最新物流倉庫に潜入、イメージが一変! “明るくて・キレイでびっくり” 働きたくなる施設づくり
私たちの生活になくてはならない「物流」。物流倉庫というと、ダンボールや折りたたみコンテナが積まれた巨大な施設をイメージするかもしれない。編集部員は勝手なイメージで物流倉庫は薄暗くて、物が所狭しと置かれており、作業着の男性が多く働いていると思っていた。しかし、そんなイメージの物流倉庫は古い!
倉庫は今や、「商品を保管するだけの場所」ではなくなり、どんどんキレイになってデジタル化も進んでいるのだ。
今回は、世界19カ国において約11,400万㎡の物流施設を開発・運営している物流不動産デベロッパーであるプロロジスを取材。物流施設の専有部分を賃貸マンションのように貸し出ししているマルチテナント型の施設「プロロジスパーク八千代1」を実際に見学させていただいた。
最新の物流倉庫に潜入! EC向け発送代行「STOCKCREW」にインタビュー
先ほども述べた通り、物流倉庫内のデジタル化は日々進んでおり、プロロジスも様々な取り組みを行っている。せっかく見学してきたので、具体的な施設の説明の前に、まずは施設に入居している企業が、どのように倉庫を活用しているのかを紹介したい。
今回見学した千葉県八千代市のマルチテナント型物流施設「プロロジスパーク八千代1」内の一画に入居しているのは、ネットショップ事業者向けに発送代行サービスを提供する「STOCKCREW」だ。倉庫内での作業を実際に見せていただきつつ、同社の保阪氏にお話を伺った。
自社ロボット100台の導入で「ピッキング」の作業を効率化
今回社会科見学に協力してくださったSTOCKCREWでは、EC商品の受発注から出荷発送までを代行している。1区画(約435坪)に180~200社ほどの商品が保管されており、毎日1,500~2,500件ほどを出荷するという。
そこで、自社でロボットを開発&導入して、倉庫内業務の効率化を進めているそうだ。特徴的なのが、指示された商品を棚から取り出し、梱包スペースまで運ぶ「ピッキング」の工程だ。ロボットが人間のピッキング作業をサポートするという。その大まかな流れは以下の通りだ。
- ロボットが注文された商品の情報を読み取り、ロケーション(保管している棚の場所)まで自動で移動する
- 近くにいる人が商品を取り出し、箱に入れる
- ロボットが自動で梱包スペースまで運ぶ
以前は、商品の送り状とロケーションを見比べながら、自分でその棚に行って商品を取り出して……とやっていました。でも、ロボットがロケーション情報を元に棚を特定してくれるので、誰でも簡単にピッキング作業ができるようになり、時短や効率化につながりました。(保阪氏)
なお、ロボットがどうやって商品がある棚を見極めているかというと、倉庫内のマッピング情報がロボットに入っているからだ。そのマッピング情報をもとに、プログラミングされた導線に沿って動いているという。
ちなみに、このロボットは前面のセンサーで障害物を検知して避けるようにプログラミングされているが、なかなか動きが速いうえにかなりギリギリに来るまで避けないので、人間がロボットの圧に負けて避けるという光景を取材中に何度か見かけた(笑)。きびきびと一生懸命働いているロボットを人間が邪魔してはいけない…!という謎の心理が働く。
また、STOCKCREWは在庫管理も自社開発のWMS(倉庫管理システム)を利用しているという。顧客ともシステムを共有し、物流センター内の出荷・在庫・請求の状況が簡単に確認できるようになっている。
また、プロロジスとSTOCKCREWでは共同で、小規模EC事業者向けのフルフィルメントサービスを提供する専用区画「THE CUBE」を開設した。小規模事業者の新たな物流インフラとして、事業成長を後押しするのが狙いとのことで、EC担当者はぜひともチェックしてほしい。
デジタル化で倉庫全体を効率化! 最先端の物流拠点
さて、ロボットによる倉庫のピッキング作業効率化の事例を紹介したが、最新物流倉庫の次に注目すべきは、「倉庫内のデジタル化」はこれだけではない。プロロジスでは、IoTやAIを活用した業務の効率化、ドローンによる点検など、施設の至るところに最先端の技術が取り入れられている。特徴的なシステムとして、以下の3つが挙げられる。
「プロロジススマートボックス」
気温、湿度、雨量、風速、地震などの環境データと、物流施設内のカスタマーごとの電気・水道使用量をリアルタイムに取得・分析するシステム。施設運営の最適化・省エネ化に役立つ。
物流DX支援ツール「ロジメーター」
KURANDOとプロロジスが共同開発した、庫内オペレーションの効率化を支援するクラウドサービス「ロジメーター」。作業内容をタブレットに登録することで、業務内容やリソース、人員配置までの全てを一元管理できる。
さらに、プロロジスが注力していることとして、「BCP(事業継続計画)」つまり「災害やテロといった緊急事態に対する備え」が挙げられる。具体的には、防災センターや衛星電話、非常用電源の設置に加え、以下のような対策を行っているという。
- 免震システム
大規模地震時における庫内保管物の落下や、物流機器の損傷防止のため、揺れを軽減するシステムを採用。 - 地下水浄化システム
災害による断水に備え、地下水浄化システムを導入。最大約30日分のトイレ利用が継続できる容量。 - 非常用発電機の燃料オイルタンク
地下に非常用発電機の燃料オイルタンクを設置。停電時には最大約7日分の電力供給が可能。
災害への備えが充実していて、あらゆる物が置いてある物流施設、ゾンビ映画だったら籠城戦にオススメしたいくらいだ。
しかし、古川氏は、物流施設におけるBCPの取り組みについて、「かつては一般的ではなかった」と語る。
免震システムを採用したのはおそらく当社が初めてで、初めはその必要性がお客様には伝わりませんでした。しかし、東日本大震災があって、『本当に(免震が)あってよかった』というお言葉をいただきました。神奈川県の座間にある施設では、地震の揺れでも荷崩れすることなく、30分後には再稼働することができたと聞いています。(古川氏)
また、開発の際は地盤が強く、なるべく震災等の被害が少ないところを選定しているという。今回訪れた「プロロジスパーク八千代1」も、地震時の液状化や大雨による浸水が想定されにくいエリアに立地している。
もちろんお客様の要望によっては、湾岸に近いと便利だということで、液状化エリアを選定することもありますが、その場合はできる限りの対策を講じています。(古川氏)
こうした活動は、地域の雇用機会の創出や経済活性化にもつながっている。「まちづくり」につながる新たな施設開発として、プロロジスは官民一体となって取り組みを進めているそうだ。
働く人に配慮して「この倉庫で働きたい」と思える施設で雇用を確保
長時間過ごす場所だからこそ、働く環境への配慮も重要だ。見学した「プロロジスパーク八千代1」の施設内には、倉庫とは思えないほど綺麗なカフェテリアや、コンビニなどが用意されていた。しかも、休憩時に遊べる卓球台まであるのだ。
この写真だけ見せたら都心のどこかにあるキレイなオフィスにしか見えないが、これが最新の物流倉庫なのだ。しかし、2000年代初頭には、こうした休憩スペースがある物流施設は少なかったという。女性の従業員も多かったにもかかわらず、男性用のトイレしかないなど、従業員へのケアが不十分なところがあった。
プロロジスでは、入居カスタマーのため、そしてそこで働くパートやアルバイトの従業員のために、快適性を追求した施設づくりを行っている。
入居されるお客様の一番の課題は『雇用確保』。この施設に入ってアルバイトを雇えるのか、辞めずに続けてもらえる環境なのかを気にされる方が多い。そういった部分を考えて、働きやすい環境づくりには特に配慮しています(古川氏)
その他にも、倉庫で働く人が快適に過ごせるよう、以下の取り組みをしている。
- カフェテリアや化粧室の整備
- 送迎用のカーシェアリングサービス
- 送迎バス、路線バス(施設内にバス停を設置)
- カスタマーイベントの実施
新しい施設を開発する際には、地元のバス会社さんと交渉して路線を少し伸ばしてもらい、施設内にバス停を作ったこともありました。
また、バーベキューや夏祭りなどのカスタマーイベントも定期的に実施。もちろんお客様のためでもありますが、その先のパートさんやアルバイトさんに喜んでもらい、施設従業員の雇用の定着を促すことが狙いです(古川氏)
こうした活動は、地域の雇用機会の創出や経済活性化にもつながっている。「まちづくり」につながる新たな施設開発として、プロロジスは官民一体となって取り組みを進めているそうだ。
物流施設の主流は自社保有から賃貸へ
グローバルに拡大を進め、日本でも着実に開発実績を伸ばしてきたプロロジスだが、2000年代からの拡大のきっかけは「3PL(Third Party Logistics)」の普及だった。「3PL」とは、商品の保管や輸送などを自社で行うのではなく、専門的なノウハウを持つ企業に委託する業務形態のことだ。
昨今は、メーカーは商品保管や輸送といった物流業務をサードパーティに委託し、不動産である倉庫も所有ではなく賃貸にして、自社の本来の業務に集中する業態が主流だという。物流業務を受託した3PLとしても、受託した荷物量の変化や、荷主との契約終了に柔軟に対応できる賃貸型の方が都合が良い。また、最近ではEコマースの普及によって物流施設ニーズが一層拡大している。
なお、プロロジスが提供している物流施設は、大きく分けて2種類ある。
マルチテナント型:複数企業向けの大型センター
プロロジスが物流適地を選定し、汎用型の大型物流施設を開発。倉庫の専有部分は賃貸マンションのようになっており、オーナーであるプロロジスが3PLやEC事業者等の顧客に場所を提供する。ちなみに、今回見学したのはこのマルチテナント型だ。
ビルド・トゥ・スーツ型:特定企業向けのオーダーメイド施設
カスタマーが希望する場所に、1社専用の物流施設を開発し、自社専用施設として貸し出す。
“倉庫のガワを作って提供するだけ”という時代はもう終わりつつあります。お客様の悩みにより深く寄り添おうとすると、もっと色々なサービスが必要になる。たとえば、機器の配置やロボットの導入など、オペレーションについてのコンサルティングをしたり、人件費を下げるための相談を受けたりもしています。(古川氏)
また、カスタマーによっては、物流施設内のマルチユース化も進めているという。
- ウェブ編集
- データセンター
- プロモーション
- 撮影スタジオ
- ショールーム
- 営業オフィス
このように最近の物流倉庫は、ただ商品を保管するだけでなく、オフィスやスタジオなどさまざまな用途で使われているのだ。
ちなみに、プロロジスでは、倉庫とオフィスの中間のような施設として「プロロジスアーバン」を東京23区内に展開中。都心のオフィスには置けないような大きい商品を展示する場合などに利用されるとのことだ。
「ただ商品を置く」ことを超えて、施設管理のロボット化や災害対策、雇用による地域の活性化まで、新しい価値を次々と生み出している物流倉庫。物流業界を率いるリーディングカンパニーとして、プロロジスの今後に注目したい。
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