モバイルアクセス解析で見えてくる来訪者の行動パターン/無料解析ツールmyRTmobile活用法
無料ケータイサイト解析サービスがいくつか出現し、ケータイサイトの解析がより身近になったが、解析データから何をどのように読み取り、どのように活用したら良いのかという点になると、とたんに引いてしまう担当者も多いのではないだろうか。
myRTmobileのサービスから、大まかに来訪者の行動傾向を探っていく手順を交えながら、コンテンツと来訪者の関係を見ていこうと思う。
CGMサイトを例とした行動傾向分析
分析対象として取り上げたのは、携帯対応の日記や掲示板の無料作成が可能な「バクダンネット」に開設されているアイドルグループのファンが集う非公式サイトだ。
先日総務省から発表された、平成20年版の情報通信白書における携帯インターネットの利用状況の項目によると(図1)、20~29歳の利用率が最も高く、伸び幅においては50~59歳が11.9ポイント、60~64歳が9.8ポイント、65~69歳が11.4ポイントとなっていた。
その点から、対象となるアイドルグループのファンの多くが女性であり、年齢層においては小学生から主婦層までかなり幅広いと思われたことから、管理運営会社の方の許可を頂き分析対象としてみた。このコンテンツにどのような行動傾向の人々が集まっているのかを、myRTmobileのデータを元に探ってみたいと思う。
※PV数など具体的な数字の掲載を控えさせていただくに当たって、レポートを再集計している点については御了解いただきたい。
端末情報から得られる意外な行動傾向
社団法人 電気通信事業者協会の発表による2008年10月末の事業者別携帯契約数を元に、docomo、KDDI(au)、ソフトバンクの契約割合をグラフ化してみた(図2)。
docomoが契約数の半数を占め、次いでKDDI(au)、SoftBankとなっている。
では、解析対象としたコンテンツへの来訪者のグラフではどのようになるだろうか。
図2と比較してみると、契約数では20%以下であるSoftBankだが、解析対象コンテンツへの携帯インターネット利用率はKDDI(au)よりも高いことがわかる。
図1の年齢層別の利用傾向と比較し、想定している来訪者属性を加味すると、解析対象サイトへの来訪者はSoftBankユーザが多いと考えられる。
そのため、携帯契約数としては20%以下ではあるが、今回の解析対象コンテンツ利用者層に対してはSoftBankユーザへの対応を考慮する価値が十分にあると言える。
トレンドサマリーで時系列に来訪者傾向を探る
myRTmobileでは、[レポート]メニューをクリックして表示される[トレンドサマリー]という項目で、データが集計され始めてからのPV数やユニークユーザー数、滞在時間などの傾向を読みとることができる。myRTmobileのレポートでは、それぞれ「PV」「ユニーク」「滞在時間」と表記している。
このレポートで、日々の来訪者の行動傾向をざっくりと把握することが可能だ。そこで、解析対象サイトで、タグを設置した10月28日からの動向を探ってみたいと思う。
[トレンドサマリー]レポートを開くと、「期間 20yy/mm/dd-20yy/mm/dd」という日付の横に、カレンダーのアイコンがあるので、これをクリックする(図4の(1))表示されるカレンダーの「選択:」項目をクリックし(図4の(2))プルダウン表示される項目から「期間」を選択する(図4の(3))。
「期間」を選択したら、解析「開始:」の日付を選択する。図5の(1)のようにテキストボックスに直接日付を入力することも可能だが、下の図5の(2)の▲マークを選択して月を決定し、図5の(3)をクリックして日を決定するといった、カレンダーからの入力も可能だ。
続いて同様に解析「終了:」の日付を選択し、「適用」ボタンをクリックすると、サマリーレポートが閲覧できる(図6)。
公開するにあたり、数値などを省いて再集計・レポート化しているが、上記のように日ごとの行動傾向を読み取ることができる。
さらに、「ユニーク」と「滞在時間」を比較すると、図7のように、来訪者が少なくてもサイトへの滞在時間が長い日と、来訪者が多くても滞在時間が短い日があることがわかってくる。
来訪者数を軸に比較した上で、「PV」と「滞在時間」を比較すると下の図8のようになる。図6、7、8をふまえると、解析対象コンテンツにおいては、滞在時間の長さがPV数の増減に影響しているが、ユニークユーザー数に応じたPV数の増減や、滞在時間の差異には繋がっていないことがわかる。
トレンドサマリーからでも、解析対象サイトへの来訪者の行動傾向として、
- 金曜日から日曜、祭日に向けて来訪者が増える
- 来訪者の増加と滞在時間は比例せず、他に要因があると考えられる
- 滞在時間とPV数の傾向はほぼ一致している
ということが見える。
しかし、かなり短い期間の集計であるため、統計とするには早すぎるので注意が必要だ。
「PV」「ユニーク」「滞在時間」から時間を軸として行動傾向を探る
[サマリーレポート]によって、「PV」、「ユニーク」、「滞在時間」が比例している期間と、比例していない期間があることが見えてきたので、さらにこれらを[時間帯別]レポートで比較してみる。
[レポート]メニューをクリックして表示される[時間帯別]をクリックし、10/29~11/1までと、11/2~11/4までを比較してみる。期間指定の方法は図4~5を参考として欲しい。
カレンダーと紐付けると、10/29~11/1は水曜日~土曜日の動きとなり、11/2~11/4は3連休の日曜と月曜に平日の火曜日が加わった動きとなる。重ねてみた結果が図9だが、ここまではっきりとした傾向が見える。
特に午前中の「PV」のピークだが、平日寄りのデータでは朝7時に増加が見られ、休日寄りのデータでは朝10時となっている。平日朝7時は会社員や学生の通勤・通学時間と重なっており、移動中の電車内などでサイトを閲覧しているためではないかと推察される。
また平日は午後3時に著しく落ち込んているが、休日は緩やかに落ちていく傾向も特徴的だと言える。
解析対象サイトでは、平日と休日の差で大きく行動傾向が異なるようなので、次は平日と休日で比較を行ってみようと思う。
平日と休日の比較で行動傾向の違いが見えてくる
平日と休日の「PV」と「閲覧時間」の比較が下の図10だ。
全体的に見て、各ポイントが平日と休日で2時間程度差があるのがおわかりになるだろうか。
平日は朝の「PV」のピークが7時なのに対して、休日は10時であり、午後の「PV」のピークは12時なのに対して2時となっている。さらに平日よりも休日の方がPV数も多いことがわかる。
そして特徴的なのが、(1)のように午前7時に「PV」のピークを迎えるが、「閲覧時間」のピークは午前9時と2時間ずれているのに対して、休日は(2)のように1時間のずれしかないうえに、(1)の傾向と(2)の傾向の大きな違いとして「閲覧時間」は休日の方が圧倒的に長い。
この午前中のデータから、通勤時間にちょこちょことサイトをチェックし、登校後または出社後にゆっくりとサイトを閲覧する平日の行動傾向に対して、休日は常にサイトを閲覧し続けることができるという閲覧パターンの違いが表れていることが想定できる。
深夜11時頃にPV数は上がっているものの、あまりサイトには滞在していない傾向となっており、特に平日は、寝る前にちょっとサイトに目を通す程度という傾向が見られる。
深夜2時からはPV数は極端に減る代わりに、閲覧時間が急激に上がっている点は、サイトにアクセスしたまま寝てしまったなどの傾向が表れているのかもしれない。
行動傾向を読み取った上で、施策につなげていく
PCでのアクセスと比較をしているわけではないが、モバイルのアクセス解析によって、ユニークユーザー数やPV数と滞在(閲覧)時間の傾向を分析することで、来訪者のライフスタイルが見えてくることを感じていただけただろうか。
myRTmobileでは、docomoとauのHTTPS(SSL)ページが分析できない、つまりコンバージョンポイントにおける効果測定が行えないというデメリットはあるものの、解析対象コンテンツへの来訪者の行動傾向を分析することで、外部からの流入を増やすためのバナー、リスティング広告やメールの出稿先・出稿タイミングや、サイト内での回遊を増やし、PV数や滞在時間を増やすためのコンテンツ追加タイミングなどを見極めることが十分可能だ。
本解析対象サイトの分析レポートからわかったことをざっとまとめると、
- 平日と休日の環境が明確に分かれている層が多い(学生・一般的な会社員の勤務時間帯)
- 平日の午前中は7時に「PV」のピーク、9時に「滞在時間」のピーク
- 休日の午前中は10時に「PV」のピーク、11時に「滞在時間」のピークで、どちらも平日より多い
- 平日の午後は5時に「PV」のピークが来るが、「滞在時間」は延びることがない
- 休日の午後は2時とさらに7時に「PV」のピークが来る。さらに「滞在時間」も延びる。
ということが見えてきた。
あとはどのタイミングにどのような戦略を当てはめていくか、その結果を再度分析しPDCAを繰り返してみよう。
ケータイアクセス解析を行っている方は、自コンテンツの分析結果と比較してみると新たな発見に繋がるかもしれない。
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