企業ホームページ運営の心得

採用コンテンツは営業ツールにもなる。不況だからこそ採用ページの充実を

採用コンテンツには“採用”の他にも役割があります。営業マンの掲載をすすめるのは名刺代わりにもなるからです
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の百十九

時の過ぎゆくままに

「5,000円台」も噂されていた株価が9,000円を目指しています(4月13日現在)。想定外の事件から一時的に針が振れても市場は「相場」に落ち着くもので、リーマンショック直後から不況はチャンスだと言い続けている理由の1つです。みんなが不安と恐怖に支配されているときにこそチャンスは転がっているもので、株価の指標から見て安すぎる株を買い増して高卒初任給ぐらいの利益を得たのはこの春です。

「採用」について書いた(心得其の伍十六)1年半前は内定取り消しなど想像もできない「採用難」でした。報道は採用についても極端にふれる傾向があり、今も人手不足の企業は少なくないのですが「就職氷河期再来」と大騒ぎします。しかし、中長期で見れば優秀な人材を獲得するチャンスであり、また今すぐ「人材」が不用でも採用コンテンツを充実させるメリットは大きいのです。

需要と供給のアンバランス

まず、採用を取り巻く状況を見てみます。日比谷公園にできた派遣村には多くの人が集まり、内定取り消しにより路頭に迷うと報じられます。一方で人手不足に頭を抱える企業は多く、求人情報誌や求人サイトはいまだなくなりません。いわゆる「派遣切り」を支援する方は新聞の取材に「仕事なら何でもよいというワケではない」と答えていますが、「商売用」からすれば採用需要はいまだに根強いといえるでしょう。これについては最後に私見を述べますが、特にアルバイトの確保はさしせまった課題です。

コンビニやファストフード、ファミリーレストランは高校生や大学生の定番アルバイトでしたが、ここにも「少子高齢化」の波がやってきます。少子化によって学生の絶対数が減ることで、労働人口そのものが減っているのに加えて、孫の減少が祖父母の貢ぎ先を一極に集中させます。つまりは潤沢な小遣いを得られる学生に労働(アルバイト)の必然性がなくなりつつあるのです。

ホームページで常時募集をかける

厳しい就職戦線という企画の取材に答える大学生は「どこでもいいから就職したい」といいますが、前段の「著名」「一流」「安定」という言葉が省略されており、中小企業がこの「ご時世」にも敬遠されるのは「何でもよいというワケではない」と重なります。つまり、中小企業にはとって採用が難しい時代はまだまだ続き、さらに景気回復した後には大企業に人は流れ、団塊世代の引退も重なり人手不足が大きくのしかかる事態が待っているのです。

そこで「採用コンテンツ」です。特に大学生の「就活」では、候補企業のホームページをチェックしてから応募するかを決めると言います。また情報誌やチラシと比較してネットの予算はごくわずかで、しかも半永久的に掲載し続けることができます。採用コンテンツには先輩の声やキャリアプランといった「未来」と「夢」を掲載します。大企業のコンテンツではできない「泥臭さ」も有効です。就職を恋愛と例える人もいるように「蓼食う虫も好き好き」で自社を学生に売り込む感覚が大切です。

そして、採用計画がなくなったとしてもコンテンツはそのまましておき、次の一文を差し込みます。

「現在は募集を終了しています」

採用コンテンツのもう1つの役割

コンテンツを「非公開」にしてしまうと「404 Not Found」となり検索エンジンのインデックスから削除されますが、募集終了と記載されてあっても検索エンジンは「就職」や「採用」といった求職者のクエリ(検索要求)に答えることでしょう。これによる営業効果も期待できます。採用コンテンツは「取引先」や「客」も見ているからです。

先輩の声とは「スタッフ」のことで、キャリアプランは「事業計画」と置き換えることができます。蟹工船のように社員は搾取目的の労働者としてではなく「人材」としてみる社風を好意的に理解する人が大半です。採用は総務や人事部の仕事ですがコンテンツは「商用利用可能」なのです。私が「営業マン」の掲載をオススメするのは採用コンテンツが彼らの名刺代わりになるからです。

情報起業家と詐欺師のテクニック

世の中には光と影があります。営業話術を誘導にだけ使えば「詐欺」に近づき、交渉に熱くなり力を込めてテーブルを叩けば暴力団の「恫喝」に酷似します。ここからは内緒話、採用コンテンツの裏活用術です。

情報起業家のサイトにある「採用コンテンツ」は「人手が足りないほど儲かっている」という活気の演出です。仮に応募をしても「履歴書の郵送」を命じられ、書類審査で落選が通知されます。採用する気など最初からないのです。彼らの「ブログ」をチェックして「新人」が登場しなければ間違いありません。晩飯に友人の結婚式の引き出物、カラオケのレパートリーといった私生活や個人情報をブログで晒す人が可愛い部下を紹介しないのがその証拠です。

埼玉県川口市の住宅会社の「アーバンエステート」は倒産直前までテレビCMで営業マンを募集していました。社員を募集するぐらいだから大丈夫だろうというのは思い込みで、健全企業であるという根拠はどこにもありません。そしてこれを利用する人がいます。

必要な人材は金を生む

今は内定取り消しで大騒ぎしていますが景気が回復してから「人材」を求めても中小企業には集まりません。1年半前の採用難と同じです。注文が減り、暇を持てあましている時こそ採用コンテンツを充実させるチャンスなのです。これも不況の効果です。

散歩をしていると「解体工募集」という貼り紙を見つけました。またしばらく歩くと「ドライバー急募25万円」とあります。手取りベースで20万円あれば……と夢想します。父が亡くなり「帰る家」をなくしてから仕事とは食べることであり生きることです。自己実現は副産物にすぎません。今の職を辞して解体工になろうとは思いませんが、仕事があるという事実に安堵を得ます。

身体的なハンディを除けば、雇用のミスマッチとは仕事を選ぶ心の余裕があるから起こるもので、生死に関わるほどひっ迫していないという意味ではグッドニュースと私は考えます。

♪今回のポイント

人は石垣……というかコンテンツ。

営業面からも採用ページを見直してみる。

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