AIによってUXデザインにどのような変化が起きているのか? 3つの事例で解説(前編)
この記事は、リクルートテクノロジーズの許諾を得て、転載した記事です。
こんにちは。サービスデザイナー反中(たんなか)です。
去る4月22日(土)に、「人工知能(AI)という技術発展が、UXデザインの領域にどのような変化をもたらしているのか」というテーマについて考える、「AI eats UX」と題したイベントを開催しました。
イベントの概要については、connpassのイベントページから見られます。
https://uxtokyo.connpass.com/event/52556/イベント開催の背景
私はリクルート以前の経歴も含めて10年ほど「ユーザビリティ」や「UX」という分野で仕事をしてきました。
その中で特にここ数年、「ビッグデータ」「機械学習」「AI」「bot」といった技術の実用化が進んだことで、UXデザインにおける仕事内容や価値の源泉が大きく変わりつつあるのではないか、ということを課題意識として感じていました。
(リクルートでのBIGDATA×UXの取り組みについては以前書いたブログ記事も参照ください)
そんな背景で、ちょうど同じような課題意識を持っていたUX Tokyoの前田俊幸さんとともにイベントを企画し、実行しました。
※もともと個人的な動機で企画を考え始めたものなので、個人的な活動としてやろうとしていたのですが、社内で相談したところ、会社の協賛という形で色々と支援してもらいました。いい会社です笑
当日は土曜日にも関わらず50人以上の方に参加いただき、それぞれの専門領域もデザイナー、エンジニア、マーケター・事業企画など幅広く、このテーマに対する関心の高さを感じました。
課題提起~なぜ”AI eats UX”なのか?
オープニングでは、私自身がイベント開催の動機と課題意識についてシェアしました。
前職時代に関わっていた“伝統的”UCDから、最近リクルートで実際に「ゼクシィ」や「カーセンサー」といったサービスのUXデザインにおいて、ビッグデータや機械学習を用いた機能開発を行っているという実際の体験をもとにして、以下のような問いを立てました。
- (機械学習を含む広義の)AIによって、UXデザインにどのような変化が起きているのか?
さらに以下のスライドのように、やや挑発的なトーンで3つの問いを投げかけてみています。こうした問いを補助線として、今起きている変化を、様々なUXデザインの現場からの実例をもとにして考えてみたい、というイベントの動機について説明しました。
UXデザイナーとデータサイエンティストの理想的なコラボとは?
前半は、実際のウェブサービスにおけるAIの活用事例についてのセッションを中心とした構成としました。
1つ目のセッションでは、リクルートマーケティングパートナーズの木村憲仁さんと弊社のビッグデータ部に所属している白井祐典が、中古車情報サイトの「カーセンサー」においてディープラーニングを用いたUX改善の事例について語ってくれました。
カーセンサーでは画像解析を用いて、「内装検索」(内装の色から車を絞り込める機能)および、「車種判別」(街で見かけた車の写真から車種を特定してくれる機能)という2つの機能が搭載されています。
この開発を通して学んだ「UXデザイナーとデータサイエンティストがコラボレーションするために大事なこと」として、
- UXデザイナーは、ほしいアウトプット(作りたい体験)を明確に定義して要求する
- データサイエンティスト側も、事業・サービスを理解して当事者として関わる
という点が挙げられており、非常に参考になる話でした。
AIによる記事自動生成は、新聞記者との共存共栄を目指す
続いて、日本経済新聞社の澤紀彦さん・吉村大希さんから、AIを活用した記事自動生成の事例について語ってくれました。
こちらは「完全自動決算サマリー」というサービスで、日経電子版のサイト(http://pr.nikkei.com/qreports-ai/)上でもリリースが見られます。
各企業の決算短信から「重要」と考えられる文章を自動で判定し、それをもとにしてサマリー記事を生成する、という仕組みなのですが、文章の重要度を判定するアルゴリズムのチューニングにかなり苦労したという裏話が語られました。
また、「AIによる記事自動生成は、決して新聞記者の仕事を奪うものではない。むしろ新聞記者がより付加価値の高い取材や記事執筆に注力してもらうための『共存共栄』を目指している」という話が非常に印象的でした。
チャットボット「パン田一郎」が目指す「親密感」のデザイン
事例パートの最後のセッションは、リクルートジョブズのUXデザイナーの福田基輔さんによる「パン田一郎」(LINE上のチャットボット)の話でした。
パン田一郎はスタンプなどでも話題になっているため、ご存知の方も多いかと思います。このパン田一郎について、リリース以来、会話エンジンを継続的に改善し、より賢いチャットボットを目指しているという話が共有されました。
福田さんによると、チャットボットは一般的に「タスク型←→非タスク型」と「頻度高←→頻度低」の2軸で分類されますが、パン田一郎は「非タスク型×頻度高」のポジショニングであり、そこではKPIとして「どれだけ会話を続けてもらえたか」を重視している、という話がされていました。
また、現在のAIの技術ではユーザからのあらゆる発言に対して完璧な返答を返すのは難しいため、そんな中で使ってもらうためには「親密感」の醸成が大事だという話でした。
ユーザに「まぁ仕方ないか」と許される体験をいかにデザインするかが、チャットボットにおけるUXデザイナーの仕事であり、存在意義である、という話が印象的でした。
前半3つの事例セッションはいずれも聴衆が集中して耳を傾けている様子が見て取れ、質疑応答も活発に盛り上がりました。
リクルートグループ以外でも、日経新聞のような大手サービスにおいて、AI・機械学習がすでにリアルに活用されている、ということがビビッドに感じられ、個人的にも改めて刺激となりました。
後半のセッションについては、エントリーを分けてお送りいたします。
この記事は、リクルートテクノロジーズの許諾を得て、転載した記事です。オリジナル記事はこちら:AIとUXについて考えるイベント「AI eats UX」を開催しました(前編)
ソーシャルもやってます!