安く!早く!を実現するサイト制作の発注マニュアル

賢い発注はウェブサイト制作フローの正しい理解から――よくある4つの悩み事

安く!早く!を実現するサイト制作の発注マニュアル

[特集] 安く! 早く! を実現するサイト制作の発注マニュアル
賢い発注のやり方&失敗するやり方 制作会社とのうまい付き合い方教えます

賢い発注はウェブサイト制作の正しい理解から
こんなクライアントは嫌だ!
制作サイドのホンネから知る“成功する制作の進め方”

ユーザーを引き付ける魅力ある企業サイト、思わずため息がでるキャンペーンサイトなど、ウェブでは多くの成功事例を見ることができる。しかし、外から見ると美しく見えるプロジェクトも、紆余曲折を経て達成されることがほとんどだ。スムーズに進む案件の方が少ないといってもいい。なぜこうもスムーズに進まないのか? ネットビジネスの基本であるウェブサイトの制作は、どのように進むのか、うまく進めるためにはどうしたらよいのかを、成功例と失敗例から理解していこう。

よくある4つの悩み事――制作現場には困った問題が山積み

ウェブサイトはメディアとしてかなり一般的になり、制作現場のコミュニケーションはスムーズになってきた感がある。しかし、それでも日々さまざまな問題に直面することが多い。ここではまず、ウェブサイト制作の依頼段階にありがちな、困った問題を4つ取り上げる。あわせて、ウェブサイト制作の大まかな流れ、各段階で必要な作業、制作側に求められる認識についても見ていくことで、制作会社と仕事をうまく進めるためのヒントをつかんでいこう。

発注者の“困った”①
ウェブサイト制作の仕事がどう進むかを知らない

ウェブサイト制作は、「受注」「企画」「設計」「制作」「運用」という5つのフェーズで進むのが一般的である(図1)。各フェーズで発注側と受注側がそれぞれ何をしなければいけないか、あらかじめ双方で確認しておくことが大切だ。詳細が確定するのは提案書やプロジェクト計画書まで進んでからだが、それよりも前の段階で、大まかな作業フローを確認しておこう。また、どのような提案が期待できるのか、強い分野はどこか、どのような案件を得意としているかなど、制作会社のアピールを聞いておくのもいいだろう。

なお、オリエンテーションを主催する際は、受注側への依頼内容を文書化した「提案依頼書」(RFP:Request for Proposal)を渡すのが一般的である。受注側(制作会社)はそれを受けて、「提案書」を作成しプレゼンテーションを行う。コンペ(複数の制作会社がプレゼンし、サービス内容や予算などの点で最もマッチする受注先を決めるしくみ)の場合もあり、この場合は受注内定後に詳細なRFPをあらためて用意し、キックオフミーティングのあとにプロジェクト計画書の作成に入る。その後、プレゼンと受注契約を経て制作業務がスタートすることになる。

図1 ウェブサイト制作の4つの基本フェーズと、各フェーズで必要な作業。緑色の部分は特に注意が必要なポイントとなるフェーズだ。
発注者受注者
受発注提案依頼書(RFP)
オリエンテーション・提案依頼
提案書・概算見積もり
プレゼンテーション・コンペ
受発注の内定
提案依頼書(RFP)
キックオフミーティング
プロジェクト計画書
要件定義作業範囲設定全体・個別計画予算・スケジュール
プレゼンテーション・見積書
受発注の正式決定・契約
企画企画会議
マーケット調査サイト分析
戦略立案
プロモーション計画ワークフロー計画
企画書作業計画書
設計基本設計・詳細設計
デザイン制作
設計プラン検討・コンテンツ制作計画
コンテンツ素材準備
 
開発環境整備
制作仕様書
設計デザインコーディングシステムコンテンツ
制作
フロントエンド開発(デザイン・コーディング)バックエンド開発(システム・プログラム)その他の付随作業
テスト・デバッグ
仮サイトチェック・フィードバック
検品納品
運用サイトの運用・更新運用サポート
プロモーション検討効果検証






新たな展開やリニューアルの検討

発注者の“困った”②
制作会社の実績を知らずに依頼してしまった

多くの制作会社はウェブサイトで実績を公開しているので、サイトを見れば依頼前に実績を確認できる。どんなサイトが得意な制作会社なのか、どんな規模のサイトを手がけたことがあるのかは、実績からざっくりと把握できるものだ。

制作会社側からすると、もし先方が実績を知らずに依頼してきたならば、まずはその依頼が本気かどうかを疑ってしまう。常識的に考えれば、ウェブサイトで公開されている実績を判断材料にしたり、事前にメールなどで実績を問い合わせたりするのが普通だからである。

過去の実績、対応可能な規模感や技術に関して、双方の認識にミスマッチがある状態で仕事を進めても、良い結果は得られない。実績は事前にしっかりと確認しておこう。

発注者の“困った”③
単純にウェブに関する知識や制作の依頼経験がない

新規にウェブサイトを立ち上げたいという会社のニーズは次の3つに分けられる。

  1. 会社を新規設立した場合

  2. 事業の拡大にともない新しくウェブサイトを立ち上げる必要が出た場合

  3. 新たなビジネスチャネルとしてウェブサイトを活用したい場合

今では一定規模以上の会社ならばウェブサイトを持っているのが当たり前だが、プロに制作を依頼するのは初めてということはあるだろう。このような場合、ウェブサイトを立ち上げる理由が上記3つのどれなのかをまず確認するといい。制作会社に依頼するにしても、任せきりにするのではなく、何を目的としてウェブサイトを活用したいかを社内で明確にしたうえで制作会社に伝えることが大切だ。

発注者の“困った”④
専任のウェブ担当者がいない、いても数年で異動してしまう

ウェブサイト制作は、依頼主と制作会社がうまく協力しなければうまくいかないものだ。しかし、特に中小企業の場合にはウェブ専任の担当者がいないケースも多い。大企業であってもウェブを重視していない会社であれば、1年を待たずに担当者が異動してしまい、せっかく築きあげた関係をほぼゼロからつくり直さなければならないケースもある。

これは多くの会社にとって、ウェブサイト制作が「会社全体の業務のほんの一部にすぎない」ためである。ECサイトなどのネット型ビジネスを展開している場合のような、社内リソースをウェブサイトに大きく割ける会社のほうがむしろ少なく、従来のリアル型ビジネスが中心の会社のほうが圧倒的に多いということだ(図2)。

図2
図2 ウェブサイト制作は「会社全体の業務のほんの一部にすぎない」会社がほとんど。専任のWeb担当者がいる企業ともなると、さらに限られる。

専任の担当者がいたほうが制作業務はスムーズに進むのは確かだが、ウェブサイトに対して社内リソースをどのぐらい割り当てられるかは会社ごとに異なるため、一概に「割り当てを大きくすべきだ」とはいえない。もしリソースをたくさん割けない場合は、制作会社にたびたび足を運び(または来てもらい)、素材をやり取りし、ウェブサイトを制作しなければならないこともある。このようなワークスタイルが双方で不可能な場合は、案件を継続的にお願いできないことになる。

ただし、専任とはいかなくても兼任の担当者を用意できる場合はあるだろう。一定規模以上の案件で専任のWeb担当者を置けない場合は、制作側から1人ないし数名、一定期間勤務してくれるように依頼し、引き受けてもらえる場合もある。

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