今年も500を超える企業が出展! 注目の展示をピックアップ

◆テキストではなく、画像からあいまい検索(Visual Commerce):IBM Corporation

「気になる商品をInstagramで見つけた! でも、調べたいのに商品名が分からない……」そんな時に、気になった商品と似た商品を画像を基にオンライン上から探せる“Visual Search”! AI技術の発展を受けて、IBMの他、複数の企業がこのサービスにチャレンジし始めていました。

◆自動販売機もさまざまな種類・見た目に進化:zoomsystems

最も一般的な飲料専用の自動販売機だけでなく、食品、衣類、化粧品やコンタクトレンズにいたるまで、さまざまな自動販売機が登場しており、ブースの規模も大きくなっていました。自動販売機は、固定の不動産が不要、24時間販売可能、販売員の配置が不要、というコスト的なメリットが大きい効果的な販売チャネルとしてさまざまな業界から注目されています。2017年8月にユニクロが衣料品用の自動販売機を空港に設置した事例は記憶に新しい事例ですね。

◆複数テクノロジーを使った総合体験事例も登場:telefonia

入店者の性別・年齢層・人種などといった属性を取得し、店内の照明や音響、表示するテキストをそれに合わせて変えることができるサービスです。このように「画像解析」や「デジタルサイネージ」など複数のテクノロジーを組み合わせて実現された店舗体験は、実際に、ヒースロー空港など、複数の空港で導入されているそうです(展示ブース担当者談)。

“テクノロジーの導入はもはや当たり前” リテール業界の著名人たちによるセッション

リテール業界に関わる企業・団体から幅広い分野の著名人が集って発表やディスカッションを行うセッションも、Retail’s Big Showの見どころのひとつです。昨年までは、リアル店舗へのさまざまなテクノロジーの導入を促すメッセージが強い印象でしたが、今年はテクノロジーの導入はもはや当たり前にやることであり、導入したテクノロジーを使って顧客にいかにいい体験を提供できるのかが重要である、というメッセージが多く聞かれました。

◆Levi’sが150年間変わり続けてきたわけ:President Levi’s Brand, James "JC" Curleigh

変動する時代の中で、Levi’sがどのような理念を持って成長してきたのかを振り返りながら、大型店が次々と姿を消していく現在の小売業界で生き残るためのTIPSを見い出すセッション。
購買チャネルが増える中、顧客のライフスタイルに合わせて最適な場所での最適な商品との出会いを提供することは必要不可欠な取り組みであり、そうやってLevi’sならではの体験を幅広く提供することで、より多くのファンを取り込んでいけるのだそう。
Levi’sといえば「ジーンズ」ですが、ジーンズのシェアは、平均的なアメリカ人のクローゼットの中で5~7%。その中でシェアを増やすには限界があるため、Levi’sはTシャツから下着まで、Levi’sファンのライフスタイルに合わせたアイテムを投入。さらに、これからは欲しいと思うタイミングでアイテムが手に届くよう、ECサイトや旗艦店など多彩なチャネルごとに利用シーンを想定し、シーンに併せたブランドイメージを訴求することに注力していくようです。

◆8,000店を超えるリテールストアの閉店。2017年の振り返りと、これからを勝ち抜くすべ:WD Partners, Lee Peterson

セッションの中には、実店舗の閉店や客足の遠のきなど、リテール業界の厳しい状況を振り返るものもあり、厳しい現状を目の当たりにしました。
2017年、アメリカ国内では8,000店を超える実店舗が閉店、モール等の商業施設への客足も過去5年で前年対比10%も減少、次の5年で全米にあるモールの25%が閉鎖されるという予測すらあるそう。

逆に、Eコマースの売上は2017年に15~20%の伸びを記録し、アメリカ国内の8%の企業がオムニチャネル基盤を整備し終わったという実態があります。ますます実店舗もEコマースサイトも、チャネルの適正に応じて使い分ける必要性がありますね。

そんななか、実店舗の役割を単なる販売チャネルとして使うだけでなく、実物を体験できる「ショールーミング」の役割も持たせた施設として活用する新たな実験施策が行われ始めています。スニーカーメーカーのVansは、House of Vansと称して自分たちの製品を配置したショールームを展開したところ、49% も購入の可能性があがり、小売り業界大手のWalmart傘下のBONOBOS、MODCLOTHといったブランドでも、実店舗にそのような役割を持たせることで、客足を1.5%伸ばしたそうです。
実店舗=モノを売る場所だけでなく、買ったものをピックアップする、買いたいものを試すという新しいコンセプトへの転換が、これからの小売業界で勝ち抜くすべのひとつであるというメッセージが送られていました。
(参考:Leading with Positivity: Retail 2018

顧客にとって価値ある体験の提供には、現場のヒト(従業員)が重要。新たな人材関連サービス。

いくら素晴らしいテクノロジーを導入したとしても、実際に体験を提供する現場=従業員の意識が同じ方向を向いていなければ、いい体験の提供は成しえません。その観点からか、過去のRetail’s Big Showでは見られなかった、タスク・スケジュール管理、従業員同士や従業員と経営層との意見交換、情報発信などの人材関連サービスが登場していました。

◆従業員の負荷を軽減、コミュニケーションも活性化:workjam

従業員ひとりひとりがアカウントを持ち、自身のタスク管理や情報交換等のコミュニケーションが可能です。さまざまな角度からの表彰機能も備えています。

◆店舗の実体を画像で確認、効果的な店内レイアウトが検証できる:AccuStore

従業員から投稿される実店舗内の写真によって、実状の把握ができ、各店舗の特性に合わせたレイアウトの検討や、売上と比較した効果的なレイアウトの確認ができます。

2018年Retail’s Big Showのまとめ

  1. テクノロジー導入は当たり前!最新テクノロジーを使って、いかに「顧客にとって価値ある体験」を提供するかが重要視されてきている。
  2. いい顧客体験を提供するには、お客様と接する現場の従業員にまで経営側の思いが行き渡っていなければ成しえない。従業員のケアにも目が向けられ始めた。


ますます加速するリテール業界のデジタル化。アメリカではデジタル化の先にある、「顧客に価値のある体験の提供」の追求も始まっており、着実に成功事例も増えてきているという印象でした。
日本でもIKEA Place ARアプリGUのデジタルストアといった事例が徐々に出始めています。引き続き、日本市場に合う「いい体験」がどういうものなのか、アメリカの今後の動向に注目しつつ模索していきたいですね。