ブログは何を書けばいいのでしょうか? ワンランク上を目指す「つかみ」と「ネタ探し」
コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。
宮脇 睦(有限会社アズモード)
心得其の318
つかみは切り捨てる
企業からの相談ランキング影の1位といっても過言ではありません。前回はメルマガ、今回はブログと、すでに「終わった」かのように語られることもあるネットツールを取り上げるのは、いまでも「現場」で活躍しているから。
メルマガが外回りの営業マンなら、ブログは店頭での接客担当。雑談を織り交ぜ、お客をもてなします。HTMLを駆使したコンテンツも同じですが、便宜上「ブログ」としています。今回はワンランク上のブログを書くための、ネタ探しのテクニックです。
その方法は先日の安田編集長の記事「Web向けのツカミの強い文章術を、超コスパ和牛焼肉の格之進から学んだ」とは正反対のアプローチ。編集長の記事をざっくりとまとめると「つかみが大事」。記事を書くうえで、もちろん「つかみ」は大切です。しかし、ワンランク上のブログを書く“ネタ探し”では「つかみ」を捨てます。
理想をいえば紙
さっそくネタ探しを始めます。まず、紙の新聞を用意し、そこからある程度紙面を割いている記事を選びます。新聞記事は最初の段落が「リード」と呼ばれる記事の要約になっています。いわばここが「つかみ」です。端的に事実を伝える目的で書かれており、ここを読むだけでニュースを知ることができます。
しかし、新聞と同じリードをブログのネタにすると、「ネットニュース」の引用レベル=コピペブログから脱出できません。コピペブログは幾千とあり、いわばライバルの多い「レッドオーシャン」です。そこで、リードを捨てることによって「ブルーオーシャン」を目指します。
このネタ探しのテクニックは、ニュースサイトでも再現できますが、サイトによっては記事を何ページかに分割していることがあり、ニュース全体を見渡せる視認性から「紙版」をお勧めしています。
同性結婚報道から見えてくるもの
産経新聞、平成25年6月27日の朝刊(東京版)1面に掲載された同性婚の権利を認めた、米国最高裁判決をめぐる記事を例にします。
最初の段落は、最高裁の判決を紹介します。最も重要な判決の事実を始めに伝える、ここが速報性を求められるニュースにとって肝の部分。そして次の段落から「トリビア」に突入します。争点と課題、背景や周辺情報、関係者のコメントなど判決に至った経緯を伝えます。
そこに発見したのは「クリントン大統領(当時)」の名前。同性婚が違憲とされたのは1996年に成立した米国の法律「結婚防衛法」によるもので、これに署名した大統領がクリントン氏だったのです。クリントン氏は米国民主党の元大統領。現大統領のバラク・オバマ氏も民主党。民主党はリベラルで同性愛に寛容で、共和党は保守で伝統的価値観を重んじます。すると共和党のブッシュ政権を挟んだ、民主党政権による「マッチポンプ(自作自演)」ではないか……と揶揄することができます。「時間軸」に着目する方法です。
時間軸で肉付けする
時間軸といえば、続報を追う方法もあります。続報とは事件を肉付けするための「トリビア」そのものだからです。翌日の産経新聞には、最高裁判決を受けて、クリントン元大統領と、妻のヒラリー前国務長官が連名の声明文をだし、「同性婚を禁じた法律に署名したことは過ちだったと認めた」とあります。
ネタの広げ方はさまざまですが、ここではヒラリー氏の名前に注目します。旦那が法律に署名した当時の彼女はファーストレディーではありますが「妻」にすぎません。過去への謝罪なら、当時の役職の責任において行われるものです。連名で謝罪した事実と、「前国務長官」という立場を重ねたときに、「オバマの次の大統領を狙っている」という噂もあながち遠くないとネタにできます。
ちなみに紙面と内容は異なりますが、MSN産経ニュースでも27日に判決の結果を伝え、その翌日には続報として反対派の声などを紹介しています。
- 同性婚の権利支持 連邦法は違憲 米最高裁判断(2013年6月27日の記事)
- 【水平垂直】米、同性婚へ道開く 賛否両論渦巻く社会(2013年6月28日の記事)
クロスチェックでネタを膨らませる
時間軸を「縦糸」とするなら、こちらは「横糸」です。複数の新聞で記事を確認することでネタが見つかることもあります。産経新聞の記事では同性婚を禁じた根拠法を「結婚防衛法」と紹介しましたが、読売新聞では「結婚保護法」と紹介しています。原文の「Defense」の翻訳の違いです。ここから「結婚は戦い(防衛)か絶滅危惧種(保護)か。楽天ならばどう訳す?」と題して、社内公用語を英語にした「楽天」への余計なお世話を語るのもアリです。
ちなみに翻訳の違いは多々あります。先日行われた中韓首脳会談を報じるニュース番組の韓国大統領の演説で「中韓両国」と翻訳したテロップに違和感を覚えました。演説前日の韓国大統領の発言を紹介した「ZAKZAK」の記事では「韓中両国民」となっていました。韓国語の素養がないので確認できませんでしたが、一般的には自国の名前を先に挙げるものだからです。順序が異なるときは、そこに政治的メッセージが込められています。
今回は政治ニュースを例としました。ときには箸休め的なネタを挟むのもいいですが、ネタを広げすぎてブログのテーマや業種から外れすぎないことも大切です。
視点の違いこそが個性
どうして「つかみ」を捨てるとワンランク上のブログになるのでしょうか。主な理由は競合の存在です。
ライブドアニュースでは「ざっくりと言うと」と切り出し、大胆にニュースを要約して配信します。編集スタッフによって要約されている記事は、「わかりやすい」とおおむね好評だといいます。
あるいは「2ちゃんねる」の「今北産業」。今北産業とは、掲示板に「いまきた」から「3行(程度)」でわかるように説明してほしい(説明した)という意味です。
こうした「要約情報」を求める傾向は、年々加速しています。しかし、ブログの読者は「ざっくり」を求めていません。「ざっくり」に期待するユーザーは、こうしたサイトや要約に適した「Twitter」に流れていくからです。そこで、「ざっくり」と競合する「リード」を捨ててしまうのです。
ただし、重要なことなので繰り返しますが、実際に記事を書くときには、安田編集長が指摘するように「つかみ」を意識することで、より良い仕上がりになります。リードを捨てたとしてもつかみは重要、つまり「珍しい視点」「独自の解釈」といった「着眼点」をつかみとして意識することで、ブログをアップグレードするのです。その着眼点はブログの個性になります。
今回のポイント
新聞はトリビアの展示会
着眼点がブログの個性になる
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