Web文章実践講座(第4回)メニューやお品書きの文章をブラッシュアップ!
「Web文章実践講座」では、主に文章の観点からウェブサイトのコンテンツをよりよくするコツを解説します。第4回は、飲食店を想定した「メニュー」や「お品書き」のブラッシュアップ方法です。利用者にアピールすべきポイントを導き出し、強弱をつけて伝えること、ストーリー性を演出することが大切です。
利用者は「決めたい」のではなく「決めてほしい」
ある飲食店が、すべての料理に自信があり、どれもお客さんに味わってもらいたいと考えているとしましょう。しかし、お客さんが一度の訪問で食べられる量は限られています。遠方からは頻繁に通うことがむずかしい、好き嫌いがあるといったお客さんの事情もあります。つまり、多くのお客さんとは「一期一会」と考えることが大切です。
さらに、ホームページの利用者に対して「あれもあります、これもあります」という情報提供よりも、「これがおすすめです」という提供の仕方のほうが好まれる傾向があります。利用者の多くは、短時間で要点を知りたい、行くお店を決めたいのであって、長い時間をかけてホームページを見てくれるとは限りません。
やや大きな話をすると、利用者は「決めたい」と思って情報を探しているようで、実は「決めてほしい」のかもしれません。テレビ番組、雑誌、本などで取り上げられたお店にお客さんが集中するのは、文字、写真、映像を通して「決め手」が提供されたからこそです。
ホームページのメニューやお品書きでも「決め手」を意識することが大切です。強弱のない一覧表のような情報では、見てくれた人の琴線に触れるのはむずかしいでしょう。メニューやお品書きは実店舗のものと必ずしも同じでなくてかまいません。おすすめの料理を目立たせたレイアウトのほうが効果的といえます。
アピールポイントを導き出すコツ
目立たせるべき商品の決め方にはさまざまな切り口があります。飲食店の料理を例に考えると、
- 実際に注文数が多い
- 素材や調理法にこだわっている
- 常連さんの評判がよい
- そこでしか食べられない(名物料理など)
- メディア(旅行誌やタウン誌など)で取り上げられた
- その季節ならでは
などが考えられます。
遠方からのお客さんの目を引くには、ほかの店ではなかなか味わえない目新しい料理が望ましい一方、地元のお客さん向けの味わい深い料理をアピールしたいお店もあるでしょう。この点はお店の方針によります(Web文章入門「第3回:お店のこだわりを伝えよう」参照※「はじめてWEB」は
サービスを終了しました)。
重要なのは、強弱をつけずに情報を提供しても、見た人の心には残らない、ということです。「このお店に来たら、これ」という決め手を提供することが大切です。よく「よいお店は、おすすめをたずねたときに、きちんと答えてくれる店」といわれます。ホームページの情報提供も「接客」と考えて、情報そのものの充実だけでなく、メリハリをつけることを意識しましょう。
お店のスタッフで、新たな名物商品、名物料理を考えるのもよいかもしれません。その際は、後日の公開を前提に、工夫した点、苦労した点、印象に残るできごとなどの「開発秘話」を事細かに記録しておくことをおすすめします。
飲食店で、その日の入荷によって、または季節によって素材が一定しないお店であっても、たとえば「食べ方」を新たな定番にできます。居酒屋の〆によくある「お茶漬け」の具は、のり、わさび、たらこ、梅、鮭あたりが一般的です。しかし、その日のおすすめの魚をさっとヅケにしてお茶漬けで食べられる、となると、がぜんお店の魅力が増します。
このように、ホームページで強調すべき情報をきちんと考えることは、新メニューの企画、実店舗の印刷物や接客の改善など、いっそう大きな取り組みにつながることがあります。
ストーリー性を加えよう
実店舗のメニューやお品書きを観察してみると、むかしながらのお店では料理名と金額のみの簡素なものが多い一方、新興のお店では、
- 素材(生産者)
- 産地
- 製法
などのこだわりを掲載したものをよく見受けます。
これは「ストーリー性(物語性)」と呼ばれるもので、商品や料理が完成にいたるまでの過程を見せることで、気持ちを高めてもらう方法です。文章やキャッチコピーはもちろん、写真をうまく使うなど、ストーリー性を演出する工夫をしましょう。
お店全体としての取り組みは「こだわり」などのページで公開するのがよいでしょう。商品それぞれや代表的な料理には、素材、産地、製法のよさをキャッチコピーや説明文でアピールすると、魅力が大きく増します(Web文章入門「第4回:魅きつけるキャッチコピーのポイント」参照※「はじめてWEB」は
サービスを終了しました)。
みんビズで制作されているホームページの中から、商品の説明が充実しているところを紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
商品ごとに素材や製法をわかりやすく説明しています。味噌や醤油などの調味料がむしろ主役に感じられるくらい、食べ方の説明も充実しています。
形式面にも気をつけよう
メニューやお品書きでは、次のような形式面にも気をつけましょう。
表記の統一
料理名やコース名の表記を統一しているか確認しましょう。
たとえば「焼鳥」という料理は、ほかにも「焼き鳥」「焼きとり」「焼とり」「やきとり」などの表記も可能です。お店によってどの表記を選んでもけっこうですが、きちんと統一して使うことが大切です。
また、区切り文字も「秋の味覚 満喫コース」「秋の味覚・満喫コース」などいくつかのバリエーションが考えられますので、きちんと統一しておきましょう。
価格
現在は税込価格(総額表示)が義務づけられています。次の点に気をつけましょう。
- 税抜き価格のみの表示はダメ
- 税抜き価格と消費税を別にした表示はダメ
つまり、支払い総額がひと目でわかることが大切であり、次のような書き方が総額表示に該当します(一般的なのは1番目または2番目です)。
- 10,500円
- 10,500円(税込)
- 10,500円(税抜10,000円)
- 10,500円(うち消費税500円)
- 10,500円(税抜10,000円、消費税500円)
なお、フランス料理店など一部の飲食店では、別途サービス料10%などを頂戴する場合があるでしょう。このような場合も、きちんとメニューで示しておくことが大切です。
アレルギー表示
食の安全性が問われるなか、アレルギー表示を求める利用者もいます。食料品のパッケージなどでは、卵、乳、小麦、そば、落花生、えび、かにの7品目が、対象者の多さや症状の重さから表示が義務づけられています。
飲食店については、対面での説明が可能ということで、メニューでの表示は義務づけられていません。努力目標とするのが現実的と考えられますが、小さいお子さん連れの家族客が多いお店は、一度、表示の必要性を考えてみることをおすすめします。
まとめ
メニューやお品書きでは、
- 目立たせる商品や料理を決める
- ストーリー性を演出する
のふたつを意識することが大切です。
自分たちにとっては当たり前の商品、当たり前の料理も、お客さんにとっては必ずしも当たり前ではありません。商品や料理の魅力をあらためて見つめてみることが、メニューやお品書きの充実につながります。
次回は、会社や店舗の「交通アクセス」のブラッシュアップ方法を解説します。
(第5回につづく)
このコーナーのコンテンツは、KDDI提供の情報サイト「はじめてWEB」掲載の「エキスパート(専門家)コラム」の情報を、許諾を得てWeb担の読者向けにお届けしているものです。
※「はじめてWEB」のオリジナル版は掲載を終了しました
ソーシャルもやってます!