「シニア向けビジネスの雄」として大きな存在感を放っているハルメク。ECシフトも加速させており、その比率は毎年、順調に伸びている。EC比率が向上した要因の1つにあげられるのがメール施策だが、実は近年までメール施策にさまざまな課題があったという。
ハルメクはどのようなメール施策でEC化率アップを実現したのか。ハルメクが導入したMA/CRMツール「EC Intelligence」を提供するシナブルの曽川雅史執行役員が、ハルメクのメディアマーケティング部EC課 冨谷直輝課長のコメントを交えて、その道のりを解説した。
シニアの声から生まれたヒット商品
ハルメクは「情報コンテンツ」「物販」「コミュニティ」の3本柱でシニア向けビジネスを展開している。主力の雑誌「ハルメク」の発行部数は約44.3万部で、女性誌No.1(日本ABC協会「発行社レポート」2023年7月〜12月)を獲得している。「ハルメク」に通信販売カタログを同梱し、特集と連動したオリジナル商品などを提案、販売している。
Web媒体「ハルメク365(サンロクゴ)」の運営も手がけており、50代を中心に月間でおよそ617万PV以上の閲覧がある。また、実店舗での物販も手がけており、年間300回近くのイベントを開催するなど、読者との交流の場も多く設けている。
ハルメクの通販のターゲット層は50代以上の女性。いわゆる後期高齢者となる前の「アクティブシニア」「プレシニア」と呼ばれる層。差別化のポイントはターゲットとなる層の声を集め、ニーズに寄り添った商品開発に生かしていることだ。
ハルメクが発行する雑誌、通販カタログ、商品の一部
ハルメクではサービスに関するマーケティングや調査、コンサルティングを手がけるシンクタンク「生きかた上手研究所」もある。 約4500人以上のハルメクモニターを抱え、インタビューやアンケートを通じて、シニア女性の潜在的なニーズやリアルな声を探っている。
「生き方上手研究所」を通じて、徹底的にお客さまの声を集めている。その声をベースに商品開発を行っているのは大きな差別化ポイント。たとえば、ファッションなどは50代以上の女性のお客さまの体型を実際に3Dで計測し、そうしたデータをもとにターゲット層に最適なサイズ展開を実現し、ヒットにつなげている。(冨谷氏)
ハルメク メディアマーケティング部 EC課課長 冨谷直輝氏
人気商品はファッションやインナーウェア。加齢による肌の乾燥や膝の痛みなど、ターゲット年代特有の悩みに寄り添った商品を開発・展開し、高い人気を誇る。最近は、外反母趾に悩む女性を意識して開発した痛くない靴の販売に力を入れており、機能性とファッション性の両立が受け、テレビなどでも取り上げられヒットしている。
ハルメクの靴は機能性とファッション性が支持されている
EC比率が伸長するも、メール施策には課題が
ハルメクの通販はカタログ起点の電話受注が中心。ただ近年はコストの効率化や、シニアにもスマートフォンの普及が高まったことなどから、ECシフトを進めている。さまざまな取り組みを通じ、EC比率は順調に伸びている。
EC利用の促進のため、雑誌「ハルメク」で年1回、スマホ特集・ネット活用特集を掲載している。コンテンツと連動したキャンペーンも展開し、ECサイトへ誘導。また、「ハルメク」に同封する通販カタログにも随所にQRコードを掲載し、スマホでの注文を促進している。メール施策も強化してきたが、従来はすべての顧客に同一の内容を送信する全配信が中心だったという。
私が着任した5年前、ハルメクは顧客情報を統合分析するCDP(Customer Data Platform/顧客データ基盤)を導入し、メール配信はCDPと直接つながったツールから実施していた。セグメントメールやステップメールの配信はできたが、操作の難易度が非常に高いため使いこなせるメンバーが少なく、あまり手をつけられていなかった。
そこでセグメントを自由に作成でき、ステップメール配信しやすい環境を作り、購買履歴に合わせた適切なメールマーケティングを実現するためMAツールの導入を検討した。(冨谷氏)
ハルメクは複数のMAツールを検討し、2023年にシナブルの提供する「EC Inteligence」を導入した。「EC Intelligence」はやりたいことが概ね実現でき、コストも他社と比較して高すぎないことが決め手だったという。
ハルメクが導入した「EC Intelligence」とは?
ハルメクが導入した「EC Inteligence」は、シナブルが提供する純国産のEC特化型のMA/CRMツールで、サイト内検索エンジン、レコメンドエンジン、メール配信エンジンを統合している。ユーザー体験をオールインワンで最適化する機能を備え、メール、LINE、SMS、アプリ通知など顧客への各メッセージ配信を一元管理。そのほか、データ分析、レコメンドなどWeb接客などに必要な機能を備えている。
「EC Intelligence」はECや販促に必要な機能をオールインワンで提供する
ユーザー行動の各フェーズで施策を実行するツールはたくさんある。一方で、数が多いだけに選定の難しさがある。プロセスごとに別のツールを利用するとデータが分散してしまうこともあるため、データを分散させず一気通貫で行えるようなツールを作ろうということで開発したのが「EC Intelligence」だ。(曽川氏)
シナブル 執行役員 曽川雅史氏
オールインワンで多機能な「EC Intelligence」では、訪問、商品選択、カート、決済、アフターサポート、再訪問というような、ECにおけるユーザー行動の各プロセスでの販促を一気通貫で最適化できる。
ユーザー行動の各フェーズにおける販促をサポート
「EC Intelligence」は約130のECサイトに導入。ROAS(Return On Advertising Spend/広告費用対効果)実績は最大2600%以上、継続率は97.6%という。外部システムとの連携にも制約がないのが強みで、迅速かつ手厚いサポートも提供している。
顧客情報・購買履歴をもとにしたメール施策の自動化
ハルメクは「EC Intelligence」を2023年に導入し、まだ短期間ながらメール施策を強化して成果をあげている。「ECIntelligence」で主に利用している機能は、メールの配信機能、施策を自動化するシナリオ機能、分析やターゲット抽出をするアナライズ機能。これにより、かねてから実行をめざしていたセグメント配信とステップメールが円滑に配信できるようになった。
ハルメクではファッション、コスメ、サプリなど幅広い商品を扱っている。購買情報、雑誌購読情報、DM送付履歴など、顧客に関するデータテーブルも多いが、各データを「EC Intelligence」に取り込み、連携することで、複数のテーブルを自動的に統合。セグメント作成や自由度の高い施策設定が可能になった。「EC Intelligence」では1つの管理画面だけで操作できるため、施策実行の難易度はかなり下がったのではないか。(曽川氏)
たとえば健食やコスメなど、定期購入商品の単品購入者への引き上げメールも自動で送信するなど、顧客情報や購買履歴を軸にしたセグメントメール施策の自動化を実現した。そのほか、ポイントの有効期限などのリマインドメールも送付。また、靴を購入したユーザーに「正しい靴の履き方案内」といったコンテンツメールも配信している。
MA/CRMツールを活用した施策では商品のレコメンドなどが多いが、特定の商品の購入者に対して使い方のレクチャーのようなコンテンツを配信するというのは、顧客満足度の向上に有効だと思う。実際にハルメクではユーザーから好評を得ているようだ。(曽川氏)
ハルメクでは「EC Intelligence」の使い勝手に満足しているという。ハルメクの冨谷氏は「強いて要望を言うと、ツールの有効な使い方や成功事例をもっと共有してもらえたらうれしい」と期待を寄せている。
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