アクセス解析とはここが違う。Web担当者のためのネット視聴率活用術

6月24日に開催されたアクセス解析に関する製品・サービスのイベント「第5回アクセス解析カンファレンス」の主催者企画セミナーにおいて、ネットレイティングスとビデオリサーチインタラクティブが共同セミナーを開催した。「インターネット視聴率データを活用しよう」と題したセミナーで語られた、ネット視聴率の基本や活用法についてお伝えする。

アクセス解析とネット視聴率の違いはなにか

69day主催者企画セミナーの様子1
ネットレイティングス 代表取締役社長 兼COO 萩原 雅之氏(左)。ビデオリサーチインタラクティブ 業務推進本部 業務推進部 部長 江村 謙太郎氏(右)。

2000年4月、ほぼ同じタイミングでインターネット視聴率を測定し始めたという両社。セミナーではまず、視聴率データを聞いたことはあるけど、どんなものか知らない人も居るだろうと、ネット視聴率とアクセス解析の違いについて解説された。

2つの大きな違いはその測定対象だ。基本的にアクセス解析では、人を測定しているのではなく、PCなどのデバイス、特にウェブであればブラウザを測定している。この場合、一般的には1つのCookieで、いろいろな人の行動とすることがあるので(一台のPCを家族で利用するなど)、特にユニークユーザーに関しては注意が必要である。ユニークブラウザと言ったほうが誤解がないというのが、視聴率業界の見解だという。

一方、ネット視聴率は調査パネルを作って、その人のすべてのウェブサイトでの行動を測定している。測定には、調査対象者の世帯にあるPCにトラッキングツールをインストールして、ネット利用の有無にかかわらず、家族全員に登録してもらっている。リビング、自室のPCを使うときは自分であると認識させてた上でデータを測定させているので、1人1人の行動データが取れる。

「ネット視聴率は、基本的にはテレビの視聴率と同じなので、サンプル調査によって調査パネルを作って、その人のすべてのウェブサイトでの行動を測定している。現状10万から20万ぐらいのウェブサイト、7000世帯ぐらいを計測している。ただし、サンプル調査なので、視聴率で提供されるのは一定数以上視聴されるすべてのサイトになります」(萩原氏)

デバイスではなく、あくまでも人が調査の対象であること、人の行動を測定するのがネット視聴率の特徴だ。

ネット視聴率アクセス解析
カバレッジ一定数以上視聴される全てのサイト自社サイトのみ
調査手法サンプル調査(パネルを構築)センサス調査(全数測定)
測定対象調査対象者(ユーザー)パソコンなど(ブラウザ)
ネット視聴率とアクセス解析の違い

視聴率をマーケティングに。ネット視聴率だからわかること

ネット視聴率の活用場面としては以下のようなものがあるという。

比較、ポジショニング

  • 競合サイト、他社サイトの利用状況、利用者属性比較
  • ネット全体のトレンドやベンチマーク設定とポジショニング
  • 長期間のトレンド把握

広告プランニング

  • ネット広告出稿プランの基礎データとして利用
  • デモグラフィック特性に基づくターゲットサイト選定
  • 重複訪問状況を踏まえたリーチ・マキシマイズ

比較、ポジショニングに役立てられること、他社サイトの動向を知ることができる点もネット視聴率の特徴である。アクセス解析では、基本的に自分のサイトのデータしか取得できない。そのため、自社のページビューやユーザー数が業界でどれくらいなのか、ベンチマークの設定は難しものだが、他社がどうなっているのかをネット視聴率で見ると、ある程度知ることができる。

また、アクセス解析ではサイトの人気がどれぐらいあるのか、数字で見ることはできるが、訪問者の性別や年齢まではわからない。視聴率データでは人を測定しているので、20代女性に人気のサイトのランキング、サイト訪問者のうちに20代女性がどれだけいるかを出すことができる。

特に訪問者属性が取れるという点は、広告プランニングの基礎データとして有益な情報になる。また江村氏は「広告のプランニングに役立つデータがなければ媒体として成り立たたせることができないだろう」と言う。

「もともと私たちの成り立ちとしては、インターネットを広告媒体としてみたときに、広告効果をどのように計ったらいいのかというところがあります。他の媒体でも、テレビ視聴率のような同じ調査手法で取るデータが必要だろう、というのが会社設立経緯にあります」(江村氏)

2009年にモバイルのネット視聴率調査を開始

セミナーの最後には、両社が今後のトピックスについて語った。

ビデオリサーチインタラクティブでは、視聴率データの基本分析メニュー「Web Report」と、年1回のアンケート調査を行い詳細プロフィールを使った分析を行う「Web PAC」をサービスしている。たとえば、1年以内に海外旅行に行った人のウェブサイトの接触状況などを調査できる。今後は、ユーザビリティの改善、および主要広告メニューの接触状況などに対応した分析システムのリニューアルを計画中で、2009年度にリリース予定だという。

69day主催者企画セミナーの様子2

ネットレイティングスでは、2008年10月に仕様を全面改訂する。これにより既存のRDD(ランダム・デジット・ダイヤリング)パネルに加え、応募型のメガパネル(2万人)を運用。メガパネルのデータを利用しつつ、RDDをベースにしてより多くのサイトをレポートするという。また今までは職場データが少なかったので、家庭+職場データをデフォルト指標にする。これは日本以外ではすでに実施されているモデルであるという。

さらに、ブランド集計、チャネル集計を導入。集計単位をドメインやサブドメインでなく、コンテンツごとにして、より意味のあるものにする。Yahooであれば、YahooオークションやYahooショッピングなど、ポータルサイトであればメニューレベルのものをオンラインでそのまま見れるようにする。計測ソフトを新しくすることで、ブラウザ以外のアプリ利用、メッセンジャー、メディアプレイヤー、セカンドライフなども計測可能になるという。アップル全視聴率であれば、iTunesやQuickTimeなどを含めたものも測定できる。

また、ニーズが高まっているモバイルサイトの測定を2009年にネットレイティングスが開始する。具体的に発表できる段階ではないが、計画としてはビデオリサーチインタラクティブでも進めているという。

「ユーザーの使っている環境を変えないでというのが今までの調査にはあったので、それからすると専用の携帯電話をパネルに配ってしまえばいいのではという議論があった。ただ、それではメディア調査として代表制を考慮すると成り立たないという問題があったので、どういったアプローチがあるかこれから取り組んでいきたい」(江村氏)

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