Googleが本領発揮! AIによる広告クリエイティブ時代に突入:Google Marketing Live 2023まとめ
Google Marketing Liveとは?
2023年5月23日(米国時間)、Googleは同社の広告ならびにコマース関連プロダクト群に関する最新アップデートや、開発の方向性を発表するGoogle Marketing Live 2023(以下、GML)を開催しました。
GMLは毎年この時期に開催されるイベントで、Googleの広告事業のみならず、インターネット広告業界の近未来の方向性を示すものとして定着してきました。
今年のテーマや主要な発表から何を読み取れるのか。イベントを振り返ってみたいと思います。
テーマは「Google AIの活用によるマーケティングの強化」
昨年のGML同様、Googleの最高事業責任者(CBO)であるフィリップ・シンドラー氏のスピーチでキックオフされ、冒頭から「Google AIの活用によるマーケティングの強化」をテーマに進行していきました。
GoogleのAI活用は、OpenAIの「ChatGPT」やMicrosoftの「Bing AI」に遅れをとっているように世の中には映っているかもしれません。しかし、Googleは10年前からAIに取り組み、実際にスマート自動入札のような機能からP-MAXのようなプロダクトまで、AIを裏側で使うことによってGoogle 広告の発展を支えてきました。
AIを裏方から表舞台に登場させるかのように、Googleは今回のGMLにおいて、ジェネレーティブ(生成)AIの活用を前面に押し出し、それを実装した新しい機能やプロダクトが、どのようにマーケティングの意思決定、問題解決、創造性の強化に役立つかを全体を通して説明しました。「Google AI」という名称を繰り返し発表でも使っていたことからも、Google AIがあらゆる機能を強化していることを今後は明示することが考えられます。
昨年のGML2022では28個の新機能が発表されましたが、今年のGML2023では15個と半分近くに減りました。必ずしも数が重要なわけではありませんが、今回のGMLに間に合わせるべく、プラットフォームにAIを搭載する開発に特に注力した可能性があることを示唆しています。それだけGoogleにとって、AIは最優先事項になっているのです。
AIによるクリエイティブ制作はテキスト、画像、動画に対応
Google AIを使ったクリエイティブ制作関連の新機能は以下の通りです:
検索キャンペーンの自動生成
ランディングページのURLをGoogle 広告のキャンペーン作成画面で入力すると、入力されたランディングページ情報からキーワード、広告見出し、説明文、画像アセットを含めたアセットが自動生成されます。生成された各種アセットに対して、マーケターはGoogle 広告にチャット形式でフィードバックすることができ、そのフィードバックに基づいて新たなアセットをGoogle 広告は生成します。
検索広告の自動作成アセット機能の強化
2022年のGMLで発表された検索広告の自動生成アセット(以下、ACA)は、ランディングページや既存の広告のコンテンツを活用して自動的に見出しや説明文を生成する機能ですが、Googleは本機能の強化にあたり、生成AIの活用を開始するとのことです。ACAと生成AIを組み合わせることにより、ユーザーの検索クエリの文脈に合わせて広告をより効果的に出し分けることが可能になります。
例えば「乾燥した敏感肌のためのスキンケア」という検索クエリに対して、生成AIは「乾燥した敏感肌をケアしましょう」といった新しい見出しを生成し、これまで以上に広告の関連性を向上させることが可能です。
P-MAXのアセット自動生成
P-MAXにおいてもGoogle AIを活用したアセット自動生成機能が提供予定です。ランディングページのURLをインプットするだけで、Google AIは広告主のブランドを学習し、キャンペーンに適切なテキストや他のアセットを自動的に生成します。さらに、AIが特別に生成した新しい画像を提案し、さまざまなフォーマットで広告の出し分けができるようになります。マーケターはGoogle 広告にチャット形式でフィードバックすることが可能で、Google 広告はフィードバックに基づいて新たなアセットを生成します。
Product Studioによる商品画像の作成
Google Merchant Center Next内で使用可能なProduct Studioを使うことで、簡単に独自でカスタマイズされた商品画像を無料で作成、編集ができます。
- 背景画像のカスタマイズ:同じ商品画像で背景だけ差し替えたい場合、新たに写真撮影せずとも、「商品が桃に囲まれ、背景はビーチ」というリクエストをすることで、異なるイメージの素材を作成できます(下図)。
- 背景の削除:背景を削除して製品画像のみにすることができます。
- 解像度をすぐに高める:商品を再撮影することなく、小さい画像や低解像度の画像の品質を向上させます。
動画広告の自動生成
動画広告の自動生成
AIにより、他のキャンペーン、商品フィード、アプリストアの掲載情報などの既存のアセットを使用して、新たに横型、正方形、縦型の動画広告を生成してくれる機能や、横向きの動画から縦向きの動画広告を作成することもできる機能です。Googleのテキスト読み上げ機能を利用して、動画にナレーションの追加もできるとのこと。また、画像の解像度を上げたり、表示面に合わせて適切な画像サイズへ変更したりする機能も備わっているようです。
AIによる広告クリエイティブ制作機能は管理画面ネイティブに
2023年のGMLでは、他にも多くの新機能が発表されましたが、AIによるクリエイティブ制作を支援する機能については発表を聞いていた皆さんも一番興味を持たれたのではないでしょうか。
Googleに先立つ形でMetaも、2023年5月11日、広告主向けに新しいジェネレーティブAIツールの実験場として機能する「AI Sandbox」を発表しました。まずは、広告コピーの複数バージョン作成、画像の背景生成、画像のアスペクト比調整などの機能をツールで提供する予定です。
最大手級の広告プラットフォーム2社が管理画面やプラットフォームの中でネイティブに(直接実行可能な)AI制作支援機能を組み込む昨今の動きは、他の広告プラットフォームにも大きな影響を与えるものと思われます。今後、他の広告プラットフォームも自社でAIを開発したり、サードパーティ製のものを使ったりするなどして、ネイティブに機能を組み込むことが予想されます。
ジェネレーティブAIを使ったクリエイティブの制作スピードは速まり、コストも抑えることができるようになるでしょう。一方で、誰でもAIのサポートで簡単にクリエイティブが制作できるようにはなりますが、品質面での担保をどのように取るのか、分業体制をとっている場合はワークフローや情報・データ共有のアップデートが必要になってくるでしょう。デザイナーは、AIに任せるべき部分と、人間にしかできない部分を見極め、AIを効率的に活用するためのディレクション能力が必要になってくるのではないでしょうか。
運用型広告で発生する業務は「入札・制作」「入稿・レポーティング」「分析」の三つに大きく分けることができます。運用型広告が世の中に現れてから20年、いずれの業務についてもAIがカバーする部分はすでに大きく、手動で行っていた部分を今後も侵食していくでしょう。急速な勢いで普及するAIは、広告に関わる業務はもちろんのこと、職種内容や企業のビジネスモデルまで変えようとしているのではないでしょうか。
全発表内容をカバーしたGML2023のイベントレポートはこちらです。
https://www.atara.co.jp/unyoojp/2023/05/google-marketing-live-2023_report/
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