実践! プロも使うラピッドUX手法

UXの超基本は5W1Hの想像力

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UXの超基本は5W1Hの想像力

UX発想の基本は、製品サービスを利用するユーザーが、その時間にその場所で(その状況と環境で)、「●●を使って××できるので、“嬉しい・便利”」という“ユーザーの体験”を5W1Hでイメージすることからスタートする。前述の課題をテーマに、実践してみよう。

課題B:新製品開発の5W1Hイメージ

ここでは、筆者が愛用する以下の製品を例に、課題Bの製品開発について5W1Hをイメージしてみよう。

この照明機器を使うユーザーにとって、便利な体験はどんなものだろうか。たとえば、母親と父親をイメージし、5W1Hに分解すると次のようになる。

父親をイメージした場合
Who 父親が
When 休日の夕食後に
Where コンセントのないバルコニーで
What 雑誌を読むための照明を
Why 小型で軽くて電源がなくても使えるので
How 持ち運んで明かりを灯す → ラクチン
母親をイメージした場合
Who 母親が
When ときどき寝る前に
Where 寝室で床に入って
What 読書するための照明を
Why 枕元だけ少し明るくしたくて
How 明るさ調整をして眠ったら照明は消えている(タイマーがある) → ありがたい

新商品を企画するときには、何かしらの機能や仕様から考えがちだが、UX的発想では“だれが”という5W1Hからスタートするのが基本になる。もちろん、「軽くて持ちやすい」「バッテリーが長持ち」といった機能的メリットも大切だが、体験から想像するのが一番の違いだ。

課題D:スマホアプリ開発の5W1Hイメージ

次にサンフランシスコのあるワインショップを例に紹介しよう。このワインショップは、PCやスマートフォンからワインをオーダーすると、自転車メッセンジャーによって夜(23時まで)でも1時間以内に配送してくれる「Rewinery」というサービスを開始し、米国で話題になった。

友人をイメージし、便利な体験を5W1Hに分解すると次のようになる。

友人をイメージした場合
Who ワイン好きの友達が
When 夜遅くに
Where 自宅のホームパーティーで
What 足りなくなってきたワインを
Why 近くの酒屋も閉まっているし遠くのお店に買いに行くのも面倒なので
How スマートフォンから注文する(PCを持っていない)と、すぐに自宅に届けてくれる → とても助かる

このようにUX発想では、家族や友人が利用するシチュエーションを仮説として設定し、アイデアの着想の足掛かりを作る。もし、F1・M1層のようなマスの顧客像をイメージしてしまうと、何十万人ものユーザーを満足させようと想像し、思考回路が躊躇してしまうからだ。

身近な人物像を思い描いて、その人にとってウレシイ・便利と思うことを想像したほうが、気兼ねなく様々なアイデアを生み出しやすい。アイデアは質より量。これはUXに限らず発想の鉄則である。

UX的なアプローチは、一個人の体験視点に着目することで、従来のマーケティングでは導き出せなかった意外性のあるアイデアを発見し、そのコンセプトを生かした企画設計を進め、今まで世になかった商品・サービスやライフスタイルの提案を可能にする。

5W1H体験マトリックスシートで実践

ここまでで、UX的発想は理解できたと思うが、いざ実践しようとすると難しいもの。そこでUX的発想を手助けする体験型マトリックス発想シートを紹介しよう。

企画ブレスト用 5W1H体験マトリックス(エクセルシートをダウンロードする)
企画ブレスト用 5W1H体験マトリックス(エクセルシートをダウンロードする

このシートは、家族や友人などの“知っているだれか”を基に5W1Hの文脈と気持ちをイメージし、グループブレストでアイデアを出し合うことで、企画をより豊かにする目的で作られている。“ブレスト”の場なので、技術的制約や実現可能性などを心配せず、この時点では発想を広げる用途で使いたい。

まずブレストのテーマを決定し、次に説明する5つの手順を参考に進めよう。

  • Step0. ブレストのテーマ決定

    企画が必要な商品やサービスのテーマを設定する。それとともに、その商品サービスがどんなシーンで家族や友人に利用されている状況かを少し付け加える。ここが一番のポイントだ。

  • Step1. 「Who」がだれなのかを具体的にイメージする

    マトリックスシートの「Who」1~20から、よく知っている5人を選ぶ(鍵かっこ内には名前かあだ名を入れる)。

  • Step2. イメージした5人の利用シーンと気持ちを想像する

    よく知っている5人をイメージしながら、テーマに沿った5W1Hを想像力を働かせて書き込み、それがどうして「うれしい」のか気持ちを想像して書き込む。

  • Step3. メンバーから5W1Hに対する意見をもらう

    1人づつ5人の5W1Hを読み上げて発表。他のメンバーからざっくばらんなアイデア発言をもらう。

  • Step4. 具体化した人物を選ぶ

    全員の発表とアイデア追加が終わった後、最もアイデアが広がったり具体化した人の5W1Hを、マトリックスシートのStep4部分に記入し、自分の企画案とする。5人のいいとこ取りをするなど組合せも自由。

  • Step5. 企画案を選考する

    全員の企画案を比較検討して1案を選考し、シナリオを具体化していく。または、提案用(コンペなど)に複数プランの提出が必要な場合、複数企画案を選考しシナリオを具体化する。

ビジネスの現場ではワークショップ的な長時間ブレストはコスト高なので、ブレスト前に事前に宿題を出して各自Step1~2を書き込んで持ち寄り、全員が集まるStep3~5のブレストは1時間程度で済ますのがスマートだ。

あまりに多くの人物像をイメージしすぎると、みんなのため(結局はだれのためでもない)となってしまう。筆者の経験上、1人につき5人ぐらいイメージできれば、十分にアイデアを広げられるだろう。

このシートの流れのように、UX的発想によってアイデアの粒を引き出し、複数人の感性によってアイデアを拡張させることで、より具体的で強い企画やサービスの着想に至ることができる。UX的発想をうまく活用し、いつものブレストでは浮かんでこない新企画をザクザク発想していこう。

今回のポイント
  • UX発想の基本はユーザー体験の5W1Hをイメージすること
  • そのユーザーは、身近な家族や友人、会社の同僚など、よく知っているだれかをイメージすること
  • 頭の中でイメージが膨らまない場合は、体験マトリックス型発想シートを使って5W1Hを誘発すること

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