Web広告研究会セミナーレポート

ビッグデータ活用には成功体験と企業風土づくりが必要、「企業のデータ利活用に関する調査」

企業のデータ活用はどれほど進んでいるのか、「企業のデータ利活用に関する調査」から明らかにする
Web広告研究会セミナーレポート

この記事は、公益社団法人 日本アドバタイザーズ協会 Web広告研究会が開催およびレポートしたセミナー記事を、クリエイティブ・コモンズライセンスのもと一部編集して転載したものです。オリジナルの記事はWeb広告研究会のサイトでご覧ください。

ビッグデータをはじめ、マーケティング領域におけるデータ活用が重要視されるなか、企業のデータ活用はどれほど進んでいるのか。「企業のデータ利活用に関する調査」では、各社の現状と課題が明らかにされた。Web広告研究会2月の月例セミナーでは、調査を主導したBigData研究委員会 課題認識ワーキンググループが、データ活用の実態を解説した。

事業への貢献度別に見るデータ利活用の現状

株式会社アイ・エム・ジェイ
杉村 亮氏

セミナー第一部の調査結果報告で登壇したアイ・エム・ジェイの杉村氏は、企業のデータ利活用の取り組みを定量的に把握するために「企業のデータ利活用に関する調査」を行ったと説明する。

同調査は2015年10月~11月に行い、年間売上高200億円以上から1兆円以上までの幅広い企業が回答しており、サンプル数は201。内訳は製造業が5割、サービス業が4割、回答者の7割は役職者で、首都圏の企業が7割という結果となっている(調査概要は記事末尾を参照)。

調査では、「データ利活用が事業に貢献しているか」という設問の回答によって、データ活用のレベルを判断している。「貢献している」と回答した約3割を貢献度「高」と、「ある程度貢献している」と回答した約5割を貢献度「中」とし、残りの回答を貢献度「低」とセグメントを定義した。

データ活用の事業貢献度

データ活用にともなう組織体制では、「全社的に利用」(24.9%)、「経営層が推進」(35.8%)、「横断部門がある」(49.4%)という結果になった。これを前述の貢献度レベル別に見ると、3つの組織体制のいずれも、貢献度が高いセグメントほど回答率が高い。

貢献度高と貢献度低のセグメントを比較すると、「全社的に利用」が約40ポイント差、「経営層が推進」が約30ポイント差、「横断部門がある」が約25ポイント差となり、単に横断部門を組織して箱を作るだけでなく、経営層がコミットし、全社的に利用する文化を作ることが重要だと杉村氏は説明する。

データ活用体制を貢献度高と貢献度低のセグメントで比較

実際に杉村氏が手掛けた案件では、経営陣の交代によって、データ活用が加速した例があるという。これまでの定性的な目標から、トップダウンで定量的な目標を目指す方針を明確にしたことで、アクセス解析ツールのログイン数が飛躍的に伸びたのだ。

その結果、各現場でデータを見る文化が定着し、アクセス解析へのログイン数は1年半で3倍以上、業績も大きく伸びたといい、杉村氏は「データ利活用の文化が定着するには経営層の意志が大きく影響する」と説明する。

CRMなど自社内の構造化データが活用の基本

データ活用の取り組み内容では、「定期レポートの作成」が5割以上となり、次いで「顧客セグメント別の施策」「自社メディアの最適化」などが続く。使用されているデータは、「顧客の属性情報」「サイトのアクセスログ」「購入利用履歴」といった、自社内に蓄積されている構造化されたデータがいずれも4割以上となった。

利活用しているデータ

一方で、貢献度高のセグメントが利用しているデータを見ると、自社の構造データとともに、「アンケート調査」「公的データ」「3rdPartyデータ」など、自社以外のデータも多く活用していることがわかる。

貢献度高のセグメントが利活用しているデータ

また、貢献度高が今後利活用したいデータを見ると、「3rdPartyデータ」に次いで「音声ログ」「テキストデータ」「位置データ」などが挙げられており、非構造データにも興味を持っていることがわかった。

データ利活用で利用しているツールとしては、Excelはもちろん、貢献度高では統計解析ソフトやDB管理ソフトの利用率も高い。また、貢献度高がこれから利活用したいツールを見ると、ソーシャルメディア分析ツールやテキストマイニングソフトが多く、先進的な企業では、興味がソーシャルメディアやテキストデータに移ってきていることが見て取れる。

現在使っているツール
利用データから見える企業のデータ活用レベル

分析やアクションプランは自社で実施する傾向

続いて、データ利活用の各業務をどのように運用しているか、業務実施部門の調査結果が示された。

業務実施部門

これを貢献度レベルで見ていくと、貢献度高が「分析結果の考察」や「分析結果からのアクションプラン」を自社で完結している割合が高いのに対し、貢献度低では外部パートナーが関与する割合が高くなっている。

業務実施部門(貢献度別)

一方で「データ処理・解析」では、貢献度高の方が外部パートナーに任せる割合が高くなっており、大量のデータ処理や統計解析などの高度な業務を外部パートナーに依頼しているのではないかと杉村氏は推測する。

貢献度低は組織上の課題が大きい

データ利活用に関する課題については、「人材不足」と「費用対効果が不明」が圧倒的に多い。

データ利活用に関する課題

これらの課題を貢献度高と貢献度低で比較してみると、「人材不足」と「費用対効果が不明」はどちらのセグメントでも高いが、「体制や組織がない」「風土・文化がない」といった課題で大きな差が出ており、貢献度低のセグメントでは、組織上の課題が大きいことがわかる。

貢献度低のデータ利活用に関する課題

データ利活用の課題となっている費用対効果について、杉村氏は「データ活用を始めるときには、まず試して、続けることが重要」だと話す。まず、小さな規模で試すことで活用イメージが生まれ、それらをもとに社内理解を得る予算立てや体制づくりを行い、本導入することで成功に導くことができるという。

また、分析は一朝一夕では意味がないので、続けることが重要だ。続ける中でさまざまな課題が見つかり、その改善案を出していくことが、ノウハウの蓄積や人材育成につながる。

小さな成功体験をデータ活用の第一歩へ

「今後データ利活用を進めていきたいか」という設問に対しては、貢献度を問わず、すべての企業が「さらに活用・促進していきたい」または「活用・促進していきたい」と回答している。なかでも、貢献度高の企業は「さらに活用・促進していきたい」と多くが回答しており、「成功体験を得ることで、さらなる活用を考えるのではないか」と杉村氏は話した。

最後に杉村氏は、Google トレンドでの「ビッグデータ」の検索回数のグラフを示し、2014年をピークに検索数が減少傾向にある一方、「データ分析」の検索回数が右肩上がりに増えていることから、バズワード的なトレンドから、「データ分析への関心が増えてきた結果ではないか」と分析する。

ビッグデータの言葉の定義も、単純に膨大なデータ量という意味だけではなく、リアルタイムやデータ連携という考えも定着してきおり、「ビッグデータが当たり前の世の中になってきているのではないか」と、杉村氏は講演をまとめた。

調査概要
  • 調査目的:BIGDATA活用の障壁、その障壁の解消に向けた企業の取り組みを明らかにする。
  • 調査方法:インターネットリサーチ
  • 調査期間:2015年10月~11月
  • 調査対象:売上高200億円以上の企業で、下記業務に携わる担当者
    企業内の情報システム担当、企業内のデジタルマーケティング担当 ※サプライヤーは除く
  • 有効回答数:201サンプル
  • 回収サンプル内訳:Web広告研究会経由46サンプル、日経リサーチ経由155サンプル

Web広告研究会サイト掲載のオリジナル版はこちら:
『ビッグデータ活用には成功体験と企業風土づくりが必要、「企業のデータ利活用に関する調査」』2016年2月23日開催 月例セミナー 第1部(2016/03/11)

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