四家正紀が聞く! 顧客とのデジタルコミュニケーションで大切なこと

サントリーのユーザーイベントはなぜ当たるのか? 室元氏が語る店舗営業とデジタル施策の意外な関係性【前編】

ソーシャルメディアが新たな企業と顧客の接点といっても、使いこなすのは難しい。デジタルで顧客とコミュニケーションする秘訣とは?室元氏に聞いた。

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サントリーコミュニケーションズ デジタルマーケティング本部 室元隆志氏
サントリーコミュニケーションズ デジタルマーケティング本部 室元隆志氏

今のソーシャルメディア時代、企業と顧客の接点は急増している。しかしその新たなタッチポイントは、一朝一夕で使いこなせるほど簡単なものではない。ファンを重視した施策で成果を出している人は、一体どんなことを考えているのだろうか? あるいは、どんなキャリアを経て今の考えにたどり着いたのだろうか?

この連載では、ファンを重視した施策に取り組むキーパーソンに話を聞き、その秘密を解き明かしていく。連載の第1回はサントリーの室元隆志氏。アンバサダーマーケティングを支援しているアジャイルメディア・ネットワークの四家正紀が話を伺った。

室元氏は、ソーシャルメディアが普及するよりもずっと前からインターネットを使ったユーザーとのコミュニケーションに取り組んできた。最初にイベントを企画したきっかけは何だったのか? また、ファンとコミュニケーションするにあたりチームで厳守している“鉄則”とは何か? 前後編の2回に分けてお伝えする。

室元隆志(むろもと・たかし)
サントリーコミュニケーションズ株式会社 デジタルマーケティング本部部長

1988年サントリー株式会社入社。宣伝部、営業を経て2000年よりデジタルマーケティングに従事。サントリーデジタルマーケティングのプラットフォーム構築、コミュニケーション、BtoBやECを含めたマーケティング手法開発などを手がける。2017年4月にサントリー各社にあったデジタル部署を統合し、現在、デジタルマーケティング本部部長。

最初のソーシャルイベントは11年前。ブロガー向けのビール工場見学

アジャイルメディア・ネットワーク ユーザーコミュニケーション部 シニアコンサルタント 四家正紀氏
聞き手: アジャイルメディア・ネットワーク ユーザーコミュニケーション部 シニアコンサルタント
四家正紀

四家2006年の6月ですから、もう11年前のことです。室元さんが企画したサントリー武蔵野ビール工場見学のブロガーイベントに1人のブロガーとして参加しました。

今でも覚えているのは、室元さんご自身がビールのピッチャーを操ってビールの注ぎ方を説明して。「こう注ぐとおいしい」「こう注ぐと味が荒れておいしくない」と(笑)。「同じビールなのに、注ぎ方ひとつでこんなに違うんだ!」と、僕のなかのビール観を決めたような、すごいインパクトがありました。

室元それは、ソーシャルメディア系のイベントとして私が最初に企画したものです。その後も定期的に工場見学のブロガーイベントを実施しています。工場見学って、おもてなしという仕組みにおいては、メーカーにとって絶対の勝ちパターンなんです

ビール工場という舞台は、お酒が好きでさえあれば、どんな方でも楽しんでもらえて、いい思い出になって、ファンになってもらえる。ですので、「最初に何かやるなら、たとえ交通の便が悪くても工場しかない」と決めていました。

最初に何かやるなら、工場しかないと決めていた

四家イベント当日の様子とそこで受けた感動は、ブログ記事の形でしっかりと残っていて、多くは今でも読むことができます。その後も定期的に開催されたことで、ネット上での評判の獲得と蓄積はすごいボリュームになっていると思います。のちに「ハイボール復活プロジェクト」など、その後のソーシャルメディア展開にもつながったのではないかと思います。

今でこそ一般的になったブロガーイベントという手法ですが、2006年当時に「どこの誰かもよくわからないブロガーたちを束ねてイベントをやろう」なんて企業はごくわずかしかありませんでした。そもそもなぜあのとき、ブロガーを集めたイベントを開催することを思い立ったのでしょう。

室元自分自身でブログに触ってみて、「このツールは絶対ビジネスで使えるだろう」という予感がしたんです。当時私は広報部でホームページを運営していました。ホームページというのは、どうやっても「待ち」の状態で、なかなかアクセスが増えなかった。ブログなら、自分たちの情報をもっと「プッシュ」できるかもしれない、これをマーケティングツールとして育てていきたいという考えがありました。

そこで「みんなでブログを研究しよう」と、自分と自分の部下全員でまず個人としてブログを運営してみることにしました。「私もやるから、1人1つブログをやってみろ」ということで。もう12年近く前、2005年の10月ごろです。

室元隆志氏
「1人1つブログをやってみろ」と部署全員でブログを始めた

四家あのころ「サントリーさんにはずいぶんブログをやってらっしゃる方が多いなあ」とは思っていたのですが、室元さんの指示だったんですね。

室元はい。マスメディアや企業の次には、いち個人が情報を発信する時代になると考えていました。しかし、個人にわれわれの情報を取り上げてもらうには、発信する方々の気持ち……大切にしているものとか、悩みとかを理解して、知見をためていかないといけない。たとえば新聞に取り上げてもらうためには、記事を書く新聞記者が考えていることがわからないといけないというのと同じ考え方ですね。

とはいえ、写真や文章が苦手な部下はうんうんうなりながらブログを書いていましたし、SEOをわかっていない部下は「全然アクセス増えないんですけど」って悩んだりしていました。これも勉強ですよね。

情報を発信する人の気持ちや悩みを理解しないといけない

四家ブログを始めてみて、印象はどうでしたか。

室元これはスゴイと思いましたね。私も居酒屋を紹介するブログを始めたんですが「こんなに見てもらえるのか」「SEOはこんなに効くのか」と。反応のいい記事の傾向やクリックレートも全部自分で把握できた。「まったくの初心者でもここまで読者を集められるんだから、有名なブロガーさんはすごい数のアクセスを集められるに違いない」と実感しました。

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