アトリビューションの語源と定義 | 書籍『アトリビューション』特別公開1-1 (全5回)
アトリビューションはまだ新しい言葉である。ここでは、アトリビューションの語源や起源から始めて、広告・マーケティング業界でのアトリビューションという意味について触れていく。
アトリビューションはもともと金融業界の用語
アトリビューション(Attribution)は、英語のAttribute(おかげと考える/~に起因する)を語源とした言葉であり、「属性、帰属」という意味を持っている。
もともとアトリビューション分析は金融業界で使われてきた分析手法である。パフォーマンスの「貢献度分析」や「要因分析」という言い方をすることもある。ファンドの運用成績を評価・分析するパフォーマンス評価において、投資元本に対するリターンがどのような要因から発生したのかを明確にする分析であり、導き出された結果をベースに先々の運用方針が決められる。
金融業界では、資産を複数の金融商品に分散して投資すること、あるいは複数の金融商品の組み合わせ全体のこと。
もう少し解説してみよう。金融業界のアトリビューション分析では、ポートフォリオ全体のリターンをいくつかの異なる角度や見方から分析する。そして、所定の比率で株式や債券を合成した複合ベンチマークのパフォーマンスが、「ポートフォリオ全体のリターンにどう貢献し、当初設定した資産の配分が適切だったか」を判定することになる。その上で、ファンドマネージャーの運用能力もいくつかの分析から判定される。
例えば、資産の配分変更を行った場合は、「それがどの程度リターンに貢献したか」「地域・分野・部門・業種などにグループ化したセクターそれぞれへの配分が適切だったか」の判定を行う。また、それぞれのセクターの中で「選択した銘柄やその資産配分が適切だったか」も判定する。
つまり、選んだ株式や債券のポートフォリオへ資産を配分し運用した結果、「何が全体のリターンに貢献したか」(あるいは貢献しなかったか)を多面的に分析して理解することで、次の運用を行う際に一番貢献度の高い銘柄に配分を増やしたり、ポートフォリオに含まれる銘柄を選び直したりする一連の取り組みのことをいう。
金融業界におけるこの概念や手法を広告・マーケティング業界に適用したのが、現在のアトリビューション分析である。
広告・マーケティング業界でのアトリビューション
商品購入や資料請求など、訪問者が運営者の意図する目的に達すること。顧客に「転換」することの意。
広告・マーケティング業界におけるアトリビューションとは、コンバージョンに至るまでの流入元(リスティング広告やバナー広告など)の履歴のデータを使い、コンバージョンへの貢献度を各流入元に配分すること(図1-1-1)である。
日本では取り組みを総称して便宜的に「アトリビューション」と呼ばれることが多いが、本来はアトリビューション分析(Attribution Analysis)、アトリビューション・モデリング(Attribution Modeling)、アトリビューション・マネジメント(Attribution Management)というように、目的に応じて用語が異なる。
アトリビューション分析とは、コンバージョンに至るまでの流入元の履歴のデータを使い、コンバージョンへの貢献度を「分析する」こと。
アトリビューション・モデリングとは、的確に貢献度を導き出すために、ビジネスモデル、業種、キャンペーン内容を考慮して「重み付けの分析モデルを設計する」こと。
そして、アトリビューション・マネジメントとは、貢献度に応じて予算配分の変更やポートフォリオの「組み替えを行う」こと。
金融業界、広告・マーケティング業界のいずれにおいても、それぞれポートフォリオやメディアプランなど施策全体を対象にした統合的な最適化のアプローチを取っている点と、分析の結果、次期のポートフォリオ、メディアプランの再設計に役立てる指針・ツールとして活用されている点において、目的はほぼ同じといって問題ないだろう。
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