企業ホームページ運営の心得

PCデポの解約料騒動に見つける客との主張のギャップ

ビジネス側に立つWeb担当者として、安易な企業批判では終わらせることができない示唆を含んだ事例です
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の471

株価は半値以下に

James Woodson/DigitalVision/Thinkstock

Twitterの「拡散」に始まり、各種マスコミで取りあげられたパソコン販売大手「PCデポ」の高額解約料請求問題。3年満期のサポートサービスの途中解約を申し出たら、20万円を請求されたというのがことの始まり。

80歳を超えた個人ユーザーとの契約がパソコン10台分のサポートを含むコースであること、さらにこのユーザーが認知症を得ていたとして「高齢者を食い物にした」との批判がおこります。

契約者の息子が交渉し、減額された解約料10万円を支払ったものの釈然としないとしてTwitterで拡散し、広く知られることになります。情報が拡散すると、PCデポの株価は直近高値の半値以下になるほど売り込まれました。

PCデポの顧客対応には確かに瑕疵がありました。しかし、ビジネスの側に立つべきWeb担当者にとって、安易な企業批判では終わらせることができない示唆を含んだ事例です。

※編集部注 現時点でも内部流出とされる新しい情報がでてきていますが、この記事は9月2日時点までの内容をもとにしています。

いただけない元従業員告発

PCデポの解約料の内訳の大半は「技術料」でした。パソコンやタブレットの初期設定としてすでに提供済みなので、その分は支払ってもらうという理屈です。

先の息子の求めに応じて立ち会った、ライターのヨッピー氏の記事によると、最大5万円の技術料が発生しており、ネットでは高すぎると批判する声もあります。同様にPCデポの元従業員のこんなツイートも話題を呼びました。

(PCデポでは)外れていたバッテリーパックをはめ直しただけで技術料を請求しろと上司に指示された(要約)

ビジネスの側に立てば、元従業員の告発は言いがかりに過ぎません。わずか数秒、数分レベルの作業だとしても、発生するのが技術料だからです。なにより「契約」に準じるなら、携帯電話の「2年縛り」の中途解約と同じペナルティで、PCデポだけを責めるのはアンフェアです。

非論理的圧力

しかし、ビジネスは理屈だけでは成り立ちません。まして、契約社会の米国と違い、日本は「情」に左右されることも多く、これは重要なことなので覚えておいてください。日本では

お客は常に正しい

という非論理的な同調圧力が加わっているのです。実際、ヨッピー氏の記事にもこの圧力を確認します。事態が沈静化に向かうとき、冷静な議論が生まれることがありますが、炎上している最中に正論は通じず、逆らうのは得策ではありません。

10台サポート加入者限定のiPadの優待を希望されていた。(中略)結果的に、利用状況にそぐわないサービスの提供になった

なお後日、PCデポの野島社長は週間ダイヤモンドのインタビューで、高齢者にそぐわない契約になったのは意図したことではないと語っています。

真意は今後あきらかになるとして、PCデポは高額請求の元凶となった「技術料」を素人が「納得」しやすい事例を用いて説明すべきだったと考えます。これはPCデポに限らず、どの企業にもいえることです。

技術料とは何だ

最善の対応は状況により異なりますが、お客は店側より知識がないということが大前提。そこで専門用語を用いた技術的な話をしても「素人を馬鹿にしているのか!」と要らぬ怒りを買う可能性が生まれます。そこで説明を異業種に求めます

美容室では前髪を揃える、毛先を整えるだけでも技術料が発生します。ネジを外して本体を差し替えるだけの自動車のバッテリー交換も、プロに頼めば技術料(作業料)が必要となります。タイヤの前後左右を入れ替える「ローテーション」だってそうです。

パソコンやタブレット、ルーターなどの初期設定も同じなのです。さらに最新商品やサービス、トレンドにキャッチアップするための費用も、技術料には含まれている。若干、お高いと感じられたのは説明不足ですが、それだけの品質と自負しております。

との説明を果たしてPCデポはしたのでしょうか。その場で理解はしなくても、こうした説明はボディブローのようにお客に「納得」を与えてくれるのですが、少なくともヨッピー氏の記事では確認できません。

老人が望んだものとは

さらに問題を複雑にしたのが、契約を結んだのは問題提起した息子ではなく認知症の父だったということです。

そもそも「サポートプラン」は、パソコンやインターネットを設定できるだけの知識を持ち合わせていたり、ITに詳しい友人や親戚が周囲にいたりするユーザーであれば必要ありません。

高齢のユーザーが加入したPCデポのサポートには、24時間の電話対応が提供され、基本操作の店頭レクチャーが含まれます。親の心子知らずとは、この場合に適切ではないでしょうが、件のユーザーはサポート料金を支払うことで「安心」を求めたのかもしれないのです。

お金を払って安心するお客のなかには、金額の多寡を安心のバロメーターとする人もいます。実際、弊社はPCデポにおける「サポートプラン」と同様、毎月の定額制で中小企業のWebサイトを管理しています。

関与の程度で料金は分かれ、相手のリクエストを実現するためのプランを提案するのですが、「もうひとつ上のプランで」と「値上げ」を要求してくるクライアントは少なくありません。

これに応じるのは「ぼったくり」ではなく「ユーザーエクスペリエンス」の提供。反対に「最安値」の提案では契約に至らないことは多く、どうやら「安い」ことが不安を呼ぶようです。

高齢化社会の課題

こうした経験から、不必要に手厚いサポートプランに加入していたからと、すなわちPCデポを悪徳企業と断じることができません。もちろん、それでも十分な説明をすべきだったという正論はもっともな話ですし、悪意をもって契約に望んだとしたら論外です。

高齢化社会がより進むことは確実で、同様の案件は今後も増えることでしょう。親子といえども価値観は異なります。サポートプランの提供の有無にこだわらず、企業はこうした「お客の身内」という、構造的にはお客ではない「客側」からの抗議への対応を準備しておくべきでしょう。

今回のポイント

納得を目指す説明は異業種に求める

高齢化社会における新たな「顧客対応」を検討すべき

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