スマホでウェブサイトを作る人増加中! UIリニューアルのカギは「モバイル対応」 Jimdo × UX侍
Jimdo
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ドイツにあるJimdo GmbH社によって運営されている、ウェブサイトビルダーのJimdo(ジンドゥー)。日本語版はKDDIウェブコミュニケーションズが、協業パートナーとして行っている。今年の8月に編集画面のUIを大幅にリニューアルした。そのリニューアルのカギは「モバイル対応」といい、iOSアプリに続いて、Androidアプリをローンチした。日本に進出して5周年を迎え、記念イベントのために来日した、JimdoのデザイナーDetzner氏とKDDIウェブコミュニケーションズ副社長の高畑氏に話を聞いた。
KDDIウェブコミュニケーションズの顧問なのにJimdoのことよく知らなかったという体たらくですが、Detznerさんの話を聞いてJimdoのこれからスケールしていく世界観が楽しみになりました。
今回はどうしても予定がつかずお休みだったのですが、なんとアプリがあるではないですか!! 僕も色々お話お伺いしたかった……この分野は需要があると思うのでどこが勝者になるか興味津々です。
ウェブの知識がなくても無料でウェブサイトを作れる「Jimdo」
――Jimdo(ジンドゥー)を立ち上げた背景について教えてください。
Detzner私達は、もともとウェブサイト制作会社でした。仕事をしていくなかで、ウェブサイトをもっと早く構築し、効率よく更新したいというニーズを、クライアントが抱えていることを実感しました。シンプルに、簡単にそれを実現する方法を考えて、たどり着いたのが、2007年に立ち上げたホームページ作成の「Jimdo」です。
――「ホームページ」と一言でいっても幅広いと思います。どんな人に使ってもらうことを想定したサービスですか。
Detznerウェブサイトにまつわる人ならだれでも対象となるため、明確なターゲットというものはありません。実際、中小規模のビジネス、アーティスト、ミュージシャンなど幅広い人たちが使ってくれています。
――無料版「JimdoFree」と、有料の「JimdoPro」や「JimdoBusiness」がありますけど、そのユーザーの内訳とは。
高畑無料版の「JimdoFree」のユーザーが圧倒的に多く、9割近くがそうじゃないでしょうか。ビジネスのためにウェブサイトを構築する場合でも、無料版を使っていらっしゃいます。ドメイン名の価値を理解しているユーザーは、有料版を使っていらっしゃるイメージです。
森田ですよね、無料版では独自ドメイン名が使えないですもんね。有料版はビジネスユーザーが利用しているという意味では、サービスの位置づけとしては、JimdoはBtoBサービスだと考えるのがいいのでしょうか。
Detzner個人ユーザー、ビジネスユーザーといった切り口で考えずに、プロダクト全体のことを考えてサービスを作っています。でき上がったプロダクトをだれが使うかは結果論として捉えているので、あくまでも見ているのはプロダクト全体であって、特定の人のために機能を作ることはしていません。
――Jimdoはどんな規模のウェブサイトに適しているのでしょうか。
DetznerJimdoで作成されるのは、30~100ページ程のウェブサイトが多いですね。たとえば、製品サイトの「Jimdo.com」は数百ページです。1000ページを超えるようなものは、特定の機能や別途システムが必要になってくるので、「Jimdoが最適だ」とはいえないかもしれません。
森田シンプルに、「ウェブサイトを作るためのサービス」と思えばいいんですよね。コードを書かず、サーバーの契約もせずに、ウェブサイトが立ち上げられることが利用者にとってのメリットということですか。
Detznerそれもメリットの1つですね。でも最大のメリットは、ウェブの知識やスキルがいらないことです。Jimdoの社内外でも、頻繁に「スピード」という言葉を使うんですが、コードを書いたり、サーバーにインストールしたり、といった作業をいかに効率化するかも大事な指標の1つです。
ユーザーにとって使いやすいウェブサイトビルダーとは?
――Jimdoはウェブサイトビルダーですが、たとえば、企業向けCMSの入力ツールとして使われることってあったりしますか。
Detzner現状のJimdoにもCMSの側面もありますが、そこは積極的にはプッシュしていません。Jimdoは幅広いユーザーを対象にしているので、企業向けといったところに特化してサービス展開をしていくことは、今のところありません。
森田なるほど。もう少し規模が大きいエンタープライズサイトなら、Jimdoごと、より大きなシステムに取り込んで使えそうですよね。CMSの入力ツールとして上手く使えると幅が広がりそうだなと感じています。ちなみに、今の機能でデータの読み込み(インポート)とはき出し(エクスポート)はできるんですか。
高畑今はありませんが、インポートとエクスポートの機能は将来的にはあり得るかもしれません。
森田企業での導入も多いということですが、段階承認などのワークフロー機能の需要はないんですかね。
DetznerJimdoをリリースした初期には、エンタープライズのニーズもすごくあって、「ワークフロー」を入れるというような話もありました。一番議論になったのは、それを入れることで、Jimdoのコアバリューであるインターフェースのシンプルさが失われてしまうのではないか、ということでした。ですから、ワークフロー機能を搭載することはせず、あくまでユーザーにとって使いやすいプロダクトを目指して開発しています。
「趣味/仕事のユーザー」さまざまなユーザーに応えるUI設計とは?
――森田さんは、Jimdoのインターフェースを触ってみてどうでしたか。
森田インターフェースを作るうえで、アプローチが難しそうだなと思いました。Jimdoを使っているユーザーには、「趣味で使っているユーザー」と「仕事で使っているユーザー」が共存しているわけですよね。同じウェブサイトを作るという行動でも、そのときのモチベーションが違うなと思います。たとえば、
- 趣味でJimdoを使っているユーザーは、時間をかけて楽しみながらウェブサイトを作る
- 仕事でJimdoを使っているユーザーは、極力作業を効率化してウェブサイトを作る
この2つが、1つのインターフェースで耐えうるのかなって。
Detznerそうですね、確かにさまざまなユーザーが、さまざまなシチュエーションでウェブサイトを作っていると思います。ただ、私たちが提供したいことは、「徹底的にシンプルに作れること」です。たとえば、画像をアップロードする時間は、短ければ短いほどいいし、ウェブサイトができるまでのステップも少なければ少ないほどいい。このシンプルであることの価値は、趣味で作っていても、仕事でも同じはずだと思っています。
森田「Jimdoのインターフェースを変えよう」となったときに、何を軸にインターフェースの改善をするのかが難しそうだなと思っています。仕事を効率化したいビジネスユーザーを念頭におくのか、それとも楽しみながらウェブサイトを作りたい個人ユーザーなのか……でも、これまでの話だと100ページ未満の中小規模サイトに向いているってことだから、どちらかといえば後者が軸になるのかもしれませんが。
DetznerJimdoの使い方、ユーザーの幅も広いので、今後もいろいろと改善の余地はあると思っています。最近、新しい使われ方として、デザイナーがデザインしたウェブページを、顧客がタブレット使ってJimdoで編集したり、更新したりするケースも出てきています。これは、複雑な部分だけをプロがやるパターンです。今後もJimdoの使われ方をしっかり見て、改善のポイントを見極めていきたいです。
スマホでウェブサイトを作るのが好き? UIリニューアルのカギは「モバイル」
――Jimdoのリニューアルについて教えてください。
高畑今年の8月にインターフェースをリニューアルしました。これまでJimdoは、PC中心にサービスの提供をしてきましたが、今回のリニューアルの中核にあるのはモバイル対応です。ユーザーテストやユーザーインタビューなどを繰り返して、リリースまでに1年半かかりました。
森田リニューアル前のJimdoを使ったことがありますが、新しいインターフェースのほうが使いやすくてイイですね。モバイルが中核ということは、ウェブサイトをモバイルで作る人が増えているってことですか。
Detznerそうですね。すでに、Jimdoでは、25~30%のユーザー登録がモバイル経由になっています。そもそも、PCを使わず、モバイル端末だけでウェブサイトを作成する人が増えているんです。そんな需要を受けて、アプリを開発しました。
森田え、モバイルブラウザでログインするんじゃなくて、アプリで作れるんですか。KDDIウェブコミュニケーションズの顧問なのに知らなかった(笑)。
一同笑
高畑iOSアプリは1年ほど前にリリースしました。Androidは、今年の10月に出したばかりです。メールアドレスを登録してJimdoのアカウントを作ると、PCと同じようにテンプレートを選んだりして、アプリでウェブサイトを作成できます。あとは写真を追加したり、編集したりするだけです。
森田アプリで作成できるのは、ライトなユーザーには特に良さそう。スマホで撮った写真もそのまま投稿してフォトログができたりしますよね。
――もともとPC中心に提供してきたサービスを、アプリを中心に作り直すというのは大がかりですよね。
高畑リニューアルでは、かなり大幅なレイアウト変更を実行しました。以前のJimdoは3カラムのレイアウトでした。このレイアウトはシステムの挙動を制御しやすいのですが、デザイン的に時代に乗り遅れていたのでそこも変更しました。
Detznerモバイルでは画面の大きさも限られますし、タッチスクリーンです。そこで、PCと同様の作業をすべてできるようにするには何が必要か。どこを残して、どこに改善の必要があるのか。ユーザーが使うデバイスに関わらず、同じような感覚で操作できるように見直しました。
森田リニューアルする際に苦労した機能やUIの具体例などを聞いてみたいですね。
高畑一番苦労した部分は、PCとモバイル、違うデバイスにおいて共通の操作感を保てるか? でした。モバイルでアカウントを作った人がPCを開いたときに操作に迷ってはいけない。逆もまたしかりです。なので、何度もユーザーテストを繰り返した理由は、ユーザーの”迷い”を無くすところまで追求するためでした。
Detzner今回のリニューアルは、Jimdoのサービスコアに関わるもので、失敗すると会社の存続にすら関わるものでした。ユーザビリティ・テストが行える「UserTesting」などのソフトウェアを使ったり、実際にユーザーを招いて競合のプロダクトと比較したりして、幅広くテストをしました。ユーザーの声を聞きながら、じっくり時間をかけてリニューアルを行いました。
高畑リニューアルが終わった今でも、新しいデザインを検討するチームが常に改善に取り組んでいます。
ちょっとした心づかいのUIがUXを向上させる?! 2つの例
①チュートリアルは想定ユーザーに合わせて設計する
森田アプリのインターフェースでいうと、ちょっと細かいですけど……ログインした直後に「使い方のチュートリアル」が表示されますよね。たとえば、機能が限られたアプリとかならば、チュートリアルを表示して、操作の仕方などを見せる意味はあると思います。でも、Jimdoの場合は、多機能なので最初にぱらぱらと紹介されても、ユーザーは全部覚えきれない可能性が高いですよね。
高畑なるほど。Jimdoを初めて使う方でもわかりやすいように、チュートリアルを用意しているんですが、代表的な機能を4個も説明するのは、量が多いかもしれないですね。
森田たとえば、Jimdoを初めて触るユーザーを想像してもらいたいんですが、「項目が追加できます」「こんなに簡単に、ウェブサイトが作れます」と言われても、経験したことがなければ具体性に欠けますよね。紹介された機能を、直後に実行できるわけではないから、忘れてしまう可能性がありますね。特にJimdoのユーザーは、初めてウェブサイトを作る人も多いから、ハードルが高いかも。
高畑ちなみに森田さんなら、どんな風に改善しますか。
森田たとえば、「項目が追加できます」という機能の紹介ではなく、ユーザーが体験できるように「項目を追加してみましょう」とミッションにしてあげるとか。すでに、PCでJimdoを使ったことがある人は、4個のチュートリアルで理解してもらえるかもしれません。一方で、アプリのみで「完結する人」「初めて使う人」に対しては、このように重要な機能をまずは触ってもらうように促す必要がありそうです。
Detznerそうですね。アプリをリリースしたことで、Google PlayやiTunes経由で来る新しいユーザーが増えています。アプリストアの特集などで紹介されたりして、想定外の人もユーザーになってくれているので、初回起動時の体験はいろいろ検討したいところです。
②アイコンメニューのラベルは常に表示する
森田あと、アイコンメニューのラベル文字は、常に表示しておくのが得策だと思います。マウスオンで見せるのでは、かっこいいかもしれないけれど、ユーザーは覚えられないし、メニューの意味がわからなければ、ユーザーは毎回マウスオンしないといけません。
他にも、グラフのマークは、エクセルとかパワポを使っているユーザーは、図版が入れられるのかって勘違いしてしまいそう。アイコンは、どうしてもそういうミスマッチが起きるケースが多いので。アイコンを小さくしたとしても、ラベルを表示すべきだと思います。
高畑メニューのラベルの常時表示は対応検討します。
全世界のおじいちゃん、おばあちゃんも“とりこ”にできたらスゴイ!
――Jimdoは多言語展開していますよね。言語が違ってもできることやUIは、基本的に一緒ですか。
Detzner今は、9言語に対応しています。国によってモジュールが多いこともありますが、基本のシステムやテンプレートは同じです。ユーザーに沢山使ってもらうことで、データが集まってきたので、今後は特定の言語をもとにしたレイアウトなども追加していきたいと思っています。
森田今後は、インターフェースレベルでも国ごとに最適化をしていくということですね。簡単でシンプルなUIを突き詰めていくと、機能をなくすトレードオフと、同居させるためのさじ加減をうまくしないといけないところですよね。幅広い年齢層のユーザーをすべて対象にしているときの難しさもあるでしょうし。
高畑その通りですね。実際、Jimdoのユーザーにはご年配の方もいらっしゃいます。先日、85歳の方がイベントに参加してくださって、「自分でウェブサイトを作れたことが自慢だ」と話していらっしゃいました。皆さん、参考書に付箋をいっぱい貼って参加してくださるんですよ。嬉しいですね。
森田おじいちゃん、おばあちゃんをとりこにしているって素晴らしいですね。
日本発! “濃い”ユーザーが集まるオフラインマーケティングが世界に
――Detzner氏からみて、日本のマーケットでおもしろいなと感じることは何かありますか。
DetznerJimdoが日本に進出して5年が経ちました。それを記念して今回、日本にやってきました。Jimdoにとって、日本は大きなマーケットであると同時に、日本ユーザーの濃いコミュニティには驚かされます。
これまで、ドイツやフランスなどでは、オンラインマーケティングを中心にプロモーションを行ってきましたが、日本ではオフラインのイベントから成るコミュニティが効果的ですね。
高畑日本には、ユーザー主体で作った「Jimdo Café」というイベントがあるんです。一度に30人ほどの参加者が集まるもので、皆さんが各地のコーワキングスペースやカフェを借りて、Jimdoの使い方を教え合うコミュニティなんです。現在は、日本全国38か所で開催されています。
森田Jimdo Caféがユーザー主体というのは、ユーザーが自ら企画して始まったものということですか。
高畑はい、そうです。Jimdo Café以外に、Jimdo自らも「JimdoEvangelist(ジンドゥーエバンジェリスト)」と「JimdoExpert(ジンドゥーエキスパート)」という2つの制度を設けています。
- エバンジェリストは、Jimdoが好きで広めたいという方を認定
- エキスパートは、Jimdoを熟知して活用してくれるウェブ制作会社を認定
「Jimdo Café」を含むこれら3つの制度は、どれも日本発祥ですが今では世界で展開されています。
自分を自由に表現してほしい「フリーダム」を大切に!
――これから、Jimdoをどうしていきたいですか。今後の展望を教えてください。
Detznerまず、Jimdoで実現できる、デザインの幅を広げることです。そこを解決していくことは使命だと思っています。また、デバイスが多様化していますが、どのデバイスを触っていても、操作性が変わらないくらい一貫したユーザー体験を提供していきたいです。
森田Jimdoの良いところはアプリを使えば、ちょっとした移動時間にウェブサイトができちゃうところですよね。たとえば、日々のことをTwitterに書き溜めるよりも、同じことを自分のサイトでやったらおもしろそう。
高畑実際、通勤時間にJimdoのモバイルアプリで自分のウェブサイトをゼロから作ったという方がいらっしゃいますよ。
森田ビジネスユースじゃないからこそ、いろいろな使い方が生まれて、Jimdoが新たな形に化けそうですよね。たとえば、鎌倉とかへ旅行するときに「kamakura.jimdo.com(仮)」みたいサイトを作っておいて、旅行中にフォトログしたり、文章を書いたり。
Detznerそうですね。ウェブサイトのいいところは、自分のものなので、自分のコンテンツを自由に表現できる点です。どんなデザインにして、どうストーリーを伝えるのか。そのフリーダムは、Jimdoでも大切にしていきたいですね。
森田アプリでウェブサイトが作れちゃうのっていいなと思ったので、自分でも作ってみたいですね。今日はどうもありがとうございました。
ソーシャルもやってます!