「先まわり力」を駆使してメールを送る前にシナリオをつくり、一番効果的なタイミングで送信する(全6回の2)
この記事は、書籍 『仕事が速い人はどんなメールを書いているのか』 の内容の一部を、Web担向けに特別にオンラインで公開しているものです。
今回の記事は、第2章 「目的を意識しながら書く」 より抜粋
メールを送る前にシナリオをつくる
仕事が速い人とそうでない人では何が違うのか。
私が一番のポイントだと感じているのは、前章でもふれた「先まわり」の力です。
先まわりができれば、送ったメールに相手がどんな反応をするのか、どんなアクションを起こすのか、想像することができます。
なぜ、それができるのでしょうか。
仕事が速い人は、頭の中で「シナリオ」を組み立てて、仕事の全体像を俯瞰しているからです。だから、どんなアクションも後手に回ることなく、漏れなく対応できるのです。
シナリオとは、最初のアクションから作業終了(クロージング)までの具体的なステップのことです。
次の図を見てください。例えば、ある商品・サービスを薦める場合、こんなシナリオが考えられるのではないでしょうか。
このように、先々のことが見えていれば、どのタイミングでどんなメールを書けばいいのかがわかるでしょう。
ところがシナリオが描けていない人は、上司から言われて初めてアクションを起こします。
「あの件、どうなってる?」
「まだ、返事がないです……」
「じゃあ、もう1回メールするか、電話しておけよ」
「わかりました。しておきます」
こんな感じでしょうか。
仕事の進行を自分がコントロールしているという意識がないのかもしれません。
こういう人は、相手から返信がないと、すぐにあきらめてしまう傾向があります。
実際に送ったメールを見ながら書き方を指導する研修で、「この後、どんなメールを送ったんですか?」と聞くと、ほとんどの人が「返事がなかったので何もしていません……」と答えるのです。
これではもったいない。
相手はこちらが送ったメールを読んでいないかもしれません。
あるいは、読んだけれど、忙しくて返信するのを忘れているのかもしれません。
もしくは、返事をもらっているのに、こちらが見逃しているのかもしれません。
それなら、きちんと働きかければ、次のステップにつながるはずです。
この章のテーマをもう一度思い出してください。
メールは「目的」があって送るものでした。ですから、目的が達成されなかったときには、何らかのフォローをしなければいけません。
もし、相手から返事がこなかったら、改めてシナリオを確認して、次の打ち手(行動)を考えましょう。
先述の図の例なら、「面談の依頼」を送って返信がこなかった場合、イメージしていたものと違っていたのか、「トライアル」で何か問題があったか、そもそも忙しくてメールを読んでいないのか、いくつかの選択肢が予測できるはず。
それならそれで、次に送るメールの内容が見えてきます。
シナリオは、仕事を進めるにあたって「地図」のような役割を果たすもの。
問題が起きたときに、どこに向かうか再確認するためにも、事前に描いておくことをおすすめします。
先まわり力を駆使してメールを書く
先ほど、仕事が速い人は「先まわり力」があると書きました。それは、仕事全体に関してだけではなく、1通のメールを作成するときにも発揮されます。
メールを書くときに、そのメッセージを相手がどう読むのか、どう感じるのかを想像してみる。その上で、相手が感じるであろう疑問を察して、その疑問を解消するような一文を入れておく。
「あの人なら、きっとこんな質問をしてくるだろうから、補足しておこう」
「新規のお客様だから、この部分は詳しく説明しておこう」
こんなふうに、相手の心の動きを想像しながら、うまく理解できるように誘導していくのです。
仕事が速い人は、メールが一方的な伝達になりやすいことをよく理解しています。だからこそ、相手が間違った理解をして、行き違いやムダなやりとりが生まれないように、十分配慮してメールを作成しているのです。
ところが、先まわりできない人は、自分の言い分だけを一方的に書いてしまいます。だから、相手が知りたい情報が抜け落ちてしまう。その結果、情報が十分盛り込まれていればされないはずの質問をされてしまうのです。
一番効果的なタイミングでメールを送る
仕事が速い人は、メールを送る〝タイミング〟にも敏感です。
「メールにタイミングなんてあるの?」と思われるかもしれませんが、お礼のメールで考えてみるとわかりやすいかもしれません。
取引先の担当者と会って、打ち合わせをしたとしましょう。このお礼をメールで送る場合、会って5日後に送っても意味がありません。
どんなに丁寧なメールでも、遅れてメールを送ったところで、「出さないよりはマシ」という程度の効果しかありません。
また、打ち合わせをした後で内容の要約を送ることがありますが、これも相手に「速いな!」と思わせられるのは、打ち合わせが終わってから、せいぜい翌日まででしょう。3~4日経ってからでは、相手の記憶もあいまいになっていますから、「こんな内容でしたっけ?」という齟齬が生まれる可能性もあります。
私がメールのタイミングをこれほどまでに重視するようになったのは、ある人のメールを添削したことがきっかけでした。
その人のメールは、100点満点に近いほど素晴らしいメールだったのですが、なぜか、仕事上の実績を残せていませんでした。
それどころか、会社からの評価もイマイチだったのです。
私は不思議で仕方がありませんでした。
「こんなにクオリティの高いメールが書けるのに、なぜ、この人は評価されていないんだろう……」
その答えは、タイミングにありました。
メールを送るタイミングがすべて「遅かった」のです。結局、その人は、仕事相手とのペースが合わず、ビジネスチャンスをことごとく逃していました。
お客様と商談をして、1週間後に初めてフォローのメールを送ったのでは、もう商品やサービスの印象は薄くなっています。
また、いくら誠意を持ってクレーム対応にあたっても、クレームを受けてから1週間後に連絡していたのでは、相手の怒りをますます増幅させるだけでしょう。
「鉄は熱いうちに打て」と言いますが、メールについても同じことが言えます。
相手の記憶がはっきりしているうちに送らなくては、どんなに素晴らしいメールを作成できても、残念な結果になってしまいます。
おおむねどんなメールでも、ベストタイミングは「翌日」まで。
例えば、打ち合わせの相手に対しては、会ったその日のうちか翌日の午前中までに、お礼とともに打ち合わせ内容の「要約」を送ります。
セミナー来場者に対するお礼も、翌日の午前中までに送ればきちんと運営している主催者なのだということが伝わるでしょう。
また、仕事が速い人は、相手の仕事の状況を推測して、どのタイミングでメールを送れば一番効果的かをよく考えています。
当然ですが、相手の業務時間が残り少ない状況でメールを送っても、すぐに目を通してもらえません。彼らは、相手が余裕をもって対応できる時間帯、曜日などを見計らってメールを送るのです。
その意味では、金曜日の夕方に送るメールは、とくに注意が必要です。
金曜日は「仕事を翌週まで持ち越したくない」という心理が働くので、無理をしてでも依頼や報告のメールを送ってから帰るという人が多いのではないでしょうか。
やり残した仕事があれば、週末に片付けて、月曜日の相手の出社時間に間に合うようにメールを送っておくというケースもあるでしょう。
その結果、月曜日の朝は受信トレイに新着メールがひしめき合っている……という事態が起きます。
相手のスキルが低い場合、扱うメールが多くなると処理が雑になる可能性があります。だから、仕事が速い人は、自分のメールが他のメールにまぎれて見落とされたり、後まわしにされたりするリスクが高まる金曜日の夕方に、重要なメールを送らないのです。
少し脱線しますが、こういった話をすると、「私は仕事のメールは週末や深夜でもチェックしています!」と言う人がいます。でも、そうした仕事の仕方は、あまりおすすめしませんし、私自身も絶対にしません。
もし、それをしてしまうと、
「この人は勤務時間外でも対応してくれるんだ」
「この会社は週末も稼働しているのだ」
というメッセージを発信してしまうからです。これは、前章で書いたように、仕事の主導権が握れていない状態です。
「いつでも対応してくれる」という認識を一度でも持たれてしまうと、そのイメージは簡単には覆りません。だからこそ、メールでの対応は勤務時間内と決めて、あえて受信メールを見ないことも必要なのです。
ところで、メールの中には、わざと返信を遅らせたほうがいいものもあります。
例えば交渉などの案件で先方が無理な要求をしてきた場合、これにすぐ返信をするのは避けたほうがいいでしょう。よく検討しないで答えを出したと思われるからです。
この場合は、すでに結論が出ていたとしても、2~3日返信を遅らせて断る。
〝熟慮〟の結果だと思わせるわけです。
また、面倒な人と距離を置きたい場合も、返信を遅らせることで、うまくフェードアウトすることができます。
私の経験で、こんなことがありました。ある人から起業についてアドバイスをしてほしいというメールをいただいたのです。
そのときは喜んで質問に答え、知っていることをお伝えしました。
ところが、質問の頻度が次第に増えてきて、かなり専門的な内容にまで及ぶようになってきたのです。好意で教えられる範囲を超えて、正直、困りました。これ以上は有料アドバイスになると伝えてもお構いなしです。
そこで、返信を3日後、1週間後……と遅くして距離を置くことにしたのです。
ちなみに、どうしても返信せざるを得ない場合は、他にも「文章をわざと堅くする」「テンプレートのような文面にする」といった方法も有効です。
このように、メールの返信は速ければいいというわけでもありません。
どのタイミングがベストなのか、「目的」と合わせて考えてみてください。
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