
前編(共感を生み出すプロモーション戦略)はこちら
ネットPRのタイミングを逃さない、ワンストップのプロモーション体制――ソリューション事業部の役割や、広報・マーケティング体制についてお聞かせください。
高田:我々ソリューション事業部は、主力製品である「駅すぱあと」を中心にBtoB・BtoC向けのソリューションという2つの事業体系を持っています。そのなかで、私と福井が所属するSPチームはBtoC向けのマーケティングから製品プロモーション、広報、広告営業にいたるまで幅広い領域を担っています。
福井:採用活動など人事系の広報業務は管理部の総務が担当していますが、情報発信など協力できる部分は部署間で連携しています。例えば「高円寺阿波おどり」や「高円寺フェス」をアプリで応援するなど、地域貢献というCSR要素の強い企画については、総務とSPチームの広報が連携して取り組んでいます。
――鉄道利用の調査報告や診断系コンテンツ、CSR活動など幅広いジャンルの企画を手掛けていらっしゃいます。こうした企画の立て方や進め方についてお聞かせください。

株式会社ヴァル研究所 ソリューション事業部 SPチーム リーダー 高田 香穂理氏
福井:企画は基本的に私を含めたSPチーム・プロモーション担当の3人で行い、コンテンツの制作は同じ事業部内のコンシューマービジネス開発チームに協力を仰ぎます。企画のアイデアについては、鉄道系のネタや世の中のトレンドなどを社内外から幅広く収集し、最終的にSPチームでまとめて企画に仕上げています。
高田:プロモーション担当の3人のうち2人がエンジニア出身のため、簡単なキャンペーンページであれば企画からコンテンツのデザイン、プログラムまでチーム内ですべて作り上げることも多いですね。スピード感を持って多彩な企画を展開できているのは、その点が大きいと思っています。
――各企画のKPIについてはどのように設定されているのですか?
高田:企画こそバリエーションに富んでいますが、根底にはBtoC向け「駅すぱあと」製品の活性化という目的があります。そこに着地するために、アプリのダウンロード数やアクティブを上げるなど、企画ごとに目標を設定しています。また、「よく検索された駅ランキング」や「RootePG」など、当社だからこそできる企画を考えてバズを狙うことも毎回行っています。
具体的な目標値としては、MAU(月間アクティブユーザー)数やアプリのダウンロード数、あとは広告系であれば売上も入ってきますし、その点からもアクティブはかなり重視していますね。また、アプリについてはストアランキングからの自然流入が大きく占めてくるので、ランキングは常にチェックしています。
ニュースリリースをきっかけに、情報発信に対する社内の意識を改革
株式会社ヴァル研究所 ソリューション事業部 SPチーム 福井 澪菜氏
――「News2uリリース」を2007年頃からご活用いただいています。配信頻度やトピックの選定方法についてお聞かせください。
福井:配信頻度は現在、月平均で6本ほどになりますが、3~4月の繁忙期になると本数はさらに増えてきますね。少なくとも、週に1回以上は必ず出そうと目標を立てています。
トピックの選定には、社内外からの情報収集のほか、個人的に作成している自社のPRネタ帳をもとにしています。例えば、アプリ関連で新しい動きはないか、よく検索された駅ランキングは出ているかなどを調査し、そこから世の中のトレンドと自社製品を組み合わせたPRストーリーを作り、ニュースリリースのトピックとして配信しています。
――「News2uリリース」に対して、感じていただいているメリットがあればお聞かせください。
福井:定例会を隔月で設けてもらえますし、メールで質問してもレスポンスが速い。何より、実際に来てもらって相談できるのが非常にありがたいですね。私は今年の7月に初めて広報業務を任されたばかりで、前任の広報も社内にいないという状況のなか、ニューズ・ツー・ユーの丁寧なフォローアップにはすごく助けられています。
高田:「News2uリリース」導入当初は、ニュースリリースを出したい社員が広報担当に依頼するという形をとっていましたが、現場で「これはニュースにならないのでは」と判断してしまい、申請に上がらないパターンが数多くありました。
しかし、認知向上のためには積極的な情報発信が必要だというお話を伺い、福井が率先してニュースリリースを活用し、成功事例を積み重ねるうちに社内からも「こんな情報があります」と声が上がるようになったのです。
――「どんな情報でもニュースになり得る」という認識が広まったことで、社内からの意見や情報が出やすくなったと?
福井:はい。また、ニュースリリースを配信する時は毎回必ず上役にも報告しますし、その後もリリースの反響など、配信効果と併せて全社員が利用する掲示板に投稿しています。
製品やサービスを作る側にとっては当たり前でも、外部から見れば面白いことというのはたくさんあります。そこに気づいてもらうために、ニュースリリースを活用して「ユーザーの方々はこんなに興味を持っている」と伝えることで、現場のモチベーション向上にも寄与できればと考えています。
自社資産のビッグデータを活用し、世の中にない価値を生み出す

ヴァル研究所様本社(高円寺)の1Fスペースにて。この後ろには大きなクリスマスツリーが飾られていました。
――「駅すぱあと」のように移動中の利用が多いサービスだと、やはりアクセス比率はPCよりもモバイルの方が多いのですか?
福井:そうですね。PCにはパッケージソフトもありますが、やはりモバイルの方に移行してきています。いまは恐らくスマートフォンが7割以上を占めているのではないでしょうか。キャンペーンページの閲覧やアンケート、特に動画系はスマートフォンの利用が圧倒的なので、コンテンツを作る際は基本的にスマホファーストで考えています。
――いまや「駅すぱあと」だけではなく、飲食店検索などの多彩なアプリや広告事業など、幅広い領域にビジネスを拡大されています。
福井:当社には、乗り換え案内というサービス自体がなかった時代に、世の中にない新しいものを送り出してきたという歴史があります。確かに、いまでこそさまざまなアプリやサービスは増えましたが、新しい何かを生み出して人々の可能性を広げていこうという理念はずっと変わらずに根付いています。
――公共交通機関の乗換データという大きな強みをお持ちですが、今後はそのビッグデータをどう活用していきたいとお考えですか?
高田:自社データの活用については、まだ模索している部分もありますが、広告事業などのビジネスにも活かしていきたいとは考えています。
福井:乗換データを分析すると、「この時期にはこの路線が人気」、「この日は異様にこの駅がよく検索されている」、など世の中やひとの動きがわかります。こういった自社データを様々な切り口で活用し、公共交通機関の活性化や地方創生という形で世の中に貢献していくことが、我々のミッションだと考えています。
インタビューを終えて(朝火)
今回、ヴァル研究所様に日ごろから目指しているマーケティングコミュニケーションの取り組み姿勢や進め方などを伺うことができました。
企業側の主張が強くなりがちなCSRやプロモーション活動ですが、閲覧ユーザーに「参加したい」という共感を生み出す企画の秘訣をお話しいただきました。ヴァル研究所様は、市場調査などのデータありきの企画ではなく、まずは自分たちがエンドユーザーの立場になって企画することを重視しています。また、部門に関係なく社内の有志が企画するプロジェクトもあり、社員が楽しみながら制作しているからこそ、閲覧ユーザーの琴線に触れるコンテンツができているのだと感じました。
一方、情報発信に関して、ヴァル研究所様では社内から多岐にわたるトピックを集めて情報発信されています。アプリ関連での新しい動きや、よく検索された駅ランキングデータなどを調査し、そこから世の中のトレンドと自社製品を組み合わせたPRストーリーを作りニュースリリースとして配信されています。
コンテンツの企画方法やニュースリリースの案件の生み出し方など、ヴァル研究所様の取り組みは他の企業にとって非常に参考になる事例だと感じました。
高田様、福井様、ありがとうございました。
<今回お話いただいたのは…>

高田 香穂理(タカダ カホリ)氏
株式会社ヴァル研究所 ソリューション事業部 SPチーム リーダー
R&Dセンターを経て、2015年からコンシューマー向けの製品であるアプリ「駅すぱあと」のプロモーション及び広告企画・販売を担当するSPチームの責任者を務める。

福井 澪菜(フクイ ミオナ)氏
株式会社ヴァル研究所 ソリューション事業部 SPチーム
「駅すぱあと」のポータルサイト「Roote(ルウト)」をメイン商材とするポータルチー ムに本配属後、Web開発や企画、デザインなどを経験。2015年からオウンドメディア「notte!(ノッテ)」の編集長としてディレクションやライティングを担当し、7月から広報を兼務。
<インタビュアー紹介>

朝火 英樹(アサヒ ヒデキ)
株式会社ニューズ・ツー・ユー マーケティング コミュニケーション部 マネージャー
NEC、ソフトバンクモバイルを経て、2014年9月にニューズ・ツー・ユーに参画。
事業主側でWebマーケティングを推進してきた経験を活かし、現在、ニューズ・ツー・ユーにてネットPR(News2uリリース)を軸とした自社メディアによるマーケティングコミュニケーションの仕組みづくりを推進中。