アリババグループが3月14日に発表した「NASA」計画のスタートに関するニュースが、約3億人が利用する中国最大のSNS「微博(Weibo)」で話題になりました。この「NASA」計画はR&D部門を独立させ、20年もの期間をかけて機械学習やIoT、OS、バイオメトリックスといった今後の事業の中核になる技術に力を入れるそうです。
アリババは何をするのだろう? こう感じる人も多いことでしょう。アリババのこの方針は、どの企業も未来を勝ち抜くために新しい技術の開発へ取り組まなくてはならないことを意味しています。
今回、米国のZebra Technologies(ゼブラ テクノロジーズ社、編集部追記:バーコードプリンタのパイオニア)が発表したアジア太平洋・全世界の小売業界に関する研究調査レポートを紹介します。
北米、南米、アジア太平洋、ヨーロッパの専門店やデパート、ファッションショップ、スーパーマーケット、電子製品、医薬品のチェーン店などを対象に調査を実施。全世界における小売業界の未来の分析し、小売企業が将来どのように変わっていくのかなどを明らかにしています。
小売企業に求められる6つの未来への投資
アジア太平洋の状況を見てみましょう。レポートによると、アジア太平洋地域における小売企業の売上高は、実店舗からオンラインへと徐々に移行。実店舗とオンラインとの連携がさらに進んでいく見通しです。
ゼブラ テクノロジーズ社の『2017年小売業ビジョン研究』(編集部が日本語訳しました)
- 小売企業の88%が4年以内にオンラインショッピング、商品の店頭受取を実施し、さまざまなチャネルを使ったショッピングを展開していく
- 2021年までに小売企業の76%近くが、カスタマイズしたサービスを顧客に提供できるようになり、多くの小売店で特定顧客の入店時間を割り出せるようになる。これは細分化された位置情報技術などによって実現できる仕組み。これで、小売企業はより多くのデータを正確に取得し、消費行動を把握できるようになる
- 「欠品」「(ある商品は)他店の方が安い」「ほしい商品がない」――この3つは顧客満足度に影響を与える主な原因。小売企業の76%は、ビジネスにとってECと実店舗でのショッピング体験の統合が極めて重要だと考えている。そのため、多くの小売企業が消費者にシームレスなショッピング体験を提供する予定である
- 2021年までに小売企業の86%は店舗内にmPOS(編集部追記:エムポス、スマートフォンアプリと専用のカードリーダーを利用し、手持ちのスマートフォン・タブレット端末で簡単に決済できるサービス)を導入する予定。店内のどこにいても、顧客はクレジットカード/デビットカードで代金を支払うことができる
- 小売企業の72%はビッグデータの活用が重要だと考えている。多くの企業は予測分析に投資する。機会損失の防止、価格最適化ソフトの分析、店舗運営および顧客体験向上の観察・分析に用いるという
- 「店舗間における価格の不一致」「(欠品あるいは陳列の問題で)商品が見つからない」というこの2点は消費者が不満を抱く主な原因。小売企業の73%はセンサー技術とアナリティクス技術を使ってサプライチェーンの「Phygital」(編集部追記:Physical(物質の)とDigital(デジタル)を掛け合わせた造語、実店舗内ショッピング体験のデジタル化)を実現し、消費者を不満にする問題を解決する
2021年に向けた小売企業の投資計画
続いて、全世界に目を向けてみましょう。
オンラインショッピングとモバイルコマースは消費者のショッピング体験を変えたと言われています。全世界を見てみると、ショッピングの91%はまだ実店舗で行われています。そのため、小売企業の72%は自動化、センサー、アナリティクス技術で「Phygital」(編集部追記:実店舗内ショッピング体験のデジタル化)を実現し、サプライチェーンを再構築しようとしています。
「Phygital」面で小売企業が投資する技術は、セキュリティセンサー、販売・在庫状況を確認するセンサー、IoT設備、ネットワーク監視および顧客動線追跡センサーなど。つまり、私たちがスーパーマーケットに入る時、こうしたセンサーが私たちの動線を感知し、買い物行動をリアルタイムで解析・分析します。
小売企業がやりたいことは「Phygital」だけではありません。
レポートは2021年の小売業の姿を予測しています。実店舗の75%は特定顧客の来店日時を把握できるようになり、カスタマイズしたショッピング体験を提供することも可能になるそうです。
こうした小売企業は位置情報サービスを使うことで特定顧客の具体的な位置を把握し、スタッフをその位置へ行かせることで顧客にサービスを提供するようにします。また、店舗に既存顧客の来店を知らせる機能も実現する予定だそうです。
オンラインオーダーの店舗受取について、小売企業は顧客の車が駐車場に到着する時点でお知らせを受けることができるようになります。企業側はその時点で、オンラインオーダー商品の準備を進めることができるようになるのです。
IoTと位置情報技術を活用したパーソナライズへの投資意向
調査対象の小売企業は、サプライチェーンの転換に投資を拡大しており、在庫状況をリアルタイムに把握しながらプロモーションを実施することを重要視しています。小売企業の73%はビッグデータ活用をビジネスのキーとしています。また、多くの小売企業は「オンラインオーダー」「店舗受取」を重要目標としているそうです。
会社や店舗の所在地が異なると小売企業がめざす発展のためのビジョンも異なります。北米の小売企業の79%は、自動で在庫を把握・確認するための技術に投資をする予定。ラテンアメリカの小売企業の85%は、技術投資によって店内で提供するサービスをカスタマイズする予定です。
ヨーロッパの小売企業の75%は、顧客が店舗内のどこにいるのか、その位置情報を把握しいと考えています。一方、アジア太平洋の小売企業の79%のは、オンラインオーダーと自宅以外での商品受取への対応に投資していくそうです。
消費者の期待の変化、技術の進歩が著しい中、全世界の小売企業は変わりつつあります。IoT、機械学習、コグニティブコンピューティング、自動化は小売企業が最も関心を持っている技術トレンドです。
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オリジナル記事:2021年、世界の小売りはどうなっている? 変わる消費者に対応する企業の投資戦略とは | 中国EC市場の最新ニュース・トレンド・マーケティング情報ウォッチ
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