企業ホームページ運営の心得

自社ドメイン名がもう使えないと言われたら? Web担が知っておきたい契約と解釈

ドメイン名を取得するときには、権利についても確認しておきます
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Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の285

抜けだせない蟻地獄

Web担当者は著作権などの「法律」と接することの多い職種ですが、比較的新しい業界であるが故に、法律が追いつかずにトラブルに発展することもあります。特に「ビジネス利用」については「契約」によって、法律が後手にまわるケースも少なくありません。

その業者は「ワープロを打つようにホームページが作れる(仮)」をうたい文句に顧客を集めます。独自のドメイン名とサーバー、そしてブログツールとテンプレートがセットで提供され、Webの知識がなくてもサイト運営できるというよくあるサービスです。

ところが、その契約書には「ドメイン名は業者が権利をもつ」とされ、退会時はドメイン名の利用権が喪失するとあります。退会後はお客様はもちろん、名刺や封筒に刷り込まれ、検索エンジンに認知されたドメイン名を利用できなくなるということです。つまり、一度契約すると解約するのが困難になる契約です。

ドメイン名とレンサバ

おかしいと思うでしょうか。しかし「契約」としてなんら問題はありません。「契約」とは両者の合意で成立し、ドメイン名の利用権を業者側が持つと明記された契約書にサインした以上、違法性が問われることはないのです。

ホームページを運営するのに不可欠なものが「ドメイン名」と「サーバー」です。実際には「サーバー」は「レンタルサーバー(以下、レンサバと略)」を利用するケースが大半で、冒頭のケースもこれにあたります。そしてドメイン名とレンサバは一体運用するものですが、両者の「契約」は性質が異なります。業者はそれを一体であるかのように見せかけることで、顧客にとって不利となる条件で契約を迫っていたのです。

誠実とはいえない契約ではありますが、ビジネスにおいて「知らない」は罪です。知らないという理由で、契約無効が認められるなら、後付けで不都合な契約を破棄できることになり、すべてのビジネスモラルは崩壊するからです。

ドメインとマンションの関係

そもそも「ドメイン名」とはなんでしょうか。ドメイン名は場所を指すという意味から、インターネット上の「住所」と説明されることがあります。大雑把な意味において間違いではありませんが「契約」においての誤解を生む原因となります。先の業者は独自ドメイン名について「信用性が高まる」と説明していましたが、そういうレベルの話ではありません。

会社は法人名や所在地などを法務局に「登記」する必要があり、これをまとめたものが「登記簿」です。登記簿には「会社の所在地」が記されており、公開情報としてだれでも閲覧できます。そして、ドメイン名は会社の登記と同じように登録してつくられます。言い換えると、ドメイン名はインターネット上の登記簿のようなもので、ホームページの閲覧は登記簿に記されたサーバーの所在地(ドメイン名)を問い合わせて行います。

つまり「ドメイン名」の契約とは公(おおやけ)に対して、ホームページの所有および所在地を明らかにするための宣言であり、レンサバは事務所としてアパートの一室を借りるような、私的な契約と位置づけることができます。これが両者の違いで、アパートからマンションに引っ越しても、登記簿の住所を書き換えれば、社名を変えなくてもよいのと同じです。

他人のふんどしで取るビジネス

この例になぞり、先の契約を説明するとこうなります。

会社の名義(ドメイン名)とオフィス(サーバー)を借りて行うビジネス

だから契約終了を持って「会社の登記」に匹敵するドメイン名の利用ができなくなるのです。

実際にドメイン名を使っていたのだからよこせ、と主張する気持ちはわかりますが、すでに述べたように契約は双方の合意で成立しています。判子を押すなり、同意のチェックボックスをクリックした時点で、覆すことは難しいというのが契約における一般論です。

JPドメイン名を管理する日本レジストリサービス(JPRS)においても、「WHOISでの情報公開のあり方」という資料の中で、又貸しされたものには利用権が認められない可能性を示唆しており、また「ドメイン名紛争処理方針」では「登録済みドメインの移転」はこの適用除外と明記されております。

裁判で不利になる理由

ただし、契約変更は不可能ではありません。「契約」とは両者の合意に成り立つので、新しい合意で上書きできるからです。その方法は「話し合い」です。実は冒頭の企業にも、ドメイン名の譲渡を約束させることに成功しています。ここも法律が曖昧になる理由です。法律でことこまかく規定してしまうことで、自由な市場取引を歪めることがあるからです。

話し合いに応じないとなると「裁判」しかありません。しかし、ドメイン名を「会社の登記」とみれば、それが転売できることも容易に理解できるでしょう。取得から年数を経たドメイン名は、設立年月日の古い法人と同じように信用力を期待できるからです。また、数年間でも運営していたドメイン名には、わずかながらもアクセスが期待でき、チリを集めて山にする方法論で広告収入を得ている業者も実在します。

つまりそこに経済的メリットがある以上、裁判でも業者側の権利主張に正当性が認められる可能性は高く、仮に勝訴しても裁判費用の他に、相応の受け渡し代金も発生することを覚悟しなければならないのです。これもまた「契約」の力といってもよいでしょう。

悪質業者は契約を喜ぶ

会社の登記簿と違い、実際の「ドメインの登記」には、レジストラやドメイン名取得代行業者と呼ばれる「管理業者(代理店のようなもの)」を通すルールとなっており、彼らは利用者の変更や、別の管理業者へのドメイン名の引き渡しに対応しています。しかし、素人に正規業者と悪徳系の区別はつきません。あるいは「ド素人」をターゲットとする業者にとって、「正規」のふりをすることなど造作もないことです。

そして彼らは「契約」を熟知しています。互いが合意すれば、理不尽でも成立するということをです。ドメイン名は各国の民間団体により管理運営されているので法規制に馴染まないという面もありますが、事実上の公共財にたいして法整備が追いついていない一例でもあります。

今回は「ドメイン名」をもとに紹介しましたが、法の未整備は多く、問答無用で利用規約の改訂に従わなければならない契約などもこれにあたります。しかし、それが現実である以上、Web担当者は「契約」に慎重になり、詳しくならなければならないのです。

今回のポイント

契約は慎重のうえにも慎重に

とはいえ「法律」ではないので変更できることもある

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