初代編集長ブログ―安田英久

愚者は問題に向かい合い、賢者は解決へと向かう ――意義ある“イシュー”を見極めろ

あなたは、そもそもできないこと・意味のないことに取り組んでいませんか?
Web担のなかの人

今日は、Web担当者やマーケ担当者としての仕事を進めるうえでの考え方を「イシュー」というキーワードからお届けします。

そもそもできないこと・意味のないことに取り組んでいる人が多い。

人間は、自分がやり続けてきたことを正当化したくなるものだけど、
それをすることに本当に意味があるのか、答えを出せるのか
それを見極めるのが大切。

問題を解くことよりも、問題を見極めることに時間を使うべき。

これは、ヤフー株式会社COO室室長の安宅 和人 氏が、5月17日に川崎で開催された「アクセス解析サミット2012」のセッションで語った内容です。

アクセス解析イニシアチブが毎年開催しているこのサミット、今年の全体テーマは「データをアクションに!」だったのですが、そのトップバッターとして登壇したのが安宅氏。書籍『イシューからはじめよ』の著者である安宅氏は、「データ解析はイシューからはじめよ」という講演を行いました。

ヤフー株式会社 執行役員 事業戦略統括本部長 COO室室長 安宅 和人 氏

安宅氏は、知的生産における生産性とは「生み出したバリュー÷投下した労力・時間」であるとし、「バリューが高い」というのは、次の2つで示されるといいます。

  • 与えられたお題に対する解の質が高いこと
  • イシュー度が高いこと。

イシュー」とは日本語ではあまり使われませんが、「けりがついていないけれどもけりをつけなければいけない問題」のこと。そして、「イシュー度」とは、「自分のおかれた局面でその問題に答を出す必要性の高さ」のこと。

安宅氏によると、世の中の仕事のほとんどは、解の質もイシュー度も低いところにあり、意味のあるイシューは2%~3%程度しかない。ということは、むやみに大量の仕事をこなしてもイシュー度の高い仕事は進められず、価値を生み出せるようにはならないのです。

だから、まずするべきことは「意味があってやる価値のあるイシュー」に絞り込むこと。イシュー度の高い仕事に集中できれば、1つの問題に時間を費やせるのです。

もちろん、その見極めにはある程度の経験と知見が必要であり、頼りになる相談相手を見つけられるかがカギなのですが、良いイシューの条件として、安宅氏は次の3つを挙げています。

  • 本質的な選択肢であること ―― 判断をしたときに結果が変わるか(結果にどれだけの影響力があるか)

  • 深い仮説があること ―― 常識を否定する、もしくは新しい構造の発見

  • 答えが出せること ―― 白黒付けられないことに取り組んでも意味がない

本当にいま答を出さなければいけないわけではない「なんちゃってイシュー」に誤魔化されがちだし、主体・部署・相手・場面によってイシューは異なるのですが、問題点を見極めないと、仕事はキリがありません。

ほとんどのものはどうでもいい問題なので、まずはそこを排除したうえで、けりをつけられることに絞り込む。そうすると、「今本当に答えを出すべき」であり、かつ「答えを出す手段がある」問題に絞り込めるのです。

安宅氏によると、ほとんどの人は「問題を見極める」ために使う時間が1日に5分程度。それを1日30分~1時間にすると、仕事のイシュー度が高まり、全体の生産性が高まっていくのだといいます。


安宅氏のセッションでは、こうした「イシュー」にかかわる話題に加えてさまざまなことが話されました。イシュー特定のための手段や注意点、「問題はわかっている」という態度の問題点、さらに、分析イメージのためのストーリーライン作りの重要性と、そのために必要な仮説。まずアウトプットイメージを作っておいて、結果を出したときにイメージと異なる部分を「ファインディング」ととらえること。社内のコミュニケーションにおいても、「相手に理解してもらう」というシーンでのイシューを考えることの重要性などなど。

安宅氏のセッションがとにかく濃く、アクセス解析サミットではその後にもかなり良いセッションが多数あったのですが、1日が終わったあとでも最も印象に残っていたのが安宅氏の話でした。

アクセス解析サミット2012の会場となった川崎市産業振興会館には、大勢の観客が集まっていました。

あなたも、私と同様に、おそらく日々の仕事に追われていることでしょう。

そのなかでも価値を生み出し、さらに自分が成長しなければと努力していることでしょう。

自分が日々やっている仕事は、「イシュー」なのか、その仕事はすることに意味があるのか、「意味があってやる価値のあるイシュー」に絞り込むことができているのか。

いちど、安宅氏の書籍『イシューからはじめよ』を読んで、上記のようなことを考えてみませんか?

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