メディア総接触時間は5年で30分増加、スマホの普及がみせるメディア環境変化の兆し
TwitterやFacebook、スマートフォンといった新たなメディアやデバイスが登場するなか、生活者のメディア接触はどのように変化しているのだろうか。「メディア定点調査2012」をもとに、最新の傾向を明らかにしていった。
スマートフォンが携帯のメディア化を牽引
若年層で進むマスメディア離れ
第二部では、博報堂DYメディアパートナーズの吉田氏が登壇し、昨年の月例セミナーに続き、2004年から同社が毎年行っている「メディア定点調査2012」から読み取れる今年の傾向について発表した。同調査は15歳から69歳の男女を対象とし、日本三大都市の東京都、大阪府、愛知県のほか、高知県を調査対象としていることが特徴的だ。
「今回は東京の調査結果を中心に説明していきたい
」と話す吉田氏は、まずメディア接触時間についての説明を行う。毎年の傾向としては、東京はPCと携帯からのネット接続時間が多く、大阪はテレビの接触が、高知はマスメディアの接触がそれぞれ多く、東京に比べてPCからのネット接続が少ない。これはインフラの差があるのではないかと推測されている。
続いて、東京地区での2008年からのメディア接触時間の推移を吉田氏は示し、トータルのメディア接触時間が350分で頭打ちになっていることや、携帯からのネット接続が増加傾向にあるのに比べ、今年からPCのネット接続が減少していると指摘する。また、マスメディアの接触時間はそれほど減っておらず、相対的にネットの接続が増えたことで、総接触時間は2008年の319.3分から2012年は351.4分になり、5年間で約30分増えていることも説明した。
若年層はマスメディアよりもネットの接触時間が多く、特に携帯からのネット接続が多くなっている。10~20代だけでなく、30~40代の携帯からのネット接続が増えていることも最近の傾向だと吉田氏は話す。
また、東京地区のメディア接触時間をスマートフォン所有者と非所有者に分けて見ていくと、明らかにスマートフォン所有者はマスメディアへの接触が少なく、ネットへの接続時間が増しており、総接触時間(所有者373.1分、非所有者341.2分)や携帯からのネット接続(所有者75.0分、非所有者24.1分)にも差が見られている。
メディアイメージ調査では、比較的ポジティブなキーワードで各メディアに持つイメージを調査しているが、テレビや新聞、雑誌へのイメージが落ちてきている一方、ラジオなどは「生活者の声に耳を傾けている感じ」などの項目が若干上がってきているという。一方で、接触時間に比例するようにPCや携帯からのネット接続の評価は上がっており、特に携帯は数年前までメディアというイメージを持たれていなかったが、スマートフォンの登場によってイメージが変わってきたと吉田氏は説明する。
続いてメディアサービスの利用状況調査が発表された。放送メディアサービスでは、地上デジタル放送とハードディスクレコーダーの利用経験が伸びてきており、PC(ネット)メディアサービスの利用経験では、インターネット、動画投稿サービスの閲覧、ネットショッピングが高く、年齢によって利用率に開きはあるが、60代でも多くの利用があるという。一方で、特にソーシャルゲームやSNSなどは年代格差がある。携帯(ネット)メディアサービスは、PCよりも年代でバラつきがあり、若年層ほど利用率が高い。
FacebookやTwitterの利用者は東京地区が圧倒的に多い
スマートフォンの所有状況では、東京が31.0%と1/3近くの数値となっているのに比べ、高知はその半分の16.6%にとどまっている。大都市ほど普及率が高いものの、昨年に比べてどの地域でも大きく所有率が伸びているのは間違いない。東京地区での性年齢別のスマートフォン所有状況を見ると、20代女性の64.3%がスマートフォンを所有していることに驚かされる。また、ビジネスシーンでも利用されることから、20代や30代男性の所有率が50%以上になってきている。
一方で、10代は男女とも65%以上がまだ所有しておらず、金銭的な問題もあると考えられるが、これらの世代がスマートフォンを持ち始めたときにどのようなサービスが出てくるかが注目されると吉田氏は話す。40代や50代に向けたサービスについても、今後どのようになるのか注目したい。
スマートフォンでの平均利用アプリ数についても調査しているが、無料アプリが21.4本に対し、有料アプリが2.2本とアプリビジネスには厳しい結果も示された。利用アプリのジャンルでは、地図/ナビゲーションが最も多く、有料アプリが比較的多いのはゲーム、仕事の効率化やビジネスといったものとなった。
タブレット端末の所有率は、東京11.6%、大阪7.2%、愛知7.2%、高知4.4%と、いずれも低い数値となったが、今後1~2年で大きく伸びることが予想されている。
電子チラシの利用状況は、各地域とも数%(最も多い大阪で7.7%)だったが、性年齢別で見ると30台女性の10.7%、40代女性の13.2%が利用しているという調査結果も興味深い。
有料の電子新聞や電子雑誌に関しては、無料ではコミックなどが若干多い(3.9~7.5%)ものの、ほとんど利用者がいない状況が見られた。radikoに関しては、東京13.3%、大阪10.2%、愛知5.9%、高知1.6%という結果だったが、性年齢別に見ると、ラジオは一般的に50代や60代男性が多いのに比べ、radikoは30代男性の支持を得ていることがわかり、「ラジオが若い人に浸透するキッカケにradikoがなるのではないか
」と吉田氏は説明する。
ソーシャルメディアの1日あたりの平均利用時間は週平均で東京23.3分、大阪14.9分、愛知11.5分、高知12.7分だったが、性年齢別で見ると10代と20代の男性、10代女性が50分近くとなっており、非常に長く接触していることがわかる。
また、「テレビ番組を見ながらソーシャルメディアでその番組に関する書き込みをしたり、読んだりしたことがあるか」という質問は東京地区で39.1%、最も低い高知で31.1%が、「ソーシャルメディアから得た情報がきっかけでテレビ番組をみたことがあるか」という質問には東京で46.0%、最も低い高知で34.5%がそれぞれYESと答えており、ソーシャルメディアとテレビの親和性が高いことも明かされた。
最後に、吉田氏はメディアライフ密着調査として大学生に密着取材した動画を放映。テレビを見ながらソーシャルメディアを利用する様子などを見せ、「ソーシャル視聴」する生活者が増えてきていることを説明した。
動画の紹介を終えた吉田氏は、まとめとして次の3点を示した。
- 震災や地デジ化などがあったが、マス4媒体のメディア接触に大きな変化はない
- 携帯の接触時間はスマートフォン普及で大幅に増加し、ネット利用がPCからモバイルへ変化する動きもある
- 若年世代(10代男女、20代男)ではマス接触<ネット接触が顕著になり、今後もこの流れは続きそう
そのうえで、
2012年から2013年は、2002年から2003年にブロードバンドの普及でインターネット広告ビジネスが大きく変わったのと同じように、スマートフォンの普及によってメディア環境が変化する兆しを見せており、今後は新たなスマートフォン向けサービスで、マスも含めた広告ビジネス全体に変化の可能性がある。
と話し、メディア定点調査2012の発表を終えた。
オリジナル記事はこちら:「スマートフォンの普及が見せるメディア環境変化の兆し~メディア定点調査2012から見る生活者のイマ」第二部 6月25日開催月例セミナー
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