ウェビナーをスムーズに開催するために必要な準備とは?
コロナウイルスの影響で、在宅・リモート・オンライン化が急速に進んでいる。「どのようにWebinar(ウェビナー、Webセミナー)を実施すればいいのか」「お薦めのWebinarツールはなにか」と疑問が絶えないだろう。
以前からオンラインセミナーを開催していたアドビのソリューションコンサルタントの山下宗稔(むねとし)さんが、自身がどのようにオンラインセミナーを開催しているのかをまとめた。今回は、そのセッション内容をレポート形式でお届けする。
Webinarの主催者側と参加者メリット、デメリット
Webinar(ウェビナー)とはオンライン上で実施するセミナーのことで、通常のセミナーと比較したときにどのようなメリットとデメリットがあるのかをまず説明した。
主催者 メリット
まず、主催者側のメリットとしては、以下のようなことが挙げられる。
- 参加人数に縛られない(参加者が少なくても分からない)
- コンテンツの流用がしやすい
- 会場費・交通費が不要、全国を対象にできる
- 当日の参加・不参加を簡単にデジタル化
- 服装自由・化粧不要
主催者 デメリット
一方、デメリットとしては、以下のようなことが挙げられる。
- ネットワークの関係で瞬断の可能性がある
- 参加者の反応がわかりづらい
- 話し手に慣れが必要
- 参加者の参加率が低くなりがち
- 議論やワークを行うタイプは実施困難など
参加者 メリット
次に参加者側のメリットとしては、以下のようなことが挙げられる。
- 交通費・移動時間不要
- 気軽に申し込める
- スケジュール的に参加できる可能性が高い
- 服装自由・化粧不要
参加者 デメリット
次に参加者側のデメリットとしては、以下のようなことが挙げられる。
- PCなどが原因で聞こえにくい可能性がある
- 質問しづらい
- 臨場感が低くインパクトが薄い
- 一定のWebに抵抗感がある人がいる
主催者 参加者 デメリットの克服方法
これらの主催者・参加者のデメリットのうち、どうしても解決できない問題は、主催者側の⑤議論やワークを行うタイプは実施困難という項だ。他のデメリットは工夫次第で解決できる。
まず主催者側のデメリットであれば、以下のような解決方法がある。
- ネットワークの関係で瞬断の可能性がある
- 参加者の反応がわかりづらい
- 話し手に慣れが必要
- 参加者の参加率が低くなりがち
- 議論やワークを行うタイプは実施困難など
①については、資料内容をリッチ化(資料内容を読むと一通りわかる状態)すること、②については、アンケートを用意することで解決する。③については練習と回数を重ね、ラジオなどを聞いてイメージトレーニングすれば良いだろう。④については、リマインドをMAツールなどで実施すれば良い。
- PCなどが原因で聞こえにくい可能性がある
- 質問しづらい
- 臨場感が低くインパクトが薄い
- 一定のWebに抵抗感がある人がいる
参加者側のデメリット解解決策としては、①は、最初に音声確認タイムを挟むこと、②についてはQ&A機能を活用、③話し方のコツをつかむなどが挙げられる。④については長期的に受け入れてもらうしかないだろう。
Webinar開催前までに決めておきたいこと
Webinar開催前までに決めておくとよいことをまとめると以下の4つだ。
- 自社の売上プロセスにおける課題の把握
- 顧客のニーズと自社で出せるもの
- Webセミナーで実施して問題ないか
- 集客は可能か
① 自社の売上プロセスにおける課題の把握
Webinarを実施する前に決めておくべきことは、まず自社の売上プロセスにおける課題だ。「見込み客を獲得したいのか」、「顧客を育成したいのか」、「営業(コールセンター)の支援をしたいのか」、「継続客にリーチしたいのか」などをあらかじめ把握しておく。
② 顧客のニーズと自社で出せるもの
次に、それぞれフェーズで「顧客が求めているものは何か」、「そのニーズに合ったセミナーをできるか」を検討すると良いだろう。
見込み客獲得としては、今話題の内容が集客しやすくて良いだろう。自社と関係ない話でもOKだが、自社のコンテンツに絡めるためにセミナー後のMAなどの育成が必須になる。
顧客育成としては、自社商材の機能/メリットの詳細や他社製品との比較検討情報を提供する。営業(コールセンター)の支援としては、営業(コールセンター)に差し支えないようにするのが肝だ。このフェーズの顧客向けに明確に実施しなくても問題ない。
継続客については、基本機能にない追加の機能紹介などでアップセルを狙う。またユーザー会などで他の既存客の成果や使用レベルの連携を図る。リサイクルとしては、新機能や新規事例の紹介などを行い、振り向かせる。
山下さんが所属するアドビでは、見込み客獲得としては、「デジタルマーケティングとは」「MAとは」「Webinarについて話すWebinar」などを実施。
顧客育成では、「マーケティングオートメーション活用と導入検討のポイント」「業界特化型Marketo紹介」、営業(コールセンター)のフローでは「ビジネスプロセス構築ワークショップ」、継続客では「コンサルタントオフィスアワー」「追加機能紹介」、リサイクルでは「最新事例紹介」などを行っているという。
③ Webセミナーで実施して問題ないか
ワークショップは、Webinarでの実施は難しいが、それ以外であれば実施可能。
④ 集客可能か
最後に集客可能かを検討しましょう。社内リードを確認し、広告を実施するか検討する。
Webinarツール
次にWebinarツールについてだ。アドビでは、「On24」を使用している。主催者側の環境面としては、サブスクリーンが必須だ。手元の環境では顧客名などが見えてしまう恐れがあるので、サブスクリーンに表示されている画面を配信する。有線LANでつなぎ、マイクは指向性マイクがベストだが、PCに備わっているマイクでも良い。音声は問題なく配信されているかどうかテスト用のイヤホンでテストする。
Webinarツールに求めたい機能
- LP/フォーム作成(MAで用意するのも可)
- リマインド通知(こちらもMAで実施も可)
- QA
- アンケート
- 外部連携機能(MAなどと連携すると非常に運用が楽)
- 投票/挙手(臨場感と反応が即時分かるので良い。必須ではない)
Webinar流れ・コツ・気を付けるべき点
Webinar流れ・コツ・気を付けるべき点について、「準備編」と「実施編」、「フォロー編」の3つに分けて解説する。
準備編
① 実施要否の検討が終わったら、実施日時・何分実施するかの確定する
30分~1時間30分ぐらいが最適。オフラインセミナーでは15:00~や16:00~など終了後お客様がそのまま帰宅できる時間帯の方が集客は良いが、Webinarでは特筆する傾向はない。
② Webinarの作成
Webinarツール上でWebinarを作成。この時に、Webinarの画面設計なども行い、集客用のランディングページやリマインダー、フォローアップメールの設定なども必要に応じ実施。
③ 集客実施
Webinarの内容・目的に沿った集客を実施する。
④ 詳細な資料作成
資料を読むだけで、全体の内容がわかるように詳細に作る方がよい。アドビでは、解説で動画は映像がカクカクすることもあるので、避けているという。
⑤ 音声などの事前チェック
画像含めて音声の事前テストを行う。
⑥ 練習
資料/話の流れは頭の中に入れておく必要がある。サブスクリーンにPPTを表示し、手元のPC上ではWebinarツールのコンソールを表示しているのでPPTのメモや「次の画面」の手元画面が表示されないからだ。
実施編
① 当日開始30分前から環境設定
PCが電池切れになることもしばしばあるので電源は必須。有線LAN、飲み物(PCマイクで声を張ると声が枯れやすい)用意などを用意。
② セミナーを実施
話すスピードはゆっくり目がベスト。たとえば、淡々と話をしない、呼びかける、目の前で情景が浮かぶような実例の提示など、通常のセミナー以上に工夫が必要。
③ アンケートのお願い
④ FAQ、挨拶、終了
セミナーの合間に質問を受け付けてしまうと、間延びしてしまったり、想定時間内に終わらなかったりするので、セミナー終了後に質問を受け付ける方が理想的。答えられないほどの質問が出たときや答えに窮するものは、後ほど回答するという形でセミナーを時間内に終了させるのがベスト。
⑤ サポートメンバーの待機
テキストチャット等で来る質問事項をまとめたり、音声の確認をしてくれたり、サポートメンバーがいるとより安心。サポートメンバーはオンラインで可能だ。慣れればいなくても問題なし。常に盛況な気持ちで対応しましょう。
フォロー編
① アンケート内容の確認と、結果を反映したWebinarの内容修正
② QA未回答のフォロー
③ フォローメール送信(Webinarツールで準備しておけば勝手に実施)
最後に Webinarツールだけでは難しい点
Webinarツールだけでは難しい点としては、以下が挙げられる。
- 中長期的な顧客の育成
- 既存/見込み客一覧からの対象選定と連絡実施
- メール未対応でSMS連絡など顧客に対する多チャンネルでの対応
- Webinar実施の効果と売り上げの関係確認
そこで、アドビでは、自社サービスのMarketoとWebinarツールを連携させて、上記の課題を解決しているという。Marketoとツールを連携することで、Webinarに紐づく顧客の商談金額・コストなども算出しているという。
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