【レポート】Web担当者Forumミーティング 2018 in 大阪

年間7,000件の見込み顧客を生む、オウンドメディア「マーケティングリサーチキャンプ」の“運営術”とは?

成功するオウンドメディアのコンテンツ制作、配信、分析まで徹底公開
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年間7,000件もの見込み顧客(リード)を獲得しているマーケッター向けオウンドメディア「マーケティングリサーチキャンプ」。この成功の背後には、どんな秘訣があるのだろうか――。

「ネットショップ担当者フォーラム/Web担当者Forumミーティング2018 in 大阪」では、マーケティングリサーチキャンプの編集長を務めるジャストシステムの庄子悟氏が、Faber Company(ファベルカンパニー)の月岡克博氏と公開討論を行い、コンテンツ制作から配信方法、分析手法などの運営ノウハウを披露した。

庄子悟氏 月岡克博氏
株式会社ジャストシステム マーケティングリサーチキャンプ編集長の庄子悟氏(左)と、Faber Company エグゼクティブ マーケティング ディレクターの月岡克博氏(右)

成功するコンテンツ制作3つの“コツ”

「マーケティングリサーチキャンプ」とは、ジャストシステムが2015年12月に開設したマーケティングリサーチに関する情報サイトである。旬のマーケティング情報をリサーチ視点で切り取り、ユーザーに提供する。ユーザーのコンテンツ接触時にポップアップで詳細レポートのダウンロードへ誘導し、リードを獲得するという仕組みだ。

以前はジャストシステムも広告を主体としたマーケティグを行っていたが、リードの獲得単価が高止まりしていた。そこで、広告に頼らないマーケティングのモデルを作るべく立ち上げたのが、このオウンドメディアというわけだ。

提供しているコンテンツは大きく2種類ある。

  • 自主調査レポート
  • おすすめマーケ記事

庄子氏によると、月のコンテンツ数は6~8本程度でありながら、アクセス数は月間で約10万ページビューを数え、年間で7,000件のリード(見込み顧客)を獲得しているという。

この成功要因はどこにあるのだろうか。マーケティングリサーチキャンプの取り組みを支援している月岡氏が、最大のキーポイントとして取り上げたのが「コンテンツ制作方法」だ。そこには次の3つの“コツ”があるという。

  1. 適度な“手抜き”制作で継続
  2. 自分を追い込む進行管理
  3. 良いライターに出会う努力

以下、それぞれの項目の詳細を見ていきたい。

ポイント① 適度な“手抜き”制作で継続

適度な手抜きとは何か。この勘所は「1回の調査、1つのネタから複数のコンテンツを作る」ことにある。例えば、「ネットショッピング実態調査」という調査を行ったとしたら、1回ですべてをまとめてしまうとコンテンツが長くなってしまう。ユーザーの興味関心に合わせて「支払い/送料編」「配送編」など、複数回に分けてリリースすることでコンテンツ数を増やすことができて、継続しやすい。

手抜きでコンテンツ制作を楽に

ある大手リサイクルショップも、1つの調査結果を発表する時に、「性別」「年代別」「趣味・嗜好」「エリア」といった切り口に分けた複数のレポートを作成し、公開しているという実例もある。

細切れにしてコンテンツを増やすのは非常に効率的な方法で、ネタ切れを防ぎ、結果としてサイトを継続することができる(庄子氏)

さらに月岡氏は、「見せ方やフォーマットを変えるだけでも効果がある」と説く。例えばWeb上ではアクセスが伸びなかったコンテンツを再編集し、ダウンロード可能なホワイトペーパー(B2B)やムック本(B2C)といった形に変換して提供するだけで、リード獲得につなげることも可能という。

ポイント② 自分を追い込む進行管理

次のポイントは「自分を追い込む進行管理」だ。庄子氏は、原稿制作日や記事公開日、編集会議、関連部署への確認など、必要なタスクを事前にスケジューリングし、関係者全員に周知している。

なぜ自分を追い込むことが必要なのだろうか。その理由は、オウンドメディアならではの“妥協”や“甘え”がつい生じてくることにある。

特にオウンドメディアを始めたばかりの頃は成果も出ていないので、社内の関連部署に情報提供や確認の依頼をかけても、「そんなことに時間を割けない」「すぐには対応できない」といった反発を受け、「社内チェックが容易なコンテンツにしよう」、または「納期に間に合わせるために、“とりあえずすぐに準備できるコンテンツにしよう」という思考になっていき、納得のいくコンテンツでなくても、納期・公開スケジュールを優先してしまっていた。

「そうならないためにも先に関連部署とスケジュールを共有し、逆に相手側から急き立てられるような状況を作っておくことが重要」(庄子氏)なのだという

ポイント③ 良いライターに出会う努力

社内の編集担当者がずっとコンテンツを書き続けるわけにはいかないため、良いライターを確保することは、オウンドメディア編集者にとって非常に重要だ。しかし、月岡氏によると、“良いライターに出会える確率”は60~80分の1しかないという。60人から80人のライターに会ったとしても、その中に自社サービスや業界などを知り尽くし、文章力もあるような良いライターは1人いたらよいほうだという。

実際、庄子氏も「過去に、自分が採用していない外部ライターに頼んだことで、生産性がガタ落ちして結果も出ないという経験をした。実際に今のライターと出会うまでに、この3年間で80名以上の面接を繰り返した」と明かす。

ライターには「丁寧な依頼」が必須

良いライターと仕事をするためのポイントとして庄子氏が挙げたのは下記の3点だ。

  • 自分で面接する
  • 依頼を丁寧に
  • 「受発注」の関係ではなく「協働」の関係に

最初から望みどおりの完璧な原稿を外部のライターに要求するのも無理な話。ともすれば外部のライターと我々はただの「受発注者の関係」になってしまう。そうではなく、一緒にオウンドメディアを成長させていく、長期的なスパンで協働するパートナーとしての信頼関係を構築していくことが大切となる(月岡氏)

したがって、付き合って日の浅いライターに対しては、特に「丁寧な依頼」が必須となる。「テーマはこれ」「こんなイメージで」といった大まかな依頼では双方で意図が共有されないため、品質の高いコンテンツは仕上がらず、結局リード獲得にもつながらない。

そこで庄子氏と月岡氏が提唱するのが、「記事構成シートを用いて意図を明確化する」という方法である。

記事構成シートを作成する4つのポイント

記事構成シートを作成する際に重視すべきは、次の4つのポイントだ。

  1. ターゲットとするキーワード
  2. 月間検索数
  3. 検索上位サイト
  4. H2(見出し)構成

上記のうち、①~③を調査するうえで役立つのが、Faber Companyが提供しているSEOプラットフォーム「MIERUCA(ミエルカ)」である。

MIERUCAには、「サジェストキーワード分析」という機能がある。ここに「動画広告」というキーワードを入力してみると、「YouTube」「単価」「アプリ」といった関連性の高いワードが示されるとともに、その重要度の高さが矢印の太さで可視化される。

「これによりユーザー検索している可能性の高いワードから、大枠のニーズを把握することができる」と月岡氏は訴求する。ユーザーの検索意図を素早く直感的に読み解くことができるのだ。

サジェストキーワード分析

また、「トピック分析」という機能を利用すれば、Web上でユーザーに評価されているであろうWebページなどの情報をもとに、そのテーマに対する重要なトピックキーワードを抽出してくれる。

こうした調査分析の結果を用いてコンテンツを企画し、ストーリーの骨格となる「H2(見出し)構成」を明示した上で、ライターに記事執筆を依頼するのだ。

この発注スキルを上げないことには、いつまで経っても良質なコンテンツは作れない。慣れてくれば、ライターもスムーズに意図を理解し、狙いどおりの記事を仕上げてくれるようになる(庄子氏)

コンテンツデリバリー&サイト評価

また、コンテンツ制作方法と並ぶ重要なキーポイントとなるのが、「コンテンツデリバリー」と「サイト評価」だ。コツとなるのは下記の3点である。

  • チャネルミックスでリーチ最大化
  • サイト評価をシンプルに
  • 定期的なコンテンツ改善

月岡氏は、コンテンツの「デリバリー」の観点から、「あらゆる手法を使ってユーザーに届ける努力が大事」と語る。

PR(調査リリース)、SNS、メルマガなど複数のアプローチが必要となるが、それぞれのアプローチにおいて効果が出てくるタイミングは異なる。PR(調査リリース)であれば、出した直後に盛り上がり、SNSはリリース後やや遅らせて発信、続けて過去問合せリードなどの保有リストにメルマガ配信でコンテンツを届ける。

このように、情報接触の“チャネル”と“タイミング”を見ながら拡大していく取り組みの積み重ねにより、ユーザーに評価されるコンテンツであることが認められはじめると、検索領域(SEO)でも評価されるようになってくる。

情報接触の“チャネル”と“タイミング”を見ながら拡大していく

また、Webサイトやコンテンツの評価/分析、改善のサイクルをうまく回せていない企業が多いのも実情ではないだろうか。

多くのサイトがアクセス解析を行っているが、毎月のアクセス数などの実数を見るのみ──という話をよく聞く。アクセス解析ツールを使いこなすのもスキルがいるし、改善施策まで即座に判断することも困難。さらにはリソースもないところが多く、Webサイトの改善サイクルを回すことができない担当者が多いのでは(月岡氏)

MIERUCAを利用すると、アクセス解析データをもとに「集客力」「閲覧力」「誘導力」「成果力」といったシンプルな基準にてページを評価することが可能だ。また、コンテンツのタイトルやディスクリプションを自動で改善提案する機能や、検索意図を分析することでコンテンツの改善につなげたりする機能も有している。

こうした分析から施策のヒントを見つけ出す部分を自動化する仕組みがあれば、Webサイトの改善も加速するという。

これらの取り組みによって、コンテンツを活用し、様々なチャネルへデリバリーしていくことが、Webサイトの継続的な成長につながるというわけだ。

最後に月岡氏は、「MIERUCAでは、ツール、学習コンテンツ、個別コンサルティングの三位一体で、企業のオウンドメディア運営を全面バックアップする」と、庄子氏は「調査やリサーチを活用したコンテンツであればFastaskを」とアピールして講演を終えた。

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