよりも、仮説の構造を明らかにすることをめざしてKPIツリーを作りましょう。

○KPIツリーも仮説の1つ

これまで述べてきた流れでKPIツリーの作成を進めていくと、KPIを分解した結果はあくまでその時点での仮説であり、適宜見直しが必要であることがわかります

売り上げ=訪問者数×購入率×注文単価

という分解を見直す必要はありませんが、例えば前節で購入率の分解として採用した以下2つの仮説は、施策を実施して検証してみないと妥当かどうかわかりません。

  • サービス理解度が高まれば購入率が上がる
  • 説明ページ閲覧数が上がればサービス理解度が高まる

この仮説の妥当性は、実際にプロジェクトレイヤーの取り組みをとおしてはじめてわかってきます。また、予期せずわかったことからツリー構造を見直す必要が出てくることもしばしば起こります。

そのため、1つずつ仮説の妥当性を厳密に確認するよりは、いったんこの状態でプロジェクトレイヤーに進めてしまい、必要に応じて適宜見直していくという前提で進めるほうが効果的だと覚えておきましょう。

ここまででコンバージョン行動の構造の考え方は一通りの説明を行いました。続いては具体的なサイトの種類に応じてどのようになっていくかを見てみましょう。

ワンポイント
仮説が可視化できればOK!

KPIツリーは、必ずしも厳密に足し算と掛け算を表現しなくても描けます。ある指標を改善するうえで効果がある指標は何かということ(仮説)が可視化されていれば、KPIツリーの最低限の役割は果たします。

そのため、KPI同士の関連性を明確に足し算と掛け算で表現できないときは、図表17-5のように親子関係がわかるようにツリー構造が書かれていればOKです。

KPIツリーは、どのようなロジックでKGI/KPIが改善されていくはずなのかという仮説を表現したものなので、コンバージョン最適化のキモである「自分のやっていることを見失わない」ことが担保されていれば多少粗くても大丈夫です。

  • 著者:深田 浩嗣
  • 発行:株式会社インプレス
  • ISBN:978-4-295-00015-0
  • 価格:1,780円+税

いちばんやさしいコンバージョン最適化の教本
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ECサイトだけでなく、コーポレートサイトやコミュニティサイトなど、どんな種類のサイトでも必ずコンバージョンを改善するためのPDCAの考え方などを丁寧に解説しています。

KPI/KGIの適切な定め方、課題の抽出方法、施策の優先順位の付け方なども実践的に紹介しているので、本書を読めば自社サイトを改善する具体的な道筋がハッキリ見えるはずです。

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