優れた顧客体験とは、適切なコンテンツを、適切なタイミングで顧客一人ひとりに提供すること

デジタルマーケティングに取り組む担当者が顧客体験向上のために何をするべきか。Adobe Summit 2017で語られた内容をレポートする。

ブランド(企業)が優れた顧客体験を提供するには、適切なコンテンツを適切なタイミングで、顧客一人ひとりに提供しなければならない。しかも、さまざまなタッチポイントにアクセスする顧客を同一人物と認識し、対応しなければならない。マーケターはいかに顧客が満足する水準まで体験の価値を高め、ビジネスに貢献すればいいのか。

この記事では、米国で2017年3月に開催されたデジタルマーケティングの大規模セミナーイベント「Adobe Summit 2017」の基調講演やブレイクアウトセッションで議論されていた内容を振り返りながら、デジタルマーケティングに取り組む担当者が顧客体験向上に向けて何をするべきか、Adobe Systems(以降、アドビ)がブランド(企業)をどのように支援するつもりなのかを見ていく。

優れた顧客体験で競合と差別化する4つのポイント

優れた顧客体験を提供し、競合と差別化するためには、4つのポイントがある。

初日の基調講演に登壇した米アドビ システムズのブラッド・レンチャー(Brad Rencher)氏は、上記のように述べ、4つのポイントについて説明した。

ブラッド レンチャー
デジタルマーケティング事業部門担当のエグゼクティブバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャー

まずコンテキストから考える

優れた顧客体験に、コンテンツは欠かせない。そのコンテンツを設計するとき、まずはコンテキスト(文脈)から考える必要があるとレンチャー氏は言う。

たとえば、今日、取引先の役員と会ってビジネスの話をしたとする。しかしその役員に明日、プライベートな場で会ったとしても、ビジネスの話はしないだろう。ビジネスな場、プライベートな場によって、そこで話される内容は異なるからだ。

このように、文脈に応じたコンテンツを作る必要がある。それを実現するためには、コンテキストに応じたカスタマージャーニーを設計する必要があるという。

スピードとスケールに合わせて設計

次に、作ったコンテンツを、どのように顧客一人ひとりに届けたらいいだろうか。

たとえば、顧客によっては文章のコンテンツより映像のコンテンツが好きな場合もあるだろう。デバイスやチャネルによって最適な表示が求められ、ときには言語変換が必要な場合もあるだろう。

このように顧客へ最適なコンテンツを届けるためには、コンテンツ制作と配信の仕組み(サプライチェーン)全体を見直す必要があるという。

カスタマージャーニーを作るのはミリ秒

顧客体験は、ミリ秒の意思決定の積み重ねで成り立つと言えるだろう。

たとえば、製品購入後、不具合がありメーカーへ問い合わせたとしよう。解決に至るまでに、いくつもの部署をたらい回しにされ、最初から同じことを説明しないといけないという経験をしたことはないだろうか。

チャネル、デバイス、関係部門が増えれば増えるほど、企業と消費者とのやり取りの履歴を正確に把握することが難しくなる。しかし、企業は、顧客との接点が複雑になったとしても、ほぼリアルタイムに適切なコンテンツを消費者に提供しなければならない

イノベーションで連携

企業と顧客との接点が多岐にわたる場合、一貫した顧客体験が提供できないことがある。一貫性がない理由は、組織、チャネル、テクノロジーの分断(サイロ)に原因があると言っていいだろう。

裏を返せば、企業が優れた顧客体験を提供するには、テクノロジーの連携で分断を解消すれば良いのだ。

レンチャー氏はこれら4つのポイントを説明し、最後に今回発表にされた「Adobe Experience Cloud」の狙いについて言及した。

企業がこれら4つのポイントを達成し優れた顧客体験を提供するには、テクノロジーが必要になる。さまざまなチャネルやデバイスを連携させる基盤を提供し、その基盤を基に、イノベーションを起こそうという企業を支援をするのが、Adobe Experience Cloudの役割なのだ(レンチャー氏)。

コンテンツ戦略でコンテキストとリアルタイム性が重要になる理由

次に、アドビ デジタルインサイトのプリンシパル・アナリストを務めるタマラ・ガフニー(Tamara Gaffney)氏とコンステレーションリサーチのCEOレイ・ワング(Ray Wang)氏が登壇したブレイクアウトセッション「Adobe Digital Insights による未来のトップ10予測(Adobe Digital Insights top 10 predictions for the future)」で語られた内容を解説していく。

コンテンツ戦略なしには、顧客体験の向上は語れない。そこで重要となるのが、次の2つだ。

  • 顧客のコンテキストを理解すること
  • モバイルファーストでリアルタイムに情報提供をすること

登壇したガフニー氏とワング氏は、上記のように述べ2つの事柄について説明した。

顧客のコンテキストを理解する

企業が消費者を正しいカスタマージャーニーに導く鍵は、コンテキストを理解することにある」とガフニー氏とワング氏は指摘する。

マーケティングにおけるコンテキストとは、顧客を取り巻く「背景」、置かれている「状況」、やり取りにおける「前後関係」などを指す。端的に言って企業は「空気を読む」ことが求められる

リアルな場面ならば、相手が見える。そのため、その場で相手が必要としていることを察して、対応することも比較的容易だ。

しかし、デジタル環境では、相手の姿が見えず相手が誰なのかさえもわからない。見えない相手とやり取りをする際に「何を手がかりにすればいいのかわからない」というのが多くの企業の正直な意見ではないだろうか。

こうした疑問に応えるため、ワング氏はコンテキストを構成する重要な9つの要素を説明した(図1)。

図1:コンテキストを構成する9つの要素
出典:Adobe Systems

9つの要素のなかで、わかりやすいのは「場所」「天気」だろう。

たとえば、「場所」のコンテキストを考えてみよう。ロケーション情報をアプリやWebサイトの運営者に開示することを許可しているユーザーには、その場所に特化したコンテンツを提供できる。

「天気」は、小売ビジネスに非常に大きな影響を及ぼす可能性がある。たとえば、街を歩いていてにわか雨に見舞われたとき、傘を売っている場所をスマートフォンが教えてくれたらどうだろう。さらに、会員プログラムでロイヤルティのステータス管理を行っていれば、顧客の関心が高い事柄をおすすめできる。

このようなコンテキストを活用する例は、顧客を取り巻く状況をデータで入手し、データを基に適切なコンテンツを提供するということに他ならない。

モバイルファーストでリアルタイムに情報提供をする

次に、前述のレンチャー氏の講演で語られていた「ミリ秒」について、「スマートフォンの急速な普及が背景にある」とガフニー氏とワング氏は言及する。

これまでの顧客体験の設計では、デジタルに関してはWebだけを見ていればよかった。しかし、スマートフォンの登場によって、消費者の行動は変化した

図2を見ると、米国では2015年から2016年にかけて、金融、小売、メディア&エンターテイメントなど、消費者と関わるさまざまな業種でWebサイトに滞在する時間が減少している。

図2:Webサイトでの滞在時間の推移
出典:Adobe Systems

消費者とのデジタル接点でのやり取りが相対的に減少したわけではない。PCとスマートフォンが消費者の時間を奪い合うようになった結果、多くの消費者がスマートフォンを選ぶようになったのだ。

「企業はモバイルファーストを重視すべき」という意見は、データが示すような消費者のスマートフォンシフトを踏まえてのものだ。そして、モバイルでの消費者の体験で課題になるのが、最初の数秒でいかに顧客から支持を得るかだろう。

ワング氏は、「最初の数秒でアプリユーザーを引き付けないといけない。これがモバイルの世界での時間感覚であり、失敗すれば待っているのは離脱だ」と述べた。

「企業にとっては、誤った対応が一度も許されない厳しい時代が到来している。Webだけを監視していればよかった時代と比べ、モバイルではさらにリアルタイムな対応が求められている。Web/モバイル環境でのカスタマージャーニーの設計は複雑になり、どちらの環境からのアクセスでも消費者を正しく理解し、コンテンツを提供しなくてはならない」とガフニー氏とワング氏は述べ、講演を締めくくった。

最後に:
Adobe Experience Manager 6.3の最新版で強化されたFluid Experience(柔軟な顧客体験)

Adobe Summit 2017を通じて強調されていたのは、優れた顧客体験があって、ビジネスが成り立つということだ。

優れた顧客体験を提供するには、「顧客にとって適切なコンテンツを、適切なタイミングで提供する」というコンテンツマーケティングが欠かせない。

今回発表された、デジタル領域の顧客体験を管理するソリューション「Adobe Experience Manager」の最新版では、「適切さ」の水準を高めたという。アドビは、Adobe Experience Manager 6.3の最新版をリリースするにあたり、ブログに投稿した記事で「Fluid Experience(柔軟な顧客体験)」について言及した。

Fluid Experience(柔軟な顧客体験)とは、刻々と変化する消費者一人ひとりの状況(コンテキスト)に応じたコンテキストドリブンの体験のことを指す。

スマートフォンやタブレットだけでなく、IoTデバイスやVRが顧客とのタッチポイントに加わると、カスタマージャーニーは単線的なものではなく、タッチポイント間を行ったり来たりする流動的なものに変化する。そうなると企業は、朝はスマートフォンから、夜はタブレットから接点を持った消費者を同一人物と認識しなければならない。また、その消費者に対し、各デバイス上の行動履歴を引き継いだ対応をしなくてはならない。

このような対応を実現するには、過去の対話の文脈(コンテキスト)を記憶する必要がある。消費者と企業の各デバイス上やり取りは、徐々に会話に近づいていくだろう。

今まで以上にきめ細かな顧客の理解を助けるのが、人工知能とマシンラーニングのフレームワークとなるAdobe Senseiである。

Fluid Experience(柔軟な顧客体験)の狙いは、ソーシャルメディアや各種デバイスなど、インターネットに接続したあらゆるスクリーンを通して、企業が消費者の求める体験を提供できるよう支援すること。ソリューションとしてのFluid Experience(柔軟な顧客体験)は、Adobe Senseiを基盤とし、Adobe Experience Managerの機能として提供される。

今後もアドビは、Adobe Experience Managerに関連するものに限定することなく、Adobe Senseiを基盤とする100以上のインテリジェンスソリューションをリリースしていく見通しだという。

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