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「藤井聡太氏は序盤が卓越」「トップはAIを使っていない人はいない」プロ棋士と最強AIエンジニアが語る将棋AIのリアル

HEROZ 代表取締役 Co-CEO林隆弘氏、HEROZ AIエンジニア 川島馨氏、鈴木環那 女流三段、谷合廣紀 四段が対談。

HEROZ 代表取締役 Co-CEO林隆弘氏、HEROZ AIエンジニア 川島馨氏、鈴木環那 女流三段、谷合廣紀 四段(左から順に)※Ledge.aiではHEROZに特別に許可を得て、撮影しています。

HEROZ株式会社は5月11日~5月13日、東京ビッグサイトで開催された「第6回 AI・人工知能EXPO【春】」にブースを設置。3日間を通して「将棋界を変えたAI技術がつくる未来」をテーマにブース内セミナーを実施した。

なかでも多くの観客でにぎわったのは、東京大学大学院博士課程に在学中で、研究者として自動運転技術などのAI(人工知能)関連を専攻する谷合廣紀 四段、「むろかんなチャンネル」や「森内俊之の森内チャンネル」でYouTuberとして活動し、「NHK杯テレビ将棋トーナメント」の司会を務める鈴木環那 女流三段をゲストに迎えた、最終日5月13日のトークセッションだ。

司会を務めるHEROZ 代表取締役 Co-CEO林隆弘氏のほか、第32回世界コンピュータ将棋選手権においてHEROZのAIエンジニアたちのチーム「dlshogi with HEROZ」で優勝した経験を持つ、HEROZ AIエンジニア 川島馨氏が登壇。「プロ棋士と最強AIエンジニアが語る将棋AIの未来」と題して、“プロ棋士”と“最強AIエンジニア”たちがトークを繰り広げた。

現役プロ棋士「藤井聡太氏は序盤が卓越している」

現在、プロ棋士のなかでは将棋AIはどのように活用されているのか。

谷合氏は「序盤は比較的あらかじめ準備しておきやすいため、事前にAIで相手の選評を調べて『こういう展開になるだろうな』と思った順番に備えておく。中盤や終盤は自分自身が指した将棋をAIにかけて『ここが悪かった』『ここが良かった』と採点してもらい、フィードバックを得ることで自分自身の棋力向上に努めている」と明かした。

鈴木氏は「女流棋士でもトップはAIを使っていない人はいないというぐらい、AIにはみんなお世話になっている。2年〜3年ぐらい前から、みんなAIを使うようになった。練習将棋でも公式の対局でもそうだが、一局が終わった後に検証という形でAIにかけて『どこが悪かったか』『方針は間違っていなかったか』など良かった点、悪かった点を調べて、復習というか反省のために使っている」と話す。

鈴木氏は自分自身がアシスタントを務めるYouTubeチャンネル「森内俊之の森内チャンネル」において、HEROZの協力のもと、自分自身が直近1年間に指した将棋の棋譜をすべてAIで解析し、AIとの一致率や悪手率などを数値化してもらった経験がある。

鈴木氏は「藤井聡太竜王の1年間の将棋も解析してもらった。藤井聡太竜王は中盤がものすごく強いのは有名だと思う。実は将棋AIに解析をかけた結果、序盤がものすごく卓越していることがわかった。(AIによる)通知書は棋士のどこが優れているのかわかる。私にとっても大きな発見だった」と当時を振り返った。

「AIはブラックボックスになりがち」

AIの改善してほしいところについて聞かれた鈴木氏は「最善手を教えてくれるが、『なぜその手になったのか』『どういう未来を描いているのか』がわからないところがある。自分が思った手はこの手だったけれど、なぜこの手だとダメなのかは指し進めないとわからないところが多い」と悩みを語った。

川島氏はこの悩みを受けて、「現状のAIでは1番勝率が高い指し手とその先の読み筋は見られるが、その指し手がどうして良いのかは言語化されていない。今後は将棋AIを人に使ってもらううえで『人が理解しやすいように言語で説明する』のが1つのテーマになると思う」と考えを示した。

谷合氏は「将棋に限らず、AIはどうしてもブラックボックスになりがちだ。どうしてその答えが出てきたのかなかなかわからず、不便なところがある。将棋AIでも最善手や読み筋を教えてもらっても、どうしてそうなるのかをつかむにはある程度の気力が必要だ。現在の将棋AIは初心者が使うには難易度が高すぎると思う」と話す。

「将棋AIでは人間が1回でもミスをしたら負けにつながってしまうようなリスクの高い手が選ばれることがある。人間にとっては常に3個ぐらい正解があり、勝ちへの道が幅広いほうがうれしい。そういった複雑性を取り入れて、人間が勝ちやすい局面に誘導するようなAIがあっても良いと思う」(谷合氏)

「将棋AIの自然言語処理はかなり有望」

現在の将棋AIにおいては、Google DeepMindが開発し、囲碁の世界で世界トップ棋士に勝利した「アルファ碁(AlphaGo)」と同じように、盤面を画像認識して分析する手法が一般的だ。一方で、谷合氏は盤面を文字列に変換し、自然言語処理で解析する手法に試みている。

林氏による両者でのサーバーコストの違いはあるのかという質問に対して、谷合氏は「盤面を画像に変換することで、データ量が増え、保存しておくストレージが大きくなる。文章に変換するやり方のほうがストレージの容量が削減でき、データの転送が少なくなるというメリットはあると思う。ただ、学習のコストはあまり変わらない」と説明する。

川島氏はHEROZでは画像認識の手法を採用しているとしつつも、「私も自然言語処理はかなり有望だと思っている。今後、自然言語処理で将棋AIが強くなるのではないかと非常に楽しみにしている」と語った。

スマホも含むブラウザで将棋AI研究をサポートするサービス

林氏はトークセッションの最後に、スマホも含むブラウザで手軽に最新のディープラーニング系将棋AI「dlshogi」と、やねうら王系将棋AI「水匠」での同時解析ができるサービス「棋神アナリティクス」を紹介した。

棋神アナリティクスは高額な初期投資をせずに、ボタン1つで誰でも簡単に操作できるUI/UX環境を用意し、将棋AI研究をサポートする。現在は事前登録を受け付け中で、6月頃にサービス提供を予定しているという。

トークセッションが終わると、対局の盤面をカメラで撮影した映像をAIで解析し、これまで記録係がしてきた棋譜の記録を自動化するシステム「HEROZ Kishin Eye」のデモを披露した。谷合氏と鈴木氏を相手に、観客が1人1手ずつリレー将棋に挑んだ。

林氏は指し手を解説しながらも、HEROZ Kishin Eyeではディスプレイに指し手がすぐに反映される点をアピールした。

谷合氏は「私はHEROZ Kishin Eyeを初めて触ったが、最後までまったく問題なく動いていた。持ち駒を5枚まで増えていたが、精度良く認識されていた。すごく実用的なシステムだと感じた」と感想を語る。

鈴木氏は「HEROZ Kishin Eyeは公式戦でも使っている。公式戦はもっと早く進むことが多い。実際の対局のときには手が重なってしまっても、しっかりと記録していただいている」とコメントした。

【開催概要】

  • 展示会名:第6回 AI・人工知能EXPO【春】
  • 2022年05月11日~2022年05月13日 10:00~18:00 ※最終日のみ17時00分終了
  • 会場:東京ビッグサイト 南展示棟

※「第6回 AI・人工知能EXPO【春】」はすでに終了しています。

Ledge.ai 編集部
Ledge.ai編集部です。最新のAI関連技術、テクノロジー、AIのビジネス活用事例などの情報を毎日発信しています。

「AI:人工知能特化型メディア「Ledge.ai」」掲載のオリジナル版はこちら「藤井聡太氏は序盤が卓越」「トップはAIを使っていない人はいない」プロ棋士と最強AIエンジニアが語る将棋AIのリアル

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