企業ホームページ運営の心得

関西計画停電というビジネスリスクとビジネスチャンス

Web担当者に電気は不可欠、計画停電に向けた備えを伝えます
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の263

関西計画停電、その可能性

福島第1原発の事故をうけ、東電管内の電力不足が予想され実施された昨年の「計画停電」。実際に停電したのは2週間ほどでしたが、電力不安から、昨年の今頃はデータセンターやIT企業の「関西移転」が連日のように報じられていました。その関西での「計画停電」が現実味を帯びてきています。関西電力管内は、2010年時点で発電量の48%を原発で賄っていました。すべての原発の停止が続けば、どれだけ節電を心がけてもフォローできるものではないでしょう。

昨年の東電管内で実施された「関東計画停電」は過ごしやすい春でしたが、いま懸念される「関西計画停電」は過酷な猛暑、あるいは原発の「再稼働」がなければ真冬にも実施されるかもしれません。そしてWeb担の仕事において「電気」は不可欠なもの。というわけで今回は「計画停電2012……に備える」をお届けします。

ビジネスチャンス到来

まずは「計画停電体験者」だから言える不謹慎発言を。

計画停電はネット通販業者にとってビジネスチャンス

計画停電対象地域にあるリアルの小売店は、冷蔵庫や冷凍庫の使用が制限され、電灯もエアコンも止まることから営業そのものが自粛されます。つまり地域全体が一過性の「物資不足」となります。その点「ネット通販」なら確実に欲しい商品が自宅に届きます。つまり、それまで「近所のスーパーマーケット」で購入するライフスタイルが「ネット通販」へシフトする可能性がうまれるということです。

関東計画停電は震災による道路の寸断などで物流網も混乱しましたが、関西計画停電は日常生活から電気が消えるだけです。そこにうまれる商機を浪速の商人が見逃すわけがありません。

ライバルの猛威

計画停電だからと同情はしても、客は客の都合で動きますし、「計画停電エリア外」のバリバリ通電しているライバル企業が仕掛けてこない保証はありません。そして停電の有無が、競争に影響するのは経験からの警告です。つまり停電時の「BCP(事業継続計画)」が不可欠なのです。

BCPとは重大なトラブルや災害時にも事業を継続させるプランのことです。震災直後は口々に叫ばれたものですが、喉元を過ぎて熱さを忘れているように思えます。夏の暑さが訪れる前に思い出してください(Web担当者ForumでもBCP連載があります)。

停電時も固定電話と携帯電話は使えます。ただし、通じる固定電話は電源供給のいらない「メタル回線」のみで、IP電話や常に電源を必要とする回線は使用不可となります。これについては昨年の記事に詳しいので、そちらに譲るとして、一年前と状況が変わったのが「スマホ」です。

スマホで接続という選択

「計画停電」によりPCを主体とするネットインフラが使えなくなるのは、モデムやTAといった宅内設備への電気供給がなくなるからです。しかし、スマホをモデム代わりに利用できる「テザリング」なら計画停電時もPCのネット接続を維持することができます。会社のネットインフラが停電によって不通になったときの「保険」として導入、あるいは機種変更を検討してみてはいかがでしょうか。

大手携帯キャリアのなかでテザリングに対応しているのはドコモとauで、ソフトバンクは対応していません。これは手持ちの周波数帯の問題もあるといわれており、今後の拡充に期待したいところです。同様の「無線接続」のサービスもありますが、大手キャリア系列の2社に確認したところ、停電が起きた際、電波を受信する基地局のバッテリー状況は設置場所によりまちまちで、必ずしも通信を保証できる状態にはないといいます。また、これらのサービスは「人口カバー率●●%」と謳っていますが、それは机上の計算に過ぎず、対象エリアでも「圏外」であることもあります。

組織としての対応

ドコモとauは計画停電時でも基地局バッテリーの心配はないと胸を張っていましたが、ユーザーが一気にスマホを利用することで起こる「輻輳(ふくそう)」というリスクもあるので過度な期待は避けるべきです。そして「スマホ」のバッテリー浪費癖はいまだ解決されていません。予備のバッテリーや、使っていないノートPCを「蓄電池」として準備しておくことが必要です。USB経由で作業用のノートパソコンからスマホに電力供給すると、ノートPCのバッテリーを消費し「共倒れ」のリスクが高まります。

もっともテザリングは一時凌ぎです。想像してみてください。ノートPCからUSBケーブルでスマホへ給電し、テザリングでWebを更新します。しかし、そこは電気の通わぬ灼熱地獄です。弊社はもう10年近く夏を「ノーエアコン」で過ごしていますが、他人には決してすすめません。指先からしたたる汗が、キーボードの隙間に垂れたときの恐怖はまったく無駄なサプライズです。

そこで提案するのが「在宅勤務」です。関西計画停電のグループ分けはわかりませんが、関東の例では分散している社員の自宅すべてが一斉に停電する可能性は低く、会社が計画停電対象時間に通電しているエリアのスタッフを自宅待機させ、緊急度の高い案件に当たらせるのです。

民主主義のコスト

原発は電気事業法で13か月ごとに定期点検に入り、問題がなければ「再稼働」する……と、関西地方にデータセンターを移転させた企業は考えていたのでしょう。安全対策の強化は当然としても、そのための対策を「政治主導」すると。ところが前首相は政治主導で問題をこじらせ、現首相が政治主導をみせるのは「消費税増税」だけです。もちろん「脱原発」へと舵を切るのも政治主導ですが、ならば代換電力が確保される数年先まで「電気が止まる日」を啓蒙するのも政治主導で……とは期待しすぎでしょうか。

政治は国民のレベルを映す鏡といいます。だからこそ我々はその「鏡」を見たとき、「停電(時の事業)計画」を立てて自衛しなければならないのです。あとは原発の影響を受けない地域、たとえば沖縄県に移住するという方法もあります。

今回のポイント

電気の止まる日……が現実味を帯びてきた。

BCPの確認、あるいは策定を。

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