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AIが好みのコーヒー豆を診断。無人カフェロボットが淹れた高品質なコーヒーが飲める「root C」とは?

高品質なコーヒーを完全無人で提供する「root C」を展開する株式会社New Innovationsを取材。自動販売機やカフェとの違いとは?

高品質なスペシャルティコーヒーを完全無人で提供するAIカフェロボット「root C(ルート シー)」。専用アプリ上で注文・決済し、指定した時間にコーヒーを受け取ることができるサービスだ。最大16種類からコーヒーを選べ、挽きたて、淹れたてを1杯450円で楽しめる。

2021年4月に正式ローンチされ、東京ソラマチやラゾーナ川崎プラザといった商業施設のほか、オフィスビルにも導入されている。またアプリのダウンロード数は85,000を超える(2023年3月時点)。

「root C」にはどんな革新性があり、どんな世界観を目指しているのか。同事業を手がけるNew Innovations(ニューイノベーションズ)の代表取締役CEO兼CTO・中尾 渓人氏(23歳)に聞いた。

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株式会社New Innovations 代表取締役CEO兼CTO 中尾渓人氏

豆の原価は他店の4〜6倍? 「コーヒーの品質と種類」に強み

コーヒーを提供する一連の工程を自動化したカフェロボット「root C」(New Innovations提供)

 root Cは、注文を受けてコーヒーを顧客に受け渡すまでの工程を完全自動化している。基本的な使用方法は、次のとおりだ:

  1. 専用アプリで注文・決済する。このとき購入店舗と引取時間を指定する(その場で最短での受け取りも可能)
  2. 指定した引取時間に合わせて来店。指定されたロッカーの鍵をアプリで解除し、コーヒーを受け取る
root Cの利用イメージ(New Innovations提供)

高品質のスペシャルティコーヒーを提供しているため、なるべく淹れたてを飲んでほしいという理由から、アプリ上では指定した時間の「10分以内」に引き取るようアナウンスされる。

消費者がコーヒーを購入する場合、自動販売機やコンビニ、カフェなど複数の選択肢がある。それらと比較した場合、root Cの強みは何なのか。中尾氏は「ラインナップの幅広さ」と「品質」だと主張する。

当社のコーヒーは、いわゆるセカンドウェーブのコーヒーチェーン店と比較して、1杯あたりの販売価格を同じとした場合、コーヒー豆の原価が4〜6倍高いものを使っています。店舗や店員を必要としないため、その分のコストを豆に当てています。また、味にえぐみや雑味が出ないようロースト前後に豆を選別するなど、手間がかかる工程も取り入れています。ラインナップは設置エリアによって若干異なりますが、最大16種類あり好みにマッチしやすいかなと(中尾氏)

高校生時代にNew Innovationsを起業したCEOの中尾氏

中尾氏は「コーヒーを飲む人は多いけれど、好きなコーヒーの味を正しく自己認識している人は少ない」と指摘する。

root Cのアプリには、簡単な質問に答えることで、その方にピッタリのコーヒーを提案するパーソナライズ診断『root C MATCH™』が搭載されています。これがAIカフェと名付けている所以でもあります。何度か診断を重ねることでより精度が上がり、好みの味に出会えると好評です。コーヒーの品質自体も好評価をいただいていて、『他のコーヒーが飲めなくなった』と言われるのが一番うれしいです(中尾氏)

ここでいう「他のコーヒー」とは、主にセカンドウェーブ系のコーヒーチェーン店のコーヒーを指すという。

設置エリアは「オフィスビル」と「商業施設や駅」の2極化

設置エリアは関東が中心だ。需要を探るために台数を一気に増やした時期があったが、後に閉鎖したエリアもあり、2023年8月下旬時点では12台に落ち着いている。需要が高かったのは「オフィスビル」と「商業施設や駅」だという。

エリアによって売れる時間帯や曜日は異なるが、総じて利用者層は20代〜60代と幅広い。また初回利用者への割引キャンペーンを提供しており、「商業施設や駅」では初回利用者が多く、「オフィスビル」では、そこで勤務する人がリピーターになるケースが多いという。

ホットとアイスのどちらも扱っている(New Innovations提供)

ローンチからしばらくは、飲み放題を含むサブスクリプションプランを提供していたが、2023年6月28日をもって終了している。

顧客視点で考えると、サブスクは利便性が高い反面、『何杯飲まないと損をする』といったノルマがあるような感覚も生んでしまいます。一部ですが、サブスクを利用して同僚の分までまとめ買いしている人もいました。root Cの場合、お客様と当社の双方がもっとも望む方法ではないと考え、終了を決めました(中尾氏)

サブスクプランを終了してからのほうが、購入数や売上は上がっているそうだ。今後は、以前から提供している「5杯飲んだら1杯無料」といったコーヒーチケットやクーポンの配布に注力するという。

また今後の拡大予定をたずねると、ニーズがある商業施設や駅周辺への設置増に加え、新たなエリアでのビジネスチャンスも探っていると中尾氏。

今後は、オーナー様の協力を得ながら台数やエリアを増やしていけたらと。都内を中心に需要のあるエリアを模索していきたいです(中尾氏)

とはいえ、急激な設置拡大は目指していないとも主張する。その理由は「root Cの世界観を維持するため」だ。

root Cを展開するうえで大事にしたいのは、「設置数拡大」よりも「世界観」だという

会員のみなさんが、すべてのステーションで商品を受け取れる利便性を大事にしたいと考えています。そのため病院などコーヒーの受け取りだけを目的に訪れるのが難しい施設よりも、気軽に訪れやすい駅や商業施設への設置を積極的に行っています。どこでも受け取れるというroot Cのエコシステムを作りたく、現在の会員さんもそういった世界観に共感してくれていると感じます(中尾氏)

ローンチから2年で見えたニーズと課題

ローンチから2年以上が経過した現在、さまざまなニーズや課題も見えてきている。たとえば、アプリをダウンロードせずに購入したい人が一定数おり、その層を取り込めていないことだ。初回利用者が多い商業施設や駅ではアプリのダウンロード、および登録が購入のハードルとなる。

オペレーションにおける課題もある。root Cはリモート監視をしており、トラブルなどがあった場合にリモートで対応する。ロボットが自動で判断して復旧する自動復旧機能もあり、シンプルなエラーなどは人が関与せずに復旧できる。

ただ、「突然の猛暑でアイスコーヒーが予想以上に売れた」「イベントにより通常の何倍も売れた」といったタイミングで氷やカップが切れてしまうと、すぐに補充は難しい。売れ行きがいいエリアでは1日の補充回数を増やしているが、それでも補充できる量や回数に限界があり、ビジネスチャンスを逃してしまっていた。

年内にはバージョンアップした次世代機が導入される予定だ

こういったニーズや課題を踏まえ、年内にいくつかのバージョンアップを予定している。1つはアプリをダウンロードせず、交通系ICカードやQRコードによる決済でも購入できるようにすること。上述した通り、初回利用者への利便性を高めるためだ。

性能を大幅にバージョンアップした次世代機の完成も控えている。現在のroot Cと外観こそ変わらないが中身の性能が異なり、保存できる氷やカップなどの量、自動復旧やリモート操作ができる項目が大きく増える。たとえばカップの詰まりや引き取られなかったコーヒーの廃棄など、複雑性が低い処理はできる限りロボットが担うようになる。トラブルを防ぎ、売上拡大にも貢献するはずだ。

大手チェーンと連携して、調理自動化への挑戦も

New Innovationsでは、自社のソリューションを他社に提供するOMOソリューション事業も展開している。これまでにブルーボトルコーヒーと協業した期間限定の非対面カフェ「BLUE BOTTLE COFFEE POP UP CAFE - SHIBUYA -」や、外資系ブランドと協業し、ECで購入した商品の受け取り及びショーケースとしても使える「スマートショーケース」などを実現してきた。

ブルーボトルコーヒーとは、オーダー、及び受け取りロッカーシステムを開発(New Innovations提供)
外資系ブランドとは、ECで購入した商品の受け取り、及びショーケースとしても使える「スマートショーケース」を開発(New Innovations提供)

現在、取り組んでいるのは複数の大手飲食チェーン企業との調理自動化で、数年がかりで実験を行っている最中だという。「あらゆる業界を、無人化する」をビジョンに掲げる同社だが、まずは関わる人が多い飲食業界をターゲットにしている。中でも接客や配膳ではなく、調理の自動化にこだわるのは、難易度が高いがやるべき価値があるためだと中尾氏。

会計や配膳等の接客業務は、おもてなしをしたり、会話をしたり、人がやってこそ価値が発揮される業務だと思います。一方で、顧客から見えない調理場での調理業務は人がやっても、ロボットがやっても価値が変わらない。顧客からすると、おいしければどちらでもいいですよね。だからこそ接客より調理の自動化が優先だと僕は思っています(中尾氏)

この調理自動化ロボットを世の中に披露できる目処は、まだ見えていない。成功に向かって、とにかく走り続けるのみだという。ロボットへの情熱と「人類を前に進め、人々を幸せにしたい」という思い。それが、若き起業家を突き動かす原動力だ。New Innovationsが作り出そうとしている未来に期待が高まる。

【取材後記】実際に体験、たしかに高い豆を使ってそう

実は取材当日、機械がメンテナンス中だったので別日に、編集部員がroot Cを体験しに行ってきた。まず専用アプリで、パーソナライズ診断『root C MATCH™』をやってみることに。簡単な質問に回答したところ、「グアテマラ サンタ・クルス(ホット)」「ケニア ルオナ(アイス)」をおすすめされた。

『root C MATCH™』の診断結果

おすすめされた「グアテマラ サンタ・クルス(ホット)」を注文。注文が入ると、豆を挽く電動ミルの音がしはじめ、引き取り時間になると、ロッカー内の奥の扉が開き、中からコーヒーが出てきた。からくり時計を見ているような楽しさがあった。

コーヒーを待つ間のアプリ画面

コーヒーは酸味とコクのバランスがよく、たしかに高い豆を使っていそうだ。量もたっぷり入っている。が、1杯450円のコーヒーを、毎日飲むのは金銭的に厳しいかな……と思っていたら、購入後に次回200円引きのクーポンが付与された。このコーヒーが1杯250円ならお得に感じる。またコンビニやカフェだと、どうしてもお昼時は混雑してしまう。root Cなら、コーヒーを買うためだけに並ぶ必要がないのも魅力的だ。

root Cの左側に扉があり、その中に砂糖やマドラー、フタなどがある

しばらく近くに立っていると、20~30代の女性が数人、コーヒーを引き取りに来ていた。慣れた手つきだったので、常連なのだろう。逆に年配の男性は「あれは何だろう?」と遠目から眺めていた。root Cの存在を知らないと、購入のハードルが高いのも納得だ。

またアプリで注文の操作するときに、購入店舗を選ぶのだが、この操作だけは絶対に間違えないように注意したい。誤操作さえ気をつければ、おいしいだけでなく、利便性もエンタメ性もあり、日常使いしたくなるだろう。

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