twitter.co.jpドメイン名を勝手に登録して260万円で売りつけようとした男、裁定で敗北
今日は、ドメイン名と商標に関する問題について。twitter.co.jpドメイン名がtwitter社に関係のない第三者に登録されていた問題が、DRP(紛争処理方針)に基づいて解決されました。企業はドメイン名をどうとらえるべきなのでしょうか。
Twitterのサービスはtwitter.comやtwitter.jpのドメイン名で提供されています。しかしTwitter社はtwitter.co.jpドメイン名を登録していませんでした。そこに目を付けた第三者(Twitterに関係のない人)が、2009年11月25日にtwitter.co.jpドメイン名を取得してしまいました。
Twitter社は、この問題に対してドメイン名紛争処理方針(DRP)に基づく裁定の申し立てを2010年1月28日に行っていたのですが、3月31日に審理が終了し、twitter.co.jpドメイン名をTwitter社に移転するようにとの裁定が行われました(ドメイン名は10日間の保留期間の後に実際に移転されます)。
裁定では、以下のような点から、登録者がtwitter.co.jpドメイン名を不正の目的で登録されたものと認めています。
- twitter.co.jpドメイン名の要部「twitter」は、日本においてTwitter社が登録している商標「TWITTER」と同一である。
- twitter.co.jpドメイン名を登録した者は、Twitter社と資本関係がなく、登録商標「TWITTER」の使用を許諾されているわけでもない。
- twitter.co.jpドメイン名を登録した者は、取得から1か月ほどしか経過していない2010年1月4日に、Twitter社に対してtwitter.co.jpドメイン名を2万ユーロ(約260万円)で譲りたい旨連絡をしている。これは「ドメイン名の貸与または移転を主たる目的として登録すること」を示す。さらに、自分のTwitterアカウントをTwitterのおすすめユーザーリストに加えることを要求している。
この裁定は、「ドメイン名紛争処理方針(DRP)」と呼ばれる、商標とそれに対応するドメイン名に関して、当事者同士の争いを処理するための手続きに則って行われたものです。
そもそも問題の発端は、Twitter社がtwitter.co.jpドメイン名を取得していなかったことにあります。とはいえ、.co.jpドメイン名は、日本国内で登記を行っている会社が1社1ドメイン名しか取得できないため、やむを得ない面もあったと言えます。
そして、悪意によるドメイン名登録が成されたことに対するDRPの処理は、裁定結果も妥当な内容ですし、申し立てから1か月強と短時間で裁定されています。すばらしいことだと言えるでしょう(登録者が答弁書を提出しなかったこともありますが)。
そのため、企業の人は「問題が起きればDRPに則って処理してもらえばいいのだから、わざわざ事前にドメイン名を押さえておく必要はない」と考えるかもしれません。しかし、そうなのでしょうか。
DRPでは、あらかじめ指定された要件を、申立人がすべて立証する必要があります。多くの場合は、弁護士などの専門家に依頼する必要があるでしょう。そうなると、最初からドメイン名を登録していた場合に比べて高額な費用が発生することになるでしょう。
また、DRPは「ドメイン名の不正の目的による登録・使用」に対する紛争を処理するための仕組みであり、
- 実費金額を越える対価で転売することを目的として登録しているとき
- 商標権者によるドメイン名の使用を妨害するために登録し、そのような妨害行為が複数回行われているとき
- 競業者の事業を混乱させることを目的に、登録しているとき
- ユーザーの誤認混同をねらって、第三者の商標をドメイン名として登録・使用しているとき
などのような場合以外では利用できませんし、そもそも必ず登録を移転できるとは限りません。
やはり、商標に関連するドメイン名は、防衛的な目的であらかじめ登録しておくほうが、面倒を避けるには良いようです。
- twitter.co.jp ドメイン名の移転
http://www.nic.ad.jp/ja/drp/list/2010/JP2010-0001.html - ドメイン名紛争処理方針(DRP)
http://www.nic.ad.jp/ja/drp/- JP-DRP(JPドメイン名に適用されるDRP)
http://www.nic.ad.jp/ja/drp/jpdrp.html - UDRP(gTLDに適用されるDRP)
http://www.nic.ad.jp/ja/drp/udrp.html - ccTLDに適用されるDRP(JP以外の国別ドメイン名に適用されるDRP)
http://www.nic.ad.jp/ja/drp/cctlddrp.html
- JP-DRP(JPドメイン名に適用されるDRP)
ちなみに、安田のtwitterアカウントは@hidehisaです。
コメント
確かfirefox.jpっていう
確かfirefox.jpっていうドメインは裁判で勝って個人がもっていたような・・・
firefox.jpのJP-DRP裁定
firefox.jpのJP-DRP裁定は、
http://www.nic.ad.jp/ja/drp/list/2007/JP2007-0008.html
ですね。
この申し立てでは、登録者がちゃんと答弁して、
> 「firefox.jp」が申立人の商標と混同を引き起こすほど類似しているが、登録者が、ド
> メイン名に関係する権利または正当な利益を有していないとは認められず、登録者のド
> メイン名が不正の目的で登録または使用されているものとも認められないと裁定する。
という裁定になっています。
「firefox」という単語がユニークではなく他の用法があった点が、ある意味で申し立ての要点を構成する背景となっている印象です。
> パネルは、提出された陳述・文書および審問
> の結果に基づき、処理方針、本規則および適用されうる関係法規の規定・原則、ならび
> に条理に従って、裁定を下さなければならない
といった原則に基づいて裁定された結果ですので、やっぱり商標関連は早めにちゃんと動いておくほうが良さそうですね。