生成AIの検索/SEO本格侵襲・グーグルの中小サイト虐待など【鈴木謙一の2024年SEO総まとめ】
海外&国内SEO情報ウォッチの、2024年最後のコラムだ。恒例の、1年間の総まとめとして、2024年に起きた注目SEOニュースを振り返る。
- グーグルが生成AI検索のAIOを本格導入、ユーザーの反応は上々?
- 寄生サイト対策にいよいよ本腰を入れる、まずは手動対策で排除
- 生成AI検索戦争が勃発。三すくみ? 四すくみ? 五すくみ?
- グーグルの大手ブランド優遇に終わりはあるのか? 小規模、独立系サイトの受難は続く
- 生成AI時代に勝ち抜くためのコンテンツ戦略
- 2024年のコア アップデート状況: 特徴のあるアップデートとないアップデートが混在
- 【動画】あなたの知らない使い方が見つかるGoogleトレンド活用術
- SEOとUXは一心一体、同時進行で改善に取り組め
- 2024年に導入された新しいタイプの検索機能×2
- グーグル検索のキャッシュ機能が終了😢
コラム読者のみなさんへ筆者より:
2024もこのコラムをご愛読いただき、ありがとうございました。2025年の初回更新は1月10日の予定です。来年も、みなさんのSEO施策の参考にしてもらえるように選りすぐりの情報をお届けできるようにがんばります。
良い年末年始をお過ごしください。
検索でAIが本格化して寄生サイトが沈んだ2024年(1位~3位)
1位 グーグルが生成AI検索のAIOを本格導入、ユーザーの反応は上々?
2023年に仮デビューしたSGEがAIOとして2024年に正式デビュー
2024年の注目トップに挙げたいのは、グーグルでの生成AI検索の本格的な導入だ。
グーグルは、オプトインユーザーだけに試験提供していた「SGE(検索生成体験)」を「AI Overview(AIによる概要)」として名称を改め、一般公開した。まず5月に米国で一般公開し、8月には日本でも一般公開した。
本格展開を進めるいっぽう、誤った情報を生成するということで非難も浴びた。たとえば、「イスラム教徒の米国大統領は今まで何人いた」と検索すると「イスラム教徒の大統領が1人いました、バラク・オバマ氏です」と回答したといった報告があった。
Ok it’s real. Woof.
— Amir Efrati (@amir) May 23, 2024
Google has some serious work to do in the coming weeks to clean up its confidence scoring on conversational answers. pic.twitter.com/wm8VNM3DJg
それでも、第3四半期の決算発表ではAI Overviewがユーザーに支持されていることを次のように強調していた:
AIO(AI Overview)の利用が活発化していることを確認している。全体的な検索の使用と満足度をAIOは高めている。AIOを使用する人は、より頻繁に検索に戻ってくる
一般公開したとはいえ、AI Overviewはまだ試験段階だ。検索トラフィックに与える影響も含め、今後どんな進化を遂げるか予断を許さない。2024年もAI Overviewの変化から目を離せない。
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2位 寄生サイト対策にいよいよ本腰を入れる、まずは手動対策で排除
長年の懸念に着手開始
ここ数年、検索結果を荒らしていた「寄生サイト」「ドメイン貸し」と名付けられていたスパムの対策に、グーグルが本気で乗り出した。3月にスパムポリシーを更新し、「サイトの評判の不正使用」という名称で、こうした行為をスパムだと公式に指定したのだ。
実際に適用が始まったのは5月で、このときはスパムポリシーに違反するサイトに対して、手動による対策を与えた。
さらに、11月には適用基準を厳格化した。厳格化により、定義上それまでは問題視されていなかった大手ニュースサイトのアフィリエイトサイトも次々と制裁を受けた。
Google's original Site Reputation Abuse policy wiped out 3rd-party coupon subdomains
— Cyrus SEO (@CyrusShepard) November 19, 2024
CNN
CNET
USA Today
Business Insider
What do you think the newly updated policy will target? pic.twitter.com/EBEXr1jbP9
「グーグル、よくやった!」と賞賛したいところではあるが、現状では、手動による対策だけの対処だ。人力に頼る手動対策は、見過ごしがあったり局所的にとどまったりという問題を抱えている。大規模に展開するには、検索システムによる自動対処が欠かせない。2025年には、「対サイトの評判の不正使用」のスパムアップデートを期待したい。
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3位 生成AI検索戦争が勃発。三すくみ? 四すくみ? 五すくみ?
2023年は黎明期、2024年は乱立期、2025年はどうなる?
グーグルが、生成AI検索のAI Overveiwを一般公開したことをトップで取り上げた。生成AIの元祖ともいうべきOpenAIも負けてはいない。ChatGPTとウェブ検索を連携したChatGPT searchを11月にリリースした。ある比較調査では、質問内容やジャンルによってはグーグルのAI Overviewよりも優れた結果を返したとのことだった。
OpenAI幹部は積極的に情報発信しユーザーからのフィードバックを集めている。AI Overviewとは異なり完全な一般公開はまだ先になりそうだが、2025年中にはさらに精度を上げて一般公開するに違いない。
コラムでは取り上げていないが、マイクロソフトBingもBing generative search(Bing生成検索)という、従来のウェブ検索とは異なる生成AI検索体験のテストを始めている。また、日本のヤフーも独自の生成AI検索を秋ごろから対象クエリを拡大して展開中だ。新興でいえば、Perplexity、Felo、Gensparkといった日本語で利用できる生成AI検索も登場している。
グーグル一強の検索エンジンサービスであったが、生成AI検索においてはグーグルの牙城を崩すサービスがでてくるかもしれない。
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4位~6位 コアアップデートとAI時代のコンテンツ戦略
4位 グーグルの大手ブランド優遇に終わりはあるのか? 小規模、独立系サイトの受難は続く
改善したとはいうけれど、合格点にはほど遠い?
2024年8月のコア アップデートでは、「小規模、独立系のサイトであっても不利になることがないように、正当に評価するように改良した」とグーグルは強調した。たしかに、回復が見られたサイトも出ていたが、著しい改善が見られたと評価するにはほど遠かったようだ。
著名SEO専門家による、グーグル検索での大手サイト優遇に対する糾弾も紹介した。
An open letter to the folks in Google Search:
— Cyrus (@CyrusShepard) September 23, 2024
Listen, I know you recieve a lot of criticism. No matter who you rank on top, folks are likely to complain. I also know you're fighting an army of spammers and over-optimized content that threaten the quality of search results. I get… pic.twitter.com/RgHnwh6gHX
たとえ意図していなかったとしても、小規模、独立系サイトが検索で厳しい状況にあることはグーグルも認識しており、継続して改善に努めていくとのことだった。2025年には目に見える改善を期待したい。
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5位 生成AI時代に勝ち抜くためのコンテンツ戦略
検索エンジン視点と信頼関係構築の2つの観点から攻める
生成AIを利用して作ったコンテンツを当たり前のように目にする時代に突入した。検索エンジンも生成AIを検索に組み込んできた。SEOの役割は、こうした時代にどのように適用していけるだろうか?
生成AI検索エンジンを提供する張本人のマイクロソフトBingは、次のような点にフォーカスしてコンテンツ作成するようにアドバイスした:
- 検索意図の力
- デジタルマーケターの課題
- 効果的なキーワード調査
- NLPによるランキング向上
- キーワード戦略
Bingのアドバイスは生成AI検索に適合するためのアドバイスだ。一方、生成AIで作成したコンテンツに検索で負けないための戦術を提案したのは、Nieman Journalism Labとアナリティクス アソシエーション(a2i)のいちしま氏だった。読者との繋がりや信頼関係を構築するなど、生成AIが進歩したとしても、そう簡単には達成できないであろうコンテンツ作りが重要だという。
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6位 2024年のコア アップデート状況: 特徴のあるアップデートとないアップデートが混在
さらに土壇場でもう1発ぶちこむ
例年どおり、グーグルは今年も数回のコア アップデートを実行した。
まず、2024年3月のコア アップデートが皮切りだった。通常よりも複雑で大規模なアップデートとのことで、ランキング変動も大きくなることが予想された。しかし蓋を開けてみれば、いつもよりは大きかったかもしれないが激震が走るほどではなかった。
8月には、今年2回目のコア アップデートが実施された。近年のグーグル検索では大手サイトが有利な状況が続いていたのだが、小規模、独立系サイトも正当に評価するように改良を加えたとのことだった。実際に、過去のランキング下落から回復したサイトも多く見られた(だが、別のピックアップで紹介したように手放しで賞賛するほどではなかった)。
3回目のコア アップデートは11月だった。このアップデートに関しては詳しい情報が何ひとつとして提供されず案内だけにとどまった。異なる点があったとしたら、展開完了の時間だろうか? 一般的なコア アップデートに共通の2週間を見込んでいたが、実際には3週間以上かかった。もっとも理由は明らかにしていない。
3回のコア アップデートで終わりかと思いきや、2024年11月のコアアップデートの展開完了から1週間後に次のコア アップデートとして2024年12月のコア アップデートが実施された。本来なら今回のコラムでピックアップするところだが、振り返り回なので次回あらためて取り上げる。展開も完了しているはずで、特筆すべき点があれば合わせて紹介する。
さて、2024年は計4回のコア アップデートが実施された。2025年はどうなるだろうか? コア アップデートの頻度とスピードをあげるかもしれないと検索チーム社員は発言しており、もっと多くなる可能性も否定できない。
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7位~10位 Googleトレンド活用法、SEOとUX、新しい検索機能、キャッシュ廃止
7位 【動画】あなたの知らない使い方が見つかるGoogleトレンド活用術
使わにゃ損するGoogleトレンド
Googleトレンドの機能や使い方を解説したチュートリアルYouTube動画シリーズも2024年の注目ピックアップに含めたい(筆者の好みの側面が強いのは認める)。グーグル検索リレーションズチームのダニエル・ワイズバーグ氏が、Googleトレンドのエンジニアたちも招いて収録したものだ。
Googleトレンドの基本的な使い方に始まって、かなり実践的な利用方法にも踏み込んでいる。
ウチは流行もののコンテンツを扱っているわけじゃないから、Googleトレンドを使う必要性は感じない。
もしそんな風に考えていたとしたら、そんなあなたにこそ視聴を強く推奨する。知らない機能や活用方法が見つかるに違いない。
Googleトレンドが初めてなら最初から視聴し、使い方に慣れているならエピソード4とエピソード6、エピソード7が筆者のおすすめだ。英語でのチュートリアルだが日本語字幕を利用できるので、英語が苦手でも心配いらない。
シリーズ全体のプレイリストはこちらから参照できる(最新の動画から並んでいるので、最初から見る場合はいちばん下の動画から)。
最後に、これも手前味噌で申し訳ないが、先日のチューリッヒでのSearch Central Liveイベントに参加した際にGoogleトレンドをトピックにワイズバーグ氏本人にインタビュー動画を撮影してきた。編集が終わって公開したら案内したい。
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8位 SEOとUXは一心一体、同時進行で改善に取り組め
検索トップ交代でグーグルは収益よりもUX重視に?
SEOとUX改善はもはや切っても切れない関係になった。SEOとUXの改善は同時進行で取り組んでいく必要があるだろう。
UX改善関連の記事として2024年に紹介したのは、次のものだ:
グーグルの組織でも大きな人事異動があり、新任のグーグル検索トップは、収益よりもUX重視の思想を持つ人物だという。検索から集めたユーザーをいかにしてして満足させるかが来年はさらに重要になりそうだ。
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9位 2024年に導入された新しいタイプの検索機能×2
ハッシュタグ検索とかこって検索
2024年に導入された新しいタイプの検索機能も注目ニュースに含めたい。次の2つの新機能だ:
ハッシュタグ検索は、その名のとおり「#」が付いているコンテンツに絞り込んで検索する機能だ。
他国に比べると日本は独特なハッシュタグを付けてソーシャルメディアに投稿するケースが多いという。そうした独特なハッシュタグは日本語だからこそ使われているそうだ。そこで、日本独自の機能としてハッシュタグ検索がリリースされた。日本独自の検索機能というのは非常に珍しい。
ウェブサイトの記事コンテンツもハッシュタグ検索の対象になる。ハッシュタグ検索からのトラフィックが発生していたらちょっとしたボーナスだ。
かこって検索は、今見ているページのコンテンツ(テキストでも画像でもなんでも)を指でなぞるか囲むかして選択すると、それに対して検索を実行できる。
アプリに依存しないのでどこからでも実行できる。かこって検索は非常に便利で、筆者は重宝している機能だ。かこって検索からのトラフィックはウェブ検索になってしまうので特定はできないのだが、かこって検索経由の訪問が発生している可能性はある。
検索トラフィック送出の可能性があるとはいえ、どちらもSEOの立場よりユーザーの立場としての便利機能だ。それでも、グーグル検索の変化という点では注目だ。
- SEOがんばってる人用(ふつうの人は気にしなくていい)
10位 グーグル検索のキャッシュ機能が終了😢
Wayback Machineのアーカイブが代用だけど
マイナーではあるが、特にSEOに長らく携わってきた人にとって悲しい出来事が2024年にあった。グーグル検索でのcache:
コマンドの廃止だ。
cache:
コマンドによるキャッシュ表示はGooglebotがレンダリングしたページではないといった注意点はあるが、サクッと簡易的にインデックス状況を調査するには便利なツールだった。Search ConsoleのURL検査ツールを使えば正確なインデックス状況を把握できるとしても、手軽さという点ではcache:
コマンドがだんぜん勝っていた(ブックマーレットを作っておけば、今見ているページのキャッシュを1クリックで呼び出せた)。
グーグルはキャッシュ機能の代替として、サードパーティであるWayback Machine のアーカイブへのリンクを提供するようにした。「過去の状態を見たい」という要望はとりあえず確保している。
なお、マイクロソフト Bingも、cache:
コマンドによるキャッシュ表示をつい先日廃止した(このコラムでは未紹介、次回以降に取り上げる)。検索エンジンというプロダクト全体の流れなのだろうか?
- SEOがんばってる人用(ふつうの人は気にしなくていい)
ソーシャルもやってます!