四家正紀が聞く! 顧客とのデジタルコミュニケーションで大切なこと

「小さなお店の力になれるのはネットじゃないか」と思って手を挙げた

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「小さなお店の力になれるのはネットじゃないか」と思って手を挙げた

四家飲食店向けの提案営業で成功していた室元さんが、デジタル施策を担当することになるきっかけは何だったんでしょう?

室元大阪で5年ほど営業をやっていてわかったことがありました。お得意さまのなかには規模が小さくてもおいしい、いいお店が多かったということです。でも震災の直後で景気が悪かったこともあり、皆さん集客で苦労していたんですね。こういうお店に何とか繁盛してもらいたい。そうしたらビールももっと発注してくれるはず。でも集客といっても、テレビや雑誌の取材なんてそう簡単に来てくれるもんじゃありません。どうやったらお店の力になれるかをずっと考えていました

そんなことを考えていた1999年の暮れに、社内公募があったんです。情報システム部で、当時たった2人しかいなかった「社内のホームページ担当を若干名増員します」と。「もしかしてこれかも!」と思い手を挙げました。

ぐるなびがスタートした1996年に、サントリーも『サントリーグルメガイド』を開設しています。でも当時はグループ会社の店しか載せない、全然使えないサイトだった。「ここにうちのお得意先のお店の情報を出せば、小さなお店でもお客さんが来てくれるんじゃないか」と考えたんです。

サントリーグルメガイド(現在)。当時はグループ会社の店しか掲載されていなかったサイトで見る

公募時に提出した論文『デジタルで何をしたいか』には大胆なことを書きました「ぐるなびというサイトがある。いまのうちに買収したほうがいい」なんて。実際にはちょっとだけ出資するっていう中途半端な結果になっちゃったんですが(笑)。

ネットに情報を出せば、小さなお店でもお客さんが来てくれるんじゃないかと思った

四家それは大胆。でも正しいですね。で、異動してサントリーグルメガイドを手がけられたんですね。

室元情報システム部に異動して、いざサントリーグルメガイドに取り組もうとしたら、社内各部署から非難ごうごうで(笑)大反発を受けました。最初に反対したのは営業マンです。「お前、営業だったくせに何を言っているんだ、そんなもの作ったら競合から見て格好のターゲットリストになるじゃないか」って、もう集中砲火を浴びまして。こちらは「何を言っているんですか! うちのお得意さまがみんな集客に苦労しているのに。そっちのほうが大事でしょ!」って。これ、2年間戦いました。

四家これは顧客の課題解決をロジカルに考えているか、ただ自分の営業成績を見てるのかという違いですよね。

室元営業からそういう話が出るのはわかるんですよ。自分の顧客をしっかり守りたい。強い商品がなかったから、守るのも大変です。でもこう反論しました。「うちはまだシェアが10分の1で、9割は他社です。1割を守るより、こっち(9割)を取りに行くほうがよくないですか?」

四家100%正論ですが、それだけで突破したわけではないですよね。

室元はい、表では営業統括本部とこういう議論をしながら、裏ではビール事業の担当者とガッツリ組みました。2003年に新商品のザ・プレミアム・モルツが発売となりましたが、当時は採用している飲食店が少なかった。「プレモルが飲める店のリスト」を公開してアピールしたいと考えている担当者がいたんですね。

四家すごいですね。突破するために裏で仲間を増やしていったわけですね。

室元仲間だけでなく、事業部は予算を持ってるんですよ(笑)。情報システム部の予算はさほど多くはなかったですから。で、事業部と組んで一気に何千軒というお店をサントリーグルメガイドに載せて、既成事実を作っちゃったんですよね。

前編のまとめ

  • まずは自分で試してみるのが第一歩
  • 「ブログを書いてください」とは絶対に言わない。「書きたくてたまらない」場を設定できなければ負け
  • 震災後に集客で苦労しているお店に、デジタルが力になれるのではと考えた

>>後編の「チームで共有しているデジタルマーケティングの鉄則とは?」を読む

icon この連載について

ソーシャルメディア時代の「企業と顧客の新たなタッチポイント」で新企画を推進して実績を挙げている人々は、どのような経験を経て今に至ったのか? このコーナーでは、顧客とつながるようになったきっかけや体験などをアジャイルメディア・ネットワークの四家正紀がインタビューします。

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