企業ホームページ運営の心得

最適なコンテンツが何かは顧客台帳に聞くべし

Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の弐

「参考」という名のパクリホームページは負け組への序章

はてさて企業のホームページ担当となり、最初に直面する壁が「コンテンツってどうやって作るの?」ということではないでしょうか。今回はお客さんを連れてくるコンテンツの作り方です。

コンテンツとは「目次」のことですが、インターネット用語としては幅広い意味で使われており、本稿ではホームページ(サイト全般含めて)として表示される中身のこととお考えください。

母校の高校のOB会のホームページを立ち上げる話が出ました。外資系の大手株式情報機関のシステムまわりを手がけている先輩が、「コンピュータやインターネットのプロ」ということから担当になったのですが、ものすごく大変だったと後に語っていました。そして、苦労の末にできあがった「OB会ホームページ」ですが、アクセス数も評判も芳しくないようです。システムのプロとコンテンツのプロはイコールではないので、当然といえば当然の話です。

中小企業がホームページを作る場合、同業他社のコンテンツを「参考」にすることが多いのですが、参考に止まらずに社名やロゴを置き換えただけの「パクリホームページ」になることもあります。プロの制作業者に発注したのにパクリになることが多いのも困った問題です。

「学ぶ」という言葉は「真似る」が変化したものだといいますので、真似ることを悪いとはいいませんが、パクリページが本家を超えられることは難しく、そのことはインターネット上で同業他社の後塵を拝し続けることを意味します。

『楽天市場がなくなる日』執筆秘話

拙著『楽天市場がなくなる日』は、「楽天のバーカ」という一方的な誹謗中傷を期待した方には残念な仕上がりとなっていますが、実際に楽天市場に出店されていたり検討されていたりする方や、商売でホームページを使おうと考えている「実務派」からは、「商売用ホームページの作り方がわかった」や「会社のホームページに何が必要かを知った」と喜びの声を沢山いただいております。

拙著の目的は楽天市場でのゲームのルールの解説と同時に、ホームページは大手に頼らなくても充分に戦える「ツール」だということを知ってもらうためでしたので、嬉しい限りです。また、読者プレゼントとして提供した「PDF版」では商売用コンテンツの作り方を踏み込んで言及していることから「商売でホームページを使うならPDF版の方こそ読むべきだ」という業界関係者の声もいただいております。

それもそのはず、そもそも『楽天市場がなくなる日』は、「中小企業が商売用ホームページを活用する方法」として「ビジネスコンテンツの作り方」をまとめた電子書籍でした。それを知り合いの編集者に送ったところ、当時飛ぶ鳥も一瞬で焼き鳥にするほどの勢いのあった「楽天市場」を結びつけた「出版企画」が生まれ、「楽天市場に出店しなくてもホームページは活かせるということを沢山の人に知らせることもできます」という編集者の口説き文句に「その企画乗った!」と筆を執ることになったのです。

Web 2.0でホームページの時代は終わってしまうの?

Web 2.0ムーブメントに乗って数々の書籍が出版されています。技術ではAjaxにPHP、MySQL、グーグルマップスのAPI解説などがあり、技術以外ではマーケティングや新聞、広告、バイラルなどなど「2.0」が爆発しています。「ビジネスが変わる!」「大変化がやってくる!」と大変な時代になったと予感させ、パラッとページをめくると「ブログ」「SNS」などの文字が踊り、ずぶの素人には馴染みの深い「ホームページ」という単語を見かける機会が少なくなりました。

私の所にも「もう、ホームページの時代じゃないのでしょうか?」という相談が寄せられます。

さて、ホームページは遅れているのでしょうか? ブログを開設してトラックバックを貼り、コメントを書き、RSSを配信してSNSのバイラルマーケティングでロングテールを意識して、アドワーズに出稿して(念のため「語弊を恐れない」文章表現を使用しています。詳しくは前回の「上司への説明は戸田奈津子ばりの超訳で」を)……どれもこれもやった方が良いことですが絶対ではありませんし、商売用ホームページとして考えると優先順位は低いのです。

流行の最先端を追いかけるその前に「ちゃんとした商売用ホームページ」を持つのが最重要課題なのですが、ところが「ちゃんと」を持っている中小企業はまだまだ少ないのです。

ベンツに乗るためのクレープ屋というコンテンツ

「ちゃんとした商売用ホームページ」には何が必要か? それはあなたの会社にお客さんが求めているコンテンツが掲載されているかどうかということです。

最近では減りましたが、ホームページを開くといきなり「本社ビル」が現れ、「社長挨拶」があり、さらには「社長動画」というのがありました。あなたがセブンイレブンに買い物に行くと、入り口に鈴木敏文セブン-イレブン・ジャパン会長の挨拶映像が流れていたらどう思うでしょう。セブンイレブンを訪れるお客さんの目的はさまざまでしょうが、鈴木会長の挨拶でないことだけは間違いありません。ホームページはあなたの会社の「インターネット支店」です。だからリアルな社会に置き換えればすぐにわかることなのですが、トンデモインターネット支店はまだまだ絶滅していません。

先日、とあるクレープチェーン店の店頭に据え付けられている大型モニターに、創業者が取材された番組が流されていました。そこで「洋菓子店を始めた理由」を問われ「ベンツに乗りたかった」と語っていました。焼きたてのクレープの甘い香りから、ベンツに注がれるハイオクガソリンの匂いを感じた気がしました。甘い洋菓子に温かな幸せを感じるのは「昭和世代」故かも知れませんが、「成り上がり」のギラギラのサクセスストーリーを語るその様に食欲は失せてしまいました。

リアル店舗でクレープの香りという他の刺激があるだけ救いがありましたが、インターネット支店でクレープのお店と思いアクセスしたら「ベンツに乗るためのクレープ屋」と語られたとしたらどう思うでしょうか? これが『アントレ』(独立、起業向け情報誌)や『ビッグトゥモロウ』(ビジネス誌)のコンテンツならピッタリなのですが、こういった「コンテンツのミスマッチ」は多いのです。

リフォーム業の「インターネット支店」ならどんなリフォームができるのか。工務店なら注文住宅を受けられるのか。飲食店ならどんなメニューを提供しているのかといった、「求められているコンテンツ」が用意されているのが「ちゃんとした商売用」です。

ちなみに(詳しくは別の機会に譲りますが)、「ちゃんと」のなかに詳細な価格を入れるのはケースバイケースでマイナスに作用することもあるのでご注意ください。価格はあまり気にしない方が「良いコンテンツ」となります。

商売用コンテンツに不可欠な「会話のキャッチボール」

ちゃんとした商売用ホームページに欠かせない「お客さんの求めるコンテンツ」を考えるのに役に立つのが「顧客台帳」です。

これは手書きのファイルでもデータベースからでもかまいません。お得意さまの氏素性や購入履歴を記した「顧客台帳」が、「お客さんの求めるコンテンツ」のアンチョコとなります。

ネットとリアル社会は地続きです。商売用ホームページはファンタジーでは完結しません。通販主体のホームページでも、サービス提供の案内のためのものでも、必ずお客さんとの接点があるのです。そして同じ商品を提供しているなら、インターネット経由でご来店されるお客さんも、リアル店舗を訪れるお客さんも違いはありません。

楽天市場の三木谷社長は「インターネットは究極の対面販売」といいます。究極かどうかはともかく「対面販売」であることに異論はありません。それはホームページの中ではコンテンツを通して「対話」が行われているからです。この「対話」がお客さんの反応を左右します。ホームページを訪問したお客さんは、コンテンツを「読む」際に「相手が語りかけている」との疑似感覚に陥ることから、「上手な対話」が成立しているコンテンツは時給のいらない優秀なスタッフがそこにいるのと同じ効果を発揮するのです。

対話というのは相手がいて成り立ちます。俗にいう「会話のキャッチボール」です。そのため、若者向けコンテンツで「本日は拙サイトにご足労願いまして」とやるとアメリカザリガニのように退かれるでしょうし、団塊の世代向けで「ちょーサイコー」は再考の余地アリです。ここで「顧客台帳」の登場です。

顧客台帳がネットのあちら側の客を連れてくる

商売用ホームページには、リアル店舗や現在取り引きされているお客さんが、ネットを経由してやってくるだけとお考えください。決して、まったく新しい顧客層を開拓できるわけではありません。想定外の顧客層を開拓できたという成功例が語られることもありますが、これは偶然の要素が大きいのです。商売で偶然を祈っている暇はありませんから、購入確率の高い「顧客層」をターゲットにするのが「適切」です。

世の中には、あなたのお店から「買わなかった不特定多数無限大」の方が多いという事実から考えると、購入してくれたお客さんの情報が記されている「顧客台帳」は、自分の商売を支持してくれているもっとも「購入確率」が高い層のリストなのです。

「年齢」「家族構成」「所得」「利用頻度」といったものはそのままコンテンツ作りの「答え」となります。たとえば、一般的な通販なら「クレジット払い」や「着払い」だけで充分でしょうが、ビジネス層が相手なら「締め日」や「売り掛け条件」を知りたいお客さんがいるかも知れません。利用者に主婦が多いと顧客台帳から読み取れるなら、「子育て」や「アンチエイジング」など、本業から多少ずれたとしても「派生コンテンツ(人によっては捨てページともいう)」から顧客ロイヤリティを高めるコンテンツを検討することもできます。つまり、顧客台帳を手元に置いておけば、ネットのあちら側にいる見えない相手が、そこにいるかのようにコンテンツが作れるのです。

同業他社のホームページを「参考」にすると「安心」するものですが、それはお客さんを見ずに商売をしているようなものです。「顧客台帳」という「ネットのあちら側にいるお客さん」が見えているのですから、もったいない話です。

商売用ホームページのコンテンツ作りは「顧客台帳」を眺めるところから始めてください。

客の息づかいも含めた「答え」から入ることができますから。

♪今回のポイント

顧客台帳で作るコンテンツ

Web 2.0でなくてもちゃんとしたホームページを作ればまだ間に合う!

出版企画という商品開発

余談になりますが、商業出版は「原稿ありき」で始まる場合もありますが「企画ありき」の方が多いのです。「どんな本を作ろうか」という「企画会議」を経た後、作家やライターに「発注」する形となります。書籍も商品ですから、そこには出版社のさまざまな営業戦略があり、一般企業の「商品開発」に当たる部分が「出版企画」となります。

『○日でできるホームページ』といった類の本も「企画」がベースです。初めてホームページを作ったときにお世話になった人も多いかも知れませんが、実際にあの本の通りにできた人は少ないのではないでしょうか。それはホームページをずぶの素人が作るためには覚えなければならない「用語」が多すぎて、3日目には初日の単語を忘れてしまうことが大きな理由です。

しかし、ずぶの素人向けのとっかかりとしては良く、功罪の「功」の部分の方が大きいといえるでしょう。ハウツー物は「企画がすべて」という面があり「できそうな気にさせる企画」が肝心なのです。いきなりトップランナー向けの専門書を開くと、アレルギー反応を起こしてしまうかもしれないずぶの素人を「その気」にさせるというのは、なかなか難しいのです。

かく言う私の書棚には、『一週間でマスターするAdobe PageMill 3.0 for Windows』があります。読んだ記憶がないので「買っただけでその気になった」いいお客さんだったのかも知れません。だから「○日」以内にできなくても取り組もうとした自分を誉めてあげてください。

出版企画としてすぐれているこれらの書籍も、こと「商売用ホームページ」には十分ではありません。それは「企画」の軸が作成技術にあり、コンテンツの作り方には触れていないからです。これはギターの教則本に作曲の方法を期待するようなもので、望むべからざるものです。

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