ネットの常識から解き放たれよ。読み放題でお手軽インプットのススメ
コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。
宮脇 睦(有限会社アズモード)
心得其の477
突撃力の限界
深夜の手前、弊社の電話がけたたましく鳴ります。面識のない産経新聞の記者からで、彼らの「突撃力」にはいつも驚かされます。アマゾンの電子書籍読み放題サービス「Kindle Unlimited(キンドル アンリミテッド)」についての取材です。
月額980円で雑誌、写真集、小説、漫画が読み放題になると掲げながらも、サービス開始直後から一部の書籍が閲覧不可となり、さまざまな憶測が飛び交います。しばらくもせず、講談社や光文社などの出版社単位で読むことができなくなり、ちょっとした社会問題となっています。しかし、真相の手前にぶ厚い「契約」のカーテンが降りているのがIT系の騒動の特徴。「真相は当事者同士しかわかりません」と答え、お茶を濁します。
アマゾンではありませんが、私も「読み放題サービス」を利用しています。それはオリジナリティの高いブログを書くために。ステマの類ではなく、本音ベースでオススメしています。
週刊誌パラダイス
アマゾンの「アンリミテッド」に代表される電子書籍読み放題サービスとは、24時間365日、品揃え豊富な書店での立ち読みを合法的に可能とするもの。立ち読みそのものを処罰する法律はありませんが、商品に手垢をつけるどころか、購入目的のお客さまを「ブロック」するかの長時間の立ち読みは営業妨害となりかねない脱法行為。
一方で電子書籍に所有権はなく、読む権利である「使用権」が与えられているだけです。多くのサービスは配信期間を設けており、一定期間が過ぎたら読めなくなります。だから「合法的立ち読み」と位置づけています。
私が利用しているのは、NTTドコモが提供する「dマガジン」。月額400円(税抜)で週刊誌、月刊誌など160誌以上が読み放題。なにかと話題を提供する「週刊文春」の紙版一冊と同じ価格で、ライバル紙の「週刊新潮」や「週刊プレイボーイ」など、総合週刊誌だけで15冊が1か月分読み放題ですからタダ同然。読者にとっては実にリーズナブル。
著者の端くれとして出版社や関連する人たちの収益への影響が気になるところですが、今回はこれに目をつぶります。
電子書籍で倍速読書
登録されている総合週刊誌すべてを渉猟するという贅沢を楽しんでいます。チャリンと小銭を払って手にする「紙版」は、チャリンの余韻が消えぬためか、元を取ろうと些末な記事にまで目を通してしまいますが、読み放題の電子書籍なら一冊あたりはタダ同然。Webを閲覧する要領で、興味の赴くままにページを読み飛ばしていくので、一冊10分もかからずに読了する週刊誌もあります。意外な副産物ながら、この読書速度もメリットの1つです。
週刊誌の「持ち味」もオススメする理由です。Web担当者のなかには「ネットニュースだけで十分」という人もいるでしょうが、そこには「アンリミテッド騒動」と同じカーテンが降りています。
深掘りできないソース
Webサービスの大半は民間企業が提供しています。そこには守秘義務契約のカーテンが降りており、いわゆる「文春砲」的なスクープが世に出にくい構造になっています。産経新聞の記者が、非礼を承知で深夜に電話をかけてきたのもこれが理由でしょう。至極まっとうなことですが、基本的には事実(ファクト)しか書けない新聞の限界です。
一方、週刊誌は内部情報と外部情報に噂を織り交ぜ、カーテンの隙間から室内を覗き見したかのような記事が書けます。ときに勇み足もありますが、新聞やテレビ、Web媒体でも報じることができないグレーゾーンに踏み込めるのが週刊誌の持ち味です。
また、「文春」に取りあげられた『ビジネスジャーナル』の捏造記事のように、取材をせずに書いているWeb媒体は実在します。Web媒体のなかには若い会社が多く、勇み足になりがちな部分があります。その点、老舗出版社の週刊誌や書籍は、執筆や取材のいろは、お作法が蓄積されており、加えて編集サイド、場合によっては校閲者による幾重ものチェックが入ることから一定の信頼をおけます。
非リアルというメリット
この秋、特に痛感したメリットは「雨に濡れない」ということ。連続して訪れた台風のなか、自宅にいながら最新の雑誌を読むことができたのは、単純ながらすばらしいメリットです。「立ち読み感覚」なので、通勤や待ち合わせの「隙間時間」にもピッタリはまります。さすがのコンビニでも太刀打ちできないコンビニエンス(便利)さは、電子版ならではのメリットです。
さらに「dマガジン」の場合、パソコンやタブレットなど、最大5台の端末で閲覧することができます。仕事のメインで使っている27インチのデスクトップPCで開いた「週刊誌」は、実物より大きく視認性に優れています。
老眼はまだ訪れていませんが、大画面に映しだされたグラビアアイドルが優しくほほえみかけてくれ、ズーム機能を使えば眉毛のそり跡まで確認できます。年々強まる乱視と近視ですが、電子書籍はスマホやタブレットだから読みづらいとは、思いこみに過ぎなかったようです。
右傾化とネットの遅さ
総合週刊誌のすべてを斜め読みで渉猟。そんな贅沢な読み方をしていて気がついたのは、いまだにリベラル勢力が強いことです。ときおり著名人から「日本は右傾化している」という声も聞こえてきますが、数か月にわたり15冊の週刊誌に目を通し続けたなかで「非リベラル」な立ち位置が明らかな論調は2誌だけ。女性誌など、かなり左への傾きが確認できます。
また、ネットニュースの「遅さ」も発見。某まとめサイトのヘッドラインを飾ったネタは、各メディアから記事をもらい受けるサイトを情報源とし、元々の記事をたどると月刊誌でした。ネットを賑わせたのは、月刊誌の発売から5日後のことです。ネットニュースはその速報性が喧伝されますが、元ネタが古ければ「ニュース性」は著しく損なわれます。
まとめサイトとは名前の通りで、情報源は他のWeb媒体やテレビ・雑誌にあるのですから、考えれば当たり前でもありますが、雑誌読み放題サービスを利用してから、ネットニュースの「遅さ」に呆れることが増えました。
アマゾンの「アンリミテッド」の騒動は今後の行方に注目しつつも、雑誌読み放題は、一度利用すると手放すことができないほど便利なサービスです。
ネットの遅さと紙の壁
週刊誌はブログのオリジナリティを高めることに役立ちます。新聞各社のサイトも含めたネットニュースは、即座に「コピペ」されて拡散し、凡庸化します。次にテレビ情報も、Twitterなどで比較的多く拡散されていますが、週刊誌情報となると激減します。ネットと週刊誌の間には「紙の壁」ともいえる隔たりがあります。そこで同じ事件に触れるにしても、引用元を週刊誌にするだけで、ネットニュースだけに頼ったブログと差別化できるという狙いです。もちろん、週刊誌記事をパクれということではありません。
また、ネットで流通していない情報に接することによって、ネット界隈で固定化された常識から解き放たれることもあります。これは非IT業界人と接することも多いであろうWeb担当者には大切なことと考えます。それが月々わずか……と、しつこいと「ステマ」が疑われるのでここまで。
今回のポイント
文字通り「タダ同然」となる読み放題
乱読により複層的な情報源にできる
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