失敗しないためのCMS導入事例

アクセシビリティのために編集画面もカスタマイズ

ページ

[Sponsored]

アクセシビリティのために編集画面もカスタマイズ

リニューアルオープンは2006年4月1日を予定していた。選定が終わってから4月1日までに残された期間は5か月間だった。しかし、選定と平行してデザインを別途発注して制作していたので、短期間で進めていくことができた。ドメイン名を現在のものに変更し、作業手順として過去のコンテンツはいったんすべて破棄し、必要な情報をピックアップしていった。移行が難しいものは旧ドメイン名で残しておき、現在も新サイトからリンクしている。

「過去のコンテンツは一度すべて捨てて、基本的には全部新しく作っています。旧サイトで必要なものは、デザインを任せた会社と相談しながら、構成によって再利用するものを決めていきました。再利用すると言っても、コンテンツだけで、デザインは結局新しくしましたけれども」(内田氏)

導入後には、現場に対してトレーニングを開催した。トレーニングの内容は2時間ほどのものだが、職員の数が多いため4回開催し、更新作業をする職員約50名にCMSの使い方やアクセシビリティのガイドラインを解説していった。

CMS導入のきっかけにもなったアクセシビリティの問題に対しては、トレーニングの中でも教育を行った。アクセシビリティガイドラインの簡易版解説を含めた日進市専用のマニュアルを作成した。たとえば、使用不可の文字を明確にしたり、「お し ら せ」のようにスペースを入れて見栄えを調整してはいけないように明示するなど、アクセシビリティに配慮したサイト作りを徹底している。

また、CMSの機能面でも、編集画面をカスタマイズして、アクセシビリティに準拠しない結果を生むコマンドは削除した。たとえば、文字の色やサイズを自由に変更できないようにし、表組みも自由には作成はできないようにした。

「表が必要なときはウェブマスターに確認してもらうようにして、PDFもアクセシビリティに対応したものしか貼り付けてはいけないというルールを設けました。現在、PDFを作る場合は情報化推進係で対処しています」(内田氏)

CMS導入で更新頻度が改善ワークフローも変化

CMSの導入に伴って、更新のワークフローも変えた。ホームページ作成ツールを使っていた頃のワークフローでは承認は一段階で、各所属長がチェックした内容がサイトにアップされていたが、新ワークフローでは承認を2段階に設定した。現場の職員が記事を作成したら、一次承認として各所属長が掲載記事の内容をチェックする。その後、二次承認として情報化推進係のウェブマスターが、ガイドラインに沿っているかを確認してから公開する仕組みだ。アクセシビリティのガイドラインを作成したため、二次承認が必要となったのだ。DBPSの機能により、承認が必要な場合は承認作業をする人に自動的にメールが配信される仕組みも導入した。

とは言え、導入当初は課長クラスの職員がシステムを使って承認することに慣れていなかったため、ちょっとしたトラブルもあった。担当職員がコンテンツを入力しても、いつまでたっても公開されないという事態が発生したのだ。情報化推進係が調査してみると、承認依頼のメールに所属長が気づいていなかったのが原因だった。まずは承認依頼メールの存在をしっかり把握し、メールが来たらチェックして作業するように教えて回る必要があった。しかし、この種のトラブルは2か月ほどでなくなり、スムーズに更新される体制が整った。

愛知県日進市 
市長公室 政策推進課 情報化推進係 
主事
内田 浩二郎氏

リニューアル後、更新作業をするスタッフ数は大きくは変わっていないが、更新頻度は確実に上がった。更新頻度の全体的な底上げができ、情報が停滞することがなくなった。日進市はエコに注力している自治体で、環境関連の情報が非常に多い。CMSを導入することによって作業効率のアップだけでなく、利用する側にとっても新しい情報をいち早くキャッチでき、見やすくなったという評価も得られた。リニューアル後のページ数は1600ページほど。日進市の窓として情報を網羅すべく、現在もほぼ毎日更新している。

「更新作業が簡単になったので、職員のサイトに対する意識も変わってきたようです。市販のホームページ作成ツールの時代は更新しなかった人も、DBPSを入れたら更新するようになったのは意外な、でもうれしいことでした。リニューアル以前のようにスキルのある職員の有無による各課間の差もなくなり、縦割り構成でわかりにくい階層だったページもすっきりと統一されて利用しやすいサイトになりました」(内田氏)

ちなみに、DBPSには標準ではサイト内検索の機能がなかったため、日進市では、『Google フリー検索(カスタマイズ版):サイト検索』を利用することで実現している。

リニューアル後の今後の課題とサイト作りの新たな目標

CMSの導入によって、当初抱えていた作業効率のアップとアクセシビリティの問題は、ほぼ解決することとなった。しかし、まだ課題は残されていると赤坂氏は言う。

「旧ドメイン名に残っているコンテンツについては、現在“外部リンク”と表記して旧サイトへ飛ばしていますが、可能な限り統合していきたいと考えています。しかし、別システムを利用している動的なコンテンツや、外部スタッフが更新に協力しているコンテンツについては、なかなか統合が難しいというのが現状です。これをどう解決していくかが今後の課題になります」(赤坂氏)

日進市はCMS以外での今後の目標に、サイト上でのGIS(地理情報システム)の実現を挙げ、より利用しやすい、便利なサイト作りを目指している。

今回のCMS導入のきっかけも、作業効率のアップというよりはアクセシビリティの徹底に重きを置いていた。利用者にとって便利なサイト作りをすることが第一の目標となって、そのために更新頻度をアップさせる必要があり、CMS導入へとつながった。導入を成功させるには、どのようなサイトを作っていくかというポリシーが明確になっているかということが鍵となっているようだ。

解決したかった問題点

  • ウェブアクセシビリティ(JIS X 8341-3)への対応
  • 課ごとに分けられた縦割りの構成から「市民のライフイベント」に合わせた横断的な構成への変更
  • ページレイアウトの統一
利用CMS情報
製品名DBPS
提供事業者パナソニック ネットワークサービシズ株式会社
URLhttp://dbps.pdn.co.jp/
提供形態インストール型
出力形態静的HTML出力
対応OSWindows/Linux
特 徴国内で自社開発されたウェブサイト管理ツール

2003年7月の販売から、数多くの企業・自治体・学校で導入されている国産CMSのパイオニア的製品。「信頼」「安心」「使いやすい」をモットーに幅広いユーザーから強い支持を得ている。直観的な管理画面には定評があり、情報リテラシの低いユーザーでも、簡単な操作でサイト更新が実現可能。サイトの構成やデザインに関する制約もなく、CSSを使ったデザインを重視するサイトにも柔軟に対応する。初めての制作者をサポートするスタートアップツールも充実しており、構築から導入までのサポート体制も万全である。静的ファイルを生成するタイプだが、ナビゲーションリンクや各ページ間の相互リンクをページの更新に合わせて自動的に生成・削除できる。代表的なユーザーとしては、日立マクセル、コニカミノルタ、プルデンシャル生命、毎日新聞、東邦大学、東京工科大学、名古屋市、日進市、中小機構基盤整備機構などがある。価格体系はサイトの規模や利用ユーザー数に合わせて柔軟に対応する。

CMS選定のポイント
  • 提案競技方式による選定を行い、選定委員(合計10人)による合計得点が最も高かったものを採用。
  • 評価については、日進市からの要求内容に対しての対応度によって得点化。

※この記事は、『Web担当者 現場のノウハウVol.2』 掲載の記事です。

※社名、所属部署、利用サービス、価格など、この記事内に記載の内容は、取材当時または記事初出当時(2006年9月)のものです。

[Sponsored]

ページ

この記事が役に立ったらシェア!
メルマガの登録はこちら Web担当者に役立つ情報をサクッとゲット!

人気記事トップ10(過去7日間)

今日の用語

メールマーケティング
デジタルマーケティングの一種で、目的達成のためにEメール(電子メール)を用いてユ ...→用語集へ

連載/特集コーナーから探す

インフォメーション

RSSフィード


Web担を応援して支えてくださっている企業さま [各サービス/製品の紹介はこちらから]