これから始める最新アドベリフィケーション

ブランドリスクが高い5つのカテゴリとは何か?【モメンタム調べ】

モメンタム調査による「日本のデジタル広告リスク」レポートを読み解きながら、アドベリフィケーション対策の必要性を考察する。

Momentum調査の最新の計測レポートを読み解き、アドベリフィケーション対策について考察します。

Momentum株式会社の柳谷です。

今回はアドベリフィケーションについて、弊社で計測した最新リスクをまとめたホワイトペーパー、「日本のデジタル広告リスク」よりお話しします。

具体的なリスクとそれぞれの数値は本文で説明しますが、本稿を通じて、さまざまなプラットフォームにおいて、ブランドセーフティとアドフラウドの両面でリスクが存在している実態を見て取っていただくことができる内容となっています。

皆様が肌では感じられていた一方で、具体性に欠けていたこれらの数値をご覧いただくことで、これまでの4回の連載を通して紹介してきたアドベリフィケーション施策の重要性を再認識していただき、またそれらの施策を実行するための判断材料としていただければと思います。

2018年度のアドベリフィケーションホワイトペーパーの背景

先日、モメンタム単独で国内における2018年のデジタル広告のリスク調査を実施し、「日本のデジタル広告リスク」として公開しました。

前回までの連載でも何度かお伝えしていますが、2017年にアドベリフィケーション推進協議会を通じて、「2017年度日本のアドベリフィケーション調査レポートvol.1」を発表しました。単独では初めてのことです。

本レポートは、アドベリフィケーション対策ソリューション「HYTRA(ハイトラ)」を導入する広告配信プラットフォーム(サプライサイド)各社のプログラマティック広告における取引を、ブランドセーフティ・アドフラウドの観点から計測し、考察をまとめたものです。

なお、代表的なプラットフォームを選定するにあたって、広告在庫のカテゴリや属性に大きな偏りをもつプラットフォームは調査対象から除外しています。

それでは、具体的に見ていきましょう。

ブランドリスクの高いおもなメディアカテゴリとリスクの割合

モメンタムでは、5つのメディア(Webサイト)カテゴリを「ブランドリスクの高いカテゴリ」として定義しています。この5つとは、ポイントサイト、匿名掲示板、R指定コンテンツ、ネガティブコンテンツ、著作権侵害コンテンツです。

ブランドリスクが高い5つのカテゴリ
カテゴリ説明
ポイントサイトアフィリエイトなどの成果報酬型広告を掲載しているサイト
匿名掲示板5ちゃんねる(旧:2ちゃんねる)、5chまとめなど、個人が匿名で書き込めるサイト
R指定コンテンツポルノなどアダルトコンテンツが掲載されているサイト
ネガティブコンテンツ事故や犯罪など、広告を閲覧する人の購買意欲が削がれてしまうサイト
著作権侵害コンテンツ映画・漫画などの著作権の所在が明確なものが無許可で掲載されている違法なサイト

上記カテゴリは広告主にとってブランドリスクはもちろん、適正なメディアであってもその広告には適さない配信面(ページや場所)の存在が多く懸念されます。

モメンタムにて解析を実施した結果、この5つのカテゴリのブランドリスクは、全体で36.9%となりました。内訳は以下のとおりです。

5つのカテゴリのうち、最も数値が高いのは全体の13.7%を占めるポイントサイトです。このポイントサイトはブランドリスク観点に加えて、以下でも触れるアドフラウドの温床になっている事があります。また著作権侵害コンテンツについても全体に占める割合は0.4%ともっとも低いですが、広告配信には大きなリスクが伴います。その理由として、昨年、ある違法アップロードサイトが大規模な著作権侵害で社会問題となり、同種のサイトへの広告配信がブランドリスクとなる、ということが社会的に認知されたことが挙げられます。

プラットフォームごとに見たブランドリスクカテゴリ

次に、アドネットワーク、国内SSP、外資系SSPといったプラットフォームごとのブランドリスクを見てみましょう。下のグラフは、プラットフォームの種類でグルーピングした、ブランドリスクの内訳です。

プラットフォームごとのブランドリスクの特徴
プラットフォーム特徴
アドネットワークブランドリスクのある在庫が50%を上回っており、3つのうちもっともリスクが高いグループ
国内SSPとくに匿名掲示板やR指定コンテンツの在庫が多く存在している
外資系SSP特定の外資系SSPに顕著にポイントサイトの在庫が多い傾向がある。その他のカテゴリの在庫によるブランドリスクは、アドネットワーク/国内SSPに比べると相対的に低い

プラットフォームごとに見たアドフラウドリスク

さらに、アドネットワーク、国内SSP、外資系SSPといったプラットフォームごとアドフラウドリスクを見てみましょう。下のグラフは、プラットフォームの種類でグルーピングし、それらの在庫から見たアドフラウドリスクです。

もっともアドフラウドリスクの高いプラットフォームは19.2%、一方で、もっともアドフラウドリスクの低いプラットフォームは8.6%と、大きな差が見受けられました。なお、もっともアドフラウドリスクの高いプラットフォームは、あるアドネットワークの事業者でした。

今回ご紹介させていただいている内容はあくまでも一部のため、全体については公開しているホワイトペーパーからもご参照いただければと思います。

[参考]日本のデジタル広告リスク

アドベリフィケーションの今後

この連載ではこれまでに、アドベリフィケーション施策として、

  • Pre-Bid対応
  • Post-Bid対応
  • ブラックリストを活用した方法

を紹介してきました。

それでは、アドベリフィケーションを取り巻く環境は今後どうなっていくのでしょうか。未来についてはもちろん言い切ることはできないものの、デジタル広告市場が成長し続ける限り、ブランドリスク・アドフラウドリスクは一定数存在し続けるのではないかと思います。

インターネットという自由な空間においてはあらゆる種類のWebサイトが生まれる一方で、その陰にはリスクがつきまといます。リスクを減らすためには、さまざまな対策が講じられてきました。たとえばアドフラウドリスクへの対策でいうと、2017年5月にIAB(The Interactive Advertising Bureau)によって「ads.txt」が提唱されましたが、残念ながら日本での普及率は現時点ではまだ十分ではありません。

ただ、こうした状況のなかでも日々増え続けるブランドリスク・アドフラウドリスクへの対処を行うために重要なのは、「いかに他社に先んじてアドベリフィケーション施策を導入するか」です。第3回で紹介した先進的にアドベリフィケーション施策に取り組む広告主の事例のように、対策ツールを導入した広告主とそうでない広告主における広告配信リスクや費用対効果の差は広がる一方です。

電通が発表している「2018年(平成30年)日本の広告費」の調査で、「2018年度はデジタル広告費が地上波テレビ広告費に迫った」と発表がありました。成長軌道にあるインターネット市場において安心・安全な広告配信を行うためには、アドベリフィケーションへの早急な取り組みを行う必要があります。

アドベリフィケーションの目的は、広告主を守ることだけではありません。アドフラウドによって不正にかすめ取られた広告費は、反社会勢力の資金源ともなっています。アドベリフィケーションに取り組み、反社会勢力への資金提供を絶つことは、企業に求められる社会正義にもつながるという認識を、業界全体で強化していくべきだと考えています。

2018年4月にモメンタムが発表した、「国内巨大漫画ストリーミングサイトで検知したアドフラウドに関する注意喚起」は、その後インターネット業界だけでなく、大きな社会問題として認知される結果となりました。

モメンタムは、こうした問題をすみやかに公表することで、関係各社に正しくリスクを把握いただき、デジタル広告業界全体の透明化に寄与したく、今後も定点的に独自に調査レポートを公開してまいります。

これまで全5回、お読みいただき、ありがとうございました。

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