わずか1年半で800万訪問! オウンドメディアの「あるある」を解決した「BBQ GO!」3つの成功の秘訣
成功するオウンドメディアの秘訣は何か? オウンドメディアを始めたはいいものの、「競合に勝てない」「ネタ切れ」「予算が足りない」「更新が大変」「成果が見えづらい」といった話はよく耳にする。
「BBQ GO!」は日本ハムが運営するオウンドメディアだ。公開から1年半で日本最大のバーベキューサイトへと急成長した。訪問者数は800万人を突破しており、企業が運営するオウンドメディアの中でも大規模な成功事例といえる。広告に頼らずにどうやってサイトを急成長させたのか。
2016年12月、国産CMSの「RCMS」を開発するディバータの主催で、日本ハムのオウンドメディア「BBQ GO!」の成功の秘訣を語るセミナーが開催された。
ここでは、「BBQ GO!」が実践したオウンドメディアを成功させる3つのポイントを紹介する。サイトの規模にかかわらず、参考になるだろう。
- 事前に入念に研究して現実的に「勝てる」テーマを選ぶ
- 十分にネタを準備してからスタート。小さくPDCAサイクルを回すリーンスタートアップ戦略
- 戦略を遂行するための体制作り。熱意あるパートナーと協力する
脱・コーポレートサイト。「守り」から「攻め」への大転換
登壇したのは日本ハムの藤本芳人氏。同氏が所属するコーポレート・コミュニケーション推進室は「グループの商品が選ばれる仕組み作り」がミッションだ。たとえば商品展示会や女子プロゴルフトーナメントの開催など、その業務内容は幅広い。その中にWebサイトも入っていたが、2014年に大きな転機があったという。
それまではコーポレートサイトを中心に活動していたのですが、あるときユーザーの利用実態を調査しました。すると「ユーザーは企業目線の情報に興味がない」ということがわかりました。キャンペーンとレシピしか興味がなく、われわれが伝えたいことが届いていなかった。
この調査がきっかけで、藤本氏は「コーポレートサイトは、マーケティングやブランディングの手段として最適ではない」ということを認識。コーポレートサイトで企業目線の情報を発信する「守り」の戦略から、消費者に近いところに自ら出てコミュニケーションする「攻め」の戦略への転換を決意した。
ポイント1
事前に入念に研究して現実的に「勝てる」テーマを選ぶ
それでは、どうすればいいのか? 最初は検索ボリュームなどを見ながらさまざまな方向性を検討した。同社の事業に関係があり、かつ多くの消費者にとって「自分事」なこと。その中でも巨大な検索ボリュームを持つ「レシピ」なども候補に挙がったが、レシピサイトはすでに強力な競合が多くあり、現実的ではないと判断した。そこで注目したのが「バーベキュー」だった。
バーベキュー市場は伸びてきていて、強力な競合もまだいないことがわかりました。
そこで、「バーベキューのことを検索するユーザーのニーズはどこにあるのか」「バーベキューをテーマにユーザーとコミュニケーションすることで、われわれにとってどんなメリットがあるか」ということを考えました。
続いて、ユーザーのニーズに合わせて日本ハムが提供できるバーベキュー情報は何かを考えた。たとえば慣れているバーベキューの幹事の人にはその企画に合うバーベキュー場の情報を、そして初めてバーベキューをやる人には日本ハムの商品を使ったハウツー情報を、といった具合だ。バーベキュー場と提携することで、日本ハムのビジネスにとっても新しい可能性がありそうだということがわかった。
ここでのポイントは、事前に「実際に勝てるのか」「自社にどんなメリットがあるのか」まで入念に研究したことだ。オウンドメディアを運営していくなかで陥りがちな「競合に勝てない」「やってはみたがオウンドメディアの成果が見えづらい」といった問題を、スタートする前から解決していることになる。
ポイント2
十分にネタを準備してからスタート。
小さくPDCAサイクルを回すリーンスタートアップ戦略
やることが決まったら、次は「どのように情報を作り、出していくのか」という具体的な戦略作りだ。
ユーザーがバーベキュー情報に触れる際は検索を経由することがわかっていたので、SEOを重視した戦略を展開する方針を定めた。競合サイトが少ないこともあり、「質が高く独自性のある情報を追求すればおのずと高い評価になる」という認識のもと、スタートから「国内最大級」というテーマでWebサイトを企画した。
実際に検索をしたとき、どんな競合サイトがあるのか。われわれに許される予算の範囲内で、どんな戦略がとれるのか。それをシミュレーションして「行けそうだぞ」という見込みが立ちました。
オウンドメディアでよくある「ネタ切れ」「更新維持が大変」という問題を起こさないようにプロジェクトの段階でBBQ GO!編集部を立ち上げ、事前に情報の更新スケジュールを設計。案だけではなく、1,000か所以上のバーベキュー場とのやりとりを具体的にスケジューリングし、それをアップデートするだけで1年半たった今も「ネタ切れ」問題とは無縁で運営できているという。
とはいえ、これらはあくまで机上の話なので、想定外のことがたくさん出てきます。それらに柔軟に対応するために、小さくPDCAサイクルを回してすぐに修正する「リーンスタートアップ」戦略の形をとりました。
リーンスタートアップとは、仮説の構築と検証を繰り返しながら修正して無駄を省いていく手法だ。準備を進めながらユーザーインタビューを行い、仮説と異なる部分が出てきたらすぐに修正する。この進め方が、短期間で国内最大規模のオウンドメディアを構築した秘訣だという。
ポイント3
戦略を遂行するための体制作り。熱意あるパートナーと協力する
藤本氏は、3つ目のポイントとして「熱意あるパートナーと組むこと」を挙げた。こうした新しい取り組みにあたり「企画に対して一緒に熱くなってくれる」ことを重視してパートナーを探した。オウンドメディアは予算が限られていることも多いが、実際に遂行するにあたりパートナー選びは最も重要だと説明する。
「BBQ GO!」は、システムはディバータが提供するRCMSを利用し、制作はマックグラフィックアーツ内にBBQ GO!編集部を立ち上げて運営している。消費者がバーベキュー情報を検索できるだけではなく、バーベキュー場の担当者が自社のバーベキュー場に関する情報を自由に登録することもできる。
初めてのことなので、予想外のことがたくさん起こります。そのためビジネスライクな付き合い方のパートナーさんはちょっときついなということがありました。見つかった問題をすぐに修正するという方針からも、熱量を共有できるパートナーさんと組めたことがよかったと思います。
入念な事前研究と、具体的な戦略作り。そして企画の熱量を共有できるパートナー。言葉にするとシンプルだが、すべてを満たすのは難しい。こうして、日本ハムが「攻めの戦略」と位置づける「BBQ GO!」がスタートした。
「BBQ GO!」がビジネスにどう活用されているか? 4つの具体例
「BBQ GO!」が800万訪問を超えるサイトに成長したのは冒頭で紹介したとおりだ。それでは、「BBQ GO!」は日本ハムのビジネスに具体的にどのような影響を与えているのだろうか。
「オウンドメディアのビジネスへの成果が見えづらい」というのもよくある問題だ。藤本氏は、特徴的な事例をいくつか紹介した。
- スーパーなど店頭の売り場での活用
- バーベキュー場とのコラボプロモーション
- バーベキュー向け新商品開発への活用
- バーベキューのグルメイベントとのコラボレーション
スーパーなど店頭の売り場での活用
「BBQ GO!」ではたくさんのオリジナルレシピを紹介しているが、こだわりを持ち充実した内容であるため、全国の店頭におけるメニュー提案への活用が拡大している。従来のコーポレートサイトでは実現しなかった、消費者に直接的に訴求するアプローチだ。来期はこの動きを加速させるためにさまざまな販促ツールを用意して働きかけていくという。
バーベキュー場とのコラボプロモーション
バーベキューは7月と8月が最盛期で、バーベキュー場にとってはその時期の集客が最大の経営課題だ。バーベキュー場と協力し、特別広告として「BBQ GO!」内の検索で上位に来るプロモーションプログラムをトライアルで行ったところ、6月と比較してそのバーベキュー場のページのアクセス数が3倍に伸びたという。
実は特別広告を無料で提供する代わりに、日本ハムのプロモーションに無料でご協力いただいています。具体的には弊社のレトルトカレーを約30か所で4万食ほどサンプリング配布していただきました。つまりコラボプロモーションということになります。こうした集客メリットをご提供する代わりに、どのようなことにご協力いただくのか。将来的にさまざまな可能性がありそうで、楽しみにしています。
バーベキュー場の「集客」という課題を解決しながら、自社商品のプロモーションも行う。「バーベキュー」というテーマ全体を盛り上げていく取り組みだ。
バーベキュー向け新商品開発への活用
「BBQ GO!」を運用することで、バーベキューについての知見もたまっていく。藤本氏は「今や日本ハムはバーベキューに最も詳しいメーカー」だと語る。そこで、バーベキュー向け商品の開発に新たに挑戦しているという。
試作品のテストマーケティング目的で2016年7月にプロモーション動画を配信しました。バーベキュー向けの商品を松木安太郎さんが実況解説する内容で、視聴回数は16万回を超えました。
ハラミという人気の牛肉を棒状のままぐるぐるにして焼く塊肉のご提案や、ポークステーキを観音開きでハート型に整形して焼くようなご提案など、バーベキューを盛り上げる、これまで見たことがないような新しい商品群です。
バーベキューのグルメイベントとのコラボレーション
藤本氏が最後に紹介したのは、日本ハムならではのユニークな取り組みだ。「BBQingJapan」というイベントに協賛し、バーベキューグルメのイベントにおいて日本ハムの商品を販売した。
イベントは2016年10月23日に千葉県の国内最大級のアスレチックも併設するバーベキュー場「清水公園」で開催され、2,000名の参加者に約20種類に及ぶ日本ハム商品を楽しんでもらったという。
販売される商品の大半をいち食品メーカーが占めるグルメイベントというのは大変珍しく、BBQ GO!の活動をしていたおかげで実現できました。また、実際に商品をご購入いただいたお客様から生の声を得られる機会というのはとても貴重で、今後の事業活動において活用していきたいと思っています。
日本ハムの取り組みは、冒頭で挙げた「競合に勝てない」「ネタ切れ」「予算が足りず更新維持が大変」「ビジネスへの成果が見えづらい」といった、オウンドメディアで発生しがちな問題を解決した成功事例だといえる。
その裏には入念な事前研究と準備、そしてパートナーを含めてユーザー視点でPDCAを回していく体制作りがある。規模の大小にかかわらず、その姿勢はすべてのオウンドメディアで求められるポイントだろう。
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