“カワイイ”だけでなく仕事への思いを伝える――航空会社Peachの採用サイト リニューアル成功事例
Webの運用担当者にとって、サイトの新規制作やリニューアルは日常的なものではない。いざサイト制作やリニューアルの必要が生じた時に、「まず何から手をつけていいかわからない」と戸惑う担当者は少なくないだろう。
関西国際空港を本拠地とする航空会社Peachは、採用業務において「できるだけ自社のカラーに合う人の応募を増やしたい」という思いを持って、2018年の採用サイトのリニューアルに踏み切った。
Peachの採用担当者はWebの専門家ではなく、人員にも余裕はなかった。そんな環境で大規模なサイトリニューアルを成功させた取り組み内容と成功のためのポイントをPeachの長谷川さんに聞いた。
Peachのパブリックイメージと求める人材のギャップ
――まずは、Peachの事業概要と、従来の採用サイトの課題についてお聞かせください。
長谷川 淳美氏(以下、長谷川) Peach Aviation株式会社は、2011年に設立、2012年に就航した航空会社、いわゆるLCC(ローコストキャリア)です。関西国際空港を本拠地として、国内線18路線と国際線17路線に就航しており、社員数は約1,100名で、半分ほどがパイロットやCAなどの乗員です(2019年9月1日現在)。
採用サイトは創業初期に作ったものを長く使ってきたのですが、社員数も増え、会社のカラーもできあがってきたところで改めて見てみると、「今の実態とちょっと違っている、最新の情報ではない」と感じリニューアルを決めました。
――リニューアルする前の課題を教えてください。
長谷川 機能面では、求人もスマートフォンで応募する時代ですので、スマートフォンにも対応したサイトにしたいとか、採用担当者が最新情報を自分で更新できるようにしたいなどの要件がありました。
他にも、Peachのブランドは好きだけれどもPeachで働くことを理解していない人が応募してきているということがしばしばあったんです。
そこで、応募される方が採用サイトを見て、Peachという会社のことを正しく感じ取って、自分がこの会社に合うか合わないかをセルフスクリーニングできるようなサイトにしたいと思ったんです。
打ち出すメッセージやキャッチコピーまで提案してもらった
――プロジェクトの進め方を教えてください。まず何から手をつけたのでしょうか?
長谷川 “Peachが採用したい人物像”を策定したのが2016年のことですが、それをどう伝えていくか、サイトで打ち出すメッセージが当時はまだできていませんでした。そこで、複数のWeb制作会社に、キービジュアルやメッセージ、キャッチコピーも含めて提案してくださいとお願いしてコンペを行いました。
最初に伝えたのは、下記のような内容です。
- 採用したい人物像
- コーポレートカラー
- 入れて欲しいコンテンツ(CEOメッセージ、採用メッセージ、スタッフ紹介記事)
- 旧サイトの課題
- 守ってほしいルール
コンペでは最終的に4社に提案をいただきましたが、ざっくりした提案のみの会社もあれば、旧サイトとそれほど変わらない“カワイイ”路線を提案してこられた会社もありました。Peachは、その社名や、機体のカラーリングがピンクなことから“カワイイ”イメージを持たれがちなのですが、「仕事をしているときは“カワイイ”だけではできない。“明るい”“楽しい”というブランドイメージや企業の根幹である安全運航を創りだすために、“真剣さ”“厳しさ”を持って本気で取り組んでいるんだ」というのが伝わらないのがサイトの課題でもあり、相変わらずの“カワイイ”路線はちょっと違うなと思ったんです。
そんな中で、サイトイメージや具体的なコンテンツを提案してくれたのが、Web制作会社のジーピーオンラインです。決め手は何より「イメージが湧いた」ことです。私の本来の業務は人事で、Webサイトの制作に詳しいわけではありません。しかし、ラフやコンテンツ案を複数提案していただけたので、どんなサイトになるのか、完成形をコンペの段階でイメージできたんです。
また、制作には変更も付き物だと思いますが、コンペ時のやり取りで、こちらの要望に対応してくれるスタンスと安定した体制を感じました。
その会社のことをよくわかっていないとサイトは作れない
――Peachのサイトを作るにあたってどのように取り組んでいきましたか?
豊永 豊氏(以下、豊永) Peach様に限らずですが、その会社のことをよくわかっていないと「これを伝えましょう」という提案はできません。Webディレクターの大事な仕事が、お客様としっかりコミュニケーションをとって、その会社や商品、ブランドについて理解することです。
――ブランドについて理解するって難しいですよね。どういったことを行ったのでしょう?
高畠 拓也氏(以下、高畠) 実は、プロジェクト初期段階で、Peach様はサイトで打ち出す「メッセージ」をどういったものにするか、悩まれていました。そこで、Peach様に何度か訪問して、コンセプトや伝えたいことをヒアリングさせていただきました。その内容をもとに、他ディレクターなど複数名で打ち合わせをして、メッセージ案をいくつか提案いたしました。
長谷川 メッセージを決めるにあたって、高畠さんにはサポートしてもらいました。メッセージ案を何度か提出いただいたものをもとに採用チーム内で投票してもらって「NO PASSION, NO PEACH ― 本気じゃなければ楽しくない。楽しくなければ仕事じゃない」というメッセージが生まれました。
リニューアル後は、「このメッセージに共感しました」と応募してくれる人が増えました。PVやCVも安定していますが、何よりもコンセプトに共感して来てくれる人が増えたことに満足しています。社内からも「どうやってこんな良いサイトを作ったの?」と聞かれたほどです(笑)。
どのようなサイトにするか“指標”を持つことでクオリティを保つ
――ところで、ジーピーオンラインってどんな会社ですか。
豊永 創業は2000年です。大阪と東京で展開していますが、従業員約80名のうち、大阪に50~60名が勤務しています。Webディレクターの層が厚く、デザイナーやエンジニアも内部におりますので、意思疎通がスムーズであること、システム的な要望やアクシデントにもスムーズに対応できることが強みの1つです。
――クライアントに満足してもらえるサイトを提案するために、ジーピーオンラインではどのようなことに気をつけているんでしょうか。
高畠 サイトのクオリティを保つために最も重要なのは、「指標をしっかり持つこと」だと思います。ぶれない指標を持つことで、クライアントからいただいた内容を鵜呑みにするだけでなく、僕たちのほうから「そこはこうじゃないですか?」と返すこともできます。
今回の採用サイトの場合、“カワイイ”ではなく、“仕事に熱心で本気”を伝えられるようなものを作ろうという指標でやりました。そこから、応募者に「仕事に関して、ここの考え方が違うと合わない」ことが伝わるコンテンツを作ろうと思い、Peach様の熱い想いを伝える「Peach語録」が生まれました。
応募者からすると、熱い思いを知りたい一方で、社員の出身地や年齢層、財務状況や残業時間などの基本情報も把握しておきたいものです。ただ、そういった情報は通常だと、テキストで羅列されていることが多く、応募者からすると読みづらく、わかりづらい。ですから、今回は応募者に知ってもらいたいポイントを絞ってビジュアルで伝える「1分Peachガイド」というコンテンツを作りました。
――「Peach語録」も「1分Peachガイド」も素晴らしいコンテンツだと感じましたが、ジーピーオンラインからの提案で追加されたコンテンツだったんですね。他にも提案で追加されたものはありますか。
高畠 トップページに「採用担当にきいてみよう!」というチャットボットが出ますが、これもジーピーオンラインの営業担当がご提案したものですね。
長谷川 匿名で、気軽に聞きたいことを質問できるものです。まだAIではなく、キーワードマッチで回答しているので、精度についてはブラッシュアップしていかなくてはなりませんが、ログを見ると、サイトを訪れた人が何を知りたいと思っているのかがわかって、改善する際の参考になります。
ビジュアル的に見せる工夫も
――デザインでは、「スタッフ紹介」のページで皆さんが斜め上を見ている写真が印象的ですね。
長谷川 これも、顔の角度まですべて、「こう撮りましょう」とご提案いただいたんです。
高畠 「上を目指す」「全員が同じ方向を見ている」「見ている方向にはPeachの飛行機が飛んでいる」ということをイメージしたカットです。皆さんの顔の角度がそろうように、弊社のデザイナーが撮影に同行して、ご説明させていただきました。写真にマウスオーバーすると、そのご本人に手書きしていただいた座右の銘が出ます。
長谷川 ジーピーオンラインは、ビジュアル的に見せるのがとても上手だと思っています。社内でもめちゃくちゃ評判がいいです。
航空会社のサーバーは攻撃を受けやすいため別サーバーに
――システム面では、モバイル対応以外に何か要件がありましたか。
長谷川 CMSは初めから要件に入れていました。コンペの時に、他社からはオリジナルのCMSなどの提案もありましたが、セキュリティ面に不安がなく、今後担当が変わっても使えるシンプルで使いやすいものがいいと思っていました。その点でも、ジーピーオンラインから提案いただいたCMSは良かったです。
豊永 Peach様にご利用いただいているCMSは創業当時から自社オリジナルで作っているものです。もちろん、予算やご要望に応じて、他社CMSをカスタマイズして入れることもありますし、我々のオリジナルを入れることもあります。そのへんは臨機応変です。
――サーバーの選定はどのように行いましたか?
長谷川 リニューアルに合わせて、サーバーもサイトURLもすべて新しくしました。航空会社のサイトは攻撃を受けやすいため、予約受付サイトとは異なるサーバーにしておくほうが安心です。実は、サーバーの切り替えに関して後になって相談したんですが、快くレンタルサーバーも紹介してもらえました。
――運用はどのように行っていますか?
長谷川 「What's New」と、トップのバナーだけ私が更新できるようになっており、それ以外のページ追加などはジーピーオンラインにお願いしています。サーバーの契約だけしたらあとは全部お任せする形ですね。
スケジュールはタスク管理ツールで管理
――リリースまでのスケジュールは?
高畠 2017年9月に最初のコンペの提案に伺ったのですが、その時点で、翌年の2018年3月のリリースが決定事項でした。通常のスケジュールよりタイトでしたので、画面設計やサイトの構成を作成するのと並行して、「社員メッセージ」の撮影、インタビューやコピーの提案を行っていきました。
長谷川 今回のWebリニューアルの担当者は私と上司の2人しかおらず、通常の業務もあるなかで人手が足りませんでした。スケジュールはジーピーオンラインに管理いただいて、協力しあいながらやりました。原稿確認に時間がかかって、「間に合いませんよ!」と怒られたり(笑)。
――スケジュール管理を上手に行うコツはありますか?
高畠 今回は、タスク管理ツールの「Backlog」でやり取りしました。長期のプロジェクトではタスク管理ツールを導入して、遅延原因となりやすいタスクが誰に渡されているのかを可視化して進めます。
長谷川 スケジュール管理が可視化されて、やりやすかったです。
言いたいことを言い合える関係を作るのが成功の秘訣
――Webサイトリニューアルを成功させるために必要なことは何だと思いますか。
長谷川 発注側も、ある程度Webの知識を勉強した方がいいかなとは思います。Webに関する単語を知っているだけでも会話はスムーズだと思います。その点、ジーピーオンラインは説明も丁寧でしたし、こちらの疑問にも耳を傾けていただけました。
豊永 お互いが言いたいことを言い合える関係を作るのは大事です。Web制作において正解はひとつではないため、関係者全員が100%納得いくことはない。関係性ができていくなかで、「そう言うなら任せてみよう」という合意を得られるような信頼関係を形成していけるように、これからも努力していきます。
長谷川 ジーピーオンラインさんには、これからも、サイトを良くするための提案や、専門家としてのアドバイスを期待してます。
――ありがとうございました!
ジーピーオンラインは、大阪・東京を拠点としたWeb制作会社。2000年に創業され、まもなく20周年を迎える、Webの専門家チーム、クリエイティブのチーム、システム開発のチームが揃っており、Webサイトの企画・デザイン・システム・運用までトータルでサポートする「Webの総合プロダクション」だ。
長年にわたり、キャンペーンサイト、ブランドサイト、コーポレートサイト、採用サイトなど幅広い制作実績を持ち、そこから得た豊富なノウハウと高いクオリティコントロールでクライアントのWebサイト制作を成功に導いている。
- Webサイトにおいて新しいチャレンジをしたい
- ワンランク上のクオリティの高いサイトを作成したい
- サイトを良くするためのアドバイスや提案を積極的にもらいたい
- 今のサイト、いつもの制作会社に不満がある
そんな方は一度ジーピーオンラインに相談してみてはいかがだろうか。
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