企業ホームページ運営の心得

クチコミに魔法の杖は存在しない。クチコミとはオカルトか武器か

客の声から広まるクチコミを換言すれば信用。商売における最強の武器の名前です。
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の272

クチコミの力

科学が発展したとされる現代日本においてもオカルトは撲滅されません。血液型による性格占いなどその最たるものです。血液型の信者は私を「A型だ」と決めつけたがります。「O型だ」と告げると「ああ、Aが頼りのO型だ」と自説を曲げようとはしません。仮に彼らが信じる血液型による性格分類が事実であるなら、O型として再評価する方がその後の付き合いにおいて健全だと思うのですが、なかには「ヘンだなあ」と首をかしげる人まで現れます。

ヘンはどちらでしょうか。「真面目なA型」という性格は、血液型が理由ではなく、日本人にもっとも多い血液型に国民性を重ねただけのことですし、「B型はワガママ」というのも、ワガママな人は印象が強く、良い意味でも悪い意味でも記憶に残りやすいものです。またB型を自ら名乗りワガママに振る舞っている人は、自重できない幼児性に問題があるのであり、ワガママは不治の病ではありません。

Webにおいても「オカルト」は沢山あります。「クチコミ」もその1つ。

これからはクチコミの時代、クチコミが客を連れてくる、クチコミこそが新しいマーケティング。

と言い切るのはオカルトです。

恣意的な世論調査

たとえば、買い物前にカカクコムやアマゾンのレビューを参考にする人は少なくないでしょう。愛用のMacBook Proのメモリを増設する際に、純正品と同スペックのメモリが近所のPCショップのチラシに掲載されていました。純正品の半値以下に驚き、出向いて話を聞くと、マックには使えないといわれます。そんな馬鹿なと帰宅後、カカクコムの「レビュー」を探すと、まったく同じメモリをマックに挿している事例を発見してすぐに購入しました。

なんだ、ミヤワキもクチコミを利用しているじゃないか。

その通り。しかし、ネット上のクチコミだけではないことに目を向けてください。PCショップの販売員がもう少し詳しく説明できていれば、その店で購入していました。ちなみにその説明とは、純正品でないので自己責任ならどうぞ、というレベルのものです。動かないとまで断言していたので、勉強不足だったのでしょう。

83%の数字の裏側

結果的に「クチコミ」をみて購入しましたが、それは結果論に過ぎないということです。ところがクチコミを礼賛する人の多くが、意図的にこれをスルーするのです。一瞬でもクチコミを見れば、クチコミの手柄とするのは、お題目を唱えたり、手をかざしたりしたお陰で病気が治ったとする新興宗教と同じです。

2010年と少し古い調査結果に、消費者の「83%がクチコミを参考にする」とありましたが、これではオカルトではなく詐欺です。携帯電話ユーザー2万人強の回答結果は、

  • 必ず参考にする:17%
  • たまに参考にする:66%

となっていて、この合算値が83%だからです。それでは「たまに」とはどれくらいの頻度なのでしょうか。

ふーんで買う客はいない

仮に10回に1回を「たまに」とするならば、66%の1割である6.6%を加算して23.6%。3回に1回で22%を足したとしても39%です。それを83%と喧伝しているのは「盛った」数字で詐欺的です。ちなみに「チラ見」程度でも選択されやすい「参考」という表現は、数字を水増しする際の常套手段です。

これは「パブリシティ」という広報手段です。パブリシティは「ニュース」として扱われることが多く、またそれを狙って企業が発表するもので、作為的な統計を創り出すことはよくあることです。よく目にするものとしては、

○○%が××を選びました。

というもので、調査方法や対象の抽出方法見ると、統計というより「オカルト」的なものが少なくありません。やり玉に挙げ非難する意図はないので今回の引用元は公開しませんが、検索するとすぐにわかります。

ステマの発生源

パブリシティと密接に絡んでくるのが「広告代理店」の存在です。ネット以前のクチコミは店頭でしか確認することしかできませんでしたが、ネットによって「見える化」します。ネット掲示板に始まり、ブログ、SNSと「クチコミ」をコピペするだけで、クライアントへのプレゼン資料の完成です。そして一貫してクチコミを煽り続けています。

20世紀最後の2000年に超大手広告代理店「電通」が発表した資料にはすでに「口コミ」として登場しています。ちなみに「子育てサイト他コミュニティサイト」での情報交換が活発になっているという指摘で、それはそのまま「SNS」の効果効能として喧伝されているものです。

ここで首をかしげる人もいるでしょう。

クチコミとは顧客の自発的な発言、すなわち「客の声」であり、広告とは馴染まない。

とはウブな話です。それこそがステマであり、食べログの「やらせ」の温床ですし、ツイートやフォロー、「いいね!」とクリックを促すキャンペーンには広告代理店の影がちらついています。

効果的なクチコミ

そもそも「クチコミ」の定義は曖昧で「客の声」だけを指すものではありません。「クチコミで注目を確実に集める6つの秘訣」と副題にあるマーク・ヒューズの『バズ・マーケティング』で紹介している「クチコミ」を端的に述べれば「マスコミ」に取り上げられる方法で、草の根的に広まる「客の声」とは正反対のアプローチです。また、有名人を抱き込む手法も一般的で、芸能人のブログで紹介される「友達の店」や、「お気に入りの美顔ローラー」などにも大人の事情が垣間見え、以前指摘したように「自分に連載させれば、俺様のファンがクチコミをはじめる(意訳)」というアルファーブロガーも実在します。

オカルトは事実の一部を切り取り、偶然を永遠の真理と誤認する(させる)ところから生まれます。血液型による性格占いもそうですし、名前の画数占いもそうです。文字のない少数民族にも人生があることが欺瞞性を証明します。以前紹介したように、クチコミを起こしやすくするアプローチは存在します。しかし、それは事実の一部に過ぎません。そして「客の声」から広まる「クチコミ」を換言すれば「信用」。商売における最強の武器の名前です。

ちなみに「A型」と呼ばれるようになったのは、フリーターから社会復帰して以降でコツコツと信用を積み重ねるようになったから。そして信用を積み重ねているとクチコミが起きていました。そして断言します。クチコミを起こすコツは「A型」になることだと。

今回のポイント

さまざまなクチコミの定義がある

「客の声」で積み上げるクチコミに魔法の杖は存在しない

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