「一度つぶれかけた……」。カーナビなどのECを手掛けるドライブマーケットの岡本泰輔専務は、自身がまだ入社2年目(2007年)のころ(当時は一般社員)に破綻寸前にまで陥った過去をこう明かす。2006年に楽天ショップ・オブ・ザ・イヤーを獲得するなど、売り上げが急増。だが、売上高は伸びるがキャッシュフローが追いつかないという状況に陥り経営危機に。そんな状態を乗り越え、現在は価格競争が激しいカーナビ用品を扱いながら安定的な経営を続けている。さまざまな困難を乗り越え、EC有名店としての地位を築いたドライブマーケットの岡本専務が考えるEC経営論とは。
急激な売上高の増加にキャッシュが追いつかなくなり、破綻寸前に
ドライブマーケットの岡本泰輔専務
2006年から2007年にかけて、楽天ショップ・オブ・ザ・イヤーやヤフーオークションベストストアなどを獲得。通販・ECサイトに商品を出せば売れるという状況でした。
そんなとき、一度つぶれかけそうになったのが2007年の夏。バイヤーは手当たり次第商品を買い付け、販売担当はそれを売る。サイトに上げたものはどんどん売れていきましたが、ついにキャッシュが回らなくなりました。
自社で開発したシステムを駆使し、競合よりも1円でも安く商品を販売していたため、価格競争で商品を売ることしか知りませんでした。だからどんどん売る。しかし、とうとうキャッシュフローがショート寸前まで陥ってしまったのです。
当初は3人体制で行っていたEC業務は気が付けば数十人体制に。店舗も合わせると社員数は50人規模まで広がっていました。現金がショートしかかっていたので、2007年9月までに社員数を20人まで縮小しました。そして、結局は元の3人体制まで戻ることに。
実は数か月で数十人を採用していたため、仕事がわからないというスタッフだらけ。右も左もわからない状態で買い付けなどを行っていました。ほとんどが勤続数か月というスタッフだらけで、ECに精通している元の3人体制に戻り、少数精鋭でEC事業を行うことになったのです。
成長過程って注意が必要です。急激な売上高の増加にキャッシュが追いつかなくなります。そのためにも日頃から、細かい原価や利益の管理まで行う必要があります。ただでさえ、モールが入ってくると利益の数値が見えにくくなります。決済手数料や課金などが加わり、グロスで見たら赤字だった……なんてことも多いのではないでしょうか?
ドライブマーケットのECサイト運営コンセプト
カスタマーサポートは重要、電話受注は同梱商品の提案につなげる
そんな苦しい状況のとき、一般社団法人イーコマース事業協会(当時は西日本名店街)に入会したことで、この苦しい状況を脱することができました。
そのヒントになったのが「安いだけではダメ」ということ。ECスタッフの人数は3人まで減らしましたが、カスタマーサポートだけは残しました。1人がページ制作や受注を行い、ほか1人のスタッフが電話対応しました。
EC会社ではありますが、電話受注を奨励しています。もともと電話受注が占める割合は10%程度ありましたが、現在は売り上げのうち25%まで上昇しています。利益ベースでは40%程度が電話受注です。
いまでは1日100~300件くらい電話が鳴り、2回線をスタッフ3人でさばいています。
電話のいいところ。それは付属品などを案内することで、同梱商品が増える。つまり客単価の上昇が見込めるのです。カーナビ1個買っていただいても粗利は数百円。しかし、電話では付属品の案内ができるので、全体的に購入金額が増え、利益が伸びる構造になっています。
ネットショップはデータベースマーケティングです。しかし、パソコンとにらめっこしている時間が多く、知らないことで損をしていることに気付かない場合が多い。パソコンと対面しているだけではダメです。それをイーコマース事業協会の勉強会などを通して教わりました。
安値勝負だけではダメ、専門性の追求で顧客の信頼を得る
ドライブマーケットが安値以外で力を入れていること
さて、現在のネットに携わっているスタッフ数は5人程度で、実店舗は20人くらい。ネットを通じて店舗にお客さまを集客し、いいサービスを提供するビジネスモデルを展開しています。ECでお客さまになってもらい、お店にも来てもらってカーナビなどの取り付けなどで利益を伸ばす方法です。
冒頭で「安いだけではダメ」と話しましたが、運営コンセプトはいまでも「安値」です。10万円の商品を売って、粗利は数百円という世界。安値で売ることは“悪”だと思っていますが、競争環境がそれをやらなければ生き残っていけない状況です。
「本当に安値だけでやっているのか?」。そう思われますよね?
当社のウェブチームと店舗チームのスタッフが共有していることは「専門性の追求」です。ECで専門的な情報を発信すれば、店舗の信頼も上がる。それと一緒で、専門知識のある取り付けを担当の店舗スタッフが、お客さまにネットの重要性を説けば、説得力がありますよね。
実は過去、ネットはネット、リアルはリアル、それぞれ気持ちが分断していた時期がありました。リアルのスタッフからは「ネットってなんやねん!」といった声もありました。
ネットのチームはそんな状況下、ECを通じて店舗にもお客さまを集客し続け、やがてスタッフは1つにまとまっていきました。全スタッフが「ドライブマーケットのファンになってもらう」という意識で仕事に取り組んでいます。
ちなみに、専門性の追求というところでは、車好きの人が集まるSNSで、当社は情報を発信しています。車をいじる人の情報交流サイトです。当社の名前で投稿している記事は、ユーザーが調べ物をするための情報として閲覧されているようです。各店で1日4~5件くらい記事をアップしていますが、マニアックな人にしか刺さりません。
しかし、これを見て全国的に問い合わせが増えている状況です。
今回は私が経験したことをお話しましたが、小規模EC事業者が抱える問題点は「情報力の不足」だと思っています。
中小規模のECサイトが生き残るためには、大規模事業者と違った施策を打つ必要があります。セミナーは一方的に情報が入ってくるだけ。しかし、イーコマース事業協会のような団体は、相互の情報を得る場として機能している。こういう場はとても大切だと感じています。
店舗が成長するために必要なこと
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オリジナル記事:破綻寸前からV字回復遂げたドライブマーケット、岡本専務が明かす成長への道のり | 売れているネットショップには理由がある! 全国ECサミット講演レポート | ネットショップ担当者フォーラム
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