かわちれい子のウェブマスターのお仕事

多品種B2Bサイトのウェブマスターは製品知識が命/NECエレクトロニクス 野口 勇氏

かわちれい子のウェブマスターのお仕事

かわちれい子のウェブマスターのお仕事

NECエレクトロニクス ウェブマスター 野口 勇氏

かわちれい子(CreatorsNet)
写真:大島万由子

会社によって大きく異なる「ウェブマスター」の実態。所属部署は? 予算確保は? ワークフローは? サイトの目的は? 注目しているテーマは? さまざまなウェブマスターの姿を見ることで、これからのウェブマスター像を見出したい。

「ここが我が社のサイト」ではなく
「ここが我が社」と言える場所を目指して

20万ラインナップの製品知識
それがないと務まらない

野口 勇氏
NECエレクトロニクス株式会社
コーポレートコミュニケーション部
エキスパート

●かわち NECエレクトロニクスのウェブサイトは、いつ頃立ち上がったんですか?

●野口 結構早いですよ。1994年か95年くらいです。とにかく、ウィンドウズ95発売以前であることは間違いありません。

●かわち そんなに早い時期だと、インターネットそのものの認知も進んでいませんよね?

●野口 そうですね。モザイク※1しかなくて、「モザイクの使い方」という本が社内で作られ、配布されてました。

※1 モザイク:Mosaic、1993年に開発されたインターネット初期のウェブブラウザ

●かわち 野口さんは、ウェブサイトの立ち上げ当時からのご担当ですか?

●野口 いえ、99年からで、もともとは、輸出管理を担当していました。うちで扱っている製品は品種にして2,000種弱、20万ラインナップにもなります。これらの製品の輸出時に、通関手続きがスムーズに進むように販売店さんや税関と電話やファックスでやりとりをする、というのが業務でした。税関から電話がかかってきて、製品についていろいろと聞かれたりするわけです。税関の事務所に出かけて説明する、ということもやりましたよ。その場で説明できないと当日の出荷がダメになってしまい、さまざまなところに迷惑をかけることになるので、製品全般の知識が身につきました。

ウェブサイトをコンテンツ面で強化するぞ、ということで異動になったんですが、しばらくして市場調査の担当になって、ウェブからはちょっと離れたんです。1年半くらい市場調査にいて、また、ウェブサイトの担当に戻ってきました。

●かわち 輸出管理、市場調査、Web担当って、あんまりつながりがないですね。

●野口 ところが、そうじゃないんですよ。輸出管理をやっているときに身につけた製品知識や、市場調査のときに自分がやっていた行動、というのはウェブサイトを運営していくうえで、非常に役立っているんです。

●かわち というと?

●野口 先ほども申し上げましたけれど、当社で扱う製品は20万ラインナップにもなります。これらすべてをウェブサイトで平等に扱えるかというと、そうはいかない。本当はそうしたいんですけれど、何事にも限界はあります。声の大きい担当者がいる事業部の製品を大きく扱うわけにもいかないですし(笑)。その製品における当社の販売戦略を考えてコンテンツを制作しなくてはならないときに、製品知識がないと的外れなことをやってしまいかねません。

●かわち なるほど。製品ごとに訴求するポイントが違うというようなこともありますもんね。

●野口 そうです。低電圧が至上命題な製品もあれば、最高速だけを追求する製品もあります。どこが重要な訴求点で、どうやったら必要とする人に必要な情報が届くのかということを考えてコンテンツを作らなくてはならないんです。

アクセス解析は3ツールを併用
昔から変わらないgrep解析も

●かわち ウェブサイトのアクセス解析などもマメにやっていらっしゃる?

※2 grep(グレップ)

Unix系のツールで、テキストファイルから特定の条件で行を抽出できる。アクセスログファイルはテキストファイルなので、どんな情報がどんな形で記録されているかがわかっていれば、grepを用いて解析できる。

●野口 2種類の商用ツール(サービス)を組み合わせて使ってますよ。あと、いまだgrep※2も使って解析しています。

●かわち え?grepですか?

●野口 やめられないんですよ。もう10年これでやってますから。昔のデータはgrepで集計したものしかないので、今とのデータを比較するときには、これしか比較のしようがないんです。アクセス解析って、同じ基準で見るということも大事なので。

●かわち 昔と今とで人気のページが違ったりすることはあるんですか?

●野口 人気というか、人を集めるページは、今も昔も変わりなく技術情報です。ほとんどがPDFで公開されていますが、サーバーにあるファイル数ということでも、汎用的な製品のPDFが一番多いです。

●かわち 技術情報の資料って、そんなに多いんですか?

●野口 ええ、そりゃあもう。A4用紙2~3枚で済むものもあれば、200ページ×5部で1セットというものまで、さまざまですね。それが、品種の数だけあります。

おもしろいのが、技術資料をじっくり読むと30分どころじゃなくかかる場合があったとき、アクセス解析ツールでは「滞在時間」ではなく「ページからの離脱」と扱われたりするんですよ(笑)。

●かわち 技術者にとっては重要な資料なんですね。

●野口 実は、ウェブサイト立ち上げの大きなモチベーションになったのは、この技術資料だったんです。

ウェブサイトやインターネットがなかった頃、これら技術資料は、すべて印刷物として提供していました。うちの製品を使っていただいている企業の方から「これこれの技術資料が欲しい」と電話がかかってくるわけです。で、それをストックヤードから郵便で送るという手間がかかっていました。そういう電話がかかってくるときは、たいていお客さんは急いでいるので「今在庫がありません」なんて、言えないので、ストックはそこそこの量があるわけです。

製品のバージョンアップに伴ってドキュメントの内容が改訂されると「修正前の古いドキュメントはこの世にあっちゃいけないもの」なので、たとえたくさん在庫があったとしても、即処分です。これって、ものすごいコストがかかることですよね。

そのために販売店向けの拡販ツール提供システムがあったのですが、一般配布のものはこのインターネットを使おうということで、便利さもすぐにわかってもらえて一気に大きくなりました。

あえて便利屋になることで
社内の情報の「目利き」になる

●かわち 社内(イントラ)サイトを立ち上げるときにも非常に苦労されたとか。

●野口 ウェブサイトに載せたい製品情報を集めるのにも、製品担当者ところに行って「資料ください」と言わないと、だめだった。それが大変でしたね。

どうやったら仕事がやりやすくなるかなあと考えて思いついたのが、直接業務ではないことにも、丁寧に答えよう、ということでした。野口に聞けば解決する、という空気を作れば、社内の情報なんかが集まってくるかな、と。

電話がかかってきたりメールがきたりして大変でしたけど、そういうことでもない限り、社内にどんな人がいてどんな仕事をしているのかって、わからないですよね。この建物だけで2万人が働いているから、フロアが違えばまったくわからないということもあるわけです。いろんな意味で「目利き」になりましたよ(笑)。

●かわち ウェブサイトを担当していらっしゃるのは、全部でどれくらいの人数なんですか?

●野口 チームは7人です。社外に向けて情報を発信するウェブサイト担当と、社内に向けて情報を発信するイントラネット担当という風に分担はしていて、今の僕のメインはイントラネットなんですが、立ち上げ当初からいるということもあり、どちらもやってる、という感じですね。

●かわち 社外向けウェブサイトに対する社内からの期待も高そうですね。

●野口 いや、社内では面倒がられることが多いです(笑)。社外のお客さんからの期待が大きいですね。僕たちは「作るプロ」です。でも、作りっぱなし・売りっぱなしじゃいけない。うちの製品は、日本国内だけでなく世界中で使われているので、24時間365日休まず稼働するウェブサイトでしっかりとしたアフターサポートをやらなくちゃいけないと思っています。

うちのウェブサイトの目的は2つで、特約店さんへの見込み客の誘導と、カスタマーサポートとしての技術情報の提供ですから、やはりFAQや技術資料、デベロッパーズキットの配布など、力を入れて取り組んでいます。検索エンジン最適化もやって、FAQのページに人を集めるようにしています。

●かわち 製品情報のページではなくて、ですか?

●野口 たとえば、新しい携帯電話の開発に必要なLSIを探している人がいるとしますよね。その人は「指名買い」をするのではなく、まず検索エンジンで付加させたい機能に関するキーワードで検索するわけです。自分が欲しい機能をもったLSIを探すんですね。そんなケースでは、製品の特徴も重要だけれど、開発を支援する環境が整っているということもアピールポイントになりますから、FAQやドキュメントの充実が必須なわけです。また、アクセスログを解析して、製品を探している人たちがどんな言葉を使ってウェブサイトを訪問しているのかということも精査し、サイト作りに活かしてます。

ワークフローの設計が大事
業務を「作業」に落とし込む

●かわち サイト作りということでは、CMSを導入されているそうですね。

●野口 はい。4年ぐらい前に導入しました。それまでは、そんなに特殊なことはやってなくて、普通に1ファイルずつ作ってたんです。ところが、これまたトップダウンで、システムを導入して効率化を図れ、ということになって。

●かわち 導入のご苦労もあったでしょうね。

●野口 そうですね。「ワークフローの設計」というのが大事だなあ、と思っています。ウェブサイトを制作・管理するという日常業務を「作業」にまで落とし込んで、その作業をいかに順調に流していくかということをきちんと考えないといけません。作業にまで落ちると、みんな、仕事がしやすくなるんですよね。「そういうもんか」と思って仕事してもらえるみたいですね(笑)。

逆に言うと、作業にまで落とし込まないと、それは人でのほうが機転がきいて効率的な部分を残したことになるので、理解してもらえないとも言えますね。

●かわち アフターサポートに力を入れたウェブサイトということでしたが、他に力を入れていらっしゃることはありますか?

●野口 うちの製品を採用してみようかな、と思ってくださった方が、うちの製品を販売していただいている特約店にコンタクトしやすいナビゲーション、ということは常に考えています。うちのウェブサイトで直接販売しているわけではないので、そこも大きなポイントですね。

常に訪問者の視点を忘れない
営業に同行してヒアリングも

●かわち 他に心がけていらっしゃることはありますか?

●野口 常に、ウェブサイトを見てくださる方の思考や行動を考えて行動しています。

技術資料のドキュメントは大容量になってしまいがちなんですが、これが実はお客さんに迷惑をかけていることもあるんですよ。うちのお客さんは企業の研究拠点にいらっしゃることが多いのですが、そういう場所のインターネット接続はそんなに速くなかったりするんですよ。で、ダウンロードにものすごい時間がかかるわけです。

こういうことって、実際に体験してみないとわからないことも多いので、営業担当に無理を言って、お客さんのところに一緒に行ってもらって、NECエレクトロニクスのウェブサイトについての意見や要望を直接聞くこともあります。

●かわち それって、かなり珍しい取り組みですね。

●野口 そうですかねえ。でも、そうしなきゃ見えてこないことはたくさんありますから、大事な取り組みだと思います。インターネットはコミュニケーションのツールでしかない、ということです。どれだけ技術やツールが発達しても、面と向かってのコミュニケーションには絶対勝てませんから。

●かわち 他に力を入れて取り組んでいらっしゃることはありますか?

●野口 CMSのユーザー会などには、積極的に参加して情報収集するようにしています。情報といっても、そういう場所で出る話題って、テクノロジーについてのことじゃないんですよ。組織内での立ち回りとか周囲とのコミュニケーションの取り方とかみたいな話ですよ。みんな同じようなことで苦労してるんだなぁ、という苦労話の共有ですね(笑)。製品のユーザー会は、ウェブサイトを運営していく上でのコツというか勘所というか、そういうことを共有するにはいい場所ですね。

ウェブ上では、自社に都合のいいことしか言わなくて、他社より劣った部分は隠蔽してしまいがちなので、会社の実態とウェブサイトの内容とが乖離してしまいやすいですよね。なので、私は「ここが我が社のサイトだ」ではなく、「ここが我が社だ」と言えるサイトにしたいですね。そうすれば醜い実態と美しいサイトのギャップをごまかすような、不毛な体裁作りの業務は行わなくてよくなり、自然と「見える化」が進むはずです。

だから、たとえばCMSでワークフロー定義を行う際に、理想的な行動体系をそのまま実装して、それに従わせればいいわけですよ。でも、日本企業ではそれは非常に難しい。文化の違いもあり、そんな単純には事は運びません。ここに、すべてのウェブマスターの悩み節があるんですよね。

●かわち 最後に、これからインターネットに関わる技術で気になっているものはありますか?

●野口 P2Pです。解決しなければいけない問題はさまざまあると思いますが、すべてのデータを一元管理してバックアップして、なんて、その時点で限界が見えていますからね。

●かわち 今日はお忙しいところ、楽しいお話をありがとうございました

※この記事は、『Web担当者 現場のノウハウVol.4』 掲載の記事です。

※社名、所属部署、利用サービス、価格など、この記事内に記載の内容は、取材当時または記事初出当時のものです。

NECエレクトロニクス ウェブサイト

http://www.necel.com/index_j.html
メモリやLSIなどの半導体製品というB2B商品を扱う同社のサイトには、各種半導体製品の仕様やサポート情報に加えて、先端技術の情報や「バーチャル工場見学」といったコンテンツも掲載されている。

NECエレクトロニクス株式会社の会社概要

  • 設立:2002年11月1日
  • 資本金:860億円
  • 従業員数:約24,000人(連結)
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