企業ホームページ運営の心得

中小企業のホームページは焼鳥屋理論で千客万来

Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の参

何でも揃う居酒屋と比内地鶏の焼鳥屋

顧客台帳には「コンテンツ作り」の答えがあります。ところが1つの商品しか置いてないお店でもない限り「どの商品を買ったお客さん」にあわせるかでコンテンツは様変わりしてしまいますし、ホームページの軸となるコンセプトを決めるのも迷われることでしょう。

そこで、今回はホームページの「コンセプト」を考えるときに役立つ「焼鳥屋理論」を紹介します。コンセプトを決めることは中小企業の商売用ホームページではとても重要となります。

行列ができる焼肉店、「スタミナ苑」はテレビや雑誌などに取り上げられる有名店です。スタミナ苑は焼き肉メニュー以外も美味しく、特に「生野菜」という名前のサラダは絶対に注文した方が良い逸品です。ところが「生野菜」がメディアで紹介されることは殆どありません。その他にも杏仁豆腐、ホホ肉スープにクッパなども美味しいのですが、テレビ番組で紹介されるのは「特選ロース」や「上タン塩」、または「ミックスホルモン」という「肉」ばかりです。テレビ朝日の深夜番組、「草野キッド」でダチョウ倶楽部の寺門ジモンさんがスタミナ苑を紹介した際も、やはり「肉」ばかりでした。ところが、プライベートで来店されたときは、連れの後輩芸人に「肉以外のメニュー」を紹介し「ここのはみんな美味しいんだよ」と勧めていたのを見たことがあります。どうして寺門さんは番組内では紹介しなかったのでしょうか。

これはテレビ番組の企画上、焼いているときの「映像」が撮影できる「肉」をフューチャーするからです。放送という限られた時間のなかで、「すべての料理が美味しい」では視聴者に伝わりにくく、サラダでは映像として盛り上がりません。しかし、焼き肉屋さんだから「肉」、そして焼いた時に起こる「ファイアー」なら盛り上がりやすく、わかりやすいということです。

実はホームページもわかりやすさはとても大切です。「あれも」「これも」と詰め込んでも、訪問者は一番上から一番下まで順番に、しかも全部読んでくれないので、「これ」っと絞り込んだ方が成功確率が上がるのです。つまり、お客様にわかりやすくするためには、ラーメン・カツ丼・刺身・炉端焼きと看板にある「何でもある居酒屋」ではなく、「比内地鶏の焼鳥屋」の方が良いということです。同じ「酒飲み処」ならば、居酒屋より「焼鳥屋」ということから「焼鳥屋理論」と名付けました。

すべての中華料理店はもちろんバーミヤンではない

餃子

私が通っている中華料理店は、席数も少なくマスターとアルバイトの給仕さんが1人のお店で、長時間腰を据えてフルコースを食べるようなお店ではありませんが、上品な茹で鶏がのせられあっさりとした白湯が包み込む「とりそば」や、注文を受けてから包む餃子はこの店にしかなく、一品一品マスターが手づくりする「味」が自慢のお店です。

先日、食後に珈琲を注文した客がいました。給仕さんがメニューにないことを告げると「今時コーヒーがないなんて」と憤慨して帰っていきました。このお店は「何でもある」訳ではありません。同じ「中華」でもバーミヤンとはコンセプトが違うのです。まして客が隣り合わせるような小さなお店ですから、コーヒーがメニューにあればコーヒーの香りのする横で中華料理を食べることになってしまいます。中華料理の「味」を楽しむ客と、飲食店ならコーヒーを置いていて当たり前という自分の思いこみで憤慨する客。どちらがお好みでしょうか?

「焼鳥屋理論」では客を選別することを推奨しています。「お客様は神様です」というリップサービスがいつの間にか1人歩きして、客はなんでもありという風潮になって久しいのですが、俺様がコーヒーを飲みたいのだから用意しておけと言わんばかりの「俺様は神様」だと信じて疑わない客を相手にするのはもの凄いエネルギーがいるものです。そこで「焼鳥屋理論」は、「とにかく何でも揃えておけ」という客なんかいらないと最初に決めてしまいます。

テレビドラマ「HERO」にある「あるよ」との違い

木村拓哉さん主演ドラマ「HERO」の中で、田中要次さんが演じたバーテンダーの「あるよ」という決め台詞が話題となりました。バーなのにお寿司のオーダーにも「あるよ」と答えて握りだすのです。この「ドラマ」のワンシーンからすると、何でもあるお店の方が良いお店のような気がしますが、あれは「ドラマ」ですし、さらにはお店の看板には「なんでもあるよ」とは書いていません(……の、はずです。ドラマ内では確認できませんでしたが)。

焼鳥屋理論で想定している「客は一見(いちげん・初めて来店された方)さん」です。馴染みの客ではありません。一見さんは初めて足を踏み入れる店がどんな店かわかりませんし、できれば損はしたくなく、あわよくば「美味しいモノ」にありつきたいと願っています。そんなときにラーメン、カツ丼、刺身・揚げ物と張り出された「何でもあるよ居酒屋」と「比内地鶏の焼き鳥」という看板を見かけたときにどちらがわかりやすいでしょうか。

一見さんは「実際の味」を知りません。実際には焼鳥屋は焼き加減が悪く、何でも屋のマスターが稀代の料理人であってもわからないのです。どうしても会社やお店の側に立つと「知っているだろう」という考えに捕らわれてしまいますが、一見さんはわからないのです。

そこで、一見さんでも理解のし易い「材料」や「料理名」といった、わかりやすい「共通の言葉」で絞り込むことが必要なのです。だから「居酒屋」よりも「焼鳥屋」で、「マグロ屋」でも「猪鍋屋」でもOKです。もちろん、常連となりマスターの腕の確かさを知っていれば、「あるよ」のお店の方が良いに決まっています。しかし、地球上のお客さんの「不特定多数無限大」が「一見さん」なのです。だから看板や店外ポップなどは「知らない人へ届けるメッセージ」としてわかりやすく綴らなければならないのです。

間口は狭く、奥行きは深く、広く

知らない人へ届けるわかりやすいメッセージとして「比内地鶏の焼鳥屋」です。「比内地鶏の焼鳥屋」ですから、「鶏肉嫌い」という人は、最初の段階でパージできるという利点もあります。予め不幸な出会いを避けるというのは、両者にとって幸せなことでもあります。商売は嫌いな人を好きにさせるより、好きな人へ的確なメッセージを投げかけて集める方が効率がよいのです。

「焼鳥屋理論」の説明をすると「でも、焼き鳥だけなら飽きられてしまう」と反論する方がいますが、焼き鳥しか置いちゃいけないとは一言も言っていません。これはお店の看板や広告などでの話しで、一歩お店に入れば「なんでもあるよ」でよいのです。もちろん、店内ポップをベタベタ貼るかは「美的感覚」としてどうかと思いますが、焼き鳥の店に来店してメニューを見たら刺身や揚げ物が充実していて、「裏メニュー」としてラーメンがあれば「サプライズ」として嬉しいものです。何が何でも「単品経営」しろという話しではありません。店外の一見さんには具体的にイメージさせるために絞り込みます。しかし一歩店内に足を踏み入れると「何でもある」というのが理想的だということです。

間口は狭く、奥行きが深く、広く。そしてこれは「ホームページ」のコンセプトを決めるときの話しです。実際のお店で間口を狭くすると心理的に客が入りにくくなると言われているのでご注意ください。

三代続いたヤスリ屋のはなし

現在、サイトを構築途中の「ヤスリ屋」の話しです。ヤスリ屋といっても本当は「工具販売」ですので、カッターからハンマーまで何でも売っています。開発メーカーではなくメーカーから仕入れて販売していますので、取り寄せさえすれば本当に「ないものはない」会社です。しかし、これでは「何でもあるよの居酒屋」となってしまいます。最大のライバルは「ホームセンター」で、あちらはDIYの「なんでもあるよ」がセールスポイントです。大企業のホームセンターと家族経営の企業がまともに戦って勝てるわけがありません。

しかし、社長と打ち合わせをしていると「何でも揃う」ことぐらいしか思いつかないといいます。そこで雑談を続けると「ヤスリ」に思い入れがあることがわかりました。何でも先代社長が広島県の呉出身で、呉は全国のヤスリの8割を生産しており、先代社長の親父さんはヤスリ職人だったというのです。すなわち現在の社長は「ヤスリ職人の孫=ヤスリ屋の三代目」となります。そしてこれは事実確認が難しいのですが、もしかしたら初代のヤスリ職人が作ったヤスリが「戦艦大和(呉の造船所で造られました)」を削っていたかも知れないのです。これは他の「工具店」にない切り口です。そこで、焼鳥屋ならぬ「ヤスリ屋」をホームページの入り口の看板に掲げることにしました。構築途中ですが「ヤスリ」でヤフー検索で「3位」となり、電話問い合わせでの注文が入っております。

焼鳥屋理論だけでSEO効果がアップする

商売用ホームページを成功させる方法の大切な要素に「検索される」ことがあり、これをSEO(この場合、正しくはSEMなのでしょうが)といいます。SEOとは「探されやすくする方法」のことで、「焼鳥屋理論」でわかりやすく絞り込むだけで探されやすくなります。ヤスリ屋も「ヤスリ」に絞り込んだことで「ヤスリを探している人」にメッセージを届けることに成功しました。これが「工具」では上手くありません。それは工具を必要としている人は「工具」では探さず、ハンマーにカンナ、ノコギリといった「工具ごとの名前」で探すからです。また「ヤスリ」を求める人がヤスリだけしか使わないとは考えにくいので、入り口としての「ヤスリ」を用意して、入ってきたら他の「工具」も揃っているよというのが狙いなのです。間口は狭く、奥行きは深く、広くです。

焼鳥屋に話しを戻します。「比内地鶏の焼鳥屋」がどれくらい「絞り込み」ができているか見てみましょう。何でも揃っている居酒屋同様のホームページはまさしく星の数ほどあります。しかし、比内地鶏ならグッと絞り込まれ「検索」されやすくなるのです。試しに2006年12月5日時点でのグーグル検索ですが、「居酒屋」だけなら28,400,000件もヒットしますが「比内地鶏の焼き鳥屋」なら1140件となります。ここに地域名を加えた「比内地鶏の焼き鳥屋 足立区」ならたった9件です。

「何でもある」のアプローチが間違っているとはいいません。しかし、中小企業の戦い方としては「焼鳥屋理論」のほうがピッタリきます。またこれはWeb 2.0的なお祭り騒ぎとは対極的な考え方ですが、万人に対応できるコンセプトを持つファミリーレストランではなく、「焼鳥屋」を目指して「俺様は神様」という客をいらないと決めてしまえば、Web 2.0的な物を一切使わなくても商売用ホームページはでき、営業に直結できるのです。

♪今回のポイント

焼鳥屋理論でわかりやすく!

間口は狭く、奥行きは深く広く。

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