聞くに聞けない、生成AIの“実務機能”の使い分け
質問応答の先へ!GPTsでの業務型化から、資料の読み解き、自分専用アプリの試作、AIエージェントの活用まで、生成AIを業務プロセスに組み込む極意を分かりやすく解説。
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いまだに生成AIを単なる「チャットツール」と捉えている人は多いかもしれません。もちろん、質問や文章のたたき台作成だけでも日々の業務効率は変わりますが、生成AIの実務活用はすでに「質問する」だけでは語れない次の段階に入っています。
たとえば、GPTs、Gems、Canvas、Gemini Notebook(旧NotebookLM)、Google AI Studio、AIエージェントなど、用途に応じたAIツールの使い分けが重要になっています。つまり、生成AIは「対話相手」から「業務プロセスに組み込むツール」へと進化しているのです。
前回の寄稿では、生成AIを「検索」や「壁打ち」の補助として使う方法を中心に紹介しました。今回は「チャット以外の機能をどう業務に活かすか迷っている方」に向けて、それぞれの実務的な活用場面をわかりやすく整理します。
1. GPTs/Gems:よく使う業務を“型化”する機能
まず紹介したいのが、GPTs(ChatGPT)やGems(Gemini)のような、前提条件やルールをあらかじめ設定し、自分やチーム専用のAIアシスタントを作成できる機能です。
通常チャットと異なり、ターゲット・文体・文字数などを毎回指示する手間が省け、作業のスピードと品質を両立できます。
たとえば、メルマガを作成する場合、通常は毎回「ターゲット」「文体」「文字数」「訴求ポイント」などの前提を伝える必要がありますが、よく使う条件や判断基準をあらかじめ設定しておけば、ゼロから説明する手間を省けます。
実務では、以下のような用途に向いています。
- メルマガの初稿作成
- 広告文のトーン統一
- 自社用語やブランドトーンの反映
- 施策アイデアの壁打ち
また、個人的に有効だと感じているのが、頻繁に確認するルールや資料を参照しやすくする環境づくりです。広告規定や入稿ルールのように更新が多い分野では、公式情報や社内資料を参照できる状態にしておくことで、確認業務を効率化できます。
たとえば、「タイトルの文字数は規定内か」「使用できない表現が含まれていないか」「媒体ごとの表記ルールに沿っているか」といった観点を確認するGPTs/Gemsを作成できます。もちろん、最新情報を反映するには参照元の更新や確認が必要ですが、毎回ゼロから規定を探す手間を減らせる点は大きなメリットです。
業務上の暗黙知をあらかじめAIに学習させておくことで、繰り返し業務の品質を安定できるのがこの機能の強みです。
また、GPTsやGemsはチームで共有もできます。「メルマガ作成用」「広告文チェック用」「レポート要約用」など業務ごとに用意すれば、経験の浅いメンバーでも一定品質のアウトプットを出しやすくなります。
運用のコツは、最初から完璧を目指さないことです。まずは頻度の高い業務から一つ作ってみて、実際に使いながら指示内容を少しずつ育てていくのが、継続的な活用のポイントです。
2. Canvas:文章やコードを“直しながら作る”作業場
次に紹介したいのが「Canvas(キャンバス)」です。
※デザインツールの「Canva」とは別物で、ChatGPTに搭載されている編集機能です。
通常のチャットは相談には便利ですが、長い文章や企画書、コードなどの修正を繰り返すと最新版がどれかわからなくなりがちです。Canvasはそうした課題を解決する機能で、成果物を画面の横に置き、AIと一緒に編集・推敲を重ねることができます。
実務では、以下のような「修正前提の作業」に向いています。
- コラム原稿の推敲
- 企画書の構成整理
- 提案書の表現調整
- 長文記事の見出し改善
- プレスリリースの修正
- セミナー告知文の調整
- コードの修正やレビュー
チャットが「相談する場所」なら、Canvasは「一緒に直す場所」です。文章の一部だけを書き換えたり、トーンを調整したりといった、ピンポイントな修正がスムーズに行えます。
さらに、文章だけでなくWebページやツールの「モック(試作品)」作成にも活用できます。たとえば「予算配分シミュレーター」のような簡易ツールを作る際、最初の出力で表示が崩れても、その箇所を指定して直すだけで理想の形に仕上げられます。
意図した部分だけを狙って修正し、成果物を完成させる。そんな作業場として、まずは今手元にある原稿や企画書のブラッシュアップから試してみてください。
3. Gemini Notebook:資料を読み解き、論点を整理するツール
3つ目は、Googleが提供する「Gemini Notebook」です。これはゼロから文章を作るのではなく、手元にある大量の資料を読み込ませ、その内容を理解・整理するためのツールです。
ChatGPTなども資料の要約や分析はできますが、Gemini Notebookの特徴は「資料起点」であることです。アップロードした情報のみをベースに回答するため、事実と異なる回答(ハルシネーション)が起きにくく、回答の根拠となった元資料の該当箇所へすぐリンクで飛べるのが大きなメリットです。
実務では、以下のような場面で力を発揮します。
- 調査レポートやセミナー資料の読み込み・要約
- 競合資料の比較や複数PDFの論点整理
- 社内資料のFAQ化、会議メモの整理
「最初に全体像をつかむ」「論点を洗い出す」「読むべき優先順位をつける」といった、読む前の整理や理解促進を手助けしてくれます。なお、Gemini Notebookは、ハルシネーションが起きづらいと言われていますが、出力内容を鵜呑みにせず、元資料に戻って確認することは欠かせません。
たとえば、収集した「生成AIの利用状況に関する公開情報」のPDF群をGemini Notebookにインポートすれば、それらのデータをもとに「2030年までのマーケターのロードマップ」といった骨子を瞬時に作成できます。出力された構成案をもとに、スライドやインフォグラフィックへと展開していくといった活用が可能です。
実際にやってみましょう。
1.ChatGPTのDeep Researchなどで、生成AIの利用状況に関するリサーチを行います。
2.抽出された情報が一覧化されるので、提供元を確認しながらデータをインポートします。
3.インポートが完了すると簡単な要約が作成されます。続いて、下部のテキスト入力欄に「今後のマーケターがどのようにふるまうべきかの2030年までのロードマップを作成」と入力します。
4.すると中央のチャット欄に情報が生成されます。内容を確認したうえで、スライドやインフォグラフィックに展開します。
スライドやインフォグラフィックを作成する際は、より詳細な指示を加えると完成度が上がります。
試しに、2030年までのロードマップをブロック画像風に作成してみたものが下記です。
なお、このツールは2026年7月16日に「NotebookLM」から「Gemini Notebook」へ名称が変更されました。あわせて、アップロードしたデータをその場で集計・グラフ化できる「コード実行」機能の追加も発表されています。ただし提供は順次拡大中で、契約プランやアカウントによってはまだ画面に表示されない場合があります。「資料を要約・整理するツール」から「手元のデータを扱う簡易的な分析環境」へと役割が広がりつつある点は、押さえておくとよいでしょう。
またGemini Notebook(旧NotebookLM)はアップデートが早いので、詳細を理解する際は公式情報を見ることをお薦めいたします(機能などが異なってしまうため)。
初心者の方が読んでおいた方が良い最近の本とすると以下のようなものがあります。初心者向けの本は出版頻度が多いため、最新のものを選ぶか公式かブログなどの最新情報を取得することをお薦めいたします。
4. AI Studio / Antigravity / Claude Code:AIが“答える”から“成果物を生み出す”へ
その前に:まずはGoogle AI Studioから試す
この章で扱うツールは専門性が高いので、その手前に「非エンジニアでも試せる入口」を1つ挙げておきます。Googleが提供する「Google AI Studio」です。もともとは開発者がGeminiのAPIを試すための環境でしたが、「Build」機能によって、日本語で指示を書くだけでWebアプリを生成できるようになりました。
ここまで紹介した3つの機能が「文章や資料を扱うもの」だったのに対し、AI Studioは成果物が“動くツール”になる点が異なります。マーケティング実務では、次のような使い方が考えられます。
- キャンペーンの進捗を一覧するダッシュボードの試作
- レポートの数値を入力すると所感の下書きが出るツール
- 営業やカスタマーサポートのロールプレイ練習ツール
特に有効だと感じるのは、ダッシュボードのプロトタイピングです。本格的なBIツールを構築する前に、「どの指標を並べるか」「どう見せると意思決定しやすいか」を実際に動く画面で検証できます。関係者に画面を見せながら議論できるため、要件定義そのものが速くなります。
第2章のCanvasとの違いは「作ったあとにどうするか」です。Canvasが1つの成果物をその場で仕上げる作業場なのに対し、AI Studioは繰り返し使うツールとして残すことを想定した環境だと考えるとわかりやすいと思います。
ただし、生成されるのはあくまで検証用の簡易的なアプリです。本番運用や社内システムとして使うには、セキュリティやデータの取り扱いを含めた別途の検証が欠かせません。「試作品を素早く作り、要件を固める場所」と捉えるのが現実的です。
AIが自律的に動く「エージェント型」のツール
最後に紹介するのが「Antigravity(アンチグラビティ)」や「Claude Code(クロードコード)」です。これらは「AIエージェント型」の開発ツールであり、一般的なビジネスパーソンが日常業務で使うにはまだ少し専門的な色合いが強い機能です。
最大の特徴は、AIが質問に答えるだけでなく、作業の計画、実行、検証など複数の作業をまたいで自律的に行う点です。
たとえば開発では、コードを書くのみならず、必要なファイルの確認、エラーの修正、ブラウザでの動作確認まで一貫して実行できます。また、キュレーションサイトのような成果物も、ヴァイブコーディング(AIと対話しながら、細かな構文を意識せずにコードを組み上げていく進め方)で作成を始められます(初回の出力は粗い場合もあり、適切な指示は依然として必要です)。
マーケターの仕事も、分析や戦略立案だけでなく、テスト環境の構築や、クリエイターとの議論のたたき台となるLPの制作など、これまで「依頼する側」だった領域の一部を自ら形にできる場面が増えていくでしょう。
いくつか筆者が勉強がてら作成した事例を共有します。
Antigravityを活用したペルソナ生成ダッシュボード
AntigravityはGoogleが提供しているコーディングツールです。画面構成は下記のようになり、左でプロジェクト管理を行い、中央部分でコミュニケーションを行いながら制作を行うヴァイブコーディングツールです。
初期設定は少し手間がかかりますが、以降はファイル管理に留意すれば比較的誰にでもヴァイブコーディングができます(設定方法などについてはまた別記事で紹介します)。
今回はさまざまな情報を統合してペルソナを作成するダッシュボードを作成してみました。
情報設計やAPI連携してデータ取得するなど、別の専門知識が必要になってくる部分もありますが、マーケティング実務で活かすことができるツール開発を行えます。
Claude Code・エージェント機能・AI回答等を組み合わせたwebアプリ
2026年の夏休みに合わせて、親御さんが東京の危険な地域を把握できるようなウェブアプリを作りました。
情報設計を整えながら、ロケーションデータ・生成AI及びAPI連携・親エージェント・subエージェントの考えを取り入れながら最終的にコーディングをしたものです。
Agent Development Kit(ADK)を活用しながら、Root Agentを主エージェントとし、その配下にSequentialAgentを配置。SequentialAgentがResearch Agent(情報収集)、Explanation Agent(説明生成)、Safety Review Agent(表現の安全性チェック)、Formatting Agent(出力整形)を順番に実行する階層型のマルチエージェント構成にしながら生成AIの回答を作成するフロー化をしたものです。
コーディングはClaudeCodeを主としながらCodexなど要所要所で組み合わせながら最終的なアウトプットを行っています。
この分野はなかなかコアな知識になってくるため、GoogleCloudのサイトや勉強会に参加しながら知識を付けることをお薦めします。ちなみClaude Codeを勉強する場合は以下を勉強するとよいと思います。
Anthropic Academy:https://anthropic.skilljar.com/
紹介した本の内容が古い部分もありますが、体系的に理解できる点としてはとても優れています。ただ内容が省略されていたりする部分もあるので、調べながら理解を進める必要があります。
Anthoropic Academyは公式のラーニングで、網羅的にClaudeを理解できます。基本英語なので翻訳しながら進める必要はありますが、確認テストも設けられており、基本を理解する点ではとても優れています。著者もすべてのコースをコンプリートしましたが知らない部分もあり、勉強になりました。
5. 既存の業務ツールと生成AIを組み合わせる
ここまで生成AI単体の機能を紹介してきましたが、実務で真に重要なのは、普段使っている業務ツールやマーケティングデータと生成AIをどう「組み合わせるか」です。
たとえば、GA4や広告管理画面のデータをGemini Notebookに読み込ませれば、数値の傾向整理や改善仮説の洗い出しを迅速に行えます。さらに、そこから見えた「反応の良い訴求軸」をもとに、バナー案やLPの見出し、SNS投稿文といったクリエイティブのたたき台へと展開できます。重要なのは、AIに完成品を作らせることではなく、過去データやターゲット理解をもとに方向性を具体化することです。
また、パネルデータやユーザー行動データを掛け合わせることで、「ターゲットがどのタイミングで比較検討し、どんな訴求が響くか」をAIと共に深掘りし、ペルソナ設計などに活かすことも可能です。
このように生成AIは、既存のツールを置き換えるのではなく、GA4、BIツール、Excelなどから得られる情報をつなぎ、分析・仮説立案・クリエイティブ作成までを手伝ってくれます。
だからこそ、これからの時代に求められるのは「AIだけを使える人」ではありません。既存のマーケティングツールを理解したうえで、生成AIを組み合わせて自身の能力を拡張できる人です。ツールでデータを集め、AIで整理し、人間が判断して施策に落とし込む。この一連の流れを作れるかどうかが、成果を大きく左右します。
6. 生成AIは「どれが一番すごいか」ではなく「どのように使うか」で選ぶ
ここまで紹介してきた4つの機能は、以下のように一言で整理できます。
- GPTs/Gems:よく使う業務を“型化”するもの
- Canvas:成果物をAIと一緒に“編集”するもの
- Gemini Notebook:手元の資料をもとに“理解”するもの
- Google AI Studio:繰り返し使うツールを“試作”するもの
- Antigravity / Claude Code:AIが自律的に“実行・創出”するもの
これらは単体で完結するものではなく、これまでの業務やツールと組み合わせることで真価を発揮します。重要なのは「どのツールが一番優れているか」ではなく、目的から逆算して適切な機能を選び、手動の繰り返し作業から手を離すことです。
前回の記事では検索などを中心に取り上げました。今回はすこし発展的な内容を記載しています。それでも目的に応じて利用するという考え方は変わらないのです。
おわりに
2024年初頭までは、「よいプロンプトとは何か」を探求し、質の高いアウトプットを引き出すことが生成AI活用の中心でした。
しかし、生成AIは急速に進化しています。いま求められるのは、上手なプロンプトを書くことではなく、目的に応じて機能を選び、業務の一部、あるいは全体に組み込む力です。これは、パーソル総合研究所の「生成AIとはたらき方に関する実態調査(2025年)」の調査でも示されています。
もちろん、最終的な判断は依然として人間に委ねられています。AIの文章や要約、提案をそのまま受け入れるのではなく、事実に誤りはないか、目的に合っているか、読み手に伝わるかを確認する力が欠かせません。
また、生成AIは基礎力を不要にするものではなく、基礎力のある人の応用力や発展力を大きく広げるツールです。だからこそ、「便利なチャット」として捉えるのではなく、「業務を型化する」「成果物を編集する」「資料を理解する」「ツールの形にする」「作業を進める」といった複数の役割を意識することが重要です。
まずは難しく考えず、スモールステップで試してみてください。
- 繰り返しの多い作業を選び、GPTsやGemsで専用アシスタントを作る
- 企画書や原稿をCanvasに入れ、AIと一緒に推敲する
- 大量の資料をGemini Notebookに読み込ませて論点を整理する
- もう一歩進みたい場合は、Google AI Studioで簡易アプリを試作したり、AntigravityやClaude Codeで実際に動く成果物へ発展させてみるもう一歩進みたい場合は、Google AI Studioで簡易アプリを試作したり、AntigravityやClaude Codeで実際に動く成果物へ発展させてみる
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