DMPの市場規模と課題とマーケティングオートメーション

DMPの国内市場規模と課題、マーケティングオートメーションとの連携・事例について。
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[転載元]DMPの市場規模と課題とマーケティングオートメーション|DML
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DMPの市場規模

DMPの市場規模の本当のところ

ITRの発表では、国内DMP市場の2013年の売上金額は2億円、前年比:200%の成長率となっています。また、2014年も2013年比で300%と、大幅な伸びが予想されます。

確かに成長率は非常に高いのですが、そもそもの金額がRTB経由のディスプレイ広告などと比較すると、かなり見劣りします。USのDMPトップ企業「BlueKai」の2013年の売上高は6,400万ドル程度。

※BlueKaiは2014年2月にOracleに買収されています。

そのため、正直なところ、DMP自体にはポテンシャルを感じません。DMPを活用した広告配信(オーディエンスターゲティング)は今後拡大すると思いますが、DMP企業に入る売上はその一部でしかないので、広告配信以外の柱となるマネタイズ手段が必要となります。

画像を見る: DMPの市場規模
参考:ITR Market View:マーケティング管理市場2015|ITR

国内DMPの一覧と比較 ~DMPの実際の画面と使い方~に、DMP企業各社の導入企業数を記載していますが、実際は「その会社のDSPを利用すると、無料で利用できるDMP」もあり、DMP単体でマネタイズに成功している企業は、まだまだ少ないでしょう。

個人情報保護法改正によってデータ流通量は増えるか?

個人情報保護法の改正について、2015年5月21日に衆議院で可決された「個人情報の保護に関する法律」では、『購買履歴や移動情報など企業に蓄積された個人情報(パーソナルデータ)について、個人を識別できないよう加工して、なおかつ個人情報を復元できないようにしたデータ「匿名加工情報」にすれば 、本人同意なしに提供できる』となっています。

この法案の可決がDMPの今後や、オーディエンスデータの流通量に大きく影響するような声も聞きします。しかし、著者は「あまり関係ないんじゃないか?」と考えています。

改正案の話が出る前、ビッグデータの活用は白でも黒でもなく、グレーでした。これが黒に転んでいたら、確かに企業のビッグデータ利用が制限され、大きな影響が出たでしょう。

しかし白の場合、そもそもビッグデータに明るく、データをマネタイズできる企業は、グレーの時からデータサプライしていたため、法改正よってデータ流通量が急激に増えることはないはずです。

「共通ポイントサービス」や「ポイント連携」の話を最近よく聞きますが、これにはビッグデータ的な側面があります。ポイント連携のためには、お互いの会員IDをシンクさせる必要があります。会員IDがシンクできれば、オーディエンス情報の提供やエクスチェンジは技術的に可能です。データ提供先の企業は提供元のオーディエンスデータ(オンライン行動履歴や購買情報)で、自社のマーケティングデータをリッチにすることができます。

画像を見る: 個人情報保護法改正
参考:2014年12月に開かれたパーソナルデータ検討会

大量のパーソナルデータを保持しながら、DMPに今までデータサプライしてこなかった企業も確かに多いです。しかし、このような企業は法案云々の前に、そもそもデータに対するリテラシーが低く、データをマネタイズできていなかっただけに思えます。法案が施行されたとして、すぐにデータのマネタイズに取り組めるとは思えません。

つまり、データ流通量の増加に、法改正それ自体はあまり寄与しないと考えます。データ流通量を増やすためには、DMP側からサプライヤーに積極的に働きかけることが大事です。幸い、「データのマネタイズ」のニーズは広がってきています。サプライヤーはデータのプロではないので、DMP側が安心してデータ提供できる環境(データのフォーマット、データ連携や受け渡しのフローなど)を整えることができれば、オーディエンスデータの流通量は今後増えていくでしょう。

【DMPの課題】ダイレクトレスポンス広告×低単価商材におけるオーディエンス活用は難しい

オーディエンス広告配信のシミュレーション

ディスプレイ広告において、オーディエンスターゲティングを実施している企業は多いと思いますが、CPAを効果指標とするダイレクトレスポンス目的のキャンペーンでは、なかなか成果が出ないということはよく聞きます

オーディエンスターゲティングでは、データ使用料が配信に乗るので、ブロードリーチやリターゲティングのCPMよりも高くなります。

このCPMの差をリーチできるユーザーの質でカバー(CVRの改善)できれば、オーディエンス配信はブロード配信よりも費用対効果が高いと言えます。以下で、シミュレーションしてみます。

画像を見る: オーディエンス広告配信のシミュレーション

上図は、目標CPAが○○の時の「オーディエンス」「ブロードリーチ」それぞれの必要CVRを算出しています。見ていただければ分かる通り、目標とするCPAによってオーディエンス配信の“改善必要CVR”が変わってきます。

目標CPAが1万円以上の高単価商材の場合は、必要なCVRの改善率が低いため、リーチできる層によっては効果的かもしれません。しかし、目標CPAが2,000円~1,000円になると、CVRを3~6%も改善しなければならず、非常に厳しい結果となっています。

目標CPAが数千円以上の場合は必要なCVRの改善率が低いため、リーチできる層によっては効果的かもしれません。

結論

オーディエンスターゲティングでは、高単価商材なら実施はあり得るが、低単価商材では、CPMの差をCVRで埋めることが難しく、ダイレクトレスポンス広告としては実施が難しい。

セグメントを細分化(例えば、乗ってる車、吸ってるタバコの銘柄 など)できれば、ターゲティングできるオーディエンスの質(CVR)は上がりますが、リストも小さくなるため、配信ボリュームが不足します。

つまり、低単価商材×パフォーマンス系広告主の場合、オーディエンスデータの利用は難しくなります。

DMPとマーケティングオートメーション

DMPとマーケティングオートメーションは相性が良い

オラクルのBlueKai買収は話題になりました。BlueKaiはUSのDMPトップ企業で、数億人のアクティブユーザーのオーディエンスデータを保持しています。これを、数万のセグメントに分類し、アドネットワークやアドエクスチェンジ、DSPなどにデータを販売しています。DMPはデータ(オーディエンスデータ)を蓄積・セグメント化することが得意なシステムです。

マーケティングオートメーションとは、マーケティングの各プロセスおけるアクションを自動化するための仕組みやプラットフォームのことを指します。顧客や見込み顧客に対して、どんなアクションをとってきたかを記録し、「最適なコンテンツを、最適なタイミングで、最適な方法で届ける」ことを目的に利用されます。「メール配信」「セミナー管理」「Webアクセス履歴」「フォーム機能」「リード管理」「スコアリング」など、マーケティングのアクションが集約されたプラットフォームです。ただし、DMPのように3rdPatyデータを取り込み、セグメント化する機能はありません。

DMP単体をCRMツールとして利用する場合、課題となるのが「アクションに繋げにくい」ことです。DMPが得意とする点は、データの蓄積やセグメント化です。確かに、オーディエンスターゲティングなどの広告配信というアクションに繋げることはできますが、広告以外のマーケティング施策も含めた最適解を出すことはできません。「DMPのデータをどう活用して、どうアクションに繋げるかは、クライアントに依存している」と言えます。

データを蓄積・セグメント化することが得意だが、アクションが苦手なDMP。マーケティングのアクションは得意だが、3rdPatyデータの取り込み・セグメント化の機能などが無いマーケティングオートメーション。この組み合わせは、お互いの欠点を埋めつつ長所を生かせる、理にかなった組み合わせです。

マーケティングオートメーション×DMPの事例

マーケティングオートメーションへの拘り(心残り)

マーケティングオートメーション×DMPが話題になる以前、著者は自身が勤める企業で、マーケティングオートメーションシステム(Salesforce)とDMPを組み合わせたシステム開発のプロジェクトを進めていました。

「リードナーチャリングを進化させる」という目的のもと、ほぼフルスクラッチで開発を行い、マーケティングを自動化・効率化するだけでなく、現場の営業担当に“積極的に(楽しんで)データを活用してもらいたい”という、想いから立ち上げたプロジェクトです。

結局、社内の事情により開発完了には至らなかったのですが、この構想が現在のマーケティングオートメーション×DMPのコンセプトに近いため、事例として掲載いたします。マーケティングオートメーションのシステム導入を検討されている方は、参考にしていただければと思います。

本記事の最後で、「画面イメージのPDF/AIデータ」「概念図」「スコアリングロジックの要求仕様」の資料をダウンロードいただけます。

やはりこの仕事には心残りがあります。ぜひ著者ができなかったことを、他のマーケターの方に実現していただければと思います。この時の構想について、この記事を書いている2015年10月現在でも、ここまでできるマーケティングオートメーションシステムは無いと自負しています。

以下で、著者が考えていたマーケティングオートメーションの画面を説明します。画面は全部で4つ、「クライアントプロファイル」「スコアランキング」「ウォッチリスト」「アラート設定」です。

【画面1】クライアントプロファイル

顧客ごとのプロファイル画面です。このページでは、その顧客に関するデータの全てが確認できます。

画像を見る: クライアントプロファイル

売上
直近の売上やヨミ(売上見込み)、前年売上や全期間売上など。
メール
メールを送った履歴が閲覧できます。開封したメールやクリックしたURLが分かるため、どのコンテンツに興味を持ったかが分かります。
セミナー
セミナーの参加履歴と関連資料のダウンロード履歴です。
Webアクセス
時系列のサイトアクセス数のグラフや検索したキーワード、よく閲覧するページなどを見られます。
オーディエンス情報/広告
DMPと連携することで、自社サイト以外の訪問履歴からユーザー像を把握します。また、広告に対するアクションも記録するので、どのクリエイティブに興味を持ったかが分かります。
スコア
その顧客が現在どのくらいHOTになっているかを表す指標であり、営業担当がアプローチする判断材料です。スコアリングのロジックは自由に組めます。
例)本日から遡り、3日以内に“サービス名”でサイト訪問していたら+10pt、7日以内なら+3pt など。

【画面2】スコアランキング

自分が担当する顧客のスコアをランキング形式で確認できる画面です。

画像を見る: スコアランキング

スコアリング区分
スコアリング区分は「全て(合計)」「メール」「セミナー」「Webアクセス」などがあり、任意のスコアリング区分でフィルタして、スコアを再集計します。
例えば、セミナーの出席回数が多い人にアプローチしたい場合はスコアリング区分を「セミナー」に絞ります。
企業名
企業名でフィルタ(検索)します。
セミナー
セミナーの参加履歴と関連資料のダウンロード履歴です。
スコア
スコア○○pt以上でフィルタします。
新着トピック
顧客がスコアをプラスにするようなアクションを行ったときに、アクションの内容が表示されます(最新10件)。
アプローチ
コンタクトしたい顧客がいた場合、このボタンを押下することで連絡できます。[メールする]ではメーラーが立ち上がり、[電話する]では電話をかけることができます(スマホのみ)。

【画面3】ウォッチリスト

任意で担当顧客を追加する画面です。重点的にアプローチしたい・トラッキングしたい顧客がいる場合は、このページで登録しておくことで、いつでも確認できます。

画像を見る: ウォッチリスト

【画面4】アラート設定

営業担当宛に届くレコメンドメールを設定する画面です。

レコメンドメールとは、担当顧客のスコアが指定のPtよりも高くなった時や、ポジティブなアクションを行った時に、営業担当に送られるメールです。

このメールが届くことにより、営業担当は適切なタイミングで顧客にアプローチできます。

画像を見る: アラート設定

資料ダウンロード

本記事で紹介した、“著者が実現したかったマーケティングオートメーション”の資料をダウンロードいただけます。内容は「画面イメージのPDF/AIデータ」「概念図」「スコアリングロジックの要求仕様」です。自社のマーケティングオートメーションの参考にしていただければ幸いです。

(ダウンロード)マーケティングオートメーション×DMPの事例資料

 

本記事の内容含む、デジタルマーケティングラボの内容をまとめた本を書きました。
『アドテクノロジーの教科書』 概要・目次はこちら

 

 

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■デジタルマーケティングラボ(DML)■
http://dmlab.jp/

[運営者]広瀬信輔(株式会社マクロミル/株式会社イノ・コード 所属)
[著 書]『アドテクノロジーの教科書』
[元記事]DMPの市場規模と課題とマーケティングオートメーション

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