新しいパートナーシップ――プロジェクトチーム結成の日/【小説】CMS導入奮闘記#5

前回までのあらすじ 社内ヒアリングを終えた吉祥寺は、新たな外部パートナーの選定へと動き出す。しかし、各社に依頼した見積書は比較しようのないものだった。中野に相談を持ちかけた吉祥寺は、その原因がRFPの有無だと教えられるのだった。(→第4話を読み返す [2])
吉祥寺は、リニューアルの目的を今一度整理し、RFPを作成して再度見積もりの依頼をかける。見積もりの内容を検討し、最終候補が絞り込まれる。ファミリー製薬の面々は、プレゼンから発注先を見極めようとする。
プロジェクトの目的は3つ
それから一週間の間、吉祥寺はRFPを完成させることに全力を注いだ。RFP作成の助けとなったのは、書店で購入した何冊かの手引き書、そして、彼がファミリー製薬のウェブサイトの問題点を細かく列挙した「吉祥寺メモ」だった。彼は、吉祥寺メモの内容の重複部分を削り、項目に優先順位をつけて体系化することこそが、すなわちRFPを作成することであると考えた。十分な観察に基づいた問題点が山のように列挙された吉祥寺メモは、RFPの強力なベースになるはずだった。
吉祥寺メモを整理する過程で、彼は、このウェブリニューアルプロジェクトの目的は、結局のところ3つに絞られるのではないかと考えるようになった。そして、それが確信となるのに、長い時間はかからなかった。その3つの目的を彼は書き出してみた。
- すべての製品情報を正確なものとし、かつ情報の内容や形式を統一すること
- 来訪するユーザーが必要な情報にスムーズにたどり着けるようにすること
- 情報更新と運用をスムーズにすること
――以上の3点が、今回のファミリー製薬のウェブサイトリニューアルプロジェクトの目的であり、それを実現するために導入するのがCMSである。
そう書いてみて、吉祥寺は、長く暗いトンネルからようやく抜け出たような清々しさを感じた。RFPはまだ完成前であり、ましてリニューアルの実作業はまだ始まってもいない。しかし、最も大切な核心をつかんだ手応えを吉祥寺は実感していた。もやが晴れた――。彼はそう思った。
大きな伸びをして、会心の笑みをもらした吉祥寺に神田が
「何かいいことあったんですか?」
と声をかけた。この数日で、神田は自分から吉祥寺に話しかけるようになっていた。ランチミーティングで吉祥寺が語った言葉――「ウェブサイトをリニューアルし、現場の労働負荷を軽減したい」――がどれほど本気なのかを、あのとき以来、神田は密かに注視していた。彼女から見て、吉祥寺は本気だと思えた。本気でウェブサイトを新しくし、本気で現場の矛盾を解決しようとしているように見えた。「この人は信頼できるかも」――そんな思いが、神田の中で日に日に育っていた。
「いいことあったよ。もうちょっとしたら、報告できると思う」
吉祥寺はそう言って、神田に笑みを返した。
2社による最終コンペへ
数日後にできあがったRFPを吉祥寺は代々木と神田に確認してもらい、今回のリニューアルプロジェクトの3つの目的を伝えた。「簡潔でわかりやすい」というのが2人の共通した評価であり、目的にも異論は出なかった。神田は、吉祥寺が言っていた「いいこと」の内容を知って、満足そうな表情を浮かべた。この時点で、リニューアルの方向性はほぼ固まったと考えてよかった。
吉祥寺は、念のために中野にも見てもらおうと考えて、営業部のオフィスに出向いた。中野は、吉祥寺が手渡したRFPにざっと目を通すと、ひと言、「やるじゃん」と言って、にやりとした。吉祥寺にとっては、それだけで十分だった。彼はそのRFPをもとに、再度、4社の外部事業者に見積もりを依頼した。
新たに提出された見積もりは、3社分のみであった。再依頼後、オフィスKENから、「すみませんが、この内容ではうちはちょっと難しいと思います」という連絡があったのである。3社の中で、銘光社が出してきた見積もりは、明らかに他に比べて見劣りするものだった。見積額は1回目と同じ600万円。項目も、必ずしもRFPの内容を反映したものにはなっていなかった。
吉祥寺は、見積書を一緒に確認していた代々木の顔を見た。代々木は、何かが吹っ切れたような涼しげな表情で
「仕方がないですね。新しいことにチャレンジするには、新しい感性が必要です。私にも大月にも、どうやらそういう感性が欠けているらしい。銘光社には外れてもらいましょう」
そう言って、静かに笑った。
吉祥寺と代々木は、残る2社、すなわちD&Hソリューションズとコムコムファクトリーに、見積もりの内容のプレゼンテーションをしてもらうことを決定した。
プレゼンの会場である会議室には、吉祥寺、代々木、神田の他に、情報システム部の秋葉原も同席していた。「今後、何かと共同作業が多くなるから、この段階で意見を聞いておいた方がいい」という理由で、代々木が呼んだのだった。
秋葉原は、3人がすでに席に着いていた会議室に遅れて入ってきた。無言で軽く頭を下げると、吉祥寺の顔をちらりと見やって、すぐに目をそらした。その憮然とした表情がこの男の素なのか、あるいは不機嫌の故なのか、吉祥寺は判断しかねた。
数分後、最初にプレゼンをすることになっているD&Hソリューションズの3人のスタッフが会議室に到着した。40代半ばと思われる部長クラスの男がひとり。ほかの2人はいずれも20代のようだった。3人とも隙のないピンストライプのスーツ姿で、いかにも場慣れしている雰囲気が伝わってきた。
実際にプレゼンを担当したのは若い2人だった。彼らは、押しの強い語り口で、これまでの企業サイト構築やリニューアルの実績について蕩々と語り、企業のウェブサイトに今何が必要とされているかを独自の見解として述べた。話に出てくる企業名は、有名な大手上場企業ばかりだった。「グループとしての総合力」「一気通貫」「ワンストップ」「豊富な人材リソース」「多様なニーズへの対応」――。そんな言葉が掃射砲のように次々と出てきて、聞く者を圧倒した。
2社目のプレゼンが終わり、新たなパートナーが決まろうとしていた
コムコムファクトリーの視点
昼休みをはさみ、続いてコムコムファクトリーのプレゼンが行われた。出席したのは、社長の立川達彦ひとりだった。カジュアルなノーネクタイの服装で会議室に入ってきた立川は、メンバー全員と名刺交換をすると、ハンドタオルで額の汗をぬぐいながら席に着いた。その飄々とした佇まいが、会議室の空気をいくぶん和やかにした。
立川のプレゼンは、D&H社とは対照的だった。彼は、静かな口調でとつとつと見積もりの内容について説明した。立川の説明によれば、コムコム社の見積書のコンセプトは、以下のようなものであった。
ウェブサイトリニューアルのプロジェクトにおいて最も大切なのは、作業範囲とスケジュールとコスト、その3つについてクライアントと制作会社の間で明確なコンセンサスを固めることである。もし作業範囲が変われば、スケジュールも変わるし、コストも変わる。また、それによって、導入すべきCMSが何であるかも変わってくる。したがって、今回提出した見積もりはあくまで暫定的なものであり、今後の話し合いの中で作業内容が変わってくれば、見積額も変わってくる。むろん、その変更は、両者合意のうえでなされるべきものである――。
吉祥寺がとりわけ注目したのは、次のような立川の言葉だった。
「RFPにあった3つの目的はいずれも重要なものですが、とくに私は、2番目の目的、すなわち“来訪するユーザーが必要な情報にスムーズにたどり着けるようにすること”という項目が、大衆薬メーカーである御社のサイトにとって、とりわけ大切であると考えています。小さなお子さんをもったお母さん、ウェブにあまり触れたことのないお年寄り、何とか今日中に風邪を治さなければならないサラリーマン――。そういった老若男女が、必要としている薬を即座に見つけることができる。それこそが、御社のウェブサイトの社会的役割のはずです。そんな“優しい”ウェブサイトを、私はつくりたいと思います」
この人は、ファミリー製薬のことを本当に考えてくれている――。吉祥寺はそう思った。
プロジェクトチームの結成
立川が去った会議室で、4人は早速プレゼン内容の検証に取りかかった。最初に口を開いたのは、代々木だった。
「前提として、額面だけで決定することはやめにしたいと思います。金額、項目、今日のプレゼンの内容。そういったものをトータルに見たうえで、今回のリニューアル作業にとどまらず、長期的なパートナーとしてふさわしいのはどちらかという視点で選びましょう」
代々木は、一呼吸置いて続けた。
「その前提に立って、ですが、私はD&H社の実績、それから、グループ全体のリソースやノウハウが活用できる安心感、規模感、そういったものに賭けたいと思いますが、いかがですか?」
「いえ、僕は、コムコム社だと思います」
「どう考えたって、コムコムでしょうよ」
その2つの声が発せられたのが、ほぼ同時だった。吉祥寺と秋葉原の声だった。発言が重なったことを互いに気まずく感じながら、2人は顔を見合わせた。
吉祥寺が、コムコムを選ぶべき理由として挙げたのは2つのポイントだった。1つ目は、見積もりのコンセプトが極めてしっかりしていること、2つ目は、一貫してクライアント目線に立っていることだった。
代々木は次に秋葉原に意見を求めたが、秋葉原は、
「まあ、主任のおっしゃるとおりですわ。実績に関する精査はむろん必要ですが、まあ、問題はないんじゃないですか」
とつまらなそうに言った。
一連のやりとりを黙って聞いていた神田も、「私もコムコムで」と言って、代々木と吉祥寺の顔を順繰りに見た。もとより多数決で決めるべき筋の話ではなかったが、趨勢はすでに決していた。
「皆さんの意見はよくわかりました。では、再度、実績を詳しく見せてもらったうえで、問題がなければコムコムファクトリーさんにお願いすることにしましょう」
代々木はそう言うと、ふうっと大きく息を吐いて席を立った。
「ありがとうございます」
吉祥寺は、小さく呟いて代々木の背中に頭を下げた。
数日後、ファミリー製薬のウェブサイトリニューアルプロジェクトがコムコムファクトリーに正式に発注されることが決まり、コムコム社の立川は、2人のスタッフを連れてファミリー製薬を訪れた。ひとりは、制作チーフディレクターの国分寺遙、もうひとりは、その下でアシスタントを務める四ツ谷純一だった。国分寺は30代前半だが、すでにこの業界で10年のキャリアをもつベテランであること、四ツ谷は20代半ばで、ITの知識が豊富であることを立川は説明し、
「この2人が、御社のウェブサイトを生まれ変わらせるために全力を尽くします」
と静かに、しかし力強く言った。

ファミリー製薬の吉祥寺と神田、コムコムファクトリーの国分寺と四ツ谷。この4人を実質的なメンバーとし、代々木と立川を後見人とするプロジェクトチームが、ここに結成されたのだった。
次回予告
第6話 最適なCMSはどれだ?
結成されたプロジェクトチームの最初の課題は、導入するCMSを決定することだった。最終的に2つに絞り込まれた候補をめぐって、吉祥寺と国分寺の意見がぶつかり合う。クライアント側の事実上の責任者として、あくまで納得のいくものを選びたいと考える吉祥寺。彼が最終的に選択したCMSとは?
最適なCMSはどれだ?――大は小を兼ねるのか……荒れるCMS選定会議/【小説】CMS導入奮闘記#6 [3]良い提案依頼書の作り方のポイント
コラムRFPの詳細
良い提案依頼書の書き方のポイント
まず、RFPの一例を紹介しよう。
ファミリー製薬コーポレートサイトリニューアル
株式会社ファミリー製薬
ウェブマネジメント課
2009/XX/XX
- プロジェクト名称
ファミリー製薬コーポレートサイト・リニューアルプロジェクト
- プロジェクト概要
ファミリー製薬のブランディングガイドラインに基づいたデザインリニューアル
膨大な商品をわかりやすく整理再構成し、統一されたデザインでユーザーの導線を確保する
同時にCMSの導入で社内運用負荷の軽減を図る - プロジェクトの目標/ゴール
■目標
正確な情報配信:情報の内容や形式を統一する、すべての製品情報を正確に伝える
デザインの統一:総合トップから4クリック以内で商品情報に到達できるようにする
運用負荷軽減:製品情報を各事業部担当者にて更新できるようにする■ゴール
お問い合わせセンターへの電話件数の減少
- サイト定義
■メインユーザー
一般消費者(20~40代、とくに未就学児を子供に持つ母親)
小売店
医療関係者■競合
○○製薬
△×製薬 - 受託責任範囲(発注範囲)
■成果物
企画書
プロジェクトマネジメント計画書
テンプレート設計書
テスト報告書
CMSテンプレート一式
中間成果物(デザインデータ、htmlデータ)
登録コンテンツデータ一式■成果物の内容
企画書:リニューアルプロジェクト概要を満たすコンテンツ案を提出してください
デザイン:ユニバーサルデザインを考慮してください
HTMLコーディング:「ファミリー製薬ウェブサイトガイドライン」の規定に準拠してください
検証:一般公開されているチェックツールを使用し、クリアしてください
社外公開サイトで正しく表示できることを保証してください■留意点
ドメインは弊社(www.example.co.jp)内とします
納品後のサーバー管理は弊社システム課が行います
サイト内で使用する画像については、できる限り支給いたします
公開後も各部署での運用がしやすい作りとしてください - ウェブサイトのスコープ
■対象国
日本のみ。外国語サイトは対象外
■言語
日本語。ただし、表現は薬事法に準拠すること
- 前提条件
■公開日
2010年5月上旬(できればGW前に)
- 品質要件
ファミリー製薬ウェブサイトガイドラインに準拠してください
社外公開サイトで正しく表示できることを保証してください
高齢者・障がい者に配慮したアクセシビリティ「JIS X8341-3」の必須要件を満たしてください
Flashを使用する際は、音声読み上げとキー操作に対応してください - 技術要件
<クライアント環境>
■HTML
XHTML 1.0 Strict
■サポートブラウザ
IE6 / IE7
Firefox2 / Firefox3
Safari■対象OS
Windows 2000/XP/Windows Vista(JIS2004を考慮してください)
Mac OS X■音声読み上げ検証ツール
PC-Talker
■プラグイン
契約時の最新版のバージョンを使用してください
<Webサーバー環境>
■サーバーOS
Windows 2003 Server
IIS 6.0■サーバースペック
CPU Xeon 3.2GHz
物理メモリ 2,096,336KB
DISK C:合計 10,220MB、D:合計 30,618MB - マスタスケジュール
■提案書提出時期
オリエンテーション後2週間以内
このサンプルは、わかりやすさを優先して簡略化した内容になっているが、実際にはこれよりも詳細なものになる場合が多い。もちろん、極めてシンプルなRFPであっても、それがまったくない場合とでは雲泥の差がある。
以下、RFP作成上の主な注意点を挙げてみたい。
目的を明確にし、「ほしい機能」や「満たすべき条件」の羅列にしない
RPF作成で大切なのが目的を明確にすることだ。ほしい機能や満たすべき条件は、目的が明確になれば自ずと決まってくる。次に、決めておきたいのが「プロジェクト名称」「プロジェクト概要」「目標」の3つだ。当たり前に思うかもしれないが、これらを決めることで目指すべきところを共有して意思疎通をスムーズにできるし、頭の中を整理することもできる。
制作会社は多くの場合、情報が羅列されただけのRFPを嫌がる。そのようなRFPは、プロジェクトの質の担保とならないからである。逆に、どうしても実績がほしい制作会社は、RFPの内容にこだわらずに仕事を受注するケースが多い。目的や課題に適した制作会社を選ぶには、目的や課題がしっかり整理されたRFPをつくる必要がある。
とはいえ、必ずサンプルRFPにある項目すべてを発注側が決める必要はない。技術に詳しい担当者がいない企業では、技術要件などの定義が難しいこともあるだろう。その道のプロである制作会社に相談しながら作る方がうまくいく場合もあるので、目的が明確になった段階で制作会社に相談してみるのもいいだろう。
コスト、品質、スケジュールのバランスを考える
品質の高いウェブサイトを短期間でつくろうとすれば、それだけコストは高くなる。逆に低コストで仕上げようと思えば、品質を下げたり、スケジュールを柔軟にしたりする必要がある。RFPを作成していたとしても、プロジェクトの途中でどうしても変更が必要になる場合もあるが、そのときは、「コスト」「品質」「スケジュール」3つのバランスを考え、どれを優先するか再検討することだ。
なお、CMS導入の際には、最初にスケジュールを設定したうえで、コスト、品質という順に決めていくことを勧めたい。CMS導入のプロジェクトは規模が大きく、通常のリニューアル作業よりも多くのスタッフが関わることになる。また、人員のフォーメーションはスケジュールが決まらないとつくれない。スケジュールが確定して人員が決まれば、コストも確定するので品質もおのずと決まることになる。
社内各部署からのヒアリング内容をそのままRFPに載せない
各部署の要望はしばしば多岐にわたり、その内容は相互に矛盾したり、対立したりするものである。一方の要望を満たせば他方の要望を実現するのが難しくなるというケースも多い。そういった内容をそのまま記載すれば、矛盾に満ちたRFPができあがることになる。
現状のウェブサイトのページボリュームを把握しておく
サイトリニューアルの際には「コンテンツ移行」という作業が発生する。どの程度のコンテンツを新サイトに移行するかによって、制作費は大きく変わってくる。
依頼前に制作会社の「過去の実績」を参照する
多くの制作会社は、ウェブサイトで過去の実績を公開している。発注側と受注側の認識に差がある状態で仕事を進めても良い結果にはつながらないので、提案依頼前に過去にどのようなプロジェクトに関わり、そこでどのような役割を果たしたか、実績を確認しておこう。CMS導入であれば、過去のCMS案件についても確認する。RFP作成時、あるいは作成後に制作会社からいくつかの書類を出してもらうことになるが、その中にも、必ずその会社の過去の実績がわかるものを含めておきたい。
見積もり書のチェックポイント
コラム見積書の詳細
見積もり書のチェックポイント
CMSを導入してウェブサイトをリニューアルする場合に発生するであろう作業内容に合わせた、見積書の一例をサンプルとして作成してみた。CMS導入の見積もりは、大きく次の3段階、CMSの仕様やサイトの設計を決める「基本設計」、ページデザインやテンプレート制作などの「開発」、CMSにコンテンツを投入する「コンテンツ移行」に分けられる。サンプルは開発のものだ。
以下、提出された見積書の内容をチェックする際のポイントを挙げてみよう。
RFPの内容が反映されているか
見積もりというと金額に目が向きがちだが、まずは前提条件がクリアされているか、成果物(納品物)の形式は依頼内容に即しているかなど、RFPで示した要件が満たされているかを確認する。必ずクリアすべき前提条件や作業項目に漏れがあるなら、追加する必要があり、それによって見積額も変動する。また、納品物の詳細も確認しておくこと。見積書とは別に、納品物一覧の提出を依頼するのもいいだろう。
一式ではなく詳細項目が書かれているか
「一式」という表記になっている見積もりは、必要な項目が含まれているか判断できないだけでなく、必要のない項目が上乗せされている可能性もあるので注意が必要である。タスクが細かく分けられ、それに対応する金額が1つひとつ書いてある見積書が望ましい。
大幅な予算超過は調整できることもある
提出された見積書が想定していた予算を大幅に超過しているケースもある。その場合、制作会社がリスクを大きめに見積もっているためにコスト高になっている可能性もあるので、超過の理由を聞いたうえで、金額調整してもいいだろう。なお、RFPの内容に問題があってコストがかさんでいるというケースも少なくない。
また、ウェブサイトのリニューアルで必ず発生するのが、コンテンツ移行だ。コンテンツ移行は、ボリュームと単価の単純な掛け算になるケースが多く、その分費用もかさみやすい。本当に移行すべきコンテンツは何かを精査することが必要である。
制作会社によっては、見積書と一緒に「作業範囲記述書」(SOW)と呼ばれる書類を提出する場合もある。SOWは文字通り、制作会社の作業責任がどこからどこまでかを明らかにするもので、「これしかやりません」という宣言のようにも見えるが、SOWを作成することで「コンテンツの移行はやってもらえると思っていたのに……」といった食い違いが後々発生しにくくなる。見積書とともに、SOWの提出を依頼することをぜひお勧めしたい。
スケジュール、コスト、品質のバランスは適切か
RFPと同様、見積書でも、コスト、品質、スケジュールはそれぞれ相関している。コストが他社に比べて極端に低い場合は、その分、品質や作業進行に問題があると考えるべきである。
見積書は、パートナーを選定するための重要なデータであって、額面だけを見るべきものではない。見積額が低い会社には低い理由が、高い会社には高い理由がある。それを見極めることで、その会社がパートナーにふさわしいかどうかが明らかになる。
なお、CMS導入のコストは、CMSベンダーに支払うライセンス料を除けば、ほぼ人件費である。一般に、ウェブサイト制作のコストのほとんどは「人」に関する費用で占められる。
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