マーケティングオートメーションの正しい導入と間違った導入
マーケティングオートメーションの正しい導入と間違った導入

SFA/CRMブーム失敗の轍を踏まないためのマーケティングオートメーション運用体制作り

マーケティングオートメーションやそのベンダーに期待すること、導入企業はどういう体制で運用すべきかを考察
庭山一郎(シンフォニーマーケティング) 2014/12/1(月) 8:00 |
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マーケティングオートメーション(MA)は、営業案件を創出するためのデマンドジェネレーションのプラットホームになるソリューションです。BtoBマーケティングには必ず必要なツールですから、日本でも普及が進むのはすばらしいことです。連載の最後に、MAやそのベンダーに期待すること、そして導入企業はどういう体制で運用すべきかを考察します。

大事なことは、MAをどのような体制で活用するか

過去のSFAやCRMブームの際には、ブームを背景に製品を導入し、結局、営業現場の生産性の向上にあまり貢献できなかったという例を見てきました。過去の経験を踏まえ、今度のMAブームでは、実際に企業の売上に貢献できる体制を整えてほしいと考えています。

MAをプラットホームにして、営業部門や販売パートナー、自社のECサイトに良質の案件を供給する仕組みを構築することは、極めて重要なことです。私は、日本のBtoB企業にとってMAは、SFAで案件や営業を管理するよりはるかに重要で、成果を上げるものだと考えています。ただし、MAも正しく運用できなければ、逆に営業や販売パートナーの無駄な仕事を増やすことになりかねません。

MAにしてもSFAにしても、導入して運用を軌道に乗せるには、「ノウハウ」と「人」という2つの要素が必要です。

SFAのノウハウは、「営業案件を管理するノウハウと人材」ですが、これはほとんどの企業がすでに持っているものです。営業部長の仕事は部下の案件を管理することですから、方法はそれぞれでも案件を管理した経験もノウハウも人も持っているのです。だからSFAの方がまだ導入も進みましたし、営業スタッフの行動管理へと強引に舵を切れば何とか運用に乗ったのです。ただ、この副作用で「営業の仕事を増やす」という問題が発生し、SFAが営業から嫌われる最大の原因となりました。

「飴とムチ」という言葉がありますが、SFAにも「営業支援」という飴と、「営業活動や案件を管理する」というムチがあってバランスがとれるものです。しかし、MAの導入が10年遅れた日本企業の場合、ムチだけしかありませんでした。

MAの導入によって、SFAに「良い案件を営業に届ける仕組み」という側面を持たせることができて、はじめて飴とムチのバランスがとれるようになります。米国企業がMAとSFAをセットで導入する理由はこれなのです。

一方、MAのプラットホームを構築できれば、少数精鋭で売上をつくることが可能になり、SFAも営業の仕事を増やすことなく運営できるようになります。

社内にあるナレッジでは足りない

日本とマーケティング先進国である米国や英国などを比較すると、企業内のマーケティング担当者の経験や知識の差が非常に大きいことがわかります。実際、日本企業でマーケティングを担当している人の大半は、大学や大学院でマーケティングを専攻していたわけでも、社会人としてのキャリアをマーケティングの専門家として積んできたわけでもありません。

  • 展示会のブース運営を数回担当した
  • Web担当としてリニューアルを2回経験した
  • オンライン広告代理店の窓口としてSEOを担当した
  • 広報・PR部門に所属して、製品のプレスリリースと問い合わせを担当した

マーケティング担当として、上記のような業務経験を積んできた人はいるでしょう。しかし、これらの活動は見込み客データを収集する「Lead Generation(リードジェネレーション)」と呼ばれるプロセスの一部なのです。

BtoB企業のマーケティング担当者が、デマンドジェネレーション(営業案件の創出、詳細は第2回)を担当しようと思えば、この後に、名寄せ・競合排除などの「データマネジメント」、ナーチャリングのための「コンテンツマネジメント」、その反応などの行動解析に属性データをクロス分析した「アナリティクス&スコア」、そして絞り込んだ有望見込み客へのインサイドセールスからの「コール」と数多くの、しかも長期間にわたるプロセスがあります。このなかには、次のような実務があります。

  • セミナーの集客や受付け、当日の運用とアンケートの集計
  • メールマガジンの執筆と配信、配信前後のデータ管理
  • ランディングページの更新やタグの管理
  • ダウンロードコンテンツの作成や動画の編集
  • オンラインからのメルマガ登録や資料請求者、営業の交換した名刺などの新規データの取り込み

こうしたデマンドジェネレーション全般を支えるプラットホームがMAなのです。そして何より、それぞれの製品やサービスに対して、デマンドジェネレーションの仕組みを設計することがマーケティング担当者の仕事です。

そうした経験を持ったマーケティング担当者がいる日本企業がほとんど存在しない以上、MAのベンダーがBtoBマーケティングの教育・研修に力をいれざるを得ないでしょう。もちろん、そのカリキュラムはツールの操作ではなく、BtoBマーケティングを体系的に教えるべきだと私は考えています。

未経験の山に登るには良きガイドが必要

MAの導入にあたっては、「自社で新たに専従チームを作って担当する」「外部のプロ集団にアウトソーシングする」、2つのハイブリッドなどいくつかの選択肢があります。私の会社は、この外部のプロ集団に該当しますが、その使い方も企業によってさまざまです。

たとえば、外資系企業の場合、「労働基準法が厳しい日本法人の社員を増やしたくない」という本社の意向を背景にフルアウトソーシングを求めてきます。顧客側の担当者は1~2名ですが、この人たちは展示会、Web、広告、パンフレットや営業資料の作成、プレスリリース、ユーザー会の事務局などの広い範囲を担当するため、実務を行うリソースはありません。データマネジメントからコンテンツの作成、メール配信、アクセス解析からのスコアリング、ニーズを確認するためのテレコールまで、トータルで行うデマンドセンターをまるまる弊社で請け負う場合が多いのは外資系企業なのです。

一方、日本企業の場合は、やはり内製化の伝統が残っているので、「MAを購入して社内で運用したい」という方向性が強いように見えます。これはとてもよいことだと私は考えています。マーケティングのナレッジは社内にためるべき重要な経営資源であり、国内でも海外でもマーケティングなしで戦える市場はもう存在しません。

しかし、私は最初から社内だけで運用を開始することはお勧めしていません。MAを使ったデマンドジェネレーションのノウハウを持っていない企業が、最初から自社だけで運用しようとすれば、ノウハウの蓄積まで非常に遠回りするばかりか、その過程で企業の信頼を失墜するような事故やミスを頻発し、営業部門からの信用を失くしてしまうことが目に見えているからです。

内製化する場合でも、私は「最初の2~3年はプロと一緒に運営しませんか?」と提案します。BtoBのデマンドジェネレーションのプロと一緒に行うことでノウハウを吸収してもらい、そのうえで2年後に業務の切り分けを行い、社内で行う業務とアウトソースする業務に分類する。これが、日本企業が最速でMAの運用を軌道に乗せる方法だと私は考えています。

業界トップを走るEloquaへの期待

MAの発展には、1999年の製品ローンチ以来業界を牽引し、トップを走り続けてきた「Eloqua(エロクア)」(オラクルが買収し現在は「Oracle Marketing Cloud」)の功績が非常に大きいと私は思っています。しかし、いくつかの難点もありました。

まずEloquaの経営が不安定だったことです。初期のファイナンスでベンチャーキャピタルから20億円以上の出資を受けたEloquaは、投資家からのプレッシャーを受け、赤字のなかで急拡大を続けてきました。私は、Eloquaが製品発表した頃から注目し、まだ上場する前にトロントの開発拠点、ボストンのセールス&マーケティングの拠点、北米以外を統括するロンドンオフィス、そしてアジアを統括するシンガポールオフィスを訪問し、それぞれのキーマンと日本市場についてディスカッションしていますが、どこに行っても「拡大に人材が追いついていない」と感じました。

開発スケジュールも、日本市場への方針も拠点によって言うことがバラバラ。しかも人の入れ替えが激しく、人が変わると方針も180度転換するなど、非常に付き合うのが難しい企業でした。それが米国などでのパートナー離れの原因にもなっていたのです。

2012年に発表されたOracleによる買収と、マネジメントチームの総入れ替えで、今は非常に安定したと感じています。これは米国のEloquaパートナーからの評価にも反映されていて、Oracleによる買収後、離れていたパートナーが戻っている例がいくつも見られます。

Eloquaを含むMAは導入よりも運用面が難しく、パートナーには検収をゴールとする導入が得意なIT企業よりも、検収をスタートとして顧客と一緒に運用するマーケティングエージェンシーの方がふさわしく、米国でもMAの販売パートナーの多くはマーケティングエージェンシーです。Eloquaの日本展開を本格的に始めたオラクルには、こうした運用に強いパートナーネットワークを日本でも構築してMAを普及させてほしいと心から期待しています。

◇◇◇

4回の連載にお付き合いいただき、ありがとうございました。ご意見や不明な点がありましたらお気軽にお問い合わせください。

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